【更新停止中】緋雷ノ玉座   作:seven74

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幕間:紅夢よ、警鐘を鳴らせ

 

 走る。

 奔る。

 燃え盛る炎の中、息を切らしながら走る。

 

 かつて在った栄華は亡い。

 

             ―――既に、()の龍が灼いた。

 

 かつて在った幸福は亡い。

 

             ―――既に、地獄の劫火で溶けて消えた。

 

 

 “我らこそ王である”と囀った愚者は既に亡い。

 

             ―――当然だろう? 彼らは禁忌を犯したのだから。

 

 遠くから風を感じる。

 それは灼熱の突風となって肌を焦がし、背後にいる“それ”への恐怖心を増幅させる。

 

 咆哮が轟く。

 まるで、地獄の底から響く重苦しい怨嗟の叫びだ。

 けれど、本当の地獄を知っていれば、この叫びも多少は軽いものだと思えるのだろうか。

 

 否。断じて否。

 ここよりも苛烈で、凄惨な場所などあるものか。この場こそ、正真正銘の地獄。あの黒き龍によって創り出された、一切の繁栄を許さぬ魔境。

 

 足が(もつ)れて、勢いよく地面に顔面を打ち付けた。

 鈍い痛みと共に、生温かい液体が鼻孔から流れ出てくるのがわかるが、そんな事を気にしている暇は無い。

 

 立ち上がろうとする。

 

             ―――無理だ。既に体力は尽きた。

 

 這いずって逃げようとする。

 

             ―――無理だ。最早肉体は恐怖に屈した。

 

 

「グルアアアアアアアァァァァァッ!!!」

 

 

 耳を(つんざ)く咆哮が聞こえ、地面が大きく揺れた。

 吹き荒れる熱風から瞼を閉じて眼球を護る。

 そして、熱風が止んだのを感じて、瞼を持ち上げる。

 そこで私は―――

 

 

「……ッ!!」

 

 

 ―――憤怒に燃える、黄金の眼を見た。

 

 

 

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「うわああああああああああああッ!!!」

「きゃぅッ!?」

 

 

 跳び起きた衝撃で、いつの間にか添い寝していたゴッホちゃんが目を見開いて素っ頓狂な声を上げた。

 彼女に遅れて、最早私の部屋がなりつつある清姫達が次々に霊体化を解いて現れる。

 

 

「ますたあッ!? 大丈夫ですかッ!?」

「マスターッ! 嗚呼……ッ! なんて酷い顔……ッ!」

「マスター。大丈夫ですか……?」

「み、みんな……? という事は、今のは……夢……?」

 

 

 口々に私を心配する言葉をかけてくれる彼女達を視界に収めた私は、今まで見ていた光景が夢―――現実ではないものである事を理解し、安堵してベッドに倒れ込んでしまった。

 夢を見ている間に掻いたのか、額に触れた手に生温かい雫が触れ、軽く髪の毛に触れてみれば、ここもやはりしっとりしている。

 睡眠時にも着用している礼装も、汗を吸ったのか肌に貼りついているところが多々あった。下の方は……よかった。流石にこの歳でアレするのは羞恥で死んでしまう。

 

 

「フォウ、フォウ」

「……フォウ君。ふふっ、大丈夫だよ」

 

 

 視界の端に映り込んだ、今も尚謎のマスコット的生物のフォウ君の頭を撫でて安心させる。

 私の言葉に頼光達も多少は落ち着いたようだが、まだその瞳には私を気遣うような感情が見て取れる。

 なんとか彼女達を宥め、汗でびしょびしょになった体をシャワーで軽く洗い流し、別の礼装に着替える。

 

 自室から出た直後、私は酷く焦った表情で走ってきたマシュ(かわいいナスビちゃん)と出会い、ダ・ヴィンチちゃん達が私の事を心配している事を教えられた。どうやら、睡眠中の私のバイタルが常時ならあり得ない数値を出していたようで、それを知らされたマシュは全速力でここまで走ってきたようだ。

 そんな彼女を頼光達と同じように宥めた後、自分は大丈夫だと報告する為、ダ・ヴィンチちゃん達の下へ向かった。

 

 

「―――なるほど。それが君のバイタルが異常な数値を出した原因だったのか」

 

 

 管制室。かつて私達がいたカルデア南極支部のそれと酷似したその場所で、私の話を聞いたダ・ヴィンチちゃんは顎に手を当ててそう口にした。

 

 

「話を聞くに、君の夢に現れた光景とは、燃え盛る都市のような場所と、恐らくそれを生み出したであろう竜種と取れる存在。竜種が登場する夢を見たという事は、それに関連するサーヴァントの心と意図せず繋がってしまったんでしょうね。となると、立香ちゃんの夢に現れた竜に心当たりのある英霊―――竜殺しの逸話持ちのサーヴァント達から話を聞いてみたらどうです?」

 

 

 シオンの助言に従い、私は竜殺し、または竜種となんらかの関わりのあるサーヴァント達に話を聞いてみる。

 

 

「……ジークフリートさん、シグルドさん、マルタさん―――その他多くの竜種に関係のある方々に話を聞いてきましたが……」

「みんな外れだったかぁ……」

 

 

 とりあえず見つけた端から訊ねてみたのだが、みんな私の見た夢に心当たりはないという。特にジークフリートやシグルドはファヴニールを討伐した英霊なので、彼らから聞き出せれば万々歳だったのだが、残念ながら期待は外れてしまった。

 となると、残されたのは“モンスターハンター”の時代を生き抜いた、歴戦の狩人に訊ねるべきなのだが―――

 

 

「ストレオさんは現在、修練場に籠っているため、出てくるまでにはもう少し時間がかかるでしょう。となると、残りは―――」

「おぉ、マスター、それにマシュ嬢」

 

 

 マシュが最後の一人の名前を口にしようとした直後、前方の曲がり角から現れた男が軽く手を振ってきた。

 

 

「赤衣さんッ! もしかして、そっちも私達を?」

「うむ。他のサーヴァントから、君が竜種に関連するサーヴァントから話を聞きたがっている、という話を聞いてな。こうして探していたわけだ」

 

 

 ある日の朝、枕の隣に積まれていた“モンスターハンター”の本を触媒にした事で召喚に成功した赤衣さんが、「して、なにか訊ねたい事は?」といつもの不敵な笑みを崩さぬままに聞いてきた。

 私が今朝見た夢について語ると、赤井さんは「ふむ」と髭の一本も生えていない顎に指を添え、私達から視線を逸らす。なにか考えているのか、その双眸はスッと細められているが、しかし彼が浮かべる笑みは消えるどころか、むしろ先程よりも増しているようにも思えた。

 

 

「君の話から察するに、その夢に出てきた竜種とやらは、“黒龍”で間違いないだろう」

「“黒龍”……アンナさんが従えている、あの黒いサーヴァントの事ですか?」

 

 

 隣のマシュが重々しくその名を口にする。

 ミラボレアス―――通称“黒龍”と呼ばれるその龍は、幻想種の最上位たる竜種の中の頂点を指す古龍種の、そのさらに上のステージに存在する、正真正銘の怪物。“モンスターハンター”の時代でも、実在する可能性は皆無に等しいと考えられていた『白き王』と呼ばれる存在を入れれば、総勢五体いるとされている“禁忌のモンスター”の一角だ。

 

 

「ほぅ、既に出会っていたのか。いや、既にシュレイド異聞帯なるものがあるのだから、遅かれ早かれ出会うか」

「うん。あの時は人間の姿を取っていたけど、あれがあのサーヴァントの本当の姿なの?」

「その通り。君達も知っての通り、“黒龍”ミラボレアスとは、かつて地球上に繫栄した大国を一夜にして滅ぼした存在だ。君が彼の登場する夢を見たという事は、恐らく、無意識的に私と繋がってしまったのだろう」

「という事は、赤衣さんは“黒龍”と……」

「出会った、とは違うな。過去に起きたシュレイド王国滅亡という大事件。それについて知りたいと思い、覗き見した時に見た程度のものだ。だが、驚くべき事に奴は、本来なら気付かぬはずの私の視線に気付いていた( ・ ・ ・ ・ ・ ・ )。挙句にそのまま私の目を焼こうとしたのだ。間一髪で視界を現代のものに戻したからよかったが、あぁ、なんと末恐ろしい……」

 

 

 赤衣さんと仲を深めていく中で知り得た情報の中に、彼は異邦の生命を取り込んだ際に、断片的とはいえその力も手に入れたらしい。その力の恩恵で、彼は過去や現在、未来の出来事を視認できるのだそうだ。未来を視る事は彼のスタンスからしていないそうだが、過去を見たという事は、単純に言えば好奇心の類のものだろう。

 だが、私が驚いたのは、いつも不敵な笑みを崩さない赤衣さんが、この時初めて顔を顰めたという点だ。

 自分が視ている事が“黒龍”に気付かれ、尚且つ目を焼かれかけたのだ。間一髪逃げ切る事には成功したようだが、それ以降、彼は“禁忌”が関与していると考えられる過去の事案は覗き込まないようにしているらしい。

 

 

「―――すまない。話を逸らしてしまった。私の事はどうでもいい。頼光から聞いたが、寝起きの君は酷い顔色だったと聞く。夢とはいえ、“黒龍”を間近に見たのだ。そうもなろう。詫びと言っては何だが、これを受け取ってほしい」

 

 

 そう言って赤衣さんは、懐から小さな宝石のようなものがついた首飾りを取り出した。

 おずおずと差し出した手に乗せられたそれをマシュと一緒にまじまじと見つめていると、赤衣さんが口を開いた。

 

 

「それは護石というものだ。素材と我々の時代の錬金術師がいれば、より上等なものを仕上げてくれたのだろうが、残念な事に、このカルデアにはそれが無い。素材はそれらしいものを使って、錬金は私が担当した。パラケルススに任せるのもいいかと思ったのだが、古代の技術をいきなり使えるとは思えなかったのでな」

「ちなみに素材は?」

「英雄の証、大騎士勲章20個ずつ」

「う゛……ッ!」

「先輩ッ!」

「安心したまえ。消費した分、私が後でしっかり確保してこよう。それぞれ十個ずつ追加でな」

「赤衣さん……ッ!」

「先輩……」

 

 

 数ある素材の中でも消耗する事が多い素材をそれぞれ20個ずつ使われたダメージを受けた立香だが、赤衣の一言でパァッと顔を輝かせる。そんな素材にがめつい主に、マシュは少し呆れた様子を見せていた。

 

 

「先程、それは護石と言ったが、あくまでそれは代用できるもので作り出した贋作(レプリカ)のようなもの。効力はなにかと聞かれれば、精々災いを跳ねのける程度のものでしかない。夢とはいえ、相手は“黒龍”。慰め程度にしかならぬものだが、持っておくに越した事はなかろう。今夜はそれを身に着けて眠るといい」

「ありがとう、赤衣さん」

「うむ。ではな」

 

 

 右手をひらひらと振って去っていく赤衣さんの背中を見送る。

 彼の言葉をそのまま受け取るなら、慰み程度のものとはいえ、この首飾りには災いを跳ねのける力があるという事になる。彼らにそういった意思はないとはいえ、古龍種はその場にいるだけで災害を引き起こしてしまう存在。しかし、“黒龍”は明確に一つの王国を狙い、そして滅ぼしたという事から、『人類にとっての災厄』という点においては合致している気がする。

 不安要素は少しあるが、一先ずは問題は解決したと考える事にし、予め設定されていたスケジュールをこなすべく、マシュと共に歩き出した。

 

 

 

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 結局、首飾りにこれといった異常性は見つからなかった。キャスタークラスのサーヴァント達からもこれといった悪影響はないと言われたが、何故か私は自分の首にかけたそれに言い知れぬ不安を感じながら寝支度を整え、ベッドに潜り込む。

 

 

(……あぁ、やっぱりいるんだなぁ)

 

 

 なんとなくだけど、いつの間にか自室に潜入していた溶岩水泳部の気配が感じられる。

 霊体化しているはずなのに、なぜか彼女達がいる事はわかってしまう。これまで、何度もこういった事があったからだろうか。

 この状況には最初こそ戸惑ったが、今となっては少し助かると思っている。長い事、死線を潜り抜けてきたから、最近は一人で眠ると悪夢を見るようになっていた。ゴッホちゃんのように、誰かと一緒に眠るのが最善の選択なのだろうが、そんな事をしてはカルデア内で戦争が起きてしまう以上、そう簡単に添い寝してもらう事は出来ない。この歳になって恥ずかしい、という気持ちも少なからずある。

 でも、添い寝ではなくとも、彼女達が見守ってくれているのは正直有難い。知り合いが傍にいる、というだけで、少しだけ悪夢を見る確率が減るからだ。

 

 今日のスケジュールが少しハードだったからか、睡魔はあっという間に私の下へやって来て、瞼を閉じていく。私はその誘惑に抗う事無く、眠りの世界へと飛び込んでいった。

 

 

「―――え?」

 

 

 気付けばそこは、燃え盛る都の中だった。

 辺りを見渡せば、真っ黒の灰と化した、かつて人であった者達。耳を澄まして、今もどこかで逃げ惑う人々の悲鳴。

 

 

(……ッ! あの夢と、同じッ!)

 

 

 前回見た夢と、全く同じ光景。それを再び目にした私の視線は、自ずと天空を見上げる。

 

 月明りも、星の瞬きも、あらゆる光を遮断する暗雲。

 光源は、今尚大地を燃やす紅蓮の炎のみ。その中でも一際大きな、辛うじて城と判別できる建造物の真上に―――

 

 

「グルアアアアァァァッッッ!!!」

 

 

 ―――黒き、厄災の姿があった。

 

 その巨躯を視界に入れた瞬間、生物としての本能が警笛を鳴らす。

 今すぐ逃げろ、と叫ぶ本能が、理性の殻を容易く砕いて肉体を動かす。

 

 いったいどうやって気付いたのか、走り出した私に注がれる殺意の視線。否応なく感じるそれの根源は徐々に近付いてきて、やがて、私の前に降り立った。

 

 

「うぅ―――ッ!」

 

 

 巨大な肉体が落ちてきた衝撃波に体が吹き飛ばされ、尻餅をつく。

 腰の痛みも忘れて視線を上にあげ、こちらを見下ろす黄金色の眼を見る。

 

 怒りに我を忘れているかのような、強烈な感情の奔流が、その眼を見ているだけでも痛い程伝わってくる。国を灼き尽くす程の憎悪の片鱗が、その眼光に乗せられて私へと注がれてくる。

 

 気を抜けば、このまま死んでしまいそうな程の殺意。これまでの戦いの中で何度も味わってきたそれとは格が違うそれを受けて、否応なく体が震える。

 

 しかし、それだけだ。このまま死ぬ事はないし、気を失ったりもしない。

 

 格が違うといえども、その殺意の視線は、この身が覚えている。

 圧倒的な恐怖に屈しそうになる心を奮い立たせ、石のように硬直した体を動かす。

 

 虚勢を張るように、私は屈しないぞ、と叫ぶように、ゆっくりと立ち上がった私を見た“黒龍”の眼が、僅かに揺らいだように見えた。

 だが、それも一瞬の事で、“黒龍”はその(あぎと)に灼熱の炎を溜め始め、私諸共この周囲一帯を吹き飛ばそうとしてくる。

 

 このままここにいても、あの焔で灼かれるだけだ。それでも、私は断固として背は向けず、黄金色の眼を睨み上げる。

 

 

「貴方なんか、怖くない……ッ!」

 

 

 いずれ、汎人類史奪還の障害となる敵を見据え、絞り出すように言葉を吐き出す。

 中国異聞帯では、人間態であるにも関わらずに、その強大な力を思い知らされた。北欧異聞帯では、彼の他にも“煌黒龍”がいた事から、彼以外の“禁忌のモンスター”も、アンナ・ディストローツのサーヴァントとして現界している可能性が大幅に上がった。

 

 ならば、いずれ我々(カルデア)は、最強の幻想種に挑戦するのだろう。ならば、たとえこの世界が、目覚めれば消える夢の世界だとしても―――

 

 

「貴方達には、絶対に負けない―――ッ!!」

 

 

 顋から解き放たれたドラゴンブレスが、私を灼き殺そうと迫る。

 瞬く間に眼前まで迫ってきたそれを、私がじっと睨みつけていると―――

 

 

「―――良くぞ吼えたッ! それでこそ、我がマスターだッ!!」

 

 

 眩い輝きを放った首飾りから半透明の障壁が張られ、ドラゴンブレスを相殺する。それと同時に、護石から飛び出した輝きは人の姿を取り、やがて赤色の衣を纏った青年となって降り立った。

 

 

「赤衣さんッ!? どうしてここに……」

「話は後だ。まずはこの“黒龍”を討伐するッ!」

「えッ!? 出来るのッ!?」

 

 

 赤衣さんの口から飛び出した言葉に、思わずそう訊ねてしまう。

 “黒龍”は古龍種の中の頂点に位置するモンスターだ。赤衣さんの力を侮っているわけではないが、彼一人でこの古龍を倒せるとは思えない。

 

 

「心配は無用だ。この“黒龍”は夢幻のもの。本物の足元にも及ばず、体力も良くてG級に届きそうで届かない上位のモンスターあたり。しかし、殺気だけは一丁前の劣化品だ。気を抜けば死ぬのは変わらんがなッ! ハハハハッ!」

「笑っとる場合かッ!」

 

 

 会話している私達に、“黒龍”がその胴体には不釣り合いなほど細い前足で攻撃してくる。

 それに気付いた赤衣さんは即座に私を抱えて離れると同時に右腕から伸ばした蔦で“黒龍”の顔面を攻撃した。その攻撃で、あの“黒龍”が僅かに身動ぎしたのを見て、先の赤衣さんの言葉が嘘ではない事を確信した。

 

 

「なに、倒せない相手ではないんだ。君の采配に期待している」

「もう……ッ! フォーリナー、戦闘開始ッ!」

了解だ(イエス)、マスターッ!」

 

 

 家屋を破壊させながら突進してくる“黒龍”を躱し、蔦を鞭のように振るって攻撃する。翼を狙って放たれたそれは、しかし翼膜を軽く傷つけただけで終わり、反撃とばかりに尻尾を叩きつけてくる。

 完全に赤衣さんをターゲットにしているのか、私の事など眼中になくなっている。私としては大助かりだ。こちらに狙いを定められる心配をしないで、サーヴァントに指示を出せるのだから。

 “黒龍”と交戦している赤衣さんの様子を逐一観察しながら、周囲を見渡す。

 周りは破壊された家屋の残骸が転がっており、その中には人間の死体も幾つか見受けられる。焼け爛れたそれに少し吐き気を覚えるが、それだけで済んでしまう自分が、本当に一般人からかけ離れてしまったのだと感じさせる。

 ……いや、今はそんな事を考えている場合ではない。他の所へ視線を寄越してみれば、“黒龍”が襲来した時に迎撃したのか、巨大な矢のようなものが目に入った。恐らく、あれがバリスタと呼ばれるものだろう。多少のヒビは入っているが、強度はそれほど心配する必要はなさそうだ。

 

 

「赤衣さんッ! あそこのバリスタを使ってッ!」

 

 

 放たれたブレスをバックステップで躱した赤衣さんは私の指示に従い、右手から伸ばした蔦をバリスタに巻きつける。“黒龍”が放つ隕石と見紛う火炎ブレスを跳躍して避けると同時に、バリスタを投擲。

 サーヴァントの膂力で投げ飛ばされたそれは、寸分違わずに“黒龍”の右目を穿った。

 

 

「ギャオオオオオオォォォォッ!!?」

 

 

 潰された右目から鮮血を撒き散らして絶叫する“黒龍”。その姿を見て、赤衣さんは「なんと情けない……」と呆気に取られていた。

 

 

「本物ならば、あの程度の攻撃など軽く弾き飛ばしていたであろうに……。こんなのでは、全力の三分の一にも満たないではないか。もっとやる気を出せ、“黒龍”ッ!」

「グルアアアアァァァッッ!!」

 

 

 大袈裟に両腕を広げて挑発した赤衣さんが癪に障ったのか、“黒龍”は無事な左目で私達を見据えると同時にブレスを吐こうとしてくる。

 口内より漏れる炎を見た赤衣さんの瞳がスッと細められ、すぐさま私を抱えて跳躍。同時に、“黒龍”から放たれた業炎が先程まで私達がいた場所を焼き払い、そこにあった瓦礫などを瞬く間に融解させていく。

 

 赤衣さんの脚力に助けられたお陰で炎に包まれなくて済んだが、それでも全身に襲い来る熱気は私の肌を焼き、火傷でもしてしまったかのような感覚に襲われる。赤衣さんに抱えられてはいるが、生物としての本能か、着地するまでは唯一の安全を保障してくれる彼の体にしがみつき、やがて彼が全く衝撃を感じさせずに着地したのを確認してから、彼の腕から降りる。

 

 

「あれが……全力じゃない?」

「無論、そうだとも。あれくらいの事、“黒龍”にとっては造作も無い事だ。あの偽物にとっては全力だろうがな」

 

 

 二~三百メートルは優に超える距離を焼き尽くした“黒龍”が、忌々し気に私達を睨みつける。

 避けられた事に激怒しているのか、唸り声を上げている彼の姿に、私は無意識的に、自分の思い通りにならずに癇癪を起す子どものようだ、と思ってしまった。

 北欧異聞帯や中国異聞帯で目にした本物の彼は、今目にしている彼より落ち着き払っており、いざ戦闘となれば隙を見せた瞬間に攻撃を仕掛けてくる、静かだが苛烈な戦闘スタイルだったと記憶している。彼ならば、私達が滞空している間か、着地した隙を狙って追撃してきたはずだ。やはり、あれは本当に、彼であって彼ではないのだろう。シャドウ・サーヴァントに近い存在なのかもしれない。

 

 なにはともあれ、力量は計れた。確かに強大な力ではあるものの、その使用者がそれを十全に振るう力量を持たない事は、これで理解できた。

 今回の戦闘で第一に気を付ける事は、あの焔の直撃を貰わない事。一割とはいえ、あの攻撃を受けてしまっては赤衣さんも重傷は免れられない。尻尾による殴打や爪による攻撃も、範囲こそブレスには及ばないが用心に越した事はない。

 

 それに、これはいい機会でもある。

 “黒龍”の伝説は、お世辞にも多いとは言えない。辛うじて残されている彼に関する物語といえば、“黒龍伝説”や“モンスターハンター”の一章しかないのだ。それも、かなり大袈裟に描かれていたり、ざっくりとした描写が多かったので、戦闘能力についての知識を得る事はあまり期待できなかった。

 伝説や伝記などであるあるなのが、強大な敵と戦った際の描写は、かなりアバウトに描かれている事だ。大抵、「苦戦はしたがここをこうして倒した」という文章で終わってしまう。細かい描写をするよりも、これがどのような物語なのかを読者に伝える以上、仕方ない事なのだが。

 ……話が逸れた。

 私がこれをいい機会だと捉えたのは、(気を抜けば死ぬが)“黒龍”との摸擬戦が出来るという事だ。

 本物には遠く及ばないにしても、“黒龍”は“黒龍”。今回の戦いを通して、彼との戦いにおけるアドバンテージとなるなにかを得られるかもしれない。

 

 

「戦闘を続行する。頼んだよ、赤衣さん」

「ハ、もちろんだともッ!」

 

 

 不敵な笑みを以て答えた赤衣さんが“黒龍”へ接近する。すぐに巨大な顋から火球が吐き出されるも、赤衣さんがパチンッと指を鳴らせば、彼によって召喚されたタコ型の異形―――赤衣さん曰く、『落とし子』と言われる、使い魔に似た存在がそれを阻む。直撃したにも関わらずに、軽い火傷を負う程度で済ませた耐久力を誇る落とし子を踏み台にして跳躍した赤衣さんが右手を掲げれば、黄金色の風によって生成された幾本の槍が“黒龍”へと殺到する。

 “黒龍”はそれを薙ぎ払うようにブレスを吐く事で相殺するが、その際に懐へ潜り込んだ異形による打撃が炸裂。大きく仰け反った“黒龍”は二足歩行を維持できずに前足を地面につけた。

 赤衣さんがさらなる追撃に出かけるが、しかし“黒龍”はそれを読んでいたかのように自分の体を固定させるように翼を地面につけ、口内に炎を溜め始める。

 

 

「予測回避ッ!」

 

 

 放たれた業炎が赤衣さんを呑み込もうとした直前、私はすぐに礼装に仕込まれた魔術の一つを発動。一瞬だが、赤衣さんが残像を作り出す速度で動き、“黒龍”の攻撃を回避した。

 感謝の言葉を述べる赤衣さんに頷き、次の支援の機会を窺う。

 お世辞にも、私の魔力は魔術師としては半人前にも程遠いものだ。こうして礼装の力を借りなければ単純な魔術行使すら出来ない。だからこそ、サーヴァント達は私に状況判断の術を叩き込んだ。

 最適な場面において、その礼装に合った最適な魔術を行使する。今着ている極地用カルデア制服以外にも、これまでの旅の経験を基に構築された礼装を使い分けて戦う以上、その使い方は多岐に及ぶが、全ては世界を救う為。サボタージュなんて出来るわけがない。

 

 赤い弾丸が疾駆する。

 驚異的なスピードで“黒龍”に肉薄した赤衣さんのサマーソルトキックが、人一人ならば簡単に喰らえるであろう大きさのアギトを真下からかち上げた。黄金の風を纏った一撃を受けた“黒龍”が天を仰ぐも、すぐに態勢を立て直して赤衣さんを薙ぎ払った。

 

 

「むぅ―――ッ!」

 

 

 咄嗟に落とし子を呼び寄せてガードさせたものの、“黒龍”の膂力が使い魔越しに伝わってきた赤衣さんはそのまま使い魔ごと吹き飛ばされ、家屋に突っ込む。

 

 

「赤衣さんッ!」

「なに……この程度の傷、気にする程ではない」

 

 

 落とし子に瓦礫を吹き飛ばさせて現れ、自分と使い魔についた埃を払う赤衣さん。多少ダメージは受けているようだが、戦闘に支障は無さそうだ。

 “黒龍”が彼らに向かってなにかを溜めるような素振りを見せ始める。それに危機感を覚えた私は、すぐさま彼らにその事を伝えると、彼らも“黒龍”の動作に気付いたのか左右に分かれて動き出す。

 瞬間、“黒龍”の顋から放たれた火炎放射が、赤衣さんと落とし子へと放たれる。

 俊敏に動いているにも関わらず、まるでスナイパーの如き命中精度で寸分違わずに彼らを灼こうとしたそれを、赤衣さんは片手を持ち上げて発生させた魔力の障壁で防いだ。落とし子も防御態勢を取っていたのか、軽く吹き飛ばされた程度で済ませていた。

 

 

「花の邪神の力を代用してみたものだが……ううむ、あまり使い勝手はよくなさそうだ。障壁を維持する為に魔力をかなり持っていかれる」

「大丈夫?」

「なに。少し疲れたが、気にしている場合ではない。だが、これ以上長引かせるのは、私と君にとって酷になるだろう。そろそろトドメと洒落込むべきだと思うが、どうかな?」

「うん。一通り見る事は出来たしね」

 

 

 維持に必要な魔力を断った影響で、ガラスの如く割れて破壊された障壁から掌に視線を落とした赤衣さんの提案に頷く。

 視線を動かせば、“黒龍”は次の攻撃に移ろうとしているのか、その雄々しい翼を羽ばたかせて飛翔している。

 私は赤衣さんを見て、彼が頷いたのを確認してから右手を掲げる。

 

 

「令呪を以て命ずる。フォーリナー、宝具を解放し、“黒龍”を討伐せよッ!」

「その言葉を待っていたッ! さぁ、諸君、今こそ夢幻の邪龍を滅ぼそうではないかッ!」

 

 

 私の右手に刻まれた三画の内の一画が消えると同時、狂気に染まり切った笑みと共に叫んだ赤衣さんの周りにある空間が歪み、そこから無数の異形の怪物が現れる。

 

 

「偽りの神秘よ、(まこと)の神秘を砕き、蹂躙せよッ! ―――『今こそ吼えろ、名付けられざりし伝説(The Immortal Dragon Weapon)』ッ!!」

 

 

 異形の竜種―――竜機兵の集団による殺戮が開始される。

 上空から、この地獄を創り出したであろう劫炎を放った“黒龍”に殺到した竜機兵達は、自らの身が焔に灼かれるにも関わらずに、それぞれの身に備え付けられた武器となる部位を使って攻撃を仕掛ける。

 “黒龍”は竜の亡者達の攻撃から逃れようとするが、十を超える数の竜機兵の追撃を躱し切る事は出来ず、赤黒いブレスを受けて怯んだ隙を突かれた事で、矢継ぎ早に他の竜機兵達による追撃を喰らう。

 獰猛な、しかしどこか哀し気な咆哮を上げる異形の怪物達の群れから落ちた“黒龍”は、やがてその身を魔力の粒子と化して姿を消すのだった―――。

 

 

「夢幻の“黒龍”、ここに墜つ―――だな」

 

 

 光となって消滅していく“黒龍”を見届けた赤衣さんがそう呟いた直後、周囲の景色が、まるで映像を早送りするかのように変化し始める。

 

 亡骸や瓦礫が散乱していた地面は、高級そうな絨毯が敷かれた大理石の床に。

 辛うじて形を保っていた家屋は、たくさんの書物が詰められた本棚に。

 そして、あらゆる光を遮断していた暗雲は、シャンデリアが釣り下がる天井に。

 

 絶望と悲劇に染まっていた地獄は、あっという間に一つの書斎へと様変わりした。

 

 

「これは……」

「本来の私の心象風景だ。私の内に在った“黒龍”の幻影を打ち破ったお陰で、元の姿を取り戻したのだろう」

 

 

 幾冊も積み上げられた本の塔の頂上から一冊手に取った赤衣さんは、そのまま椅子に腰を下ろしてパラパラとページを捲り始める。

 なんとなしに近くの本棚に歩み寄り、綺麗に整頓された本の列を指でなぞっていく。

 

 『Fate/Zero』、『Fate/stay night』、『Fate/hollow ataraxia』―――見た事も、聞いた事のない物語だ。気になってその内の一冊を取ってページを開いてみるも、なぜか文字はぼやけて見えない。

 首を傾げて他の本を取って読んでみれば、こちらは日本語だったり英語だったり中国語だったりと、あらゆる言語がごちゃ混ぜになって滅茶苦茶な文章になっていた。

 

 

「君にその物語は認識できない。君はまだ、終点に辿り着いていないからな」

「え?」

こちら側( ・ ・ ・ ・ )とは違う分岐を辿った世界の全貌だ。君がそれを認識できるようになるとしたら、君がきちんとした終幕(エンドロール)を迎えた後だろう。それまでは、それはただの謎の文章でしかないわけだ」

 

 

 よくわからない……。けれど、今の私にはこの本棚に詰められた本の内容を知る事は出来ないという事はわかった。

 

 

「すまなかった、立香」

 

 

 大人しく本を元あった場所に戻した時、赤衣さんがいきなり謝罪してきた。

 どうしたのか、と訊ねると、赤衣さんはこう答えた。

 

 

「あの障害は、何時の日か私が単独で解決すべきものだった。不可抗力とはいえ、君に協力してもらう形になってしまった事を謝りたくてね」

「いいよ、別に。こういった事、初めてってわけじゃないからね」

 

 

 眠っている間に、契約したサーヴァントの誰かと夢の中で冒険した経験は何度かある。最早私は、こういった事にも慣れてしまっていたのだ。

 私の返答に「そうか」と小さく返した赤衣さんは、パタンと本を閉じて私の前まで来る。

 

 

「今回の戦闘の件だが、何度も言ったように、あの“黒龍”は夢幻―――偽物に過ぎない。攻撃手段は同じだが、それ以外は本物と比べるまでもない程貧弱な存在だ。君がこれから先も戦い続けるのなら、いずれ本物の“黒龍”はおろか、その他の“禁忌”とも衝突する事になるだろう。君はこの試練を、乗り越えられるか?」

 

 

 なにを訊いているのか。そんなもの、答えはとうに決まっている。

 

 

「乗り越えるよ。どれだけ強大な敵でも、私の―――私達の歴史を取り戻す為なら」

「……ハッ、それでこそ、我が主だ」

 

 

 小さく笑った赤衣さんが、片膝をついて(こうべ)を取れる。仕えるべき王への敬意を体現したようなポーズのまま、真紅の降臨者は言葉を紡ぐ。

 

 

「サーヴァント・フォーリナー、真名、赤衣の男。改めて汝、藤丸立香に忠誠を誓おう。この身の全て、魔力の一片にまで至るまで、全てを御身に捧げよう。貴女が、奪われた歴史(せかい)を取り戻す、その時まで」

「……ありがとう、赤衣さん。これから、よろしくね」

 

 

 立ち上がった赤衣さんと、握手を交わす。

 降臨者の器を以て顕現した英霊。狂気を呑み干す狂気を身に宿しながらも、私なんかの為に召喚に応じてくれた彼。

 彼の期待に応える為にも、負けるわけにはいかない―――と、私は心に誓うのだった。

 

 

 

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「む……」

「どうしたの? ボレアス」

 

 

 なにかに気付いたように声を漏らした(ボレアス)に、空の玉座に座っていた(アンナ)が首を傾げる。

 

 

「どうやら、あの男の内にあった私が斃されたようだ。あの少女―――藤丸立香の力を借りたらしい」

「へぇ。という事は、彼もカルデアに召喚されたって事かぁ。クラスはキャスター……いや、フォーリナーだね、うん」

 

 

 最初に浮かんだクラス名を否定し、即座に彼にとって適当であるはずのクラス名を口にする。

 異邦の力を使役するとはいえ、かつて在った超古代の時代を生きた青年が召喚された事実に歓喜するが、ボレアスが彼に関してなにか良くない感情を抱いているのを感じ、アンナはこてんと首を傾げて問いかける。

 

 

「なにか気になる事でもあるの? 彼―――赤衣に関して」

「…………竜機兵」

 

 

 瞬間、彼らがいる部屋の壁に亀裂が入った。

 玉座に座る女性の身から放たれる凄まじい殺気と怒気は、強烈な突風となって狂戦士の髪の毛を乱れさせ、外から雷鳴が轟く音が聞こえ始める。

 

 

「―――なんて、言ったの?」

「奴は、我らの同胞を兵器として蘇らせた。私達が―――貴女が眠らせた彼らの魂を、再び呼び覚ましたのだ」

「そう……。嗚呼、一瞬でも彼の登場に歓喜した自分が憎い……ッ!」

 

 

 持ち上げられた掌に、緋色の雷が満ちる。

 それを握り潰すようにすれば、弾けた稲妻が周囲に飛散し、薄暗い王室を紅く照らした。

 

 

「決めたわ。今度私達の前にあいつが現れたら、絶対に殺す。二度と召喚されないぐらい、殺し尽くす。あぁ……まだ全力を出せないのが口惜しい。全力さえ出せれば、あいつを座からも消す事が出来るのに……」

 

 

 忌々し気に白銀の髪の毛を掻き毟ったアンナだが、やがて体内で暴れ狂う感情の嵐を鎮めるように何度も深呼吸を繰り返し、なんとか気持ちを落ち着かせた。

 

 

「……まぁ、いいわ。消せないのなら、召喚されたくないと思うくらいにトラウマを植え付けるだけ。徹底的に甚振って、蹂躙して、精神を破壊する―――絶対的な恐怖を霊核に刻み込んでやるわ」

 

 

 ぶつぶつと物騒な事を呟くアンナだが、ここには弟がいる事に気付いて「……ごめんなさい」と謝罪する。

 

 

「構わない。貴女がそうなるのも無理はない事だ。かく言う私も、貴女と同じ気持ちでいた」

「そう……。……()の様子は?」

「バルカンに監視させている。今は地下で眠っているそうだ」

 

 

 すぐに話題を切り替えるアンナに、ボレアスは特になにも思わずに返答する。

 もうこれ以上、赤衣の男について考えたくないのだろう。あの兵器を使った事が判明した時点で、彼の名はアンナ達が排除すべきブラックリストに載った。いずれ、なにかしらの形でツケを払わされる事になるだろう。

 それよりも、今は()の状況を把握した方がいいだろう。

 

 

「寝ているって事は、馴染ませているんだろうね。いきなり全力で戦ったんだもの。休息と同時に、魂を上手く統合させている途中ってところかな」

 

 

 初めに彼―――彼らの存在に気付いたのは、今から数カ月前だ。懐かしい気配を感じた後、虞美人のサーヴァントである蘭陵王からの報告で、その存在を知った。

 良くて幻霊止まりだったはずの彼が、現代を生きる青年の器を使ってデミ・サーヴァントとして現界した。恐らく、抑止力の差し金だろう。そこまでして、この異聞帯を滅ぼしたいらしい。

 しかし、一つの肉体に二つの魂を同居させるのは難しい。二つの魂を織り交ぜて新たな人格を形成するのか、それともどちらかが肉体の主導権を獲得し、状況に応じて使い分けられるようにするのか。どちらにせよ、アンナはこれを良い機会だと考えた。

 経緯はどうあれ、この異聞帯から英雄に成り得るものが誕生したのだ。目覚めた彼らがどのような行動に出るのか、楽しみで仕方がない。

 また、彼の現界に際してか、“王”の目覚めも近くなっているのを感じる。

 もう少しで、この異聞帯に一つの命が誕生するだろう。その時、この歴史(せかい)は、いったいどのような変化を迎えるのだろうか。

 

 

「楽しみね、ボレアス」

 

 

 にこやかに笑う主に、サーヴァントは「あぁ」と頷くのだった。

 

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