【更新停止中】緋雷ノ玉座   作:seven74

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 今年最後の投稿です。皆さん、明日から来る福袋ガチャはどのクラスを引くかもう決めましたか? 私はキャストリア爆死拳を修得しているのでキャスターガチャを引きたいと考えています。陳宮システムしたぁい()

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戦乙女の理解者

 

 ―――日曜日が嫌いだった。

 

 父がいて、母がいて、私がいた、日曜日が嫌いだった。

 

 といっても、生みの親を嫌っているわけではない。

 

 生粋の魔術師である両親を、私は尊敬していたし、誇りにも思っていた。いつか彼らのようになれたら、そう考えてる自分もいた。

 

 だけど、それ故に私は―――二人がいる日曜日が嫌いだった。

 

 怖かった、とも言えるだろうか。

 

 “遷延の魔眼”―――生物・非生物を問わず、あらゆるものの“可能性”を視認し、一度見た未来を魔力を消費する事でピン留め( ・ ・ ・ ・ )する能力を持つ魔眼。

 

 まさしく、私に与えられた才能だろう。一種の未来視を可能とする魔眼など、この世にありふれているものではない。

 

 だからこそ、両親は私に期待した。

 

 

 ―――一流の魔術師となり、ファムルソローネの血を根源へ導く。

 

 

 ……あぁ、その通りだ。

 

 数多の魔術師達が夢焦がれる、此処より遠く、彼方に在る場所。そこへたどり着く事こそ、この魔眼と共に生まれ落ちた私の使命。

 

 だからこそ、私は日曜日を嫌悪したのだ。

 

 

「およ? 君、その眼帯カッコイイね。どこで売ってるの?」

「え?」

 

 

 そんな時だった。彼女と出会ったのは。

 

 アンナ・ディストローツ。一切の経歴が不明で、時計塔に来て早々、単身アルビオンに挑んで生還を果たした“狂気の生還者(マッドサバイバー)”。どこか子どもじみた彼女は、初対面の私にもフレンドリーに話しかけてきたのだ。

 

 彼女と共に過ごして、気付いた事があった。彼女は、まさしく“狂気”と言える大胆さの持ち主で、常にポジティブに物事を考えて、なにかしらの壁にぶつかっても、にこやかに笑いながら解決していく女性だった。そして、重圧というものを感じた事の無い、純粋で無邪気な子どものような女性でもあった。

 

 でも、不思議に思うところもあった。

 

 彼女が扱う魔術は、これまで私が聞いてきたどの魔術にも当てはまらぬものだった。彼女が見せてくれた魔術は、緋色の電撃を発生させるものだった。威力も申し分なく、彼女の電撃によって私の何倍もの大きさの岩が容易く砕け散ったのは少しばかり驚いた。彼女曰く、『物凄く手加減した』という事なので、本気で振るえば、どれほどの威力になるのか、と若干不安になった事もある。

 

 しかし、彼女がそれを使う時なんてほとんどないし、使うとしてもほんの気まぐれ。時計塔内でも彼女の雷撃を見た人間はほとんどいないらしく、あれは滅多にお目にかかれるものではなかったものなのか、と、当時の私はちょっとした優越感を抱いていた。

 

 学部こそ違えど、彼女は時々授業をサボって私のところに来ては、私の専攻する降霊科(ユリフィス)の話を聞かせて、と言ってきた。どうやら彼女からは、この学部に所属している生徒の中で私が一番話しやすい対象に見られているらしく、やって来てはその日に学んだ事を聞きたがってきた。

 

 人懐っこい彼女だが、同時に時々見せる表情は、どこか卓越しているように感じる事がある。私とは比べ物にならない量の情報を見聞きしてきたかのような顔だ。今思えば、あれを“不思議”と言わず、なんと言うのだろうか。

 

 だけど、私は気にしなかった。彼女と一緒に過ごしていると、日曜日への嫌悪感を忘れられたからだ。

 

 だからだろうか、私は意を決して、彼女に自分の魔眼について語る事にした。彼女なら、両親とは違った事を口にしてくれるのでは、という淡い期待を籠めて。

 

 

「未来を視れる魔眼? なにそれ凄いッ! 長い事生きてきたけど、そんな目を持ってる人なんて滅多にいないんだよ? カッコイイじゃんッ!」

 

 

 結果、彼女は特に怖がらず、かといって嫉妬するわけでもなく、ただ純粋に、私の魔眼をカッコイイと言ってくれた。それに、彼女は魔眼だけじゃなく、私自身の事も見てくれたのだ。

 

 私の作ったお菓子を「美味しい美味しい」とパクパク食べてくれたし、作ってくれたお礼として私の好物のケーゼトルデを買って来てくれたり、時にはロード・エルメロイ二世の内弟子のグレイも交えてショッピングに行って着せ替えごっこに付き合わせたり付き合わされたりした。

 

 彼女と過ごす日々はとても輝いていて、とても楽しかった。辛い事なんて思い出せないくらいに、彼女は色んな場所に私を連れて行ってくれた。

 

 ―――彼女は、私に初めて出来た“親友”で、“理解者”だった。

 

 

「オフェリアちゃんって、“恋”した事ある?」

「恋? ……した事ないわね」

 

 

 二人で訪れたカフェでスイーツを食べていた時、ふとアンナがそんな事を訊ねてきた。

 

 

「そ、恋。オフェリアちゃんが恋をしたらどんな風になるのか、気になってさ」

「……どうなるのかしら、私」

 

 

 『恋』。知識として有してはいるが、経験した事は無い感情。誰かを好きになる事はこれまで何度もあったが、それは恋愛感情とは違う、俗に言う“友情”のようなもので、私が『この人と添い遂げたい』と思える男性は未だ現れない。

 

 試しに色々想像してみるが、誰かに恋をした自分の姿は中々思い浮かばない。同じ学部の男性と話す事はあれど、それは意見交換やなにか頼み事をしたりする時ぐらいだ。恋をするまでには至らない。昔読んだ恋愛小説の主人公と自分を重ね合わせてみたが、イマイチパッとしない。

 

 

「……ごめんなさい、全然思いつかないわ。それに、私……自分が恋をできるなんて、思わないもの」

「どうして?」

 

 

 首を傾げたアンナを見て、私は自分が抱いている気持ちを口にした。

 

 私達魔術師は、“合理性という機械”となる事を義務付けられている。魔術の最奥、あらゆる知識を得られるとされる根源に辿り着く為であれば、如何なる非道も許容するのが魔術師という存在だ。そんな魔術師()を目指す以上、私は人並みに恋をするわけにはいかない、と。

 

 一通り私の話を聞いたアンナは、僅かに目を細めながら頬杖をついた。

 

 

「……私はそうは思わないな。魔術師と言っても、人間って事に変わりはないでしょ? だったら、君にも人並みの恋をする資格はあると思うけど」

「そう……かしら」

 

 

 今思えば、彼女がそう答えるのは必然だったのだろう。魔術師という概念に縛られず、己の意志のままに自由に生きる彼女が、今の私の言葉を肯定するはずが無いのだ。

 

 

「よく言うでしょ? 『命短し恋せよ乙女』って。恋をする権利は誰にだってあるのよ。それは君も例外じゃないよ、オフェリアちゃん」

「私も……恋をしていいの……?」

「もちろんッ! 恋をすれば、きっと世界はもっと輝くよッ! 恋を知らない私は保証できないけど、私の代わりに、これまで積み重ねられてきた、人間の歴史がそれを保証してくれる」

 

 

 恋は様々な形で人の行く末を変えてきた。時にそれは希望の架け橋になるし、絶望への転落の切っ掛けになる事もある。人々が紡いできた歴史は、恋の歴史でもある。恋から愛へと発展する事で、人々はここまで進んでこれたのだから―――と、アンナは語る。

 

 

「恋を知らないって事は、恋を知れるって事。君が誰かに恋をして、結ばれて、幸せな家庭を築く……。その時の君は、いったいどんな顔をしているのかな?」

「さぁ、どんな顔をしてるのかしら、私」

 

 

 改めて想像してみるが、やはり明確なビジョンは思い浮かばない。けれど、その時の私は、きっと幸せな顔をしている事だろうと思って、フッと笑った。

 

 

「そう言うアンナはどうなの? 貴女は恋をしたいって思ったりする?」

「私? 私はいいかな~」

「私に恋について語っておきながら独り身宣言? ちょっと寂しくない?」

だって私、ヒトじゃないし

「? なに?」

「う、ううんッ! なんでもないよッ! それより早く食べよ?」

「え、えぇ、そうね」

 

 

 あからさまにはぐらかされたが、私はそれ以上の追及はせず、アンナと一緒に甘いスイーツに舌鼓を打った。

 

 その後、私達はカルデアに招かれ、Aチームに選ばれる事になる。そしてそこで、私は“恋”を知る事となる―――

 

 

 

 

 

『そっちの状況はどんな感じ?』

「良好な関係は築けたわ。良識のある王よ。きっと、貴女とも仲良くなれるわ」

『それは上々。異聞帯同士の戦争が無ければ行ってたところだよ』

 

 

 ホログラムのアンナが若干悔しそうに肩を竦める。

 

 北欧異聞帯。ラグナロクが中途半端な形で終わってしまい、今尚巨人達が蔓延る氷雪の地。そこに鎮座する氷城の一室に、私はいた。

 

 

「貴女の方はどうなの? 異聞帯の王はその世界を維持するのに必要不可欠な存在。楽観的なのはいいけど、ちゃんと立場を弁えてる?」

『あ、あ~……。うん、まぁ、ちゃんと話せてる、よ?』

「……まさか、喧嘩したとかじゃないわよね?」

 

 

 “異星の神”によって蘇生された私達はクリプターとしてそれぞれの異聞帯の管理を任されたが、私達の役目はあくまで空想樹を育て上げる事。決してその異聞帯の主というわけではない。

 

 異聞帯の真の主とは、そこの頂点に君臨する王だ。彼ないし彼女と敵対関係になってしまえば、空想樹を育てるなど土台無理な話になってしまう。

 

 

『ま、まっさか~。流石に喧嘩なんかしてないよッ! 向こうはその気すらないだろうし……』

「それならいいのだけれど……」

 

 

 彼女の性格を考えると、相手が王であろうとも気兼ねなく話しかけに行きそうで怖い。流石にベリルよりは真面目に取り組んでいると信じたい。彼はあくまで真剣に動いている、と語っているが、やはりどこか本腰を入れていないような気がするのだ。

 

 

「貴女も大変ね。サーヴァントに古龍種の管理……。忙しいでしょう? ちゃんと休めてる?」

『ううん? 私、古龍種に関してはあの子達に一任してるから』

「……大丈夫なの? 貴女が召喚したサーヴァント達の一騎って、あの“黒龍”なんでしょう? それ程のサーヴァントが素直に従うとは……」

『大丈夫大丈夫。あの子が私を怒らせるはずないもの。拳骨が来るってわかってるから』

「時々私は貴女がわからなくなるわ……」

 

 

 アンナの口から飛び出したとんでもない返答に頭が痛くなる。

 

 歴史の影法師といえども、相手は“黒龍伝説”に語られる最凶の古龍。“運命の戦争”という異名を戴く、古龍種の最上位に君臨する正真正銘の怪物だ。そんなサーヴァントの叛逆に拳骨で対抗するなど、正気の沙汰ではない。

 

 彼女が召喚したサーヴァントは合計で四騎らしいが、私が知っているのはその一騎が“黒龍”である事だけで、それ以外のサーヴァントはクラスも真名も判らない。

 

 だが、伝説の存在を相手に、まるで家族に接するかのように対応するアンナの度胸(命知らずとも言えるだろうか)は見上げ果てたものだ。決して目標にしたくはないけど。

 

 

『まぁ、それは置いといて。王との関係もそうだけど、サーヴァントとの関係も大切だよ? そっちの方もちゃんと力入れてる?』

「…………えぇ、ちゃんとやってるわ」

『……どうしたの?』

「……なんでもないわ」

 

 

 その質問に若干俯いて答えた私をアンナは『ふぅん……』と呟き、誰もいないはずの私の隣を一瞥し、スッと目を細めた。しかし、それも一瞬の事で、いつもの笑顔に戻ったアンナは話題を切り替えてきた。

 

 

『今、カルデアはそっちに来ているんだよね? あの子達はどうしてる?』

「集落の一つに滞在しているわ。でも、こちらからは手は出せないし、出すつもりも無いわ。女王との約束なの」

 

 

 あの氷雪の女王はこの地を覆う雪を通して、この異聞帯全体を目視する事が出来る。だが、今カルデア一行がいる場所は、この異聞帯に生きる人々が住まう集落の内の一つだ。全てを愛する慈母が如きあの女神直々に「手を出すな」と言われている以上、無暗に攻撃を仕掛けるわけにもいかない。

 

 それに私自身、まだ彼女らを壊滅させる気になってない。だからこそ、一度彼女らを殺しかねなかった“彼”の行動を諫めたのだ。

 

 

『それじゃあ、私はここで切るね。ちょっと用事を思い出したの』

「えぇ、また」

『バイバ~イ♪』

 

 

 子どものように朗らかに笑うアンナの姿が消え、オフェリアは「はぁ……」と溜息を吐いた。

 

 

(“彼”の事、話しておくべきだったかしら……)

「どうした、オフェリア」

 

 

 一人でいる事によって訪れた静寂はしかし、霊体化を解いたこの男によって破られた。

 

 私が北欧異聞帯で召喚した英霊―――シグルド。ただし、今の彼はシグルドであってシグルドに非ず。

 

 ―――巨人王スルト。北欧神話における神代の終末を告げる、煉獄ムスペルヘイムに住まう“火の巨人”達の王。こちらの異聞帯では汎人類史のような結末を迎えなかったが故、彼の魂は今でもこの世界に在り続け、こうして私が召喚したシグルドの霊基に潜り込み、本来の彼の人格を抑えつけている。

 

 この歴史の彼はフェンリルを喰らい、ロキを殺害し、やがては北欧どころか星そのものを焼き尽くさんとし、それを阻止すべく立ち塞がった主神オーディンと激突。結果、彼はオーディンと相討ちになり、疑似太陽として3000年間封印されていた。

 

 彼の暴走の傷跡は今尚この異聞帯を蝕んでおり、それ故に北欧最後の神である女王はこの世界を氷雪で閉じ込める事を選択し、辛うじて生き残った少数の人間と動植物を100のコロニーに分け、ルーンによる守護で保護し続けてきたのだ。

 

 北欧異聞帯がこのような環境となった原因は、彼の暴走にあると言っても過言ではないだろう。

 

 

「……二画目を使わせないで。霊体化しなさい」

「自分は友人と語り合っておきながら、(サーヴァント)には自由を与えぬか。クク、随分と扱いが違うではないか」

「アンナは私の親友よ。貴方とは価値も立場も違うわ。どこまでもポジティブだけど、私の話に真剣に付き合ってくれる、頼もしい人よ」

「……クク、そうか、“人”か。“人”ときたか、オフェリア」

「……なにがおかしいの?」

 

 

 仮面の奥で明らかに嗤っているであろうセイバーに目を細める。

 

 

「なに。あのような奴が、人間であるものかと思ったまでの事だ」

「……なんですって?」

「抑えつけているようだが、相当な魔力量だ。到底人間のものとは思えん。さらに言えば、この霊基は彼女に見覚えがあるそうだぞ( ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ )?」

「……ッ! そんな、事……」

 

 

 ジークフリートと同様、竜殺しの大英雄として語り継がれるシグルドは神代に生きた男だ。そんな彼の記憶に彼女がいるなど、到底信じられる話ではない。

 

 だが、だからといって彼女がその時代から現代まで生き続けているという証拠にはならない。英雄シグルドの記憶にあるその女性とアンナが瓜二つの別人である可能性だってあるのだから。

 

 

「もし、お前が奴に対して恐怖を抱いたのなら、躊躇わず俺に命ずればいい。“奴を殺せ”、と」

 

 

 言い返そうとするも、私が口を開くより先に、セイバーは霊体化してどこかへ消えていく。

 

 

「アンナ……」

 

 

 今度こそ一人になった私は、ポツリと彼女の名を呟く。

 

 アンナ・ディストローツ―――経歴が一切不明な、謎多き親友。向日葵のように朗らかに笑う、私に“恋”を教えてくれた恩人。

 

 

「貴女は、いったい―――何者なの?」

 

 

 ―――ここは氷雪の幻想息づく北欧世界。

 

 ―――それは戦乙女の花散る、古き神話の終焉地。

 

 ―――その太陽は、煌々と輝く昏き災厄に―――

 




 
 昔々、そのまた昔のとある日の出来事―――

バーサーカー・リリィ「姉上に寝起きドッキリを仕掛けよう!」
アルターエゴ・リリィ「派手に寝床ぶっ壊してやるぜ!」
アーチャー・リリィ「姉様の驚いた顔楽しみ!」
アヴェンジャー・リリィ「姉さんどんな顔するんだろう?」

 放たれる火属性ブレス、降り注ぐメテオ。

アンナ「寝床がその周辺ごと消えたよ! お仕置き喰らえ!」

_人人人人人人人人人_
> げ ん こ つ <
 ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y ̄

リリィ達『金輪際、絶対に姉上/姉貴/姉様/姉さんを怒らせません』
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