【更新停止中】緋雷ノ玉座   作:seven74

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 明けましておめでとうございますッ! 今年もよろしくお願いしますッ!

 皆さん、福袋はもう引きましたか? 私はSイシュタルが欲しかったので、彼女が出る福袋を引いたのですが、結果は水着キアラでした。目当てのものとは違いましたが、全体宝具持ちのムーンキャンサーは手持ちにいなかったので、しっかり育てて使っていこうと思います。

 それでは新年一発目の本編、どうぞッ!


ラメールの流儀

 

 オデュッセウス率いるアトランティス防衛軍への対抗策として、ギリシャの神々にとっての血液と称しても過言ではない流体金属―――テオス・クリロノミアを手に入れたカルデア一行。テオス・クリロノミアでネモの強化を行った後、新たにイアソンとラメールを仲間に加える事に成功した。

 しかし、テオス・クリロノミアを手に入れる為に神殿に駐屯していたアトランティス兵を倒してしまったためにオデュッセウスに彼女らの居場所がバレてしまい、オデュッセウスはヘラクレス島諸共カルデアを消滅させるべく、(ソラ)に浮かぶ機神の力を使う事に決めた。

 

 ギリシャ異聞帯の(ソラ)に存在する機神―――アルテミス。

 異聞帯での彼女であるその機体は、空と星を支配する存在。その者に備え付けられた砲台からは、星さえ穿つ光線が放たれるのだ。

 カルデアが到着する前にアトランティスに召喚されたサーヴァント達を排除したその光線が放たれようとしている事をオリオンから伝えられた立香達は、すぐにヘラクレス島から離脱した。

 しかし、だからといってアルテミスの砲撃が無くなるというわけではなく、天より降り注いだ光矢は、瞬く間にヘラクレス島に直撃。

 結果、たった一瞬の時を以て、ギリシャの海から一つの島が無くなってしまったのだった。

 

 

「―――」

 

 

 その時、ガンランスによる砲撃を行いながら別の島に向かっていたラメールは、これまで世話になっていた島が姿を消していく様を、ただ見ている事しか出来なかった。

 砂浜に着地したラメールがガンランスを消滅させると、彼女に近づく足音が一つ。

 敵意を感じない事から武器を構えないでいた彼女が視線を動かせば、そこには褐色の肌の少女がいた。

 

 

「一つ、聞いてもいいかな?」

「……なんだ」

「あの砲撃が落ちてくるって知った時、あそこの島民達はどう反応してた?」

「…………」

 

 

 ラメールは答えない。

 しかし、彼女の表情を見たミラオスは「やっぱりか」と、既にわかっていたように、失望と侮蔑の混じった言葉を漏らした。

 

 

「どうせ、喜んでたんでしょ? あの矢で殺されるのが。神の光を受け入れる名誉だ~、なんて言って、誰一人逃げる事無く、あの光に消えていった―――合ってる?」

「……なぜ、そこまで理解している」

「あそこら辺の海は、もう私のもの( ・ ・ ・ ・ )だから。ヒトの感情までは知れないけど、まぁ、雰囲気だけなら感じ取れるよ。とても、と~っても、幸せそうだったなぁ。あぁ、ホント―――ムカつくよねッッ!!

 

 

 苛立ちをぶつけるように片手を振るえば、そこから放たれた火山弾が海に着弾する。

 本来の彼女にとっては五割程度の力。それでも海面に着弾した火山弾は、轟音と共に周囲を巻き込んで大爆発。ドーム状の爆破が起き、僅かに遅れてやって来た熱風が二人の髪を乱していった。

 

 

「アアアアアア本ッッッ当にムカつくッッ!! ムカつきすぎて反吐が出るッ! 神に頼らないと生きられないッ!? 神に気にかけてもらえたから死んでもいいッ!? ふざけるなふざけるなふざけるなッ!! そんな話があって堪るかッ!! こんな世界があり得た歴史ッ!? 絶対に認めない……認めてなるものかッッ!!」

 

 

 血走った龍の眼で叫ぶミラオス。

 既に手足は人間と龍のそれが融合したような形になっており、僅かだが足元から紅蓮の焔がチラつき始めている。

 

 

「もう我慢できないッ! 今潰すッッ!! 今殺すッッ!! 今沈めるッッ!! 徹底的に、破壊し尽くして―――アァッ!?」

 

 

 足元の焔がミラオスを吞み込もうとしたその時、彼女の全身を緋色の電流が走った。

 膝をついたミラオスが、少しだけ焦げた髪の毛を掻き毟って顔を上げる。その視線は目の前の狩人には向けられておらず、それ以外の誰かを見ているかのようだ。

 

 

「どうしてッ!? どうして止めるの、お姉様ッ! お姉様だって、この異聞帯だけは絶対に潰すって―――条約? 異聞帯同士が激突するまでは行動を起こさない? それならキリシュタリアごと―――……え? ……わかったよ、お姉様がそこまで言うのなら」

 

 

 シュレイド異聞帯にいる主との会話を終え、何度か深呼吸を繰り返す。

 マグマの如く煮え滾るミラオスの激情を、彼女のマスターであるアンナはもちろん理解している。彼女自身、ギリシャ異聞帯はイギリス異聞帯と同様、必ず切除すべき障害として見做している。

 たった一言、『潰せ』と命令すればいいという立場にありながらも、その彼女が待機を命じているのだ。

 

 それに、我らが主は、この世界に直に見定めたい人間もいるようだ。

 

 キリシュタリア・ヴォーダイム―――クリプターのリーダーを務め、『異星の神』よりこのギリシャ異聞帯の管理を任された青年。

 単身でギリシャ神話の主神ゼウスを撃破したとされる彼がどのような人間か、ミラオスも気になっていたところだ。

 先は『異聞帯同士が衝突しない限り、攻撃は行わない』という不可侵条約を破ろうと考えていたが、アンナの願いを受け入れないわけにはいかない。

 

 荒れ狂う感情をなんとか落ち着かせたミラオスは、龍のそれと化していた瞳と手足を人間のものに戻す。

 それから、先程までの怒り狂っていた姿をラメールに見られていた事を思い出し、思わず赤面して頭を下げた。

 

 

「ご、ごめんね? ちょっと、我慢できなくて……」

「謝る必要は無い。正直なところ、私も同意見だった。この異聞帯は、必ず切除せねばならない。今回の一件で、そう強く感じた」

「これからどうするつもり?」

「次にカルデアが来るとすれば、この島だろう。今の私は船には乗れぬ身。こうして先の島で待つしかない」

 

 

 今彼女達がいる場所は、ヘカテ島。

 魔術と冥府の女神と称される彼女の名を持つこの島が、次にカルデアが訪れる場所だろう。

 

 

「私はドレイクより後を託された。あの島に残った、偉大な船乗りの頼みを無碍にする事は出来ない」

 

 

 ヘラクレス島から離脱する前、ラメールはドレイクと少しの間言葉を交わした。

 

 

『アタシはこれまでさ。あんたみたいに、別の島まで跳んでいく術はない。でも、あんたは違う。ガンランス(そいつ)なら跳んでいけるんだろう? だったら、ここから逃げるべきさ。あんたはまだ、ここで消えちゃいけないよ』

 

 

 オリュンポス―――否、ギリシャ異聞帯の人々は常に健康体であるために、酒に酔う必要がない。

 故に、彼女達の知る歴史に存在する、酔っ払ってどんちゃん騒ぎをする、という快楽が存在しない。

 勧めようにも、彼らは酔っ払うという事自体に興味を持たないので、売り上げは伸びない。

 万年赤字―――まさしくそんな言葉が適切な経営を、最後の最後まで続けた、共にこの海を駆けた戦友を想う。

 

 

ハンター(あんたら)風に言うなれば、これは“依頼(クエスト)”って奴だったか? 達成目的は彼女らの支援。報酬は……あぁ、駄目だね。アタシに払えるもんがなにも無いじゃないか。となると、この依頼は無理か?』

 

 

 ラメール達ハンターが受ける依頼(クエスト)というものは、達成目的があっても、報酬が無ければ成り立たない。常に死と隣り合わせの職業故に、そのリスクに見合った報酬が無ければ釣り合いが取れないからだ。

 ドレイクがラメールに対して行おうとした依頼は、それに当て嵌まってしまっている。

 

 しかし、ラメールはその依頼を引き受けた。

 たとえ今回限りのものだとしても、ドレイクと共に戦った記憶は、ラメールの心に深く刻まれている。

 それが記録として座に蓄積されるとしても、きっと自分は、彼女との航海を忘れはしないだろう。

 

 

『報酬はいらない。お前からは、お前という素晴らしい女と共に航海出来たという思い出を貰った。それだけで充分だ』

『―――ハッ、嬉しい事言ってくれるじゃないか。まさか、最後の最後に口説かれるとは思わなかったよ』

『む……口説いたつもりはないのだが』

『アタシからすれば、そういうもんなのさ。あんたなら尚更さ。……さ、早く行きな。じゃなきゃ、アタシとここで心中だよ』

『……そうか』

 

 

 カーテンの奥から差し込む光が強まっている事に気付いた自分が酒場の出入り口に向かった時、背後から投げかけられた言葉が一つ。

 

 

『―――あばよ、モンスターハンター。あんたの物語、大好きだったよ』 

 

 

 その時のドレイクの瞳は、憧れのヒーローを見た子どものように、キラキラと輝いていただろう。

 目に見えたものではない。それでも、彼女の最期の行動にしては素晴らしいと言えるぐらいの激励。

 それを受けた以上、狩人(ラメール)は生きていかなければならない。

 

 

「託された想いを叶える。狩るべき障害を狩る。そして、依頼を達成する。それが私の流儀だ」

 

 

 生前、多くの人々の願いを受け止めてきた。

 

 雷を操る大海の王者を討った時も。

 海底遺跡を根城にした、月を連想させる純白の古龍を沈めた時も。

 そして、数多の島々を海の底へ沈めた“煉獄の王”を斃した時も。

 

 彼らとの戦いは、自分一人では決して乗り越えられなかったものだろう。これ以外にも、死ぬと感じた激闘は幾つもあった。

 それでもこれらの戦いに勝利できたのは、人々の願いを受けたからこそ。

 託された想いを蔑ろにする事は出来ない。

 だからこそ、彼女は最強のハンターの称号を手に入れ、座へと招かれた。

 

 故に彼女は、立ち止まらない。立ち止まってはいけない。

 

 命尽きるその時まで、この手は人々の想いを護り、己が意思を貫き通す為。

 彼女が槍兵(ランサー)のクラスのサーヴァントに昇華されたのも、それが理由だ。

 

 

「……やっぱりかっこいいね、君は。いいよ。それなら君は、君の思うままに行動すればいい。手助けはもうしてあげない。今の君が私に会うのも、これで最後になる」

「再戦は叶わず、か。ならばその機会は、別の私に譲るとしよう」

「ふふふ、なんだか悔しそうだね。そんなに私と戦いたかった?」

「この異聞帯と呼ばれる世界。そして、お前がこうして召喚された以上、汎人類史が未曽有の危機に見舞われている事は明白。何時の日か、私とお前が戦うのは必然だろう?」

「……ハハッ♪ いいよその目、凄くいい。その獲物を狙う猛獣みたいな鋭い瞳、抉り出したくなっちゃいそう……♡」

 

 

 殺気の籠められた瞳に射抜かれたミラオスがゾクゾクとした快感に身を震わせる。

 そんな彼女の姿に、生前命を賭けての死闘を繰り広げた相手がそういう存在だという事を思い出したラメールは気が抜けたように小さく溜息を吐き、踵を返して森林地帯へ向かっていく。

 

 

「さらばだ、“煉黒龍”。次に会うのは私ではないが……まぁ、その時は殺し合おうじゃないか」

「もちろんだよ。その時こそは、生前のリベンジを果たしてみせるから、覚悟しておいてね?」

 

 

 ラメールの前に回り込んだミラオスが、丁度彼女の心臓があるであろう左胸に人差し指を当て、軽く首を傾げて笑う。

 それに対し、ラメールは「ふん」と相変わらずの仏頂面のまま鼻を鳴らし、森林に足を踏み入れていくのだった。

 

 

「……はぁ。もうちょっと話したかったなぁ」

 

 

 狩人の背が見えなくなるまで見送った後、落胆して肩を落とす。

 正直に言えば、ミラオスはもう少しだけでもラメールと話していたかった。

 ミラオスにとってラメールという女は愛すべき存在であり、また同時に殺すべき存在でもある。

 戦うとなればもちろん戦うが、それ以外の時間は純粋に話していたいという気持ちが強い。

 ならば彼女を呼び止めておけばいいだろうという話だが、ラメールの話を聞いている内に、ミラオスは彼女を呼び止める事は出来ないと悟ってしまったのだ。

 

 ラメールは、並みのハンター以上に人々の願いを受け止めて戦った女性だ。“モンスターハンター”の称号持ちのハンター達の中でも最上位に入るレベルだろう。

 そんな彼女の意思を、ミラオスは無碍にする事は出来なかった。

 

 ならばミラオスは、ラメールの意思を尊重する。

 狩人としての彼女が依頼を受けた以上、もう止まる事はない。文字通り、それを果たす為に命を懸けるのだろう。

 この異聞帯に召喚されたラメールの雄姿を見届ける事を、アンナから与えられた仕事の一つに加える事にし、ミラオスは海に飛び込むのだった。

 

 それから一瞬の後、ヘカテ島の周辺の海域が真っ赤に染まったが、それはすぐに元の蒼さを取り戻すのだった。

 

 

 

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 場所は変わって、シュレイド異聞帯。

 数多の命が息づく森林地帯。その中心に空いた穴の最奥に広がる大空洞を、蒼い明かりが照らす。

 

 周囲に無数の張り巡らされた糸のようなものの中心にある繭から、一体の龍が姿を現す。

 初めに頭部を外に出した龍は、そこから重力に引かれて一気に全身を繭の外に出し、小さな地響きを起こして落下した。

 ゆっくりと立ち上がったその龍が数歩歩んでいく内に、その全身が眩い光に包まれると同時に小さくなっていき、一人の青年の姿を取った。

 

 

「ぐ、うぅ……」

 

 

 数歩進んだ後、脱力したように膝をついた彼がズキズキと痛む頭を押さえる。

 

 

「僕はなにを……。それに、ここはいったい……」

『ぶっちゃけるが、俺にもわからん』

「―――ッ!? だ、誰ッ!?」

 

 

 突然聞こえた声に辺りを見渡すも、人影は一つも見当たらない。

 彼―――エリシオが聞き慣れない声に戸惑っている間にも、その声の主は変わらずに語り掛けてくる。

 

 

『誰、だと? 俺様の名を、お前は知っているはずだ。覚えてないのか? あの古龍に襲われた時、お前は俺様の名を叫んだはずだ』

「名前……? 名前……」

 

 

 近くにあった岩に座り、顎に手を当てる。

 

 名前―――声の主が言う古龍とは、自分達の村を襲って、レオニダスや無銘、そして家族にも等しき友人達を殺害した、あの黄金色のモンスターの事だろう。

 あの時自分は、無銘達を殺したあのモンスターと自分への怒りから、語り掛けてきた“誰か”と契約を交わしていたはず。その時に叫んだはずの名前は、確か―――

 

 

「―――ジーヴァ?」

『そうだ。それこそが俺様の名だ。永らく幻霊止まりの俺様だったが、お前という器を得て、ようやく英霊の領域まで踏み込めた。感謝するぞ、相棒』

「相棒って……。僕はまだ君の顔すら見てないんだぞ? それに、幻霊だったり英霊だったり、訳の分からない話ばっかりして……。まずは一通り教えてくれ。最初は顔合わせだ。今どこにいるんだ?」

『どこ? ククッ、どこだと? 俺様はずっといたぞ? お前の中にな。顔合わせがしたいのなら、こうすればいいか?』

 

 

 その時、なにかしらの違和感を感じたエリシオが右腕を上げると、肘から下辺りから出てきた蒼い糸のようなものに気付く。

 唖然としているエリシオの視線の先で、その糸は別の糸と絡み合い、一つの頭を作った。

 

 まだ発達途上のように見える二本の黒色の角に、橙色に輝く眼のようにも見える六つの発光器官。クリスタルのように美しい青色を持つその頭部は、口角を持ち上げるような仕草と共に揺らいでみせた。

 

 

「う、うわあああああああああッッ!!??」

『グルォッ!?』

 

 

 自分の右腕が異形の形を持った異常事態に絶叫を上げたエリシオが、その頭部を壁に叩きつけた。

 その衝撃に龍―――ジーヴァの頭部は苦悶の唸り声をあげ、何度か首を横に振る。

 

 

『いきなりなにするッ! 痛いだろッ!』

「ぐはッ! この、僕から離れろッ!」

 

 

 反撃にと顔面に頭突きを繰り出すジーヴァ。鼻を押さえて数歩後退ったエリシオだったが、負けじと再びジーヴァを壁に叩きつける。

 

 

『やったな、人間ッ! グルァアッ!』

「がッ!? そっちこそ、よくもやってくれたなッ!」

 

 

 そこから始まる、叩きつけられ反撃されての繰り返し。

 互いにぶつかり合う鈍い音が空洞内に何度も反響し、しばらく経った後、それは互いの粗い呼吸に変わった。

 

 

「はぁ……はぁ……。まったく、なんなんだ、君は……」

『ぜぇ……ぜぇ……。い、言ったろ。俺様は、お前と契約した。だからお前の体に憑いたんだ。離れようにも離れられないんだよ』

「……はぁ。あの時の記憶が朧気なのは、君のせいなのか?」

『あの時のお前は激情に呑まれてた。記憶が朧気になるのも当然だろ。勝手に俺様のせいにされても困る』

 

 

 首を伸ばしてゆらゆらと動くジーヴァの頭部。それを見たエリシオは、ふと浮かんだ疑問を口にする。

 

 

「……一目見た時から思ってたけど、君は……モンスターなのか?」

『俺様をそこらのザコと一緒にするな。俺様は古龍だ。生まれながらの、古龍の王だッ! ……産まれてしばらくしない間に殺されたがな。言っておくが、俺様は絶対にお前達人間を襲わん。契約者(おまえ)との関係を拗らせるわけにもいかないからな』

「……君、いや……お前が誰かを傷つけないなら、それでいい」

『さて、これからどうする? お前の住んでいた村は村人共々壊滅。帰る場所はない』

「……他の村に行く。モンスターに襲われているようなら、倒すだけだ」

『個人的には“王”の討伐に行きたいところだが……いいか。まずは強化だ。お前も力を付けろ』

「“王”……? はぁ、また聞き慣れない単語が出てきたな……」

 

 

 ジーヴァから教えてもらうべきものがどんどん増えていく事に頭を抱えていると、エリシオの腹の虫が鳴き始めた。

 

 

「……お腹、減ったな」

『はぁ……。サーヴァントになったと思いきや、デミ・サーヴァント―――肉体は生者のままか……。まぁいい。腹が減ったなら飯だ。生肉を喰おう』

「生肉ッ!? 冗談じゃないッ! 体壊すだろッ!?」

『グゥ……人間の体はなんと脆弱なんだ……』

「とにかく、ここから出ないと。お前、出口はわかるんだろうな」

『あそこだ』

 

 

 ジーヴァの視線が上に向く。

 エリシオが彼の視線を追ってみれば、そこには先程まで自分達が入っていたと思しき巨大な繭の上部に、繭とは別の光が満ちている事に気付いた。

 繭の大きさに苦難しながらも、なんとかその光が地上から届いているものだと理解したエリシオだったが、如何せんそこまでの距離があまりにも遠かった。

 どうやって登ろうかと思ってた時、ジーヴァが口を開く。

 

 

『登りたい?』

「うん。でも、どうすればいいのか……」

『なんだ。そう言ってくれればいいのに』

「え? わ、わわわ……ッ!」

 

 

 首を傾げる間もなく、突然背中にベールのような翼が生えた事にエリシオが戸惑う。

 そうしている間にも、翼は彼の意思に関係なく動き、軽々とエリシオの体を空中へと持ち上げた。

 

 

「お、おいッ!? なんだよこれッ!?」

『暴れるな。バランスが取りにくい。じっとしてろ』

「せめて言い終わってから飛べってえええええぇぇぇッッッ!!!」

 

 

 己の絶叫をBGMに、エリシオは空洞から飛び出した。

 

 こうして、古龍と人間のコンビがシュレイド異聞帯に誕生した。

 彼らが今後、どのような物語を紡いでいくのか。それは誰にもわからない。

 

 そう、ただ―――運命に導かれるままに。

 




 
 ラメールとドレイクの航海と共闘シーンは、いつか番外編で書いてみたいですねぇ。
 早く出すとしてもイギリス異聞帯編を終わらせて、七章が配信されていなかったら、といった感じです。もし配信されていた場合は、全ての戦いを終わらせた後に、ですね。

 それでは皆さん、今年もよろしくお願いします。次回もお楽しみにッ!
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