【更新停止中】緋雷ノ玉座   作:seven74

54 / 152
 
 申し訳ございませんッ!
 先程この話を投稿したのですが、再確認したところ途中までしか執筆できていない状態でしたッ! 改めて再投稿しましたので、よろしくお願いいたしますッ!
 本当に申し訳ございませんでしたッ!


煉獄の龍

 

 突如として海中より姿を現してラヴィエンテへと襲い掛かった超巨大モンスターの詳細を調べる為、凄まじい速度でキーボードを叩くネモ・プロフェッサー。

 目まぐるしく動く瞳が空中に映し出された文字列を左から右へと追っていき、僅か数秒を以て終了させた。

 

 

「出現したモンスターの特徴を検索……データベース照合……。あちゃ~……。キャプテン、あのモンスターは古龍です~。それも古龍種の中でもとびっきり危険な奴ですよ」

「答えはなんとなくわかるけど……一応名前を教えてもらおうか」

「“蛇王龍”ダラ・アマデュラですぅ。歴史上類を見ない、“大巌竜”ラヴィエンテと背比べが出来る程の超巨大モンスターですね~」

 

 

 間延びした、しかしいつも以上に真剣な口調で告げられた名に、その場にいる全員が戦慄する。

 

 “蛇王龍”ダラ・アマデュラ―――それは超古代の時代、“千剣山”という聖域の頂に姿を現すと語られていた古龍種。人智を超えた巨大さ故に、生物ではなく御伽噺の存在として当時の人々には知られていた古龍であり、彼の龍が動くだけで、その周囲では地殻変動や山の崩落が多発したとされている。

 

 サーヴァントとして召喚されていたとすれば、龍よりも御伽噺の存在としての側面を強く出した状態で姿を現す古龍だろうが、プロフェッサーが調べた限り、あの古龍からサーヴァント反応は検知されず、現代に生きるれっきとした生命である事が証明されていた。

 

 

「ついでに言っておくと、“蛇王龍”の周りでは常に隕石らしきものが確認されているようですね。『凶星』というやつですね~」

「……つまり?」

「今はまだ確認されていませんが、このままここにいては、雨のように降り注ぐ隕石に撃ち落されます。早急に離脱するのがよろしいかと~」

「ええいッ! ならばここに留まる理由はさらさらないではないかッ! すぐに離脱すべきだッ!」

「そうだね。ここはバショウカジキのように最速で動くとしよう」

 

 

 ラヴィエンテが目覚める前にオリュンポスに向かうと決めていたため、既に乗員の準備は整っている。互いに絡み合いながら交戦し続ける二体の超巨大モンスターを背後に、マリーン達の操縦によって発進したストーム・ボーダーは『虚ろの穴(ビッグホール)』目掛けて一直線に飛んでいき、そこから地下に存在するオリュンポスへと向かう。

 

 

「ラメールには感謝しないとね。あの人がいなかったら、今頃私達、ポセイドンと戦ってたんでしょ?」

 

 

 アトランティスではオデュッセウスの監視に気を付けながら行動していた事もあって、こうして一先ずは安心して会話できるのも久しぶりのように思える。この時間も、ラメールがドレイクや他のサーヴァント達と共に先立ってポセイドンを倒してくれなければあり得ないものだった。

 

 

「そうですね。彼女がドレイクさん達と共にポセイドンを倒してくれたおかげで、“大巌竜”との挟み撃ちになるという事態は回避出来ました」

「帰ったらすぐに召喚しないとね。きっと覚えてはいないと思うけど、それでもお礼は言いたいから」

「はいッ!」

『ならば、是が非でも生還しなくてはなりませんねッ!』

 

 

 立香とマシュが頷き合った直後、彼女達の前にホログラムのシオンが現れた。

 

 

「シオンッ!」

「シオンさんッ! 通信は妨害されていたはずでは……」

『その説明の前に、まずは労わせてください。アトランティス踏破、おめでとうございます。そして通信の件なのですが、それが急に開けるようになったんですよ。まぁ、原因はなんとなく理解できるんですけどね』

「ふむ。その原因とやらは?」

 

 

 眉を吊り上げたホームズに、シオンは苦虫を嚙み潰したような表情をして伝えてきた。

 

 

『先程、ギリシャ異聞帯とシュレイド異聞帯の嵐の壁が衝突しました。二つの壁はまるで混ざり合うかのようにして融合……互いの異聞帯を囲むドームのようなものとなる様子も確認されました。つまり―――』

「まさか……始まるというのかッ!? 異聞帯同士の戦争がッ!」

 

 

 “彷徨海”から立香達や異聞帯の様子を逐一観察していたシオンから告げられた報告に真っ先に食いついたのはゴルドルフだ。

 ギリシャ異聞帯に侵入する前のミーティングで危惧されていた事が今まさに起きているという事実に顔面蒼白になった彼にシオンはヤケクソ気味に高笑いを上げた。

 

 

『その通りですッ! さぁ、早くオリュンポスに急いだ方がいいですよ。先程、超高密度の魔力が観測されました。時間にして残り数分でしょうが、その後は間違いなく……』

「間違いなく……?」

 

 

 オウム返しに問いかけた立香に、シオンは笑みを消してこう告げた。

 

 

『―――アトランティスは、跡形もなく消え去るでしょう( ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ )

 

 

 

 Now Loading...

 

 

 

「ハハハハハッ! ようやくッ! ようやく潰せるッ! 神に隷属するしか能の無い連中を、ようやく殺せるッ! アッハハハハハッ!!」

 

 

 ストーム・ボーダーが『虚ろの穴(ビッグホール)』に飛び込んで少しした頃、数分前までアトランティスを支配していた蒼海は、その姿を紅き海へと変えていた。

 “厄海”―――ミラオスが創造主より与えられた権能(チカラ)を駆使してこの世に具現化させた、彼女が創造する地獄の形。かつて彼女が蹂躙し、居城とした海域を出現させる、サーヴァントとして顕現した彼女が保有するスキルの一つである。

 

 

「さぁみんなッ! まずはあそこの船団を潰そうッ! 指揮官が生きてたらちょっと苦戦はしてただろうけど、もうそいつはいないからねッ! 好きに沈めちゃって♪」

 

 

 遠くに見えるオリュンポス船団―――カルデアが沈め損ねた船をミラオスが指差すと同時、彼女の前方に広がる海面に幾つもの巨大な影が出現した。

 凄まじい速度で海中を突き進んだそれは、ある程度船との距離を縮めた後、各々の尻尾を強く動かす事によって跳躍。

 水しぶきを伴って現れた二体のモンスター―――“海竜”ラギアクルスと“水竜”ガノトトスが別々の船に乗り上げ、そこに乗っていたオリュンポス兵達を蹴散らしていく。そこから離れた船は、今回ミラオスが率いるモンスター達の中でも強力な個体である“大海龍”ナバルデウスの突進により呆気なく粉砕され、また別の船は周囲の海面から現れた“骸龍”オストガロアの触手に絡みつかれ、バキバキという音と共に砕かれながら沈んでいく。そこに乗っていたオリュンポス兵達の行く末は、最早語るまでもないだろう。

 オリュンポス船団が全滅するのは時間の問題だと片付け、視線を別の方角へ向ける。

 最早何度目か、互いに威嚇するように咆哮を上げたダラ・アマデュラとラヴィエンテの激闘は、今も続いている。超巨大モンスター同士の戦いの余波は想像を絶するもので、彼らの戦いの巻き添えを喰らったネメシス島には、最早文明や自然の気配は全く感じ取れなくなっている。それに両者が争う影響で発生した津波がこちらまで来ているが、ミラオスにとってはこの程度の波など微風のようなものであり、今もオリュンポス船団を襲い続けているモンスター達も、この程度の津波に圧し負ける程柔に出来ていない。

 

 

「グォオオオオッ!!」

 

 

 咆哮と共に振るわれた鉤爪がラヴィエンテの肉体を切り裂き、大量―――しかし彼らからしてみれば少量―――の血が飛び散る。一瞬怯んだラヴィエンテの隙を突いてダラ・アマデュラが絡みつき、胸元に黄金色の粒子を伴う青い輝きを灯し始めた。

 

 

「ギャァアアアアアッ!?」

 

 

 火・水・氷・雷・龍―――数多の研究者達をしてもどの属性にも定められなかった未知のエネルギーを基に放たれた熱に焼かれたラヴィエンテが苦悶の叫びを轟かせる。だが、ラヴィエンテもただ締め上げられているだけでもない。

 ラヴィエンテが反撃にと全身から赤い雷を迸らせた事によってダラ・アマデュラが絶叫し、拘束が緩む。その隙に逆にダラ・アマデュラの体に絡みついたラヴィエンテが至近距離から極大火球を繰り出そうとするが、そうはさせじとダラ・アマデュラは咆哮を轟かせる。

 瞬間―――“厄海”の出現に伴って空を覆った紫がかった暗雲を突き破り、幾つもの青光が落ちてくる。

 “凶星”―――ダラ・アマデュラが持つ能力によって、(ソラ)より落ちてくる隕石。キリシュタリア・ヴォーダイムがこの異聞帯にやって来る事で完成させた『理想魔術』をも上回る攻撃規模を以て降り注いだ無数の隕石がラヴィエンテに直撃し、堪らず絶叫を上げて極大火球の生成を中断してしまった。

 鋭い鉤爪が生えた前足でラヴィエンテの体を掴んだダラ・アマデュラは、そのまま自分ごと倒れ込むようにラヴィエンテを組み敷こうとする。しかし、ラヴィエンテが組み敷かれる直前に空中に散布させていた粉塵を爆発させた事で拘束は失敗、吹き飛ばされたダラ・アマデュラが海面に落ち、巨大な津波が発生した。

 並みのモンスターであれば容易く押し流せてしまえそうな程巨大な津波を前にし、流石のミラオスも僅かに眉間に皴を寄せて“鳳凰ガ体現セシ弓矢”を構え、番えた数本の矢をほぼ同時に放つ。

 飛翔した数本の矢は、ミラオスや彼女が率いるモンスター達を吞み込もうとした部分だけを射抜き、巨大な風穴を開けた。

 その風穴の向こう、ダラ・アマデュラは自分に喰らいつこうとしたラヴィエンテを尻尾で薙ぎ払った後、大きく開いた顎門に青い炎を灯し始める。

 起き上がったラヴィエンテが対抗するように極大火球を生成し始めるが、先に充填が完了するのは、当然ダラ・アマデュラである。

 

 

「ガァアアアアアアアアッ!!」

 

 

 膨大なエネルギーを凝縮して放たれた極大規模の閃光渦が発射され、ラヴィエンテの頭部を包み込む。

 生成途中だった火球を掻き消してラヴィエンテを吞み込んだ閃光渦を放射しながら、ダラ・アマデュラはその頭部を全方位に向けて動かす。

 周囲を舐め取るように放射された閃光渦によって蹂躙された場所は、僅かに遅れて大爆発を起こしていく。

 

 閃光渦に呑まれたラヴィエンテは、最早活動する力を失った。なにせ、先程まで頭部があった場所には、なにも無いのだから。

 

 

「ガァアアアアアアアアアアアアアアアッッッ!!!」

 

 

 地響きと津波を伴って崩れ落ち、魔力の粒子となって霧散していくラヴィエンテを前に、ダラ・アマデュラは勝利の咆哮を轟かせた。

 

 

「さっすがッ! 君を連れてきて正解だったよ♪ ありがとね♪」

 

 

 パチパチと拍手を送って称賛したミラオスに、ダラ・アマデュラは微かに頷くような仕草を見せ、その巨躯を海に沈めていく。彼の役目は、これで終わりだ。

 視線をオリュンポス船団がいた方向へ動かしてみれば、そこも既にオリュンポス船団の形はなく、先程までそこで起きていた惨劇を物語るように、船の残骸が至る所に漂っていた。

 

 

「君達もお疲れ様。後は私に任せて、君達は帰っていいよ。流石にここからは、君達も巻き込みかねないからね。引き戻されるだろうけど( ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ )、こればかりはどうしようもないから……ごめんね?」

 

 

 両手を合わせて頭を下げたミラオスを、モンスター達はじっと見つめる。彼らの視線に乗って伝えられた答えに、ミラオスは小さく「ありがとう」と返して背を向ける。

 モンスター達が一斉にシュレイド異聞帯目掛けて泳いでいく気配を感じながら、ミラオスは魔力で展開していた足場を消滅させる。

 紅く染め上げられた海水に全身が包み込まれる心地良さを感じながら、ミラオスはその身を灼熱の業火で覆う。

 

 やがて少女の数十倍にまで巨大化した炎が消えると、そこには少女の姿は無く、代わりに巨大な一体の龍の姿があった。

 

 灼熱の花弁の如き黒鱗、マグマのように赤く光るラインが走る、燃え盛る岩石のような体躯。岩盤と錯覚するかと思われるような巨大な翼の先端部と背部に連なる山のような突起には正しく『火口』と称するに相応しい穴が存在し、そこからは絶え間なく大噴火の如く灼熱の溶岩が噴き上げられている。

 紅蓮に輝く凶眼を深海に煌めかせるその者の名は―――“煉黒龍”グラン・ミラオス。

 神話において、“煉獄の王”、“大地の化身”、“獄炎の巨神”、“偉大なる創造と破壊”などと呼称された伝説は、その身に宿る心臓から全身に送られている魔力を一気に活性化させる。

 

 主が発動準備( ・ ・ ・ ・ )に取り掛かった事に呼応してか、アトランティスを覆う紅き海は眩い輝きを放ち始め、地震が起こり始める。

 

 

〔堕ちよ、生命。(おこ)れ、煉獄。遍く命は、等しく我が歩みに跪け―――〕

 

 

 目標、アトランティス―――補足。

 異聞の権能との結合―――確認。

 汎異権能―――最大励起。

 魔力量―――臨界。

 

 宝具発動条件―――クリア。

 

 

〔―――獄炎の巨神、我は煉獄を創造せし龍(グランデ・ディストラレ)

 

 

 咆哮と共に―――海が爆ぜる( ・ ・ ・ ・ ・ )

 

 彼女の領域に呑み込まれた神代の海洋が瞬く間に紅い輝きに包まれた後、数瞬の間を置く事もなく爆発。

 アトランティスに残っていた全ての島諸共、ギリシャの海洋が煉獄に灼かれ、瞬く間にその姿(カタチ)を失っていく。

 

 これこそ、生前の彼女では成し得なかった、異聞の権能を取り込んだ事によって成り立つ宝具。生前は精々周囲のテクスチャを塗り潰し、余分な要素である島々や大陸を沈める能力だったそれは、異聞の力を取り込む事でその在り方を変えた。

 

 其は、煉獄による焼却。紅蓮による廃絶。厄災の海域による破滅。そして新たな地を創り出す―――テクスチャの剥奪と創造( ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ )

 

 通常では長時間をかけて行われるはずの破壊と創造を、ほぼ同時に実行する事を可能とした宝具により、アトランティスは壊滅。

 最早そこには、神々の支配する海や島の痕跡は無く、辺り一面には元からそうだったかのように、新たな海域が姿を見せていた。

 

 そこにあるものは、支配も隷属もない、ただ純粋に生を謳歌する生物達の楽園。

 

 粘土に空けた穴を、周囲の粘土を寄せ集めて補完するように―――アトランティスの海はシュレイドの海へと変貌を遂げていた。

 

 

〔嗚呼、お姉様ッ! 私達の祖ッ! 私達の主ッ! ミラオスは果たしましたッ! 貴女の(いもうと)は成し遂げましたッ! アトランティスは既に私の、いえ―――貴女のものにッ!! アッハハハハハッッ!!〕

 

 

 光も届かぬ深淵を連想させる海の底で吼えた龍が跳躍する。

 その短い両足からは想像も出来ぬ脚力を以て瞬く間に巨体を打ち上げた彼女は、浮上する途中でその身を炎で覆い尽くし、少女の姿(カタチ)を取る。

 

 巨大な水柱を立てて海中から飛び出したミラオスの全身が、己の宝具によって創り変えた( ・ ・ ・ ・ ・ )海の情報を会得する。

 (ソラ)から来訪した忌々しい神々(ガラクタ)の気配は感じない。彼らに隷属する人々の気配も失せた。代わりに、各々の生涯を過ごす海洋生物達の鼓動が聞こえてくる。

 

 

「ハハハハハ……アーッハッハッハッハッハッッ!!」

 

 

 滅ぼすべき害悪を文字通りの“消去”に成功した事実を再確認し、清々しい気分のままに笑う。

 狂気をも感じさせる高笑いがシュレイド海洋の上空に響き渡る中、彼女が厄海を解除した事で爽やかな青色を取り戻していた空が、再び暗雲に覆われ始める。

 

 

「……来たッ! 来た来た来た♪ 待ってたよ―――お姉様ッ!」

 

 

 遥か彼方に見える小粒のような大きさの大陸から飛んでくる、無数の影。

 シュレイド王国を中心に広がる異聞の大陸から一斉に飛び立ったであろう龍達を率いるように、一体の黒き龍が雄々しい翼を羽ばたかせている。

 その背中に乗っている少女こそ、ミラオスや彼女の兄妹、そしてあらゆる龍/竜種が絶対の忠誠を誓う存在―――アンナ・ディストローツである。

 

 

「ミラオス~ッ! ちゃんと仕事果たして偉いね~ッ! 後でいっぱい撫でてあげるから、次もちょっと手伝ってもらってもいいかな?」

「もちろん♪ お姉様の為だったら、なんだって出来ちゃうもん♪」

 

 

 降下した龍―――“黒龍”ミラボレアスの背に降り立ち、敬愛する主の前に腰を下ろす。

 

 

「あれ? 下兄様とアルバは?」

「あそこだよ」

 

 

 アンナが後方に人差し指を向ける。

 ミラオスがそちらに視線を向けてみれば、“鋼龍”クシャルダオラと“冰龍”イヴェルカーナの背に、それぞれ人の姿を取っている兄妹達が見えた。

 

 

「今回ばかりは全力で取り掛かる必要があるからね。“王”の守護は二つ名や歴戦王、希少種の子達に任せたよ。これ以上ギリシャ異聞帯に好き勝手させるわけにはいかないからね」

「ハハハッ! そうだよねそうだよねッ! じゃあ私、次も頑張っちゃうねッ!」

「期待してるよ、ミラオス。―――さぁ……」

 

 

 “黒龍”の動きが止まり、アンナの視線がこのシュレイドの海に唯一残った異物を捉える。

 『虚ろの穴(ビッグホール)』。残るギリシャの神々が潜み、そしてアンナの目的の人物が待つ星間都市へと続く道。それを見下ろしたアンナが口角を僅かに上げた。

 

 

「ボレアス、あの穴に飛び込んでッ! 忌々しい異聞の神々を、滅ぼそうッッ!!」

〔了解。皆の者、私に続け〕

『グォォオオオオオオオオオッッッ!!!』

 

 

 ミラボレアスが『虚ろの穴(ビッグホール)』に飛び込み、その後に他の古龍達が続く。

 “黒龍”の顎門から放たれた灼熱の業火がオリュンポスへの侵入者を阻む渦潮を瞬く間に蒸発させていく。やがて大穴を抜けた彼らの先に、およそ汎人類史の技術では建設不可能な都が現れる。

 

 星間都市山脈オリュンポス―――ギリシャ神代より現代まで続いてしまったが故に誕生した、神々の都。

 

 およそ地下に存在するものとは思えぬ光景に、思わずアンナ達が呆気に取られた、その瞬間―――

 

 

               

『 堕ちよ 』

 

              

『 龍の祖よ 』

 

 

 蒼き稲妻が迸る。

 “黒龍”の背後に続く古龍達の一切を無視して飛来した雷は不規則な軌跡を描いて、彼の背に乗る少女目掛けて一斉に襲い掛かった。

 

 

「……ッ、姉様ッ!!」

 

 

 しかしそれを、炎や氷が溶け込んだ稲妻が打ち払う。

 自分を護ってくれた妹―――アルバに強く頷いたアンナは、自分達の前に広がるオリュンポスを睨み、叫ぶ。

 

 

「その声……やっぱり君がここの王なのね―――ゼウスッ!!」

 

 

 アンナの叫びに応えるように、再び雷霆が轟く。

 

 

               

『 然り 』

 

 

     

『 其方と再び見えるとは思いもしなかった 』

 

 

           

『 白き巨神との戦い 』

 

 

   

『 其方の奮闘が無ければ、我々に勝ち目はなかった 』

 

 

       

『 あの時の礼を言いたいところだが 』

 

 

        

『 其方は余の知る彼女ではない 』

 

 

    

『 このオリュンポスが滅びる要因となる以上 』

 

 

          

『 捨て置く事は出来ぬ 』

 

 

          

『 せめてもの情けとして 』

 

 

         

『 苦痛無き死を与えよう 』
 

 

「冗談じゃないわ。こっちの私( ・ ・ ・ ・ ・ )の後釜に収まって人類を支配したくせに、よくもそんな口が叩けたわね。いいわ。だったらこっちの貴方にも教えてあげる」

 

 

 ゼウスの雷霆が迫る。先程よりも高密度と高威力を以て襲い来るそれを前に、アンナは両手に緋雷を纏わせる。

 弟妹達の現界維持に回している魔力を全て自身に送り込み、緋色の雷霆を放つ。

 

 激突した蒼白と緋色の雷霆は、互いを潰し合うように絡みつき、やがて大爆発と共に相殺した。

 

 

「貴方が神として認識される前、その力は私のものだった」

 

 

 バチバチと弾ける緋雷が迸る腕は、穢れを感じさせぬ純白の龍腕。

 

 

「全知全能にして正義の神、ゼウス。貴方の雷霆は―――」

 

 

 禍々しさと神々しさを兼ね備えた翼をはためかせ、“黒龍”の背から飛び立ち―――

 

 

私より弱い( ・ ・ ・ ・ ・ )

 

 

 緋き龍の霊眼に獰猛な輝きを灯し、龍達の祖は静かに吼えた。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。