【更新停止中】緋雷ノ玉座   作:seven74

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 じわじわとお気に入り登録者数が増えてて嬉しいですねぇ。私のような者が作った作品を気に入っていただける方がここまでいるとは思いませんでした。これからも頑張っていきますッ!
 ようやっとキャストリアを当てられました。これまではサポートだけでしたが、これでWキャストリア編成が出来ます。村正ァと大変相性がいいので、使ってて楽しいですねぇ。

 アンケート、回答ありがとうございますッ!


汎人類史を護るマスター

 

 赤衣がゴッホと会話してから大分時間が経った頃、立香率いるカルデア一行は着実に虚数空間からの脱出に向かっていた。

 最初こそ、虚数空間の中に海域があり、エネミーもいるという予想外の事態に直面したが、赤衣や楊貴妃、そしてゴッホの登場によって、彼らは少しずつとはいえ、ゆっくりと虚数海域を攻略していった。

 

 途中、何度も窮地に見舞われこそしたが、その度に立香達は己が積み重ねた経験から、その場において最善と思える行動を選択。結果、助っ人としてノウム・カルデアから源頼光と謎のアルターエゴ・Λ(ラムダ)の召喚に成功し、彼女達の力を借りてピンチを潜り抜けてきた。

 

 現在、立香達がいる海域は第三海域。 

 到達直後にエネミーの大群に包囲されるというトラブルに遭遇したが、それもサーヴァント達の活躍によって撃破され、今は束の間の平穏、といった頃だろう。

 楊貴妃や刑部姫も、ネモ・プロフェッサーの分割思考技術とスカサハ=スカディのルーン魔術などの力を借り、虚数空間限定ではあるものの、作業用と休憩用の二人に分かれる事が出来たため、休憩用は各々の時間を過ごしている事だろう。

 

 しかし、それを必要とせずに廊下を歩いている者が一人。

 

 赤衣の男。立香達がこの虚数空間で初めてコンタクトした、『降臨者』のクラスを有するサーヴァント。彼は、現界前に新たに繋がった神格から与えられた使い魔を虚数空間に送り出して周囲の探査を任せているのだ。

 といっても、今も尚使い魔から送信されてくる、ノーチラス周辺の情報の整理を脳の片隅で行っているのだが、彼にとってはその程度の事などほんの些細な事でしかないのだろう。

 

 

「……ん?」

 

 

 赤衣が歩いていると、自分が進んでいる先に三人の小さなクルー達の姿がある事に気付いた。

 ネモ・シリーズの一つで最も数が多い存在、マリーンズだ。それぞれが頭を寄せ合って、なにかを見てわいわいと楽しそうな声を挙げている。彼らの様子からするに、恐らく自分の存在には気付かれていない。

 ならば、たまにはこうするのも一興かと思い、足音を殺して接近する。

 

 アサシンもかくやという気配殺し、そして静謐ながらも俊敏な足運びによって瞬く間に彼らのすぐ後ろまで近づいた赤衣は、丁度目の前にいるマリーンの一人の肩に手を伸ばす。

 

 ホラー物でありそうな、不気味なまでにゆっくりと、小指から親指の順にマリーンの肩に乗せ、自分の背後になにかがいると気付いたマリーンが恐る恐る振り向いた瞬間。

 

 

「ごきげんようッ! 小さな海兵達よッ!」

「「「ぎゃあああああああああああああああああッッッ!!!」」」

 

 

 思いっ切り大声で挨拶し、マリーン達を跳び上がらせたのだった。

 

 

「あ、あああ赤衣さんッ! いきなり驚かせないでぇッ!」

「フハハハハハッ! なに、ちょっとした出来心だ。なにやら楽しそうだったのでね。ならば私も楽しんでやろうと思ったまでの事さッ!」

「だからといって、あそこまで大声で言わないでよ~ッ! 鼓膜破れるかと思ったよッ!」

 

 

 軽く頭を抱えて呻くマリーンズの姿に小さく笑う赤衣。しかしその直後、彼はマリーンの足元に落ちている物に気付き、それを手に取った。

 

 

「ふむ、これは……」

 

 

 見る者によっては恐怖を抱きそうな、触手を連想させる紫色の三本足を生やした人形だ。

 マリーンが元からこれを持っているとは考えずらい。誰から渡されたものだろうか。

 

 

「あっ、赤衣さんッ! これはね―――」

「駄目だよッ! 赤衣さんとマスターには内緒って、楊貴妃様が言ってたじゃんッ!」

「あっ、そうだったッ! ナンデモアリマセーンッ!」

「ほう、楊貴妃が?」

「え? あっ……」

 

 

 そこで、自分が自然な流れでこの人形を渡してくれた者の名を挙げてしまった事に気付いたマリーンが咄嗟に口を手で塞ぐが、時すでに遅し。

 

 

「なるほどなるほど。楊貴妃が、これをか……」

「あ、赤衣さん。お疲れ様です」

 

 

 噂をすれば影が差す、と言ったところか。手元の人形をまじまじと見つめていた赤衣が声をかけられたので振り向いてみれば、そこには先程マリーンの一人が暴露してしまった楊貴妃の姿があった。ここにいるという事は、彼女は休憩の為に分かれた方の楊貴妃だろう。

 

 

「随分と縁起のいい代物を作っているようだな。道具作成スキルでも持っているのか?」

「あ、わかります? 私としてはもっと可愛く仕上げたかったんですけど、どう頑張ってもこんな不気味な感じにまとまっちゃって……。とはいえ、『神は細部に宿る』、とも言います。細工には自信がありますので、貴方もお一つ如何ですか?」

「結構。興味こそあるが、今の私には不要だ。私はここで失礼しよう。ではな、傾国の美姫よ」

「だからぁ~ッ! 傾国って言わないでくださ~いッ!」

 

 

 腕をぶんぶんと振り回して憤慨する楊貴妃と、面白がって彼女に傾国傾国と連呼し始めるネモ・マリーン達を後に、赤衣は再び歩き出した。

 少し歩いた頃、今度は前の角から出てきた少女と鉢合わせた。

 

 

「あ、赤衣さん」

「おぉ、我がマスター。この空間からの脱出を目指して第三海域へ到達したが、なにか体調に変化はないかな?」

「え? ううん、特にはないかな。それがどうしたの?」

「なに。如何に四つの異聞帯を乗り越えてきた君とて、ここまで長く潜水艦に閉じ込められる事はなかっただろう? 慣れない環境下での長時間任務だ。少し気になってね」

「大丈夫だよ。ここにはマシュ達がいるし、こういった事にはもう慣れっこだから。赤衣さんこそ大丈夫?」

「私は基本苦しいと思う事はない。いつだって楽しんで行動しているともッ! ……それはそれとして、だ。マスター、少しこちらへ」

 

 

 表情を少し真剣なものに変えた赤衣に手招きされた立香は、素直に彼の後を追って扉を潜る。

 そこは、簡素ながらも最低限の物が置かれている部屋だ。ノーチラスが巨大な艦であるためか、いつもより搭乗員の数が少ないが故にこうして余った部屋も幾つか存在している。

 

 

「藤丸立香よ。契約の際にも口にしたが、私がサーヴァントとして活動するのは今回が初めてだ。マスターとサーヴァントの在り方はざっくりとだが認識しているが……、君は私のステータスを視れるのか?」

「視えるものもあるけど、視えないものもあるって感じかな」

 

 

 マスターならサーヴァントの大まかな情報は契約時に知れる。彼らが英霊に昇華された際、その逸話を基に付与されたスキルや、彼らの伝説の象徴たる宝具辺りがその代表だろう。

 契約した時に最初に知れるものは、その英霊の出典についてなど。宝具やスキルは名前だけ知っているだけのものであり、彼らとの関係を深めていくにつれてその詳細が開示されていく。

 が、今の立香と赤衣の男を繋ぐ契約は、あくまで仮初のもの。仮契約である以上、絆を深めたとしても、必要最低限の情報しか知れない。

 それに対し、立香から見た赤衣は異常に尽きる。

 

 なにせ、まず最初に開示されるプロフィール―――出典となる伝説そのものがない( ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ )のだ。

 

 世界各地に残る英雄譚(サーガ)に語られる英雄や、各々の国の歴史に名を刻む程の偉業/悪行を成し遂げた者が英霊の座に招かれ、サーヴァントになるという話は、右も左もわからぬままに放り込まれた炎上都市で教えられた。故に、サーヴァントとはそういった者だと前提に考えていたせいで、それに該当しない英霊が目の前にいると気付いた時には驚愕したものだ。

 

 だが、一応知れたものとして、彼の属性だけはなんとか把握できた。

 

 混沌・悪。自分で決めたルールにのみ従う、自己認識における“悪”を進んで成し遂げようとする者に割り当てられる属性だ。

 カルデアのサーヴァントだと、ジェームズ・モリアーティやジャンヌ・ダルク・オルタなどが該当する。

 

 

「生前の私は歴史に残る大犯罪を犯した事はないが、悪に近い性質でな。善を尊びこそするが、悪への崇敬はその比ではないものだ。善か悪か、どちらかの道を選べ、と言われたのなら、私は即座に悪の道を進もう。……我がマスター、藤丸立香よ。君は、私という存在に対してどう思う?」

 

 

 善行よりも悪行を尊ぶ英霊。英雄のタイプとしては反英雄に分類される事がほとんどのサーヴァント。その存在である赤衣の男に対し、立香は「何を今更」とばかりに答えた。

 

 

「……特に、なにも思わないかな」

「なに?」

「自分を悪だと定めてるサーヴァントには、これまで何度も会ってきたし、傲慢そうに聞こえるけど、彼らの気持ちも理解できない事はないよ。普通の聖杯戦争で呼ばれたら、関係のない人々を巻き込むのも厭わない可能性がある事も知ってる」

 

 

 基本、反英雄とはあまり関わり合いになるべきではない。通常の聖杯戦争で喚んだ場合、その内に秘める残虐性が主マスターを害しかねないからだ。中にはそういったものを持たず、純粋にマスターに従う反英雄もいるにはいるが、その数は少ない。 

 けれど―――

 

 

「けれど、彼らは応えてくれた。私の召喚に応じてくれた。彼らに助けられた事だってある。だから私は、彼らに対して悪感情は抱かないし、抱くつもりもない。彼らは私の、カルデアの頼れる仲間達だよ」

 

 

 召喚に応じる理由は多々あれど、彼らは人理を護る為にカルデアに来てくれた。ならば、彼らのマスターである自分の役目は、彼らの忠義に応え、共に奪われた汎人類史を取り戻す事だと、胸に拳を押し当てて告げる。

 その瞳に宿る決意、そして覚悟。まだ二十歳にも満たぬ少女には不釣り合いにも思える、数多の戦場を駆け抜けた戦士のものと同じ輝きを見た赤衣は、ただ打ちのめされたように「なんと……」と絶句する他なかった。

 例え、相手が悪を尊ぶ存在であろうと、彼女は決して態度を変える事なく接するだろう。それは、傍から見れば異常に尽きるのかもしれない。

 だが、嗚呼、なるほど。

 正しく、この少女は、人理を護る守護者に相応しい。

 世界中の誰の目にも留まらぬ偉業を成し遂げ、語り継がれぬ救世主(セイヴァー)へと至る、素晴らしい女だと、赤衣は心底から感動した。

 

 

「その歳に不相応ながらも、その心意気は感服せざるを得ないな。あぁ、確かにそうだった。反英雄とも絆を結べなければ、君がここまで来れるはずがなかった。誰とでも手を取り合おうとするその姿勢、なんとも素晴らしい。現代では中々見られない貴重なものだ。あの娘( ・ ・ ・ )が君を気に入る理由がよくわかった。その在り方を損なってくれるなよ、マスター」

「ありがとう、赤衣さん」

「そろそろ、この海域での活動を再開する頃だろう。私は少し用事を思い出した。すぐに終わる仕事だが、君は先にキャプテン・ネモの元へ向かった方がいいだろう。代理とはいえ、君は司令官なのだからね」

「わかった。また後で」

「うむ。司令室で会おう」

 

 

 手を振って司令官へと駆けていく立香の背を見送った直後、スッと赤衣の瞳が細められる。その視線を動かす事なく、赤衣はその場にいる何者かに声をかけた。

 

 

「これで理解してくれたかな。頼光四天王、その総大将よ」

「……気付かれてましたか」

 

 

 瞬間、背後に気配。

 振り向いて見れば、昔懐かしい雰囲気を感じさせる黒いセーラー服を着込んだ美女が立っていた。

 

 源頼光。古くは平安の世、坂田金時を始めた四人の猛者を四天王としてまとめ上げ、数多の怪異魔性を駆逐してきた最強の神秘殺し。日の本に生きる者ならば知らぬ者はいない、歴史にその名を刻む偉大な英雄である。

 助っ人としてカルデアから喚び出され、戦闘以外ではネモから密かに頼まれた密偵の役割をこなしている彼女がここにいる理由など、彼女が密偵であるという情報を持たない赤衣からしてみても容易く把握できる。

 

 

「降臨者のサーヴァント。本人がその身に宿った異邦の力を自覚し、自制していようと、その力は計り知れないものだ。ましてやこの状況下での、私を含めた三騎のフォーリナークラスの出現。君達がなにも手を打たないはずがないと思っていたが、なるほど、神秘殺しと名高い君を密偵にしていたか」

「致し方ないとはいえ、ここには風紀を乱す服装をした者が多すぎます。間違っても娘を誘惑した場合、即刻取り押さえられるように密偵としての役割と並行して、彼女達の監視もしていますよ。ですが、貴方はそれとは別でした」

「私が悪寄りの存在だからかね?」

「貴方は悪を尊ぶとおっしゃいました。このような状況下で、貴方のような、明確な邪悪をあの子の傍に置くのはどうかと思いましたが……今の私は大元より分かたれし分霊、サーヴァントの身です。マスターの判断には従います」

「生前も死後も、主君への忠義は変わらず、か。悪逆を為そうとしない限り忠誠を尽くすその姿勢。見ていて清々しいな」

 

 

 例え、純粋な人間ではないからこその特殊な視点を持ち、その性質が『愛する者の為なら世界さえ敵に回す』といった母性愛の権化であったとしても、流石は誇り高き平安の英傑と言ったところか。我が子(マスター)への忠義()がカンストし切っているにも程がある彼女の姿には、赤衣とて天晴れと認めざるを得ない。

 だからだろうか、赤衣は彼女に、自身が持ちうる情報の一つを、ヒントとして彼女に提示する事に決めた。

 

 

「存在しないはずの幻影に気を付けろ。今回の敵は諸君が想定しているものよりも遥かに強大。この世の常識を土台からひっくり返す、究極の魔性よ」

「詳細までは教えてくれないのですね」

「どこで訊かれているのかわからないのでね。私とて、下手に動けば“カルデアを手助けする”という役目を果たす前に消されかねん。それに、こうして第二の生を得た身だ。どうせなら楽しく、愉快に過ごしたいのだよ」

 

 

 一人の少女の下に集った英傑達の一人が、この情報を基にどう行動を起こし、それが結果的にどのような結末を招くのか。今から楽しみで仕方がない。

 赤衣は答えそのものを提示しない。

 答えを求めて足掻き続ける星詠みの守護者達の姿を、時としてアドバイスを授けながら、傍観者のように眺めるのみだ。

 

 

「あぁ、実に楽しい。サーヴァントとは、これほどまでに愉快なものだったとはなぁ。彼の魔術王には感謝してもしきれぬくらいだ」

 

 

 クツクツと心底楽しげに不敵な笑みを浮かべ、赤衣は部屋から出ていくのだった。

 




 
 赤衣の男についてですが、一応線画までは仕上げました。後は色塗りなので、期待していてくださいッ!

 それではまた次回ッ!
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