【更新停止中】緋雷ノ玉座   作:seven74

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 今日からモンハンライズの新バージョンアップですね。自分は今日忙しくてラスボスまで辿り着けていないのですが、エンディングを迎えるのであれば、前から書きたいと思っていた平安京編も問題なく書けそうですッ!

 アンナちゃん、線画が仕上がったので次は色塗りですッ! 早く出来上がれば次回載せたいと思っていますッ!
 そして申し訳ないのですが、ここからしばらくは主人公の出番ナシですッ! 理由は完全にカルデアメインになるからッ!

 それでは、本編開始ですッ!


真紅の降臨者

 

 鼻歌交じりに通路を歩く。

 

 紫色の長髪を靡かせながら歩く少女の名は、BB。『異星の神』によって人理が漂白される前、いつの間にか己の分身たる二騎のアルターエゴと共にカルデアにやって来ていた彼女は、かつていた世界にあったものと全く同じになるようデザインしたマイルームに入る。

 

 どこを見ても桜色なスタジオ(マイルーム)で、先程食堂で食べたパフェの味を思い出す。あの錬鉄の英雄によって作り出されたそれは、これまで食べてきたスイーツの中でも格別のものだった。機会さえあれば、明日もまた食べてみたいものだ。

 

 

「……?」

 

 

 と、その時。ふと机の上に見慣れぬものがある事に気づき、そちらへ歩を進める。遠くから見てもなんとなくわかっていたが、どうやら書き置きのようだ。

 

 これは少しおかしい。自分になにか用があるのであれば、直接自分に言いに来る者がほとんどだ。どうしても自分が見つからなかったならばこういう風に書き置きを置く事もあるかもしれないが、サーヴァント達から誰かが自分を探しているという話は聞いていない。

 

 もしかして、恋を見つけた分身(メルトリリス)からの手紙? 私と仲良くしたい、と? いやいやまさか。彼女にとって、そんな事を告げてくるなんてまず有り得ない。言ってきたとしたら自分は真っ先に彼女が偽物かと疑う。

 

 となると、もしや新たな事件(イベント)の幕開けだろうか。まだ内容は確認していないが、もしこれが差出人不明の書き置きだった場合、その可能性はある。

 

 いったいなにが書かれているのだろう。そう思いながら、BBはその書き置きを手に取った。

 

 

「……なんですか、これ……」

 

 

 そして、そこに記されていた内容に、思わず目を見開く。

 

 書き置きの内容はとても理解し難いものだ。この場所にいる英霊達に『この話は信じるに値するか』と問いかければ、微かな危機感を感じこそすれども、本心から信じる者はまずいないだろう。

 

 だが、この書き置きに記された内容は、如何なBBとて無視できるようなものではなかった。

 

 自分も、ある霊基では彼方の神性と繋がった身。ここより遥か遠い異境に存在するそれ(・・)が、如何にこの星……地球の生命体にとって害ある存在かはとうの昔に理解している。

 

 

「はぁ、まったく。誰かはわかりませんが、こんなに面白い事、もっと早く教えてくださいよ」

 

 

 ぶつくさ言いながらも、BBは早速準備に取り掛かり始める。

 

 別に自分は人類の味方というわけではない。どこまでも腹黒く、百善に一毒を混ぜて腐らせる事を至上とする、ただの小悪魔後輩系美少女AIである。

 

 それでも、今回ばかりはカルデアを助けてやろう。こんなに面白い事を教えてくれた、正体不明の何者かへの返礼も込めて。

 

 

「……それにしても」

 

 

 書き置きの最後に記された文字の羅列に目を細める。

 

 

「この名前、どこかで聞いた覚えがありますが……まぁ、気の所為でしょう」

 

 

 書き置きを机の上に置き、BBは空中に幾つかのホログラムを出現させ、いつになく真剣な表情でそこに表示された文字や数字を見つめ、不安点があればすぐにそこを補強し始める。

 

 机に置かれた書き置き。月のAIに対する頼み事が書かれたその紙の最後には、クエスチョンマークを三つ合わせたようなマークと共に、このような文字が書いてあった。

 

Him Who Is Not to be Named(名付けられざりし者)』、と。

 

 

 

 Now Loading...

 

 

 

「……さて、形式的手続きは済んだけど、ここからは実務だ。司令代理にはノーチラス各部の現状を一通り見てもらう。その後はブリーフィング。実数空間への浮上までのプロセスを、訓練プログラムに沿って確認してもらう。後は海中戦のシミュレーター訓練。僕もこれには参加する。結構ハードだと思うけど、美味しい夕食の為にも頑張ってほしい」

 

 

 現実の裏側。物理法則の通じぬ世界の海。そこを漂う潜水艦に一人の少年の声が響く。

 

 白いターバンを頭に巻き、近代の軍服に身を包んだ彼の名は、ネモ。シオン・エルトラム・ソカリスによって召喚された、『海底二万里』に登場する潜水艇ノーチラス号の船長“ネモ”であるダカール王子に、ギリシャ神話の海の神トリトンを掛け合わせて誕生した、幻霊と神霊の複合サーヴァントである。

 

 インド異聞帯を攻略する最中、ネモの霊基は、宝具『我は征く、大衝角の鸚鵡貝(グレートラム・ノーチラス)』の常時展開を可能とした。潜水艦という概念そのものが認知されていなかった時代に誕生した夢の箱舟は、遂に現実のものとなったのである。

 

 次に挑む異聞帯が、その大半が海で構成されている大西洋異聞帯である事から、彼の進化は大きな助けになる。

 

 しかし、だからといってすぐ攻略に向かえるわけではない。

 

 大西洋異聞帯攻略作戦に必要な装備や設備は未だ整っていない。今はカルデアスタッフ全員が開発の追い込みをかけているので、その間に立香達は、ネモと数騎のサーヴァントだけでノーチラスのテスト航行を行う事となった。

 

 虚数空間への潜航を含む、多数のプログラムを盛り込んだ、中々に過酷な訓練だ。これまで頼りにしてきたホームズやダ・ヴィンチは、今回の訓練に参加するサーヴァントの中にはいないため、彼らの助言は得られない。常にノウム・カルデアからこちらの状況を逐一報告してくれているシオンも同じだ。

 

 仲間達の中でも最も頼れるメンバーの上位が漏れなく除外されている状況に不安を覚える立香であるが、そう我儘を言えるようなものでもない。これは訓練ではあるが、これから先の戦いの中で、彼らの内の誰かを喪う事になるかもしれないのだ。もしかしたら、最後の戦いには彼ら全員がいない場合もあるかもしれない。

 

 そうなった時の為にも、立香はこの訓練で司令官としてのスキルを磨く事を決めた。それは彼女の正式サーヴァントであるマシュも同様である。

 

 訓練の大まかな流れは、先程ネモが言った通りだ。言葉だけであれば簡単そうにも思えるが、どれもこれもが司令官として身に着けるべき重要なスキルである。改めて自分に喝を入れて取り組もうと思った矢先、ノーチラスのエコースキャナーが警報を告げてきた。

 

 虚数空間云々はともかく、これにいち早く危機感を抱いたのは刑部姫だ。玉藻の前からキャラ被りだとされて泣く泣く蝙蝠姫としての能力を会得した状態で現界している彼女にとって、音を使って視認できない地形を走査するエコースキャナーは馴染み深いものである。

 

 虚数とはいえ、現在自分達がいるのは海中。そこでエコースキャナーに引っかかるものがあるとわかれば、後は誰でも理解できる。

 

 あり得ない話だが、この虚海には地形があるようだ(・・・・・・・・)

 

 しかし、ネモはこれをすぐに否定した。虚数空間というものの性質上、そんなものが存在するはずはないのだから。

 

 イマイチその言葉の意味が理解できていない立香達に、すかさず同行サーヴァントの一騎のスカサハ=スカディが説明する。

 

 ギリシャ神話の始まりに混沌(カオス)があるように、世界各地の伝承、宗教の中には最初に『原初の混沌』を定義するものが多い。天地も、寒暖も、善も悪も関係なく、全てが一つの存在であるが故に、混沌は『万能』の名を冠する。虚数空間とは、それとは似て非なる『万能』を有する空間の事だ。立香達が暮らす表層世界とは全く異なる摂理で存在するからこそ、表層の常識というものがまず通用しない。故にこその世界の裏側、観測不能域。既存の物理法則では垣間見る事すら不可能な魔境。それこそが虚数空間。ありとあらゆる全ての可能性を仮定できる、文字通り無限の世界なのである。

 

 その世界で、エコースキャナーが反応した。その事実に、立香は言い知れぬ不安を感じた。

 

 

「……副代理指令、そして船長。艦を停止させよう」

「……さっきの話を聞いてたかい、マスター。虚数空間に障害物なんてない。間違いなく、スキャナーの故障だ。ネモ・シリーズも全員一致で故障と判断してる。むしろ、君がバーサーカーに振り回される点に心配を―――」

「それでも、止めて」

 

 

 言い聞かせるようにエコースキャナーが故障したという事実を認めさせようとするネモだが、立香の瞳を見て口を止める。これまで数多くの試練を潜り抜けてきた歴戦のマスターである彼女の瞳には、この異常事態に対する危機感が宿っていた。その視線に射抜かれたネモは、しばし黙って熟考した後、改めて口を開いた。

 

 

「……わかった。司令官命令として認める。機関部、逆回転を。緊急制動だ」

『チッ、なんにもねぇのに急停止かよッ! トリトンホイール逆回転ッ!』

『はーい、りょーかーいッ!』

 

 

 悪態を吐きながらも大元の指示を承認したネモ・シリーズの一人、ネモ・エンジンの掛け声に、同じくネモ・シリーズに分類されるネモ・マリーンが意気揚々と答えた。しかし次の瞬間、ノーチラス全体に巨大な衝撃が走った。

 

 

「ごん゛どばな゛に゛い゛い゛い゛ッ!?」

「―――ッ。キャプテンッ! 潜水艦の緊急制動とは、こんなにも凄まじいものですかッ!?」

「違うッ! これは……座礁だッ!」

 

 

 まさか、本当に地形があるとは思わなかったネモが驚愕するも、すぐに意識を切り替えて立香達に指示を飛ばす。

 

 

「各員、全力を尽くして耐えるッ! ネモ・シリーズは可能になり次第、報告と対応をッ!」

『こちら機関室ッ! 衝撃で何人かノビてるッ! どこの馬鹿だよ、虚数の海に暗礁なんて置いたのッ!』

『こちら医務室、稼働に支障ありません。怪我人がいたら即応しますので、即コールを』

『こちら観測室ッ! 外側にでっかい亀裂ッ! 虹が……って、えぇッ!?』

「どうしたッ! 観測室ッ! 報告しろッ!」

 

 

 機関室、医務室より報告が挙がる中、観測室にいるネモ・マリーンが報告中に素っ頓狂な声を上げた。なにがあったのかと報告を急かすネモに、続けて電算室にいるネモ・プロフェッサーからの報告が入る。

 

 

『え~、こちら電算室~。障害物が耐圧殻を貫通して中までめり込んできました。危うく下敷きになりかけるところでしたが、なんか変な生物に助けられました。あっという間に目を塞がれてしまったので、外見的特徴はわかりませんが、このヌメヌメする感触から察するに、恐らくタコに近いものかと~』

「タコに近いもの……? まさか、虚数空間に生物が?」

「え? マジ? 虚数空間にも生物っているの? もしや(わたし)達、想定外の偉業を成し遂げちゃった?」

『フハハハハハッ!』

 

 

 ネモ・プロフェッサーの報告に目を見開いているネモ達の鼓膜を、聞き慣れない笑い声が通信越しに振動させる。

 

 

『分身が心配か、キャプテン・ネモッ! だが安心するがいいッ! 彼らはたった今ッ! 私と我が眷属が救い出したッ!』

 

 

 威勢のいい、張りのある声が司令室に響いた時、立香達の背後にある、通路に繋がる扉がスライドした。

 

 植物で構成されていると推測できる右腕でネモ・マリーンを抱えているのは、赤い外套を羽織った男性だった。今回の訓練メンバーはおろか、カルデアにも属さない、正体不明の人物。辛うじてわかるのは、彼がサーヴァントだという事だ。

 

 

「プロフェッサーとやらは安心するがいい。我が眷属が助けたのでな。今は一人でこちらに向かっているだろう。おっと、そんな事を話している場合ではないな。キャプテン・ネモッ! すぐに衝撃を受けた観測室と電算室の隔壁を閉じたまえッ! 虚数が浸水してくるぞ(・・・・・・・・・・)ッ!」

「な……ッ!?」

 

 

 謎の人物から告げられた情報に、再び驚愕するネモ。実態を持たないはずの虚数が浸水してくるという異常事態を前に、すぐさま行動を開始する。

 

 

「船底4区画から6区画を封鎖ッ! 各員、区画閉鎖後溶接と観測遮断結界、障壁展開ッ!」

『ヨーソローッ!』

 

 

 すぐにネモ・シリーズが了解の意を示す掛け声を挙げ、モニターに表示されているノーチラスの構造データに、4区画から6区画の隔壁が封鎖され始めた事を告げる文字列が表示された。

 

 

「……お、終わった?」

「うむ。まさかの非常事態ではあったが、一先ずなんとかなったようだ」

「よ、良かったぁ~……ッ!」

 

 

 誰にも予測できなかった事態に見舞われたが、なんとか誰一人欠けずに済んだという事実に刑部姫がへなへなと崩れ落ちた。誰もが彼女の気持ちに共感するが、ただ一人、ネモだけは苦い表情で顎に手を当てていた。

 

 

「虚数の浸水……。まさか、虚数の観測が収束している……? そんなの有り得るものか。個々によって認識が異なる世界だぞ? いったいどうして……」

「それについては私が説明します~」

 

 

 ぶつぶつと呟きながら思考を回転させているネモに、扉を開けて入ってきたプロフェッサーが声をかける。

 

 

「恐らくキャプテンの考えている通り、今の虚数空間は観測可能になっているんでしょう」

「……ごめん、どういう事?」

「虚数空間とは普通、個人個人が別々のものを認識するものなんですよ。先程まで見えていた、あの虹の渦。あれ、実はマスターやマシュさん、そして私達と、各々によって違う見え方をしてるんです。辛うじて脳がそう見せている、と思ってください。故に虚数存在(エンティティ)の観測不能性は保たれ、実数と虚数の不可侵性は絶対である、はずなのですが……」

 

 

 もし何者かによって虚数空間の性質が変化し、誰もが同じ虹の渦を認識可能になったとしたら? その原因が誰にあるのかはいまはまだわからない。しかし、本来認識し合うはずのない実数(こちら)虚数(あちら)が互いに認識してしまったらどうなってしまうのか。

 

 結果は至極簡単。発狂す(バグ)るのだ。何万年とかけて培ってきた『人』としての情報処理能力。知覚、認知、世界との繋がり全てが狂ってしまうのである。

 

 世界認識、或いは世界そのものの根底が破壊される……正しく、『破滅』と呼称するのに相応しい状態となる。

 

 だからもう、外の光は見てはならない。触れてはいけない。浸水させてはいけない。虚数空間の安全性は、最早観測不能性では担保されない。只今を以て、虚数空間は実数世界の深海と同じ、一度出れば死亡は確実な、死の世界となったのである。

 

 

「想像上の観測不能域なんて、この世の終わりまで最恐の魔境(フロンティア)に決まってるッ! それでもここは最高に安全なはずだったッ! 潜水艦乗りの最悪の敵、岩礁が無いってだけでねッ! しかし実態はこれだッ! せめて防御障壁だけでも開発を前倒しして艤装しておくべきだった……ッ!」

艦橋(ブリッジ)、全隔壁の完全封鎖を完了したぜッ! 艦体も完全停止を確認ッ! 次はそっちの仕事ッ!』

「……ッ! そうだ、まずは低速浮上の準備を―――」

 

 

 そこまで言いかけたところで、再びノーチラスが大きく振動した。

 

 

「驚き通り越してなんかもー笑えてきたあああーッ!」

「これはっ……まさか、攻撃ッ!?」

『副司令代理せーかいッ! 3-2-3より左舷耐圧殻に対し断続的な攻撃ありッ! 宝具ランク……C相当だよッ!』

「カルデアの方々ですと、森君の『人間無骨』、金時さんの『黄金衝撃(ゴールデンスパーク)』などが含まれるランクですッ!」

「そう聞くと超ヤバそうッ! キャプテンッ! ノーチラスは……」

「大丈夫って言えば大丈夫なんだろうけど……あぁもうッ! なんで虚数空間にこっちに攻撃を仕掛けてくる奴がいるんだッ! もう一つ言えば、迎撃手段がもうないんだッ! 艦体底部の切り離しは雷装の全損を意味するッ! そもそも虚数空間での雷撃なんてどうやるんだッ!? 虚数空間での戦闘なんて最初から想定外なんだよッ!」

 

 

 この艦についての情報を最も知り得ているのは、その化身であるネモである。その彼が迎撃手段が無い、と叫び、立香は雷に打たれたような感覚に襲われる。

 

 正体は摑めないが、こちらに敵対的な存在がこの世界にいる事は明白。攻撃されたからには反撃しなければならないが、その肝心な攻撃手段が無い。いったいどうすれば、と考えていた、その時―――

 

 

「……ッ! そうだ……あれ( ・ ・ )を使えば……ッ!」

 

 

 なにかを思い出したのか、ネモは司令室の片隅に置いてあった箱を開け、その中にあるものを取り出す。

 

 ネモの手元にあるのは、ダ・ヴィンチがマシュ専用にデザインし、霊衣に調整した水着だった。

 

 

「キャプテン? そ、それは……」

「お月様からのお助けアイテムだそうだよ。僕も半信半疑で受け取ったんだけど、どうやら彼女の言葉に嘘はなかったみたいだ」

「よしよし。あの娘、しっかりと私の言葉通りに行動してくれたな」

「……もしかして、彼女にこれを発注したのは君なの?」

 

 

 水着と青年の顔を交互に見るネモに、青年は「その通りだともッ!」と三日月のように口元を歪めて答えてみせた。

 

 

「さぁ、迷っている暇は無いぞッ! 今すぐここで脱衣(キャストオフ)、そして装着(プットオン)だッ! 藤丸立香ッ!」

「え、あ、はいッ!」

 

 

 言われるがままに、立香はマシュに手を向ける。その手には、彼女をマスターたらしめる三画の赤い紋章が。

 

 

「せ、先輩ッ!? やるんですかッ!? 今、ここでッ!?」

「ごめん、一瞬で早着替え&光のカーテン作るからッ!」

 

 

 令呪が輝き、周囲一帯を赤い輝きが埋め尽くす。それが収まった頃には、立香達の前には水着姿のマシュがいた。

 

 

「な、なにか釈然としませんが着替え完了です、マスターッ! しかし、これでいったいなにが……。……」

「……マシュ?」

 

 

 突然黙り込んだ相棒に立香が恐る恐る声をかける。

 

 

「……海が。海が、呼んでいますッ! キャプテン、艦外作業用エアロックの使用許可をッ!」

「ま、まさか……」

「水着霊衣の能力(チート)でしょうか、この海( ・ ・ ・ )でも問題なく行動できそうな気がするんですッ! だから、私が外で攻撃を防ぎ切りますッ! シールダー、マシュ・キリエライトにお任せくださいッ!」

「……わかったッ! マリーンズ、訊いていたなッ!」

『はいは~いッ! すぐに準備するよッ!』

「では、私も同行するとしよう」

「君も? でも、君は……」

 

 

 同行を申し出た青年は、水着とは程遠い服装をしている。マシュがこの虚数の海で行動できるようになった理由は、水着霊衣を装備したからだろう。では、彼の場合はどうやって行動するというのか。

 

 

私はこのままでいい( ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ )。私は()から狂っているのでね。この程度の狂気、毛ほどでもないのだよ」

「ま、待ってッ!」

 

 

 言い終わった矢先に外套を翻して外界に飛び出そうとする青年を、立香が呼び止める。

 

 

「なにかね?」

「貴方の名前を、教えてください」

 

 

 カルデアには召喚されていないサーヴァント。この虚数空間で出会ったばかりの彼だが、ネモ・シリーズを助けてくれたという事は、味方である可能性が高い。名を訊ねた立香に、青年は「ふむ」と一瞬思案するような表情になった後、こう答えた。

 

 

「名前と呼ぶべきものはとうに失ったが……そうだな。『赤衣の男』……とでも呼んでもらおうか」

「赤衣の、男……」

「では、また後ほど会おうではないか、藤丸立香―――人類最後のマスターよッ! フハハハハハッ!」

 

 

 両腕を広げて高らかに笑い、赤衣の男は司令室を後にするのだった。

 




 
 ようやく赤衣の男を出せました……。最初はアトランティス辺りで出そうかと思っていたのですが、クラスを考えた結果、イマジナリ・スクランブルに出した方がいいと判断したので、こんな感じで出してみました。ちなみに彼、王以外にも繋がっているものがあります。

 それではまた次回ッ! アンナちゃん、頑張って仕上げてみせますッ!
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