fgo7周年、おめでとうございますッ! そしてアルクェイド実装ありがとうございますッ!
皆さんはもうアルクェイド当てましたか? 私は今度来る水着プーリンの為に温存する事にしたため、一人当てて撤退しました。しかし三十連程で出たせいか、マーリン狙いの福袋ガチャは見事に外れ、水着ネロと水着マリーが当たりました……。
今回より妖精國編です。原作ではあまりにも残酷な結末を辿った彼女達がどのようなストーリーを歩む事になるのか、楽しみにしていてくださいッ!
それではどうぞッ!
ブリテン異聞帯―――通称、妖精國ブリテン。
最果ての地より帰還した一人の妖精による恐怖統治が敷かれた、妖精達の楽園。
妖精達の習性によって成立したこの島であるが、島としての形を持つ以上、そこには砂浜が存在する。
そこに立つ、サーヴァントが一騎。
褐色の肌に、頭部からは動物の耳が見える。
白いが、老いを感じさせぬ短髪を持つその者の名は、カイニス。
アンナ・ディストローツの願いを受け、彼女よりも先んじてこの異聞帯に足を踏み入れていたサーヴァントである。
彼がこの場所にやって来てから、そろそろ三十分。
汎人類史であれば丁度日が顔を出している頃だろうが、生憎とこの妖精國に『朝』という概念は存在しない。
この國の空は、統治者である女王の帰還と共に現れた古龍種によって変質してしまっている。
雲間から覗く月が煌々と輝く、禍々しい血の色をした空模様。それがこの妖精國ブリテンにとっての、
「……そろそろか」
組んでいた腕を解き、閉じていた瞼を開ける。
そんなカイニスの目の前で、突如として
周囲の空間を歪める、黒い渦。
何らかの前触れもなく、突然出現したそれは、この妖精國と、それとは別の道を辿った世界を繋ぐ昏き回廊。
そこから数人の人物と、一体の異形が姿を現す。
「ようこそ地獄へ。よく来やがったな、お前ら」
「会って早々言うねぇ。別にそう言う必要は……なるほどね」
開口一番にそう言ったカイニスにアンナが抗議の目を向けるも、その視線を頭上に向ければ納得がいったように頷いた。
「……カイニス。もしかしてこの異聞帯には、
「直に会ったわけじゃねぇけどな。うちの
「母親を前に息子を『あんなの』呼ばわりしないでくれる?」
「おい、アンナ。さっきから誰の話をしてるんだ。こっちにも教えてくれ」
「あっ、ごめん……」
カイニスと話し込んでいたところ、話の内容がわからないメンバーを代表してカドックが口を開く。
それに謝罪してから、アンナは彼らに説明を始める。
「この空模様はね、私の息子―――“熾凍龍”ディスフィロアが住んでたところと同じものなの。カイニスの話を聞く限り、この異聞帯には彼がいるという事だね」
“熾凍龍”ディスフィロア。その名にカドック達が目を見開く。
遥か古代の時代には、“最果ての地”と呼ばれる場所でのみ存在が確認された古龍種。アンナのサーヴァントである“煌黒龍”アルバトリオンが創り出す“神域”と同じく、およそ生物が暮らす事が出来ない場所で発見されたモンスターで、その特異な環境によって最後までその生態が完全に明らかになる事は無かった。
当時の様子を描いた叙事詩『モンスターハンター』によると、炎と氷という相反する力を自在に操る能力を持っているらしく、叙事詩ではその力を駆使し、己に挑んできたメゼポルタのハンター達を苦しめたと記されていた。しかし、それ以外にわかっているとすれば、その能力が彼の体内に存在する『対玉』と呼ばれる宝玉によるものと、力尽きた際には自らの属性エネルギーを制御できずに氷像と化す―――程度のものだった。
制御できなければ己すら氷像と変えてしまう、相反する属性エネルギー。そして、ただ存在するだけでも空を異常なものへと変貌させてしまう力。
その生態がほとんどわかっていないとしても、この二つだけでもディスフィロアが強力な古龍種である事は誰でもわかってしまった。
「言っておくけど、今すぐ戦うってわけじゃないからね? 少なくとも今の私達は、このブリテンの勢力と争うつもりは無い。しばらくは
「は? 会社? 社員?」
てっきりこの異聞帯に足を踏み入れたら、ある程度の情報収集を終えた後に攻勢に出るかと考えていた分、カドックの動揺は大きい。
こちらに来る前、アンナはこのブリテン異聞帯―――妖精國ブリテンの危険性を訴えていた。この世界にあるという『呪い』による被害が、この異聞帯どころか外側の世界にすら影響を及ぼすというのだから、最初から滅ぼす気で行くのかと考えていたのである。
「まぁ、正直私も『呪い』については早めに潰しておくべきだと考えてはいるよ。でもね、これは私達だけの問題じゃない。カルデアにとっても、この異聞帯はどうしても足を踏み入れざるを得ない場所でもあるんだよ?」
「カルデア? どうしてそこでカルデアが出てくるの?」
首を傾げるオフェリアに、「オリュンポスの事を思い出してごらん」とアンナが告げる。
「あそこで私達は、キリシュタリアの理想魔術をも上回る大魔術を見た。あの
恐ろしいにも程があるよ―――と、戦慄した様子で自分の肩を抱くアンナ。
アルテミット・ワンである彼女ですらこのような反応をするのもそうだが、オフェリア達も魔術世界の住人だ。神造兵器を魔術のみで再現してみせたその魔術師との実力差をありありと思い知らされ、戦慄していた。
「でもね、これはカルデアにとっては願ってもない機会とも言えるの。
そう、そうなのだ。
カルデアにとって、この地球白紙化現象の元凶とも取れる『異星の神』―――Uーオルガマリーへの対抗策として、神罰が如き大魔術は頼もしい戦力となる。第一、あちらには世界的な名探偵であるシャーロック・ホームズが在籍しているのだ。彼がこの魔術の入手を提案しないはずが無い。
遅かれ早かれ、カルデアは必ずこの異聞帯にやってくる。これまでのように世界を切除する為ではなく、ロンゴミニアドという大魔術を確保する為に。
そして何よりも―――
「そしてこれは、カルデアにとっての新たな“試練”になる。これまでとは違う目的による異聞帯への侵入。破壊ではなく、協力を要請する為の異聞帯紀行。これはカルデアの―――ひいては
「まったく……なんでそこまであいつらにこだわるのかしら」
「汎人類史を取り戻すなら、私達じゃなくてカルデアの方が全然いいよ。どう言い繕っても、私達は『汎人類史の裏切り者』という立場からは逃れられない。なら、元から『汎人類史の守護者』として活動するあの子達の方が、この事件を解決するのに適しているからね。……それじゃあ、カイニス。早速案内してもらおうかな?」
「あぁ。街までちょいと距離があるから、軽く説明しながらな」
ついてきな―――そう言って歩き出したカイニスに従い、アンナ達も歩き出す。
「うちの会社は社長が社長なだけあって、色んな事業を展開しててな。どれもこれも汎人類史の文化だが、それがこの妖精國にはよく受けた。ここの妖精共は人間の文化ってのが大好きでな。
「……出荷? なに、それ」
最後の一言に、アンナが凄まじい怒気を放出し始める。
不意打ち気味に放たれたそれにカドック達が身を強張らせるが、カイニスは何処吹く風というように答える。
「そのまんまの意味さ。ここの妖精共にとって、人間は替えの効く
だが、気を付けろよ―――とカイニスはカドック達を見て、ニヤリと笑みを深めた。
「妖精共は群れる。お前達のうち、誰か一人でも捕まったら、虫みてぇにあっという間に殺されちまうぜ? 精々気を付けるこったな」
「ちょっとカイニス。あまりこの子達を怖がらせないでッ!」
「ハッ、このカイニス様直々に忠告してやったんだ。寧ろ感謝してもらいたいもんだッ!」
傲慢を体現したかのような獰猛な笑みでアンナにそう返したカイニスだが、すぐにその表情を変えてカドック達に視線を移す。
「……ま、用心するに越した事はない。もし嫌な予感がしたらすぐに逃げろ。妖精共は行動に移すのが早いが、その分諦めの早い奴も多い。
カイニスの言葉に頷くカドック達。それに彼が「よし」と頷いた後、アンナが重々しい雰囲気を打ち払うようにパンッと手を叩いた。
「さ、暗くて怖い話はこれでおしまい。私もいろいろ思うところはあるけど、取り敢えずは置いておくからね。それでカイニス、私達はどこに向かってるの?」
「ここからしばらく歩いた先にあるグロスターって街だ。妖精國には幾つかの領地と、それを治める領主がいるが、そこの領主は完全中立の立ち位置にいる。女王にも絶対服従を誓ってるわけでもねぇから、比較的安全な場所だ。流行の街って面もあって外から妖精共も集まるから、情報も仕入れやすい。……入った瞬間から力が抜けるのが癪だがな」
「力が抜ける? ……あぁ、妖精領域か」
「妖精領域……? もしかして、固有結界のようなもの?」
砂浜から森を抜け、草原を歩く。
少し遠いが、微かに街の影らしきものを遠くに見ながら訊ねてくるオフェリアにアンナが頷く。
「まぁ、ザックリ言うならそんな感じだね。……そうだ。ちょっと遅いけど、これを機に妖精について色々勉強しておこうか。時計塔で学んでいる事も含めるけど、聞いてくれたら嬉しいな」
アンナ直々に妖精について教授してくれるなら、断る理由は無い。そう思って頷いたカドック達に、アンナは妖精についての説明を始める。
魔術師ではない一般人に『妖精とはどのようなものか』と訊ねると、大抵は『小さくて愛らしい架空の存在』という返答が返ってくる。
その答えは別に間違っているわけではないが、正しいというわけではない。人種の違いがあるように、妖精にも様々な種類がある。
神の格から零落したもの。
人間や動物の怨念、魂の搾りカスが集まったもの。
行き場のない想念が人間の噂話を肉体に新生したもの。
これらは上位存在を信仰する人間社会だからこそ誕生し得る妖精達ではあるが、それ故に純正ではない。
真に純正な妖精とは、他者の有無に関係なく、
そうして地球の魂の分霊とも呼ぶべき存在として生まれた妖精を、魔術世界では『大父』或いは『大母』と呼称する。自然を擬人化した神のような存在である以上、アンナ達を含めた古龍種にとって彼らは親戚のような関係でもある。
彼らと神は人智を超越した存在だが、その違いは人間に己の『
この階位の妖精が何らかの形で地表に出たものを、カイニスによるとこの異聞帯では『
『亜鈴』は普通ならば概念のような存在だったはずの『大母』クラスの妖精が自我を獲得したものであり、己の本質を基に世界を作り替えてしまう特性を持っている。
それこそが妖精領域。強大な力を持つ妖精達だけが持つ事を許される大神秘である。
カイニスによると、これから向かうグロスターの領主であるムリアンという妖精もその領域の持ち主であり、強ければ弱く、弱ければより弱くなるという『強さの否定』を中心にしたものとなっている。
この領域に足を踏み入れようものならどんなに強大な存在でも生まれたままの強さに戻るという力を鑑みるに、ムリアンが中々に質の悪い妖精である事が窺い知れる。
「違いを言うなら、固有結界は世界の修正力に抗いながら維持し続けないといけないけど、妖精領域は基本そうする必要がない。多少の魔力は使うだろうけど、任意でその場を自分の性質に合わせた環境に作り替えるようなものだよ。アルバの“神域”とミラオスの“厄海”も能力的には同じだけど、あれは私達“禁忌”だけが持つ領域だから、厳密には違うね」
「という事は、貴女やボレアス、バルカンも持ってるのかしら? “神域”や“厄海”と同じような領域が」
「当然だ。我ら兄妹は姉上により創造され、それぞれに最も適した星の権能を与えられている。その発露が我らの領域だ」
「まぁ、持ってはいるけど……。私の場合は本気にならないと出せないから、君達が見る事はないんじゃないかな」
決して己の力に驕っているわけではない。純粋に、今の自分に本気を出させる相手がいないという事実と、それを軽く言ってのけられる程の実力を有している事による言葉。
それは彼女がなにを言わずとも、自然と周囲にいた者達を納得させた。
「確認なんだけど、もし発動したらどんなものになるのよ。私、この身体になる前から貴女の事を知ってるけど、一度も見た事ないから」
「死地」
訊ねてきた虞美人に、キッパリとそう返すアンナ。
特に間も置かずに答えてきたアンナは、そのまま軽く自分が持つ領域について解説する。
「たとえ相手がトップサーヴァントだろうが
「「「「……はぁッ!?」」」」
なんでもないように告げられた馬鹿みたいに強力すぎる領域に、カドックとオフェリアと虞美人はおろか、あのペペロンチーノまで思わずそう叫んでいた。
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僕らがアンナの、彼女が持つ領域についての解説を受けて驚愕という言葉すら生温い反応を返してから数十分。
カイニスを介して門番に門を開けてもらった僕らは、遂にこのブリテン異聞帯―――カイニスが言うに妖精國ブリテンに点在する街の一つに足を踏み入れた。
(……ッ。なるほど、こういう事か)
深く注意する必要もない。すぐに空気が
全身から力が抜けていくような違和感。一瞬の事であっという間になくなったそれだが、その感覚が僕らの力がリセットされた事を明確に表している。
視線を左右に向ければ、アナスタシアやシグルド、アシュヴァッターマン達が自分の掌を開閉したりして力加減を確認している。
これがアンナやカイニスの言う、この領地を治める妖精が持つ領域の効果か―――と納得しながら、視線を左右に巡らせる。
グロスター。
汎人類史では、僕らがかつて在籍していた時計塔があったロンドンから電車で二時間かけて辿り着く事の出来る街の名だ。
また、ロマネスク様式とゴシック様式が組み合わさった建造物であるグロスター大聖堂や、約164kmのナショナルトレイルであるコッツウォルズウェイ、ローマ時代およびアングロサクソン時代の生活に関する、興味深い歴史が多く展示されているコリニウム博物館などが有名な観光名所でもある。
在り方は全く違う異聞帯でも、やはりイギリスだからだろうか。名前だけは聞き覚えのあるもので不思議な安心感がある。
が、同じなのは地名だけだというのが、やはり見ているだけでもわかる。
この國のグロスターは僕が知っているそれの街並みとは全く違う。だがムリアンの統治によって発展しているのか、この街には汎人類史のグロスター以上の華やかさがあった。
けれど―――
「カドック、気付いてる?」
「あぁ。この街、色々と変だぞ」
周囲に立ち並ぶ建造物の造りに歪んだ形跡はない。だが、途轍もない違和感が僕らの視界を占領した。
仮面だ。
すれ違う妖精の誰も彼もが、顔に仮面をつけて歩いている。
頭部をすっぽり覆うものや、バイザー型のもの、ドミノマスクなどといったマスクを付けている妖精が談笑する様子は、まるで
先程のカイニスの説明を鑑みれば、これがグロスターが『流行の街』と呼ばれる所以か。つまり、今この街ではああいった仮面が流行しているのだろう。その証拠と言えるものが、視線を横に向ければすぐに見つかった。
様々な調度品がショーケースの中で展示されており、衣装やアクセサリーを身につけたマネキンがポーズを決めている。モデルらしき妖精のポスターなどもそこらで見受けられるが、そのどれもが仮面を身につけている。しかし、仮面をつけていても決して全体の調和を崩さない服装になっているところを見ると、これらを考えたのは相当頭の切れる妖精なのだろう。素人考えだが、仮面に似合う服をここまで考えつくのはかなり難しいと思う。
そんな事を考えながら歩いていると、今まで隣にいたアナスタシアの姿が無い事に気付いた。
「アナスタシア?」
どこに行ったのか、と視線を巡らせていると、僕らから少し離れた場所にあるショーケースの前にいる彼女が目に入った。
僕の視線に気づいたのか、アナスタシアがこちらを見て手招きしてきたので、僕らは彼女に駆け寄る。
「どうした?」
「御覧なさい、カドック。素晴らしい靴だとは思わない?」
アナスタシアが指差したのは、水のように透き通ったガラスで出来た、花の装飾が施されたハイヒールだった。
「わっ、凄い綺麗……。あっ、これオフェリアちゃんに合いそうじゃない?」
「だったら、これはアンナに似合いそうね」
「おぉ……これも凄い綺麗ッ!」
「ふむ……虞にはこれだな」
「えぇ、そうですね。マスターにはこれが似合いそうです」
「もう、項羽様も高長恭も……。でも、いいわねこれ。買えるものなら買いたいわ」
僕はあまり女性のファッションに明るくはないが、なるほど、アンナやオフェリア、虞美人はおろか、生前は王族だったアナスタシアさえも引き付ける魅力は、素人の僕から見てもわかる程のものだった。
その隣には、アナスタシアが指差したものとは異なる、しかし決して見劣りしない多種多様なデザインの靴が展示されている。
アナスタシアのような女性が履くものや、僕ら男性用にデザインされたものも、どちらが多いという事も、どちらかの性別を優先してもいない数だけ展示されており、思わず『履いてみたい』と考えてしまうものばっかりだ。
だが、哀しいかな。そういうものほど、値段は可愛くないのが常識だ。
『ご自由にお取りください』と書かれていたマガジンラックから一冊手に取って読んでみれば、想像通り価格は本当に可愛くなかった。
「モルポンドってなんだよ……。ポンドを弄ったのか?」
「やはり、買えないかしら」
「買う買わないの以前に、今の僕らは無一文だぞ? これから行く会社とやらで働けば金は入るだろうが、それでもこれが買えるかはわからないからな」
「まぁ、それは仕方ないわ。
(と、言われてもな……)
そんな物欲しそうな目で靴を見るのはやめてほしい。僕の責任というわけではないが、変な罪悪感が湧いてくる。
このままだと、アナスタシアはしばらくこの店の前に留まりそうだ。下手をすると、他に良いものは無いかと別の店に足を向けるかもしれない。
そうなる前に彼女を連れていこうと思って口を開こうとした瞬間―――
「おぉ……これはなんともまた美しい女性達だ」
突然、背後から声をかけられた。
「……貴女は?」
振り返ったアナスタシアが、その人物に訊ねる。
漆黒の鎧に身を包んだ、ふんわりとしたボブスタイルの髪形の女性。一瞬妖精かと思ったが、僕はすぐにその考えを改めた。
『カドック。彼女は……』
『……あぁ。こいつは、サーヴァントだ』
僕らが念話を交わしながら見る女性―――サーヴァントは切れ長の瞳を細め、「ふむ、ほぅ……」と呟きながらアナスタシアを頭の先から爪先まで見ていく。
それに値踏みされているような気持ちになったのか、アナスタシアは不快感を隠さずに彼女を睨み、所有者の意思に応えるように抱えられている
それに気付いたのか、サーヴァントは慌てたように両手を振りながら僕らから距離を取った。
「あぁっ、すまない。我知らずに失礼な見方をしていたようだ。どうか許してほしい、白雪のように可憐な君よ。君達の美しさを是非とも我が心に刻みつけたく、つい凝視してしまった。それに、見覚えのある者達もいたのでね……」
そう言った彼女の視線が一瞬だけアンナとバルカンに向けられる。バルカンがそんな彼女に対して目を細めるが、それを制止したアンナは苦笑しながら肩を竦めた。
「まさか、君がここにいるなんてね。美人な女の子にでも
「その通りさ。妖精の国に違わぬ、麗しくも可憐な妖精がいてね。燃えるような情熱を持った妖精だよ。しかし、彼女もいいが、君達も負けず劣らずに美しい」
「お世辞は結構。レディを相手にあのような視線は些か褒められたものとは思えませんが?」
「いやいや、大変申し訳ない。ボクは女性にめっぽう目が無い性格でしてね。女王陛下や
「……なら良いのです。貴女の無礼を赦しましょう」
「嗚呼……偉大な御心に感謝を」
胸元に手を当てて優雅に頭を下げる彼女だが、どこか飄々とした雰囲気は変わらない。反省はしているようだが、イマイチ信用ならない奴だ。
「それで? 貴女が
「おぉ、それは助かる。ボクはそういう堅苦しいのが嫌いでね。旅に出る前の事を思い出してしまうのさ。それで用というのは、君達がこの店の商品を眺めていたのが見えてね。気まぐれにお試し券でも渡そうかと思ったのさ」
「お試し券?」
「そうだよ、ここいらでは見かけない少年よ。この店は私のマスターがオーナーを務めている店でね。彼女からは『大丈夫そうな奴だったら渡してもいい』と何枚かお試し券を貰っていてね。是非そこの女性に受け取ってほしいと思い、声をかけたまでだよ」
それではどうぞ、と差し出されたチケットをアナスタシアが受け取ったので、何気なしにそこに書かれた文字を読む。
(『
「持っていなさい、カドック」
「はいはい」
『S』が長髪の女性の上半身、『h』の部分がヒールになっているという特徴的な赤い文字列を心中で読み終え、アナスタシアからチケットを受け取る。
それを懐にしまい、目の前の女性を見やる。
「マスター……。やっぱり、サーヴァントなのか。真名は……いや、すまない。流石に言えないよな」
本人の自白という明白な証拠も出たため、彼女がサーヴァントだと把握した僕は思わず真名を訊ねようとしたが、すぐにやめる。
マスターが誰かはわからないが、彼女もサーヴァントだ。この異聞帯にいる何者かが召喚している以上、場合によっては敵対する可能性もある。そう易々と公言したりは―――
「真名? あぁ、いいとも。挨拶は大事な事だ。こうして巡り合えた事だ。知り合いはいるが、初対面の方が多いので教えようか」
「はっ? い、いいのか? そんな簡単に教えても……」
「生前から、自分の身分を明かさずに過ごすのは嫌だからね。隠すなら、最初に教えておいた方がいいと考えてもいるしね。それでは、我がクラスと真名をお教えしようッ!」
そう言って胸に手を当て、軽く腰を曲げて、彼女は続ける。
「ある時は荷車と共に地を駆け、またある時は船で海を渡り、さらにある時は
大袈裟な動きを交え、まるでミュージカルで活躍する舞台俳優のように、彼女は高らかに叫ぶ。
「我がクラスはライダーッ! そして、我が真名はカリ―――」
そして、遂に彼女が己が真名を告げようとした瞬間。
ドォンッ、と、ここからそう遠くない場所から爆発音が聞こえた。
「な、なんだッ!?」
ようやく真名を聞けるかと思ったところにいきなり轟いた爆発音に僕が動揺していると―――
「はっはっはっはっはっ、誰か助けてくれないかッ!?」
遠くの曲がり角から、誰かが叫びながら姿を現した。
しかし、認識阻害の魔術でも使っているのか、僕にはなぜか、その姿がどのようなものかを正確に判断する事が出来なかった。
声からして男性。服装は皴一つない黄色のラインが入った白色のスーツを着ており、顔上部には星の光を象ったような仮面を装着している。
だが、
いったい何者だと考えている僕の背後で、カイニスが叫んだ。
「おいッ! テメェ、会社で待ってるって言ってたよなッ!? なんで出てきてんだよッ!」
「遅くなると思ったから、気分転換に散歩でもと思ってねッ! そしたら―――」
『グォォオオオオオオオオオッッッ!!!』
カイニスが『社長』と呼んだ人物が事情を説明しようとした刹那、幾重にも重なった獰猛な咆哮が轟く。
「すまないカイ―――Lッ! 話の途中だが―――」
全速力でこちら目掛けて走ってくるその男に不思議な感覚を覚えるが、その数秒後には僕らも彼と同じように走る事になるとは、この時の僕は思いもしなかった。
妖精達の悲鳴を掻き消し、曲がり角から現れたのは、鱗に覆われた緑色の体に、雄々しく広げられた翼。
僕らが普段見ているものとは大きさも迫力も負けているが、それでも
「―――ワイバーンだッ!」
その数―――三十体は優に超えているワイバーンの群れを前に、僕らはすぐ近くまで走ってきた男と共に駆け出すのだった。
今回でも少しだけ改変要素が入りましたね。はい、彼女がグロスターに店を持っています。あの性格の彼女がどうして店を持てるようになったのか、それはおいおい語らせていただきますッ!
そして、お待たせしましたッ! 前回のアンケートの結果、
限定公開にしており、以下のURLで飛べると思いますが、限定で公開するのは初めてなので、もしかしたら飛べない可能性もあるかもしれません。その際は。感想欄で教えて下されば幸いです。
以下、百合えち話へのURLですッ!
https://syosetu.org/novel/294244/1.html
それでは、次回もよろしくお願いしますッ!
追記
百合話に修正が必要になったため、しばらくお待ちください。22時5分に完了します。大変申し訳ございません。