どうも、皆さん。
最近、暇な時間を見つけてはイラストを描いている作者、seven774でございます。
私、pixivやTwitterでイラストを投稿しているのですが、昔pixivに投稿していたラーヴァ・ティアマトのイラストが90名の方にブックマークされていた事を知り、嬉しくなりました。まだまだ未熟な自分が描いたイラストでも、評価が貰えるのは嬉しいですね。ですがまだ塗りが不得手なので、改めて教材を読み込んで実践してみますかね……。
今はプロセカのキャラクターを描いているのですが、描き終わったらリンクを載せましょうかね……? 時間が空けば、この作品の挿絵とかも描いてみたいですねぇ。
それでは本編、どうぞですッ!
「アルテミット・ワン―――“祖龍”ミラルーツ……」
ストーム・ボーダー内にて、モニターに記録された映像を睨むように見上げるホームズ。
彼や立香達の視線の先には、先程ギリシャ異聞帯に現れた『異星の神』ことUーオルガマリー目掛け、他の“禁忌のモンスター”と共に集中砲火を浴びせている白き龍の姿が映っている。
Uーオルガマリーの自己紹介を不意打ちの雷撃で遮り、畳み込むように散々罵倒をした後に己のサーヴァントと共に彼女を撃退したアンナ―――ミラルーツは、対象が眼前から消え失せている事に気付くや否や獰猛な咆哮を轟かせている。
それは、決して勝者が上げる
結果として、Uーオルガマリーは降臨直後にも関わらずこの星最強の存在と直面し、尻尾を捲いて逃げる事になった。
しかし、Uーオルガマリーの姿が自分達の知る人物と全く同じであるからか、立香とマシュは心のどこかに安堵の感情を抱いていた。
「ねぇ、ホームズ。そのアルテミット・ワンってなに?」
ホームズが口にした単語に頭頂部に疑問符を浮かべた立香が問いを投げかける。
それに対し、ホームズは真剣そのものといった表情で答えた。
「この地球上において最強の生物の名称だよ、ミス・立香。一説によると、その力は単体で一つの星の生命体を滅亡させる事も可能だそうだ」
「それは、ビーストとは違うの?」
「大分異なるね。クラス・ビーストはあくまで人類が生み出した七つの業が
「ええい、マシュッ! 私はこの中で最も奴と関わっているのは貴様だと思っているが、どこか人外じみた様子は見られなかったのかッ!?」
『異星の神』の出現。そしてアンナ・ディストローツの正体。この二つの出来事がほぼ同時に襲ってきた事に動揺しているのか、声を荒げて訊ねてくるゴルドルフに、マシュは「す、すみません」と咄嗟に頭を下げた。
「あの時のアンナさんから、あまりそういった印象はありませんでした。時々……そう、本当に時々ですが、我々を動物を見るような目で見ていた時もありましたが、それも本当に一瞬の事でしたので……」
『なんだか、大変なことになりましたねぇ……』
そこに、“彷徨海”から通信してきているシオンの声が艦内に響く。
流石に彼女もこのような事態は予測していなかったのか、その声はどこか疲れたようにも、これから先の未来に対する面倒さに辟易しているようにも感じられる。
「シオン……」
『まぁ、なにはともあれ、大西洋異聞帯の攻略、お疲れ様でした。不測の事態こそ起こってしまいましたが、こうして皆さんと無事に会話できている事を嬉しく思います』
「……ありがとう」
“祖龍”達が映っているモニターが横にスライドし、そこに新たに追加されたモニターに映し出されたシオンの労いの言葉を、立香は小さく微笑んで受け取った。
『ですが、気持ちは切り替えねばなりません。酷な事を言うようですが、問題はまだまだ山積みですからね』
「その通りだね。アトランティスを経て、オリュンポス……結果的に、大西洋異聞帯の空想樹は消滅した。けれど、地球の成層圏を覆う空想樹の枝は消えず、『異星の神』が降臨。しかも、あろう事か『異星の神』は人類悪―――ビーストⅦの霊基で
ダ・ヴィンチの言うように、『異星の神』ことUーオルガマリーは己の使徒として召喚していた二騎のアルターエゴを回収した後にオリュンポスから離脱した。標的を取り逃した“祖龍”も、最早あの地に残る意味は無いとばかりにカドックを始めたクリプターを連れて、オリュンポスの街を破壊し続けていた古龍群を率いて離脱していった。
Uーオルガマリーも“祖龍”達も、互いの事しか眼中になかったのが幸いした。もし片方がカルデアに狙いを付けようものなら、その時点でカルデアの旅は終わっていた事だろう。
現在、虚数潜航によって“彷徨海”への帰路に就いているが、その場にいる者達に異聞帯攻略を素直に喜べる者はいない。
その理由は、ダ・ヴィンチが目を伏せて口にしてくれた。
「問題は『異星の神』の姿と名前だよね……」
「地球国家元首、Uーオルガマリー……」
肩書は平時に聞けばギャグ的要素。名前の時点でも“彷徨海”カルデアベースにいる謎のヒロインXなどといったサーヴァントを連想させられるものだが、決して笑えるような話ではない。いくら肩書や名前がアレでも、彼女がそれを名乗るに相応しい力を備えているのは明白だったからだ。
「私も資料で知っているッ! あれはオルガマリー・アニムスフィアの顔だッ! だが、彼女は人理焼却事件の切っ掛けとなったカルデア爆破事件直後に故人となっているッ! いったいなにがどうなっているのか、てんでわからんッ! それともあれかね? やはりカルデアが全ての元凶なのかねッ!? 私は人類を滅ぼそうとする組織を一世一代の大博打で購入してしまったのかなッ!?」
「それは……私達にもわかりません」
最後には顔面を青白くしたゴルドルフに対し、マシュは強気に反論する事は出来ずに俯くしかない。
『人理保障機関』という名前を持っているカルデアではあるが、創設者であるマリスビリー・アニムスフィアの目的は未だによくわかっていない。人理保障こそが目的、というならばまだいいだろうが、それが本当に信じられるかどうかは話が別なのである。当の本人も既に拳銃自殺によってこの世を去っているため、当人に確認する事も出来やしない。
「ですが、あれは本当にオルガマリー所長なのでしょうか?」
「そうだね。君達の反応と彼女の反応。全く別人という程食い違ってはいないが、同一人物とするには差異が多すぎた。第一として、彼女はオルガマリー前所長の姿で出現し、その名称を自ら名乗った。第二として、彼女の霊基は人間のものではなかった。ビーストとして顕現したのは確かだが、当然、英霊でもなければサーヴァントでもない。第三として、彼女は君達を知らなかったし、地球の文化、言語にも不慣れのようだった」
以上の事から、ホームズはUーオルガマリーが、ビーストⅠ―――ソロモン王の遺体を利用して活動していた魔神王ゲーティアと同じタイプのビーストだと考察した。
「つ、つまり『異星の神』は前所長であるオルガマリー・アニムスフィア……時計塔の
「フォーウ」
そんなわけあるか、とばかりに一鳴きするフォウ。
と、そこで、その場にいたゴルドルフ以外の全員が、先のUーオルガマリーの衣装を纏って高笑いしているゴルドルフの姿を想像してみた。
結果―――地獄のビジョンが脳裏に浮かんだ。
『キッッッツッ!!』
「今なんかすっごい失礼な事考えてなかったッ!? ねぇ、今何考えたのッ!? ねぇッ!」
精神に大ダメージを受けた立香達とゴルドルフの叫びがストーム・ボーダー艦内に響き渡る。それ程までにゴルドルフ(Uーオルガマリー衣装ver.)はキツかった。いったい、誰が女装した髭の生えたおじさんに喜びを見出せるのだろうか。もし見出せるとしたら、その人物は余程の変態だろう。
「所長、落ち着いてください。未知の存在は確かに恐怖を発生させやすいものですが、少なくとも我々は彼女を知っている。オルガマリー・アニムスフィアという人物を。『異星の神』が彼女の姿を取った事には必ず理由があるはずです。……そしてこれ以上、我々にあのキツイ姿を想像させないでいただきたい」
「今キツイって言ったねぇッ! いったいなにを想像したというのだねッ!?」
「幸い、“彷徨海”のカルデアベースにはアニムスフィアのデータも移されている」
「え、無視……?」
「彷徨海に戻り次第、データを検証しましょう」
「私の声、聞こえてる……?」
「……真実を探る為の手掛かりは、あるはずです」
「経営顧問は、流石に冷静だな……。なのに、なんで無視するんだよぅ……」
「よしよし」
己の問いかけに応えてくれなかった事が響いて項垂れるゴルドルフの頭を、ダ・ヴィンチが優しく撫でる。それによって多少気持ちが回復したのか、ゴルドルフは「その、あれかね……?」とホームズに訊ねる。
「今しがた受け取った報告によれば、ゼウスの雷で思考力を減退させられたそうだが……今はどうなのかね。だ、大丈夫なのかね? それともまだややアホなのかね?」
「アフォウ?」
「ご心配なく。思考力は概ね正常に戻っています。まぁ、思った事を即座に口にして思考・行動する、という経験を得られたのは、私にとって貴重な―――」
「それはともかく、だよ。相当の無理をしたんだろう、君ッ! 窮地の連続を乗り越える為に、宝具を稼働させっぱなしだったのはバレてるからッ!」
ホームズの言葉を遮ったダ・ヴィンチは、そのまままくしたてるように言葉を続けながらホームズの背を押していく。
「さっさと回復ポッドに入りたまえよ。あれこれ私達と話し合うのはその後ッ! いいねッ! 立香ちゃんとマシュもッ! それに、私達も休まないとね」
「う、うむ。そうだな。アトランティスからオリュンポス……過去最大の作戦だったのだ。問題は山積みだが、今は頭を空っぽにして休んでも良かろう」
「うんッ! ……じゃあ、改めて。立香ちゃん、マシュ。第五異聞帯攻略は完了だ。まずはゆっくりと休養して。それが、今の君達の仕事だからね。ホームズの調子が戻ったタイミングで、詳しいミーティングをしよう。本当にお疲れ様。今回もありがとうッ!」
「こちらこそ、ありがとね」
「ダ・ヴィンチちゃんも、しっかり休んでくださいね」
「ありがとう♪」
『では、“彷徨海”で会いましょう。それまではさらばですッ!』
そうして立香とマシュは、ダ・ヴィンチ達に見送られて退室し、各々の部屋に向かっていく。
「……あの、先輩。お部屋に戻る前に、少しだけよろしいでしょうか?」
「どうしたの?」
「……『異星の神』。個体名・Uーオルガマリーについてなのですが……先輩はどのようにお考えですか?」
長い旅を共にしてきた後輩からの問いかけに、立香は歩みを止めて彼女を見る。
「ホームズさんは、あくまでオルガマリー所長の姿を模した偽物、という認識でしたが……。私は、その……」
「……あれ、やっぱり所長だよね」
「で、ですよねッ!? その、全く根拠はないのですが、私も同じ感想を抱きましたッ! どうしてかはわかりませんが、Uーオルガマリーは、オルガマリーさんだとッ!」
「うん。だから、実のところ問題はもっと大きい」
「? と、言いますと?」
「だって……どうやったら助けられるか、考えないと」
マシュはともかく、立香が彼女と過ごした時間は少ない。最初の特異点、冬木以降は今の今まで彼女と関わる事は無かった。
しかし、だからといって倒すという気持ちにはなれなかった。一度関わり、あの炎に焼かれていく彼女の姿を目にしてしまった以上、もう一度であった彼女は、今度こそ助けたい。それが立香の決意だった。
「……はいッ! その通りです、マスターッ! なにが出来るのか、なにをすればいいのか。これから考えないといけませんが―――倒す為ではなく、取り戻す為に、私は戦いたいと思いますッ!」
「一緒に頑張ろうね、マシュッ!」
「はい―――ッ!」
強く頷き合った二人は、固い握手を交わす。
アデーレ、マカリオス、エウロペ、そして武蔵。自分達に後を託していったのだ彼らから受け取ったバトンを手に、ゴールまで走り続けなければならない。
あの時救えなかった命を、今度は必ず救い出す―――その決意を胸に、二人はこれからも戦い続ける事を心に誓ったのだった。
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突如として
例えば、この住宅街。
近くに掠れながらも辛うじて『泰山』と読める看板が転がってる以上、恐らくアジア系国家のどこかだと思われるその場所に、彼らはいた。
「はむっ……んっ、んっ……はぁ……。ぐ……、ふふっ……」
「…………」
「はぐっ、んっ……はっ、はっ……」
襟元を緩め、鍛え上げられた肉体がその奥から微かに見える男―――言峰綺礼を前に、彼の同僚であるアルターエゴ―――千子村正が椅子に座っている。
息を荒げ、額から玉のような汗を流している言峰の前には、真っ赤に染まった液体に浸かった野菜や豆腐が見える料理―――麻婆豆腐がある。木造のスプーンを相棒にその如何にもな料理に挑戦している言峰に、村正はどうすればいいのか言葉に迷っている様子だ。結果、彼はなにか話題を出せないものかとじっと麻婆豆腐を頬張っている言峰に視線を向けている。
それに気付いた言峰は、スプーンを沈ませた麻婆豆腐から村正に視線を移し、また視線を麻婆豆腐に戻す。そして、一匙麻婆豆腐を掬うと、
「食うか?」
「食わねぇよ」
開口一番に出された言葉に、即行で村正はそう返した。
なぜ、あんな煮立った地獄の窯のような麻婆豆腐が食えるのか。それも凄い勢いで。
傍らに置いてある水の入ったコップなど眼中にないかのように麻婆豆腐をかっ食らう言峰の気迫たるや、強いて表すならば修羅、といったところだろうか。
そして恐らく、この男は
自分にあの地獄の窯同然の料理を食えるだろうか。いや、絶対に食えない。絶対に一口でリタイアする―――片眉を吊り上げて麻婆豆腐を凝視する村正がそう考えていると、
『そんなものを食べて平気なのか……?』
今まで黙っていた彼女―――Uーオルガマリーがあり得ないものを見るかのような目で言峰に訊ねた。
「えぇ。以前、シュレイド異聞帯を訪ねた際、アンナ・ディストローツより受け取った唐辛子から作ったものです。流石は超古代の神秘。植物にさえその神秘が深く染み込んでいる。私がこれまで食べてきた中でも、最高の一品と称しても良いでしょう」
『……わからん。なぜ、そんな見るからに劇物だとわかるようなものを進んで摂取するのか。本当、人類って理解できないわね……』
アトランティスが残っていれば、そこの神殿あたりで地球人類の記録を閲覧し、その知恵を深める予定だったのだが、生憎とアトランティスは“煉黒龍”によってシュレイド異聞帯に塗り替えられ、同時に神殿も消失してしまった。
ならば、この場所に残っている書物から多少の知識は集めておこうと思っていたのだ。なのに、なぜ、今自分は己が召喚した使徒が食事しているところを眺めているのだろうか。Uーオルガマリーは頭がこんがらがっていくのを感じた。
「ところで、『異星の神』さんよ」
腕を組んでむむむ、と唸り始めた主に助け舟を出すべく、村正が口を開く。
「
『あるとも。今回、私は排除せねばならない脅威を知った。一つは空想樹すら焼きかねなかった光の槍、そして、この星の
この星において最強の霊基を得て現界したと思っていたUーオルガマリーだったが、それは彼女―――アンナ・ディストローツの存在によって覆された。彼女の雷撃は、文字通り万物を消滅させる一撃。直撃すれば如何に自分といえども消されかねない。実際に、本気ではなかった一撃だというのに、自己紹介を遮られた際に打たれた一撃によって、シュレイド異聞帯への移動・攻撃が出来なくなってしまった。『シュレイド異聞帯への干渉』という概念を文字通り消滅させられてしまったのである。仮に取り逃したとしても、自分の管理する異聞帯には指一本触れさせないつもりなのだろう。まんまと術中にハマってしまったというわけだ。
そちらについては後々なんとかするとして、今解決できる問題は今解決しておいた方がいいだろう。
『千子村正、お前には光の槍の出処―――ブリテン異聞帯へ向かってもらう。現地の調査と、破壊工作を兼ねてな。準備が出来次第、転移させてやる』
「そうかい。ま、新しい仕事が貰えるのは良い事だ。精一杯働かせてもらうぜ。……で、テメェは?」
「……む?」
未だに麻婆豆腐を食っていた言峰がUーオルガマリーと村正の視線に気づき、懐から取り出したハンカチで口元を拭ってから答える。
「私も、これが終わり次第に発つ。アンナ・ディストローツ―――“祖龍”ミラルーツは最強の存在。ならば、それに対抗し得る強固な器を調達しなければならない」
「? 最強の器は既にあるんだろ? なら、それ以上の器なんざどこにもねぇぞ?」
「それがあるのだよ。太古の昔、この惑星に飛来した外来の種はアトランティスの機神だけではない。広大な
不敵な笑みを伴って告げられた言葉に村正が目を見開き、Uーオルガマリーが邪悪な笑みを浮かべる。
先程は不覚を取ってしまったが、次会った時こそ彼女の最後。遥か遠き
自らの血の池に沈む“祖龍”の姿を想像してほくそ笑むUーオルガマリーを他所に、麻婆豆腐を食べ終えた言峰はそれを脇に退け、
「そして我々も、此れより最強に挑む」
『「えっ」』
新たに取り出された器。
そこに載せられたのは、先程言峰が食していた麻婆豆腐よりも更に強烈な刺激臭を放つ劇物。赤を通り越してドス黒いまでに染まりきったスープに浸かっている、所々に赤いナニかを付着させた麺。
「これぞ、麻婆ラーメン・キャロライナリーパー100%。この最強を乗り越えてこそ、我々はより高次へと至る事が出来る」
驚愕と恐怖に慄く一柱と一騎の前に、淡々と一個ずつ麻婆ラーメンを配っていく言峰。まさか、と無言で言峰を見やる彼らに対し、言峰は笑っていた。
「共に挑もうではないか。最強の上を行く最恐に」
それは、戦地に赴く兵士が浮かべる最後の笑みか。
それとも、自らの死期を悟った者が浮かべる諦念の笑みか。
否、断じて否。
「さぁ、手を合わせて」
言われるがままに、手を合わせてしまうUーオルガマリーと村正。本能では今すぐ逃げたいと思っているのに、なぜだか体が言うことを聞かない。まるで糸で吊るされた操り人形が如く。
(どうしてッ!? どうして逃げられないのッ!? なんで体が勝手に動くのッ!? 嫌よ、死にたくないッ! 折角の登場シーンを荒らされて、最後はこの劇物を食べさせられるなんてぇッ!)
(クソッ……ここまでなのかよぉ……ッ! せめて最後にゃ本物の草薙を拝みたかった……ッ!)
「―――いただきます」
『「―――……いただきます」』
互いの冥福を祈るように合掌し、彼らは死地へと足を踏み入れていく。
刹那、純白の大地に轟く絶叫。地獄に存在する全ての罰を一気に受けたかのような凄惨たる悲鳴は二つあり、その内の一つである女性の悲鳴は、それはもう耳を塞ぎたくなる程のものであった。
―――一つだけ、告げる事があるとすれば。
Uーオルガマリーと村正に麻婆ラーメンを出した言峰が浮かべていた笑みは、それはもう愉悦に染まりに染まっていたそうな。
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一方、シュレイド異聞帯。この地の管理者の行動によりUーオルガマリーの脅威から完全に護られる事になった、ある意味の安全地帯と化した世界の中心―――シュレイド城の一室にて。
「つまり、アンナはあの“白き王”―――“祖龍”なの……? あの御伽噺の……?」
「……うん。そうだよ。私の名前はミラルーツ。全ての竜と龍の母。そして、この地球のアルテミット・ワン」
老朽化している影響を受けて所々にヒビが入っているも、使う分にはまだ申し分ない円卓に座したオフェリアからの質問に、アンナは少しの間を置いて答えた。
否定の言葉もなくハッキリと告げられた返答に、オフェリアは「そう……」と呟いて俯いた。
(まぁ、そうなるのも当然だよね……)
時計塔時代からの親友で、初めて自分を魔眼以外の点で見てくれていた相手が、実は人ならざる存在―――それも幻想種の頂点に君臨する存在だとは夢にも思わなかっただろう。
アンナも出来るならもう少し早めに伝えておきたかったのだが、これまでの過去を鑑みても、やはり正体を明かすタイミングはオリュンポスが一番だった。
視線を動かしてみれば、カドックもまた同じような顔をしている。前から自分の正体を知っているペペロンチーノは心配げな顔でカドックとオフェリアを見つめている。
やはり、ショックが大きいか―――そんな事を考え、アンナが口を開こうとした刹那、意外な所から声が上がった。
「辛気臭い顔してんじゃないわよ、二人共」
その声に、その場の全員の視線が動く。
彼らの視線の先―――珍しく話し合いに参加した芥ヒナコ―――虞美人は、赤と黒が丁度良いバランスを保っている露出の多い服を恥ずかしげもなく晒し、右手を軽く振って続けた。
「私が正体を明かした時なんか、すぐに受け入れてくれたじゃない。それがなに? アンナが正体を明かしただけでなんて顔してるのよ。人外だからって抵抗感でも持ってるつもり?」
「……そういうわけじゃない。ただ、色々と気持ちの整理が追い付かないだけだ」
「えぇ……。でも、なんとなくだけどわかってはいたの。アンナが私達とは違う存在なんだっていうのはね」
オリュンポスで初めて龍の翼などを生やしていたアンナを見たカドックは兎も角、オフェリアは北欧異聞帯で四肢を龍のそれに変質させていたアンナを見ている。また、シグルドとブリュンヒルデが彼女と面識がある、という観点から見ても、彼女が常人とは比べ物にならない時間を生きている事はわかっていた。
流石にその正体が御伽噺にごく一文でしか語られていない存在だとは思ってもみなかったが、それでもこの事実を受け止める事は出来ていた。
「あっ、勘違いしないでね、アンナ。私は別に、貴女に恐怖心を抱いているわけじゃないの。ただ、色々と情報が多すぎて……」
「ごめんね……。その、色んな情報を一気に与えちゃって」
「別にいいさ。時計塔時代にあんたが出してきたテキスト集と比べたら簡単に理解できるぐらいだ」
「ふふっ、もしかして、あの時の事まだ根に持ってる?」
「当たり前だ。なんだったんだよあれ。応用を効かせて解く問題ばかりならまだ良かったのに、後半にまだ教わってない問題連発してきたじゃないか。僕がどれだけ頭を悩ませたと思ってるんだッ!」
「でも私が教え始める前と比べたら大分正解に近づいてたじゃん。最初の頃なんか掠りもしてなかったんだから、あの回答は君が成長した証だよ」
「……まぁ、その点は感謝してるが」
「あらあら、すっかりいつもの調子ね。心配するまでもなかったかしら」
正体を知る前と同じ調子でアンナと会話し始める二人の姿に、ペペロンチーノが頬に手を当てて微笑んだ。
虞美人も背もたれに寄りかかり、小さく息を吐いてから頬杖をついた。
「まぁ、良かったんじゃない? これで貴女も、私のように正体がバレるのを気にせずに過ごせるわね」
「さっきの言葉……もしかして私の為に?」
「勘違いしないで。あれはカドック達の態度が気に入らなかっただけ。貴女の為じゃないわよ」
そう言ってそっぽを向く虞美人だが、微かにその耳は上気しており、視線もチラチラとアンナに向けている。
その仕草にアンナは満面の笑みになり、椅子から立ち上がる。それになにやら嫌な予感を感じた虞美人が席を離れようとするが、時既に遅し。
「ぐっちゃん……ありがとうッ!」
素早い動きで机から跳んだアンナは、そのまま固まっている虞美人の元へダイブ……しようとしたのだが、それを阻止する者がいた。
「ぐぇ―――ッ!」
「ったく、ガキかテメェは」
アンナと虞美人の間に出現した褐色の女性が、真横を通り過ぎていくアンナの襟首を掴み取った。その影響で一気に気道を圧迫されたアンナの口から普段の彼女からは出ないような
「……ありがとう、カイニス」
「ケッ。長い付き合いなんだろ? もうちっと早く動けよな」
「けほっ、けほっ……酷いよ、カイニス。ぐっちゃんに抱き着けなかったよ」
「抱き着かなくていいのよ。気持ちだけ貰っておくわ」
「はぁ、残念……」
カイニスの妨害によって抱き着かれずに済んだ虞美人が席に座り直し、抱き着く気が失せてしまったアンナも元の席に戻った。
カイニスは霊体化を解いた場所から動かさず、その視線をアンナに向け続けている。
その視線に応えるように、「それで」とアンナは両手を組んでカイニスを見つめ返した。
「君がここに来たって事は、
「……あぁ」
『異星の神』改めUーオルガマリー撃退後、崩落していくギリシャ異聞帯から脱出したアンナ達は、まず最初にキリシュタリアの遺体を埋葬した。
シュレイド城の中庭―――野生のモンスター達に掘り起こされる事がなく、また誰もが安全に行ける場所に埋められたキリシュタリアの体は、いつか地中の微生物達によってその体を分解され、何時の日か自然へと還っていくだろう。
それぞれが別れの言葉を言っていく中、一番悲痛な思いになっていたのはオフェリアだ。異聞帯同士が激突し、それぞれのクリプターが戦わなくてはならないのは最早止めようのない事実だった。それでも、なにか別の方法はあったのではないか、と考えざるを得ない。しかし、自分の想い人はこうして永久の眠りに就き、今はこうして冷たい土の中にいる。
嗚咽を漏らし、みっともなく泣き喚いたオフェリアが落ち着きを取り戻した後、アンナはカイニスにある提案をした。
『私達と一緒に、あの蛆虫―――Uーオルガマリーを殺さない?』
Uーオルガマリーの打倒。それを目的とするアンナの誘いに対し、カイニスはすぐに答えは出せなかった。
今回の主であるキリシュタリア・ヴォーダイムが命を落とした以上、カイニスははぐれサーヴァント同然の存在となった。幸い、シュレイド城には至る所に魔力の結晶である龍結晶があるため、それらから得られる魔力によって現界し続ける事は出来る。だが、この城から離れてしまえば、いつかは魔力切れによって消滅してしまうだろう。
サーヴァントの在り方としての正解は、ここでアンナを主に戴き、彼女のサーヴァントとして活動する事だろう。
けれど、カイニスはそれに頷く事はしなかった。……するつもりがなかった、と言った方がいいかもしれない。
押し黙るカイニスに、彼女がその反応をする事が予想できていたアンナは、「答えは時間をかけて出してもいい」とだけ残し、この円卓の間へと向かっていった。
そのカイニスがこの部屋に現れたという事は、アンナの提案に対する答えを返しに来たのだろう。
「……受け入れるぜ、テメェの提案。あのふざけた女にはしっかり逆襲してやりてぇからな」
「わかった。それなら―――」
「―――ただし」
アンナの言葉を遮ったカイニスは、彼女に人差し指を突きつけて続けた。
「テメェと契約は結ばねぇ。もちろん、ここにいる全員ともだ」
「理由を聞いても?」
「今回のオレのマスターは、キリシュタリア・ヴォーダイムただ一人だ。あいつ以外は絶対にマスターと認めねぇ。……これでいいか? “祖龍”」
「……うん、わかった。君の意見を尊重するよ、カイニス」
立ち上がったアンナは席を飛び越え、カイニスの前に立つ。そして、彼に手を差し出し、小さく笑みを浮かべて口を開く。
「シュレイド異聞帯にようこそ。これからよろしくね、カイニス」
「……あぁ、よろしくな、アンナ」
差し出された手を固く握り締め、カイニスは軽く頷くのだった。
「……それで? オレは最初になにをすりゃいいんだ? これも契約だ。一応はテメェに従わせてもらう」
「急ぎの用ではないけど、そうだな……。それじゃあ、素材集めからいこっかな」
「は?」
ボソッと聞こえた言葉に、カイニスは豆鉄砲を喰らったような顔になった。
「おい、まさかオレにガキみてぇにお使いに行けって言うのかッ!? ここはこう、あるだろッ!? この異聞帯中の監視とかッ!」
「監視については古龍達に任せてるからねぇ。人間達の住んでるコロニーについては、時間はかかるけど“我らの団”に頼んでるし。となると、残りは素材集めなんだよね」
「マジかよ……」
多数の
「そんなガッカリしないでよッ! 素材集めといっても、凄い大事な仕事なんだからね? 生活するにも狩りをするにも道具は絶対に必要で、それを作る為の素材はもっと大事なもの―――謂わば生命線の生命線だからね。君には明日から、カドック君達と一緒に行動してもらうよ。行先はシュレイド王国近くの森だから、魔力切れの心配は一先ずしないでいいよ。もしかしたら大型モンスターと遭遇するかもしれないから、油断はしないでね」
「……わぁったよ」
かく言うカイニスも、生前は『モンスターハンター』を読んでいた身だ。そこまで戦闘狂というわけではないが、あの頃に思いを馳せていた大自然に闊歩する大型モンスターと戦ってみたいという気持ちはもちろんある。それが出来るかもしれないという期待を胸に、カイニスは渋々と素材集めを受け入れた。
「みんな、明日から忙しくなるよッ! 素材集めが終わって、必要な道具を作り終えたら出発だからね」
「出発って、どこに……?」
首を傾げた
「この星を滅ぼさんとする『呪い』の根源―――ブリテン異聞帯だよ」
その返答に、その場の誰もが身を引き締めるのだった。
次回はラメールの幕間とプロフィールです。
一応軽く書いてはいるのですが、少し百合要素が入るかもしれませんねぇ。あれを百合要素と言っていいかはわかりませんので、あまり期待はしないでほしいです。
その後は何話か日常回(それとエリシオ&ジーヴァsideの話)を入れ、その後妖精國編です。
それでは皆さん、また次回お会いしましょうッ!