【更新停止中】緋雷ノ玉座   作:seven74

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 どうも、皆さん。昨日ソロモンを鑑賞し、本日アヴァロン・ル・フェをクリアしたseven74です。
 ソロモンはあれですね。最終決戦に相応しいバトル、そしてストーリーでした。本当に観れてよかったですッ! 特典として貰ったステッカーはオルレアンでしたが、なにに使おうか悩んでおります。
 アヴェロン・ル・フェについてですが、一番惨たらしい最期を迎えてほしかったキャラクターの最期があれだったのと、まだ出てきそうだなと思っていたキャラクターが出て来なかったりと、少し不完全燃焼な部分もありました。しかし、それを補って余りあるストーリーでしたので、個人的には満足の部類に入りますねッ! 次は恐らく、■■■■■■が相手でしょうから、楽しみですねぇ。

 今回は少し短いです。それではどうぞッ!


密航者

 

 楊貴妃から貰った人形を改造したと言ったマリーンとの会話を終えた立香は、そのままある一室へと歩を進めていく。

 目的地へと辿り着いた立香が、自身の前に立ち塞がる扉に声を投げかけると、その奥から「どうぞ」と、か細いながらも入室を許可する声が聞こえてきた。

 仮とは言えども、その部屋の主となっている少女から許可を貰った立香が扉を開けると、自身の体をスカサハ=スカディに触れさせているゴッホの姿が視界に入ってきた。

 

 

「こんにちはです。それとも、こんばんは、でしょうか。エヘヘ……とりあえずは、こんにちは、です。マスター」

「こんにちは、ゴッホ。……スカディはなにをしてるの?」

「なに。簡単な検査だ。元々、彼女は本来なにもないはずの虚数海溝から、このノーチラスへと流れ着いた漂着者だ。専門家程の知識はないが、私にもそれなりの知恵はある。なにか異常はないか、と軽く検査していただけだ」

「ありがとう、スカディ」

「うむ。……こういった検査はナースの方が適任だろうが、これくらいの事なら私一人でも大丈夫だ。私より彼女の方がいいなら連れていくが、どうする?」

「いえ、大丈夫ですよ。ゴッホは、女神様の腕を信じてますから……。安心して身を預けられます」

「そう言われてしまうと敵わないな。……うん、これで検査は終わりだ。お疲れ様だ」

「ありがとうございます」

 

 

 ぺこりと頭を下げたゴッホから手を離したスカサハ=スカディに、早速立香は彼女の様子について尋ねてみた。

 

 

「至って健康、と言ったところだ。体内外、共に安定している」

「良かった。……ねぇ、ゴッホ」

「はい」

「もう一度聞きたいんだけど……君は、本当にゴッホなんだよね?」

「…………」

 

 

 立香の問いかけに、ゴッホは顔を伏せて黙り込んでしまった。

 それを見たスカサハ=スカディが咎めるような視線を立香に送るが、彼女は「ごめん」と短く答えるも、問いかけを止める姿勢までは見せなかった。

 

 

「君のプライバシーに関する事だし、なにより、君にとってはなによりも大事な事のはずだから。それを部外者の私が率直に訊くのはどうかと思う。……でも、可能ならその悩みを、私は一緒に背負いたいんだ。一人で抱え込むのって、結構辛いからさ……」

「……マスターも、悩んでいるんですか?」

「もちろん。それこそ、毎日悩んでいるくらいね」

 

 

 魔神王ゲーティアによる人理焼却。本当ならば、それを解決するはずだったAチームを含めたマスター達は、ゲーティアの尖兵として遣わされたレフ・ライノールが起こした爆破によって、マシュを残して死亡、または凍結する他なくなってしまった。結果、当時のカルデアが有するマスターが、藤丸立香ただ一人となってしまった。

 しかし、立香は自他共に認める、未熟なマスターだ。なにせ、カルデアに来る前までは、魔術など御伽噺の類だと信じて暮らしてきた一般人なのだから。当然、魔力もからっきしであるため、サーヴァントの現界を維持する為の魔力はカルデアの電力で代用するしかなかったし、戦闘を行う場合も、少しでも多くの魔力をサーヴァントに供給できるように、いつ死ぬかもわからない死地に己を立たせるしかなった。

 使える魔術も、礼装の力を借りて辛うじて、というレベルで、礼装が無ければ満足にサーヴァントを支援する事も出来ない。

 結果的に、立香は魔術に頼らない防衛術―――肉体面での強化を行う事にした。

 幸い、周りにいる英霊達の中には、魔術云々の関係なく、己の肉体のみで座に刻まれた者達が多くいる。

 英雄(かれら)の領域まで、とは望まない。ただ、生きる為に必要な、最低限の能力さえ獲得できればと思い、その度に立香は己の肉体を苛め抜き、身体能力を磨いていった。これまでの数多の死線を潜り抜けてきた胆力と精神力も、それに伴って獲得していったものだ。

 

 しかし、それでも悩みは消えない。

 

 元は単なる補欠員の一人でしかなった自分だ。様々な伝説を残し、人理を護る存在へと昇華された英雄(サーヴァント)達を率いる資格が、自分にはあるのか、と。彼らにとって、自分は忠義を尽くすに値するマスターであるのか、と。

 

 真に己に忠義を尽くしてくれている英霊達がいる事は、もちろん知っている。彼らには本当に感謝しているし、自分もまた、彼らの期待に応えたいとも思っている。

 だが、それ故にこそ不安で、悩み続けるのだ。

 

 どうすれば、彼らの主に相応しい人間になれるのか?

 どうすれば、真に彼らの忠義に報えるマスターになれるのか?

 どうすれば、自分は―――

 

 

「そこまでだ、マスター」

 

 

 瞬間、北欧の女神から諫めるような、または制止させるような声が投げられた。

 ハッとして立香が顔を上げれば、申し訳なさそうに目を伏せているゴッホと、どこか哀しむような目をしているスカサハ=スカディの顔が見えた。

 

 

「……ごめん、つい熱くなっちゃった」

 

 

 すぐに頭を下げる立香。その時、掌に微かな不快感を感じたので見てみれば、自分の両手は手汗でびっしょりだった。どうやら、無意識のうちに両手を強く握り締めていたらしい。

 

 

「……いいえ。いいんです。マスターにも、人並みの悩みはあったんだなって、ちょっと驚いていました」

「……悩みがない程、私は高潔な人間じゃないからね。それに、周りから色々教わっていかないと、私はすぐに死んじゃうだろうからさ」

 

 

 漫画や小説の主人公のような、特殊な能力を持っているわけでもない。油断すればあっという間に命を死神に持っていかれる戦場で生き抜く為には、ひたすらに己を鍛え上げるしかなかった。

 

 

「……ゴッホは……ゴッホは、悩まなくてもいいと思います」

「え……?」

「貴方は、自分がサーヴァントの期待に応えられないかもしれない、と不安に思っているようですけど……。貴方はもう充分に、彼らの期待に応えられてると思います……。仮契約の私がなに言ってるんだ、って話ですけど……きっと、そのはずだと。そうであるはずだと、私は考えますよ……」

「ゴッホちゃん……」

「……うむ、我が主よ。そこまで思い悩む必要はないと、私も思うぞ。なんなら、今から艦内にいる者達、一人一人に聞いてみればいい。皆、きっと同じ答えを返すだろうよ」

「スカディ……。……ありがとう」

 

 

 はにかむように笑った立香に、ゴッホとスカサハ=スカディもまた小さく笑って返した。

 

 

「……先の質問の答えなんですが」

 

 

 浮かべていた笑みを消し、真剣な表情に戻ったゴッホが口を開き、その様子に立香達は気持ちを切り替えて、彼女の言葉に耳を傾ける。

 

 

「私が何者なのか……正直、まだわかりません。私はゴッホなのに……そうじゃないって言ってる自分がいて……。なのに、自分はゴッホだって言ってる自分もいて……。深く考えようとしても、気付いたら別の事を考えてて……。でも、いつかは必ず、はっきりと告げたいと思っています。私が何者であるか……その答えを」

「……ありがとう、ゴッホちゃん。でも、無理はしなくていいからね。ゆっくりと考えてから、結論を出して。私達は、君がどんな答えを出しても受け入れるよ」

「……エヘヘ、頼りになる仲間……温かい……。ゴッホ、感謝感激……咲いちゃいそう……」

 

 

 俯きながらも、立香の人間性に酷く感動した様子でゴッホの顔には確かな笑みが浮かび上がり、またその瞳には、自分の意見を尊重し、また自分がどのような答えを出したとしても、必ず受け入れてくれる主への感謝の情が、爛々とした輝きとなって表れていた。

 

 

『ノーチラス全乗組員に告げる。唐突で申し訳ないが、緊急会議を開く。至急、司令室に集まるように』

 

 

 その時、このノーチラスの主であるネモからの放送が艦内に響き渡った。突然会議を開くという事態に、なにかしらの緊急事態が起きたのだろうと思い、すぐに立香達は司令室へと向かった。

 

 

 

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「急な召集をかけて申し訳ない。今回君達を呼び集めた理由は他でもない。単刀直入に言えば、この中に密航者がいる」

 

 

 メンバーが集まったのを確認し終えたネモがさらりと口にした言葉に、立香達は動揺を隠せなかった。

 

 

「み、密航者ですか? このノーチラス艦内に?」

「そうだとも。先程、赤衣の助言を基に源頼光と共に過去の映像データを見直した結果、判明した。赤衣、君には感謝しているよ。文句を言うなれば、もっと早く、それこそ気付いた段階で口にしてほしかったけどね」

「私もそのつもりだったのだがね? いくら君でも、突拍子もない言葉には耳を貸さないだろう? 少し時間をかけてから、情報を共有しようと思ったのさ」

「それでも、だ。君が虚言癖だという可能性を考慮しつつも、確認はする。次からはこういった事は起こさないように」

「了解だ」

 

 

 悪戯がバレて叱られた子どものように肩を竦める赤衣だが、その口調や態度からは反省の色は見受けられない。ネモはそんな彼の様子に苛立ちを覚えるも、今は密航者の話を優先する事にし、今すぐにでも彼を叱りたい気持ちを抑え込んだ。

 

 

「まずはこれを見てほしい」

 

 

 気持ちを切り替える為にも、とネモは、先程源頼光と共に確認した、潜航前のミーティングの映像を立香達に見せ始める。

 初めは何の疑問の抱かずにそれを眺めていた立香達だが、ネモがマリーンについての説明をした時、ハッとした様子でマシュが口元を手で隠した。

 

 

「ネモ・マリーンさん達は、総員十二名のはず……。なのに……十三名いらっしゃいますッ!?」

「その通り。この十三名の内、一名はマリーンに化けた偽物……つまり、密航者の可能性が高い。そしてそいつは、今僕らの目の前にいる」

 

 

 射殺すような視線をオリジナルに向けられ、集められた十三人のマリーン達がビクッと肩を震わせた。誰もが同じ反応を返すマリーン達に、ネモは重い溜息を吐いた。

 

 

「ホント、凄い演技力だよ。一挙手一投足、全てが本物のマリーン達と変わりない。けどね、それも今じゃ無意味さ」

「……ッ! 見える……(わたし)には見える……ッ!」

「いきなりどうしたのよ」

 

 

 ビシッとマリーン達に指を突きつけたネモからなにかを感じ取ったのか、刑部姫が小刻みに震え始めた。

 

 

「ラムダちゃんには見えないよ……。締切という名の悪魔に追われながらも数多の同人を執筆し、そして幾多の神作家&神絵師によって生み出された作品を見てきた私だからこそ見えるオーラ……ッ! これは『己の命を削ってでも、成果を上げてみせる』という、超戦士の気配……ッ! いったいなにをするつもりなの……?」

 

 

 身構える刑部姫、そして、彼女の言っている事の意味が分からずにネモを見つめる面々の前で、ネモは大きく息を吸い込み、そして吐き出す。

 

 

「密航者。これから君を暴く。……ぼ、僕、は……」

 

 

 唐突に歯切れが悪くなり始めるネモ。首元から頬へ、そしておでこまで徐々に赤く染め上げながら、キッとマリーン達を睨む。瞬間、マリーン達は揃って口を開いた。

 

 

『キャプテンは今、大大だーーーーい好きな、最高級のパフェが食べたいと思ってるッッ!!』

 

 

 ……瞬間、空気が凍り付いた。

 立香達は、湯気が出てくるのではないかと顔を真っ赤に染め上げ、今にも泣きそうな目でプルプルと身を震わせているネモを唖然と見つめるしかなかった。

 

 

「キャプテン……」

「言わないで」

「パフェ、好きなんですか?」

「言わないで」

「大大だーーーーい好き、なの?」

「うわぁんッ!」

 

 

 遂に泣き出してしまった。すると、彼の感情を共有しているマリーン達もまた、各々が涙を流して倒れ始めた。

 立香達と同じように唖然とネモを見つめている、一人のマリーンを除いて。

 

 

「そいつだぁッ! そいつが……ひくっ……密航者だぁッ! 僕に秘密をバラさせやがってぇ……ぐすっ……捕まえろォッ!」

「いやいや、おれァなんもしてねェだろッ!?」

「確保オオオオオオォォォォッッ!!」

 

 

 自分の大好物を暴露するという、ネモの尊い犠牲により密航者を割り出したマシュ達は、彼の犠牲を無駄にしない為にも、立香の叫びに応えて全員で飛びかかった。

 

 流石の密航者も数多のサーヴァントを前にしてしまえばなにも出来ない。しかも、それが気が抜けていた時とくれば尚更だ。

 

 

「きゅぅ……」

 

 

 こうして下手人―――偽マリーン改め、フォーリナー・葛飾北斎はお縄についたのだった。

 




 
 ネモきゅんがパフェ好きなの、可愛いですよね……。秋葉イベントの時に、わざわざサングラスをかけて変装してからメイド喫茶に来てたの見て心臓が止まりましたよ。

 それではまた次回ッ! オリュンポス&アトランティスのストーリー構成は着実に進んでおりますぞッ!
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