『異聞帯がロスリックだった件』で私の描いた絵が公開されて嬉しい……。どうも皆さん、seven74ですッ!
更新一時間遅れ、大変申し訳ございませんでしたッ! 実はワクチン接種を受けていまして、その副作用で利き腕が痛くて痛くて……。まだ痛みは残っていますが、なんとか仕上げる事が出来ましたッ!
それでは、どうぞッ!
「何はともあれ、キャプテンの尊い犠牲によって、密航者を無事捕縛する事に成功した」
「うっ……ぐすっ……」
「よしよし」
分身を動かせる程度には落ち着いたとはいえ、涙を流してぐずっているネモを立香が慰める。
現在、本物のマリーン達はそれぞれの意識を取り戻している。未だに泣いているネモだが、それでもなんとか気持ちの整理だけはある程度出来ているようだ。
「それで? どうして貴女は密航なんてしたのかしら? 葛飾北斎」
「へっ、誰が答えるか……って、とっ捕まる前のおれなら言ったろうが、こんなザマだ。大人しく話してやる」
ラムダの視線の先、縄でぐるぐる巻きにされて座らされている北斎。ネモが分身に自分の思考を共有できる能力を応用して行った自爆によって正体が割れ、こうして捕まってしまった北斎は、最初こそ強がる様子を見せたが、すぐに折れたように肩を竦めた。
それもそのはず。今彼女を縛っている縄には、かつて北欧異聞帯をたった一柱で治めていたスカサハ=スカディ直々のルーンがかけられており、そう簡単に脱出できるものではなかったからだ。
北斎曰く、密航者として活動していた時の自分は葛飾北斎という名のサーヴァントではなく、お栄という、たった一人の画家だったそうだ。
その言葉に首を傾げる立香達に、北斎は今の自分の状態について語った。
今の彼女―――というより、現界時にタコ型の小型生物に変化した、常に彼女の傍を浮遊する本物の北斎は、現在進行形で異邦の神のアンテナになっているらしい。原因は、この虚数空間では無限に絵を描ける事を知った娘を止めようとした矢先、彼女に頭を叩かれた事らしい。
普通ならそこでお栄は北斎からの墨攻撃を受けるのがオチだろうが、どういうわけか彼はそのまま外側の神格のアンテナになってしまい、邪魔者がいなくなったお栄はそのままノーチラスに侵入。周囲の目を盗みながら虚数の海溝と、そこに住まう怪物達を描き続けていた。
ちなみにその時、お栄は異常な程に強化されていた道具作成スキルがクリティカルを出したおかげで艦のスキャンを誤魔化す事が出来、また水着を着たセイバーの自分と霊基が競合していた影響でバイタルもイカレたようで、簡単に密航出来たそうだ。
「では、今まで私達が戦ってきたエネミー達は……」
「あぁ、そうさ。ぜ~んぶおれが描いたのさ。なにせ、手つかずの真っ白な紙が無限にあるんだッ! ちょいと空を見つめれば、墨も染料も使い放題とくるッ! ここで描かねェのは、画家の名折れだろ?」
自らの想像力を筆に乗せ、真っ白なキャンパスに己の思い描いた作品を刻み込む―――それこそが画家としての性であり、彼女はそれに従ったまでだと告げた。
「本当はもうちっと描きたかったところだったが、こんなナリじゃ仕方がねぇサ。もうおれァ
「既に描かれたエネミーを消去する事は出来ないのですか?」
「出来ねぇ。紙ならクシャクシャにして捨てたり燃やしたりすりゃいいが、なんせ今回のおれが描いたのは、
この虚数海溝も同じサ―――と言い終えたお栄。エネミーと海溝そのものを
「しかし、なんだ。ますたあ殿は案外驚いてねぇんだな。おれが密航者なんて、基本考えつかねぇだろ」
「驚きはしたよ。でも、密航者の正体がお栄さんだとわかった時、納得がいっただけだよ」
「?」
「お栄さん、一度私に人形を見せてくれたでしょ? 楊貴妃から貰った、あの人形」
「……あァ、なるほどねぇ」
納得がいったように何度も頷くお栄。彼女が持つ人形の事を知らないメンバーが頭に疑問符を浮かべていたので、すぐに立香が説明する。
「ネモに集められる前に、お栄さんが化けていたマリーンに人形を見せてもらってたんだよ。楊貴妃がマリーン達にあげたお守りの人形。私は他のマリーン達からも人形を見せてもらってたけどさ、お栄さんが化けてたマリーンだけ、それに絵を描いてたんだよね」
ネモ・マリーンは数こそ多いが、彼らはオリジナルのネモから分かたれた存在。しかし、その中で楊貴妃の人形に絵を描いていたマリーンが一人だけいた。もし本物のマリーンなら、人形を貰った事を歓びこそすれども、なにかしらの改良を加えるという考えは思いつかないだろう。仮に思いついたとしたら、全員がなにかしらの絵を人形に描くはず。
しかし、その行動を取っていたのは、お栄が変装していたマリーンのみ。あの時は胸に引っかかる微かな違和感に過ぎないものだったが、今となっては、その違和感は「まぁ、そうだろうな」という納得に変わっていた。
「お守りの人形を一人だけ改造してたのは、マリーンらしくないなと思ったんだよ」
そして、次に訓練開始前の記憶を仲間達に聞かせ始める。
トリスメギストスⅡの演算によって、最終選抜まで残り続けていたが敢え無く辞退する事になってしまったアビーを慰めていた時、たまたまそこに居合わせた北斎から、葛飾応為直筆の絵を見せてもらったのだ。
日本人ならば誰もが知る伝説的な画家、葛飾北斎。サーヴァントだとしても、その娘であるお栄が直々に描き上げた絵なんて、
これまでも何度か彼女の絵を拝見していたのもあって、絵を描く際の彼女の特徴は大まかだが理解できている。
「あぁ、お察しの通りサ。この人形の細工があんまりにも良くできてるから、つい対抗しちまった。後で見せてやるよ。あのぐるぐる、実は極微の龍の紋になってるからサ」
「……あの、すみません。口を挟んでもよろしいでしょうかッ!」
自分が人形に描き込んだ模様の話をしていたお栄は、突然話に割り込んできた少女に目を向けた。
「葛飾北斎……いえ、葛飾応為様。改めてのご挨拶を。姓は楊、名は玉環。人類史では楊貴妃で通っております。貴女と同じ、フォーリナーにございます」
「あぁ知ってるサ。聞いた通り、いやそれ以上の美人さんじゃねぇか。是非なく描きたいもんだねッ! で、音に聞こえた傾国の姫さんが、しがねぇ画工なんぞにご丁寧になんだって?」
「……貴女は、外なる神の軍門に下った、という事で相違ないのですか?」
普通ならば“傾国”という単語を聞けば羞恥に顔を赤らめる楊貴妃が、この時ばかりは真剣な眼差しでお栄を見据える。
もし、今の問いの答えがイエスだった場合、すぐさま己を英霊として確立させている異邦の力を用いて焼却する、と言わんばかりの雰囲気を漂わせて訊ねる楊貴妃に対し、お栄はふっと小さく笑って肩を竦めてみせた。
「どっちかと言うなら、“下っていた”ってところかねェ。今みたいに捕まらずにいたら力尽くでも、ってところだったが、何度も言うがこんな状態サ。口惜しいっちゃァ口惜しいが、なに、かるであに帰ったらその分の絵を描くまでよ」
「……そうですか。では、もう一つ質問を。……貴女は自分の意志で、此度の事件を起こしたのですか?」
「…………」
もう一つの楊貴妃の問いかけに対し、お栄は口を閉ざした。その沈黙を答えと受け取ったのか、楊貴妃はさらに彼女に追い込みをかけていく。
「そうでなかった場合、貴女はあくまで
「……さぁなァ? おれはただ、呼ばれたから来ただけサ。深く、深く。遠く、遠く―――虚数の海からの呼びかけに応えたまで、ってなァッ!」
「……ッ! それ、は……」
お栄が告げた言葉―――“深く、深く。遠く、遠く”という言葉に息を呑んだのは、今まで静かに事の次第を見ていたゴッホだった。
力無い足取りで少しずつ後退っていく彼女を、しかしお栄の目は逃さなかった。
「なんだ? もしや、おれを呼んだのはあんたかい?」
「呼んだ……呼んだ……? ゴッホが、貴女を……?」
「ごっほォ? もしかして、
「はい……ご存じだなんて……光栄です…………」
憧れの画家に出会えた上、こうして会話まで出来ているという事実に嬉しそうに笑うゴッホ。しかし、お栄はそんな彼女に対し、目を細めて一言告げた。
「……誰でい……あんた?」
「…………」
突然の、思いも寄らぬ問いかけ。ゴッホはその回答を口にする事無く、零れ落ちんばかりに見開かれた目でお栄を見つめている。
「この現代に召喚された身としちゃあ、おれより後世に活躍した絵師、画工達の仕事ぶりが気になって当然サ。もちろん、ごっほの
歌川広重―――それは1797年に生まれた、日本が誇る歴史的画家の一人の名である。彼の作品は大胆な構図と共に、青色の美しさで海外でも高く評価され、『ヒロシゲ・ブルー』という名と共にヨーロッパの印象派やアール・ヌーヴォーの芸術家達に大きな影響を与えたと言われている。
また、1848~53年頃には版画ではなく、肉筆画も多く手がけた。西洋画から取り入れた遠近法は、後に印象派画家、特にゴッホに影響を与えたと語られ、生前のゴッホは彼の作品に出会った事で、
「ハハッ、なるほど、確かに広重の匂いと
「とうっ」
「ぐはぁッ!?」
まくし立てるように言葉を並べていくお栄が言い終える直前、ラムダの飛び蹴りが顔面に炸裂。予期せぬ不意打ちを受け、お栄はそのまま気を失ってしまった。
「麗しきアルターエゴの一撃、お気に召したかしら。要点は出切ったようだから勝手に動いたけれど、構わなかったわね、立香?」
「あ、はい」
あまりにも突然の出来事に放心しながらなんとか返答した主に、かつて彼と心を繋いだ少女は微笑んだ。
「良かった。じゃあ、より大きな問題の解決は任せるわ。アナタの愛が如何なるものか、見せてもらいましょう」
「ゴッホさんの悩み……詳細は存じませんが、今、踏み込むしかないのでしょうか……? こんなに差し迫った状況で……」
「……本当なら、こんな状況で訊きたくはなかった。けど……」
お栄の言葉を止められなかった。彼女の考えに耳を傾けてしまい、ゴッホの精神状態の事を完全に失念していた。しかし、その事を悔やんでも、最早後の祭り。今この場で、彼女の不可侵領域に踏み込むしかないだろう。
「……ゴッホちゃん」
「……だれ、ですか……それ……。私は……ゴッホじゃ……ないそうです……。私は……ホクサイを呼び寄せて……虚数の海で皆様を殺そうとした……名無しの……フォーリナー……らしいです……」
「自分はそんなの気にしてない。……事件にはケリがつきそうだし、ゆっくり話そう」
「……マスター様、一つだけ、聞かせてください。マスター様は、知ってるのですか。私という英霊の、正体を……」
「……まずは落ち着こう、ね?」
「教えてください……」
「―――クリュティエ」
「……え?」
突如発せられた言葉に目を見開いた立香は、すぐにその声が聞こえてきた方向へ視線を向けた。
「くりゅてぃえ。くりゅてぃえ。くりゅてぃえ。くりゅてぃえ。くりゅてぃえ。くりゅてぃえ」
「くりゅてぃえ。くりゅてぃえ。くりゅてぃえ。くりゅてぃえ。くりゅてぃえ。くりゅてぃえ」
「くりゅてぃえ。くりゅてぃえ。くりゅてぃえ。くりゅてぃえ。くりゅてぃえ。くりゅてぃえ」
「うわぁ、バグった~ッ! ちょっとみんな、止めましょう。それキャプテンがずっと黙ってた奴ですからッ!」
狂ったように何度も同じ単語を口にするマリーン達をプロフェッサーが止めようとするが、それでもマリーン達はその単語を口にする事を止めない。そして、それを聞いたゴッホは、諦めたように目を伏せた。
「くりゅてぃえ……クリュティエ。……あぁ、あぁ……ウフフ、思い出しました。座から与えられた知識の端っこに、そんな名前……。なるほど……エヘヘ……エヘヘ……ッ! 私に、ピッタリの、名前ですね……ッ!」
その時、眩い輝きがゴッホを包み込み、その光量に思わず立香達は目を閉じた。
「ゴ、ゴッホちゃん……ッ!」
「あぁ……だから、咲いてしまうの……?」
光が収まった時、目を開けた立香達の前にいる、純白の衣装に身を包んだゴッホは、今の自分を憂うように呟く。
「でも、でも、マスター様。いくらその名を聞いても、私はゴッホという記憶と自認から、逃れられないみたい……。だから……」
一度閉じた瞳を、再び開く。そこには、自らをも取り殺す、残酷なまでの狂気が宿っていた。
「だから、私は、一人で頑張って死にますッ! 深く深く、遠く遠く、皆様の迷惑にならないところでッ! エヘヘ、マスター様、楊貴妃様、皆様、さようならッ! 心からの拍手を送りますッ! どうか皆さま、お元気でッ!」
その瞬間、ゴッホは再び輝きに包まれ、立香達の前から消えてしまった。
「……ッ。ゴッホさんッ!」
「キャプテンッ! 艦内の捜査をッ!」
「もうやってるッ! ……駄目だ、どこにも反応がない……ッ!」
「……え、あ。み、皆さん、大変ですッ!」
ゴッホの消失という事態に一気に空気が張り詰め、ゴッホの行方を捜す立香達。しかしそこへ、なにかに気付いた楊貴妃からさらなる苦行を強いられる事となる。
「周囲から大量の音が聞こえてきますッ! エネミーの大群が、ここ目掛けて一気に押し寄せてきますッ!」
「はッ!? そんな、既に
「方法はわからないが、恐らく、ゴッホが使役しているのだろう。奴め、ここで我らを足止めするつもりか……ッ!」
「ひえええぇッ!
「……ッ! 私の方も駄目です……ッ! こんなの、いったいどうすれば……ッ!」
「く……ッ! 時間がない。すぐに敵集団の中から一番数が少ない場所を探してッ! 見つけ次第、宝具を使って一気に突っ切るッ!」
「了解で~すッ! ……あ、あれッ!?」
「今度はなにッ!?」
「あわわ、なぜか知りませんが、なんかノーチラスの周りに無数の高密度の魔力反応がッ!」
「ああもうッ! 立て続けになんなんだッ! それはエネミーかッ!? それとも……」
『―――味方だとも』
頭を抱えるネモに、この場の誰よりも落ち着いた口調で言葉が投げかけられた。
「み……味方? それは、どういう……」
『簡単な事さ。
いつの間に出ていたのか。ノーチラス甲板に移動していた赤衣の男から通信が開かれた。
『マシュ嬢よッ! そして、見目麗しきサーヴァント達よッ! こちらへ来いッ! 我が宝具の姿を見るがいいッ!』
言われるまでもなく、マシュ達はすぐに臨戦態勢を整えて甲板に向かう。どのみち、エネミーは撃破する話だったのだから。
『ただいま到着しま―――え……?』
「マシュ? どうしたの……?」
呆気に取られたような、または悍ましいものを見たかのような声を漏らしたマシュに、立香が恐る恐る尋ねる。しかし、マシュは彼女の声が聞こえていないのか、酷く震えた声色で赤衣に訊ねるのみ。
『赤衣さん……。これらはいったい、なんなのですか……ッ!?』
『なにを異な事を。これは、
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「偉業……? こんな事が、偉業なはずがありませんッ! こんなにも、酷い……」
「どこが酷いと言うのかね? これは己こそが星の王者だと主張しようとした、人類の技術の結晶そのものッ! ここまで素晴らしいものを、私は終ぞ見た事は無かったッ!」
腕を広げ狂笑を浮かべる赤衣に、この男はなにをそんなに笑っているのだろうと、この場にいる誰もが思った。
「見るがいい。これこそ人類の偉業にして悪行。決して贖えぬ罪状にして、己の
その身に纏うは、無数の怨念。
その身を覆うは、数多の苦悶。
その瞳が滾らすは、無限の憎悪。
腕に取りつけられた顔が、己の体を求めて悶える。
腹に括りつけられた臓器が、己の帰る場所を探している。
数多の想念を、しかしその身に刻まれた継ぎ接ぎの接続痕が縛って離さない。
苦しみに悶え、殺してくれと声なき慟哭を上げる犠牲者達。その声を聞いても尚―――
「嗚呼、なんと……なんと素晴らしい……ッ!」
―――赤き狂人は、恍惚とした笑みを深めるのみ。
「照覧あれ、我が神よ。我らの子孫よ……ッ! これこそ人類の叡智ッ! 人類の偉業ッ! 人類の秘宝ッ! 翔け抜け、蹂躙せよ―――『
『ギガガガガガガガガガガガガガガガッッッ!!!』
頑丈な物質が軋むような、聞く者を震え上がらせる耳障りな咆哮を轟かせ、無数の超古代の生物兵器は虚数の怪物に襲い掛かった。
ようやくモンハン要素が出せました……。イコール・ドラゴン・ウェポン、かっこいいですよね。一度でいいですから、ゲーム内でも登場してほしいものです。
それでは次回、また会いましょうッ!