どうも、みなさん。
fgo新イベントでついにプーリンがスマホ版にやってきましたね。皆さんは召喚しましたか? 私は石300個程犠牲にして召喚する事が出来ました。
その後、水着エリちも当てましたが、残念ながら水着伊吹は当てられず、ついに周年で貰った石が底をつきました……。
ところで、ワルキューレは誰を選びましたか? 私はふたばスレに溢れたワルキューレスレを読んで心を惑わされながらもスルーズを選びました。三騎の内一騎しか選べないというポケモン御三家方式をここまで憎んだ事はありません。
それでは本編、どうぞですッ!
「ははははは、流石は私の秘書だ。難なく倒してくれて助かったよ」
「テメェのせいで散々な目に遭った事、忘れんじゃねぇぞ?」
「むぅ、否定できないな……」
アンナ達の前で、革張りの椅子に腰を下ろした男ががっくりと項垂れる。
「とにかく、みんな無事でよかった。それと、あのように君達を巻き込んでしまい、本当に申し訳なかった」
「いやいや、大丈夫だよ。この街の事を少し知れたからね」
「まさか、あのワイバーンがネズミだったなんてね。どうなってるのかしら、ホント……」
げんなりした虞美人に、誰もが頷いた。
数十分前に始まった、ワイバーンの群れとの追いかけっこ。ただ逃げ続けるわけにもいかず、被害を広めない為にとアンナ達が応戦した事でなんとか鎮圧する事が出来た。
しかし、自分達がワイバーンだと思っていたのが、実はネズミだったとは誰が思うだろうか。
緑色の鱗に翼を羽ばたかせるネズミなど、いったいどこにいるのだろうか。妖精國ブリテンに足を踏み入れて数時間して、アンナ達は早速この国が自分達の知る常識とかけ離れた場所だと思い知らされた。
「なんで私達の威圧が効かないのかって思ってたけど、そういう事だったんだねぇ。いやぁ、凄いなぁ」
「といっても、ああいうのはグロスターだからこそ見れるものだよ。あべこべな街だからああ見えるだけで、外に出ればあんな事は絶対に起こらない。名物のようなものと思ってほしい」
「あまり嬉しくない名物ね……」
正体がネズミだった事、その体躯が普段見慣れている者達と比べて遥かに小柄だった事を鑑みても、あの凶悪な面構えをした存在が群れを成して追いかけてくるのは、流石に本能的恐怖を感じさせる。
出来る事ならもう二度とあんな目には遭いたくない、そうオフェリアが思っていると、「あぁ、そうだった」と椅子に座る男は手を叩いた。
「そういえば、自己紹介がまだだったね。私は、プロフェッサー・K。君達がいるこの会社、『アルム・カンパニー』の社長だ。君達と同じ、汎人類史出身の人間だよ。この妖精國にやって来た経緯は異なると思うけどね。そして、彼はマスクド・L。見た目こそ女性だが、男性として扱ってほしい。その方が彼も喜ぶからね」
「マスクド……L?」
聞き慣れない名前にアンナ達が首を傾げてカイニスを見ると、彼は目を逸らした。
「ダッセェだろ? 言っとくけど、別にオレが考えたわけじゃねぇからな。こいつが考えたんだッ!」
「むっ。心外だな、L。私なりに頑張って考えたんだぞ?」
「そんなクソダセェ名前付けられるってわかってたら、こっちで考えてたわッ!」
「…………」
「おいやめろ。そんな顔すんな。捨てられた犬コロみてぇな目ェすんなッ! やめろ来るなッ! じりじり寄って来るんじゃねぇッ!」
うるうると潤ませた瞳でカイニスを見つめながらじりじりと距離と詰め始めるK。それに気色悪さを感じたカイニスが思わず逃げると、Kは楽しそうに笑って席に付き直した。
「悪かった悪かった。冗談が過ぎたよ、L。だから許してほしい」
「……チッ、今度やりやがったらぶっ飛ばすからな」
「肝に銘じておこう。……さて、君達の事は彼から教えてもらっているけれど、改めて確認させてもらいたい。名前を教えてくれないかい? まずは君から」
Kに促され、アンナ達は簡潔に自己紹介をする。
それに頷いたKは、仮面に隠されていない口元をふっと緩めてから、にこやかに笑って両腕を広げた。
「アンナ・ディストローツ。ボレアス。バルカン。カドック・ゼムルプス。アナスタシア・ニコラエヴァ・ロマノヴァ。オフェリア・ファムルソローネ。シグルド。虞美人。項羽。蘭陵王。スカンジナビア・ペペロンチーノ。アシュヴァッターマン。ようこそ、アルム・カンパニーへ。代表取締役社長として、君達を歓迎しよう」
一人一人、一騎一騎の名を順番にゆっくりと、丁寧に口にしたKの声は、心の底からの歓喜に弾んでいた。
Now Loading...
王都キャメロット。
汎人類史ではアーサー王を始めた円卓の騎士達の統治によって栄えていたこの場所は、ブリテン異聞帯においても重要な役割を果たす場所となっている。
穢れを感じさせない純白の建物に、完璧に舗装された道。汎人類史であれば、さぞや観光客が集まる名所となっていたであろうそこは、女王の直接的な統治による安全が確立されているが、同時にこの世界で最も危険な場所として認知されている。
その理由は、この世界が抱える最大の問題と言っても過言ではないもの。
『大穴』―――このブリテンが剪定事象となってしまう以前から存在していた、正体不明のそれ。数少ない生き残りを護ろうとして、しかしその生き残りによって殺害されてしまった神が眠る墓。しかしそこは今、女王モルガンの相棒である古龍の力によって、
しかし、それだけならばどれだけよかっただろうか。この穴には、その神の遺骸とは別の存在もまた潜んでいる。
それがいったいどのような存在か。どのような力を持っているのか。それを知ってる者は
ただ、
この光の柱に、最近妖精國に流れ着いてきた、妖精を凶気で蝕む黒い瘴気。それらが現在、モルガンの頭を悩ませている案件である。
(なにか、お母様を元気に出来るものはないかしら……)
だからこそ、女王モルガンの正統な後継者である
血のように赤いドレスを身につけた、赤髪の
いずれこのブリテンの所有者になると噂される『女王の子』にして、一大ブランド『Bhan-Sith』のオーナー。
名を、バーヴァン・シー。
汎人類史で名を馳せた円卓の騎士。その
モルガンによって与えられた彼女の部屋には、これまで彼女が手掛けてきた幾点もの靴が飾られている。どれも汚れ一つついておらず、余分なものの一切を排除した至高の一品である。しかし、彼女にとってのこれらは、あくまで『
彼女がこれまで作ってきた靴の中で合格点を出せたものは、一つの例外もなく自分とモルガンのみが履く事が出来る。
最初は合格点を出した靴全てをモルガンに出そうとしていたのだが、それはモルガン本人と、彼女の手助けを借りて召喚したサーヴァントであるカリアによる説得を受けて自分も履いている。今自分が履いているものや、現在職務に当たっているモルガンが履いているものだって、その合格点を獲得した靴である。
では、彼女が店に卸す靴とはどのようなものかというと、悪く言ってしまえば粗悪品だ。彼女が女王や自分を輝かせる為に作った靴の中で、彼女が「これは自分達には合わない」と落第点を押したものである。しかし、そんな粗悪品であっても
「やっぱり新しい靴を……いえ、駄目ね。靴でもお母様は喜んでくれるけど、それとはもっと別のものを用意したいな。でも、なにかあるかしら……」
最初こそ、また新しい靴をプレゼントしてみようかと考えていた。しかし、毎年同じ事をしていれば、如何に自分を愛してくれている彼女と言えど飽きが来てしまっているのでは、と思って却下した。
ちなみにモルガンからすれば、決まった日ではないにしろ、毎年愛娘から「仕事の励みになるように」と靴がプレゼントされるのは天上に昇る程の歓喜を齎すものであり、彼女がくれるものならばたとえそこらの土でも宝物庫に入れるつもりである。
しかしそれを知る由もないバーヴァン・シーが、どうすれば母親に喜んでもらえるかと頭を抱えていると、コンコンと扉がノックされる音が室内に響いた。
「誰?」
「ボクだよ、マスター」
「あぁ、カリアか。入れよ」
扉によって隔たれている影響でくぐもってはいるが、それが自分のサーヴァントの声だと判断したバーヴァン・シーが入室を許可すると、扉がゆっくりと開かれる。
「やぁ、マスター。サーヴァント・カリア、只今帰還したよ」
「おかえり。今日はどこ行ってたんだよ」
モルガンへのプレゼントを思い付く限り羅列したノートが置かれた机からは目を離さずに問い掛ける主に、従者であるカリアはソファに腰掛けて足を組んだ。
「グロスターに散歩でも、とね。ついでに君の靴が似合いそうな女性がいたから、お試し券を渡してきたよ」
「へぇ? て事はなに? またナンパでもしてたの?」
「ナンパとは失礼な。ボクがしているのは、その女性の魅力を津々浦々と語った後にお茶に誘うだけだというのに」
「それをナンパっつうんだよ馬鹿」
クシャクシャに纏めた靴のボツ案が書かれた紙を投げつける。並の妖精など圧倒し、サーヴァントにもダメージを与えられている妖精騎士の膂力によって投擲されたそれは、たとえ紙屑だろうと当たればほんの僅かな痛みが伴うものだが、
「ははは。その言葉、
(こいつ……ッ! 無駄に正確な反応してんじゃねぇよ)
あろう事か指先一つで弾き返し、そのままゴミ箱へ入れてしまったカリアに、バーヴァン・シーは思わず舌打ちしてしまった。
「ところで、マスター」
「なんだよ」
「なにやら思い悩んでいる様子。ボクにも協力できる事なら、是非とも協力させてもらいたいと思うのだけれど?」
「……いや、これは私が一人で解決する問題よ。お前に頼る気はねぇ」
「心外だね、マスター。ボクは君のサーヴァント。サーヴァントとしてなら、優先順位は君の意志に従って女王陛下が最上位だが、ボク個人としては君が最上位だ。主を支えるのは従者の役目。そうは思わないかい?」
「…………」
彼女の言葉にも一理ある。
従者とは主君に仕えるものであるが、言われるがままに行動していてはただの都合のいい道具でしかない。主の指示に従って行動するのも従者の役割である事を否定はしないが、主がなにかに迷っているのであれば、助言を送って道を指し示すのもまた従者の役割だ。
なんとこのバーヴァン・シー、カリアが必死に主とモルガンの擦れ違いを修正し続けた結果、多少ではあるが周囲の気遣いが出来るようになっているのである。
モルガンからは『悪辣であれ』と育てられていたために、善悪のどちらに属しているかと問われれば悪側に分類される彼女ではある。しかし、元々は己の身を顧みずに周囲の幸せを願う善良な妖精だったので、悪辣さの裏に隠れていた優しさが少しだけ顔を出しているのだ。
もちろん、カリアも彼女の事情は把握している。最初は『お前に言う必要は無い』と語っていたモルガンを必死に説得し、ようやく聞き出す事が出来た、バーヴァン・シーの真相。それを理解しているカリアは、彼女の悪辣さを完全になくすつもりはなかった。しかし、ただ悪辣なだけでは周囲の妖精から疎まれ、残酷な結末を迎える可能性があったので、多少の評判は良くしてもいいだろうと考えて、彼女の僅かな善性を蘇らせた。
故に、正史では彼女の悪辣さの象徴でもある、妖精の足首と共に飾られていた靴は、この
「じゃあ、なにがあるんだよ。私だって色々考えたけど、どれもお母様にプレゼントするには不相応。クソみたいな下民共にくれてやるぐらいしかねぇよ」
もちろん、靴以外にも自分なりの母親へのプレゼントになるものも考えてはいた。
母から習っている魔術を使って、彼女に研鑽の成果を見せるのもいいのかもしれない。いや、自分でもまだ母親に見せるには魔術に対する自信を持てていない。魔術による感謝はこの時点で
カードでも書いて手渡すのはどうだろうか。いや、感謝の気持ちを文字にして贈るのは単純明快なものだが、如何せん平凡にも程がある。渡すにしてもメインに置くのではなく、なにかそれよりも価値のありそうなものの付属として用意しておいた方がいいかもしれない。手紙に関してはオーナーや姫君として積んできた経験による自信があるので、却下せずにキープとする。
取り敢えず今思い付く限りの案の中で代表的なものを伝えてみれば、カリアは「ふむ」と顎に指を這わせて呟いた。
(こいつ、こういう時は絵になるんだがなぁ……)
他ならぬ主の為に思案するカリアの姿に、バーヴァン・シーは思わず心中でそう呟いていた。
カリアは誰もが認める美女だ。
可愛らしさよりも凛々しさ。
可憐さよりも美しさ。
この二つの要素を兼ね揃えた彼女は、その顔立ちや切れ長の
……が、それはあくまで表だけを見た感想だ。こいつの内側はこの凛々しさには不釣り合いにも程がある。
この狩人は、女好きだ。
行く先々で女性を見かければ、相手が人間だろうと妖精だろうと関係なく口説きに行く。断られたら素直に身を引くが、普段の飄々とした態度が消える事はない。この女性が相手にフラれて曇った表情を浮かべているところなど、バーヴァン・シーは一度も見た事がない。いつもの笑顔のまま、「それは残念」と欠片も残念そうに見えない仕草で相手を見送っていくだけだ。
しかし、彼女が相手を称賛する言葉が噓偽りなど微塵も存在しない、つまり本心からの言葉という事実が余計に質が悪い。
どこからともなく取り出した花束を手に、プロポーズでもしているのかと思ってしまうぐらいに真剣な表情で己の魅力をつらつらと挙げられて
誇れる程の美しさを自分が持っているわけがないと思っている女性。
顔立ちが醜く、それだけで避けられてしまった
周りの流行についていけず、取り残されてしまった女性。
そんな彼女達がカリアに口説かれた結果、どうなるかは火を見るよりも明らか。
―――
生前に旅をしていた故か、ふらふらと散歩する事が多い彼女が、この妖精國の中で訪れなかった場所など一つもない。そして同時に、彼女の
だからこそ、散歩から帰ってきた彼女は決まってなにかしらの贈り物を持っていることが多い。今回はすぐに帰ってきたので持っていないように見えるが、もしかしたら簡単にしまえる程に小さなものを貰っている可能性がある。
後で訊いてみるか、と考えていると、「では……」とカリアが口を開いたので、思考を打ち切って耳を傾ける。
「これならどうかな? 実はグロスターでプロフェッサー・Kに出会ってね。私も参加したいと考えていたんだ」
「ん……。―――はっ?」
席を立ったカリアから手渡されたチラシを見て、バーヴァン・シーは思わずそんな声を漏らすのだった。
「……おい、テメェ。私にこれをやれって言うのかよ」
「なにも君だけにさせるつもりはないさ。私も参加する。付け加えると、メリュジーヌ嬢やバーゲスト嬢も参加するつもりだぞ?」
「はぁッ!? テメェどころか、あいつらも参加するッ!?」
そんな馬鹿な、と手元のチラシに視線を落とすバーヴァン・シーは、新たに加わった選択肢に頭を抱える事になるのだった。
Now Loading...
「私はチェンジリング―――言うなれば、取り換えっ子でこの異聞帯に足を踏み入れた。この異聞帯ではそういう事が時々起きてね。時折、汎人類史から物や人、果ては妖精までもがポンと現れる事がある。私もその被害者の一人、というわけだよ」
社長室から出たKに案内され、僕らは絨毯が敷き詰められた廊下を歩く。
チェンジリング。
Kの説明によれば、この異聞帯に、漂白された汎人類史の大地と隔絶する嵐の壁に妨害される事無く、なにかが汎人類史から漂着する現象を意味する言葉。
彼はその現象によって、この妖精國ブリテンに足を踏み入れてしまったのだという。
「今思えば、本当に大変だった。右も左もわからぬ手前、偶然出会ったLと共に試行錯誤しながら会社を立ち上げて、ここまで発展させた。今では頼れる
正直、その根気は見倣いたいものだ。
僕も他の化け物みたいな連中が揃っているAチームに置いていかれないように努力していたので根気はそれなりに持っていると自負している身であるが、流石に彼と同じ状況に立たされたとしても、妖精達を掻き集めて会社を立ち上げようと考えはしないだろう。僕には他者を纏め上げられる程のカリスマはない。精々が、相手の状況を徹底的に調べ上げ、自分の危険さえも勘定に入れた末に説得してようやく仲間に引き込める程度だ。
その時点で、僕と彼のセンスの違いが窺い知れるし、なにより彼がこういう道に対する適正が高いという事がよくわかる。
他者を惹き付け、味方に加え、勢力を拡大させていく―――まるで
キリシュタリア・ヴォーダイム。
僕らAチームのリーダーで、ギリシャ異聞帯の管理を担当していたクリプターだった男。アンナとの決戦の末に敗れ、シュレイド城の庭に埋葬された彼の姿を目の前の人物に重ねてしまうのは、やはり僕も彼の存在に中てられてしまっていたからか。
……いや、今はあいつについて考えている場合じゃない。惜しい事だが、あいつはもう死んだのだ。僕らがこうして生きているから、あいつも同様に……とも考えていたのだが、アンナがキリシュタリアを殺すと決めていた以上、その庇護下にある僕らが反抗する事は出来ない。それに、キリシュタリア自身も、アンナとの決闘を望んでいたのもある。
僕は決して、歴史に名を轟かせるような誇りある戦士ではないが、互いの力量を認め合った者達によって行われる決闘は、神聖なものであると考えている。それを邪魔する権利が僕にあるわけがないし、かと言ってオフェリア達にあるかと言われれば、それもノーと言わざるを得ないというものだ。
そんな事を考えていると、Kが一枚の扉の前で立ち止まり、僕らに振り返る。
「今日から君達も社員だが、いきなり働かせるのも酷だ。まずは君達にとっての先輩達と挨拶を済ませようじゃないか」
(挨拶、か)
まさか、こうして会社に入って先輩に挨拶する事になるとは思わなかった。
僕にとっては、カルデアが一般人の世界で言う会社に属するものだろうが、マリスビリー直々のスカウトを受けた僕からすれば、時計塔時代からエスカレーター式で足を踏み入れた場所であるので、あまり実感がない。
柄にもなく緊張している自分に、『新人社員とはこんな感じか』とふっと笑みを零す。
(どんな妖精がいるのか、楽しみだ)
ここに来るまで見てきた妖精とは違うであろう、会社で働く妖精とはどのようなものか、楽しみに思う僕らの前でKは扉を押し開けて―――
「バッカヤローッ!!」
「ぐべらッ!!?」
……なんだ、これは。
「なんだその動きはァッ!? パッションが足りないんだよパッションがァッ!! もっと情熱的になれよオイッ!!」
『はいッ!』
「足りないッ!! 声も、覇気も、まァるで足りないッ!! サーモンはどんな激流だって諦めずに泳ぎ続けるんだぞッ!!? サーモンを見習えッ!! サーモンッ!!!」
『サーモンッ!!!』
恐らく振付師だろうか。彼がダンサーであろう、ラフな格好の妖精達に向けてなにか変な事を叫んでいる。そして、それに呼応するようにダンサー達もサーモンと叫んでいて、少し怖い。
「ははは、相変わらず厳しい指導だなぁ、彼は」
「はっ? 思いっきり殴り飛ばされてたぞ? 許していいのか?」
「あれが彼なりの教育だよ。確かに暴力は良くないが、実際あれで上手くなってるからね」
見てごらん、と指差されて視線を向けてみれば、先程殴り飛ばされた妖精は、他の妖精達以上の動きで奇怪なダンスを踊っていた。
両手を合わせ、くねくねと変な動きをしている。サーモンを見習え、とは振付師の言葉だが、あまりサーモンらしさは感じられない。彼らの後方にはなぜか人数分のカボチャと黒タイツが置いてあるのが謎だが、いつか被るのだろうか。
大変だなぁ、と他人事のように考えていると、Kがとんでもない事を言い出した。
「カドック、他人事のように思っているところ悪いが、君が今後彼らのリーダーになるからね。よろしく頼む」
「―――なんて?」
「では、次はあちらを見てごらん」
「待て、待って、待ってくれ。は? 僕が? あそこに加わる? おい、答えろK」
僕の抗議に耳を傾ける事無く、Kは別の場所を指差した。
「ほぅ? 余に相応しい衣装を用意したと言われ来てみれば、なんと素晴らしいものかッ! うむうむ、気に入ったぞ♪」
「はぁ、ロネさんは相変わらずですね。そんな煌びやかなものより、私が着ているような、お淑やかながらも儚さを感じる装飾が施されたこちらの方がいいでしょうに」
「なんだとぉ、ミズクメッ! 貴様のより、こちらの方がいいに決まっておるわッ!」
「うぅ、尊い……ッ! やはりハベトロットさんにお願いして正解でした……ッ! それはそれとして喧嘩するのはやめて下さいッ! 折角の衣装が破けてしまいますぅ……ッ!」
華麗な衣装に身を包んだ、金髪の少女と薄桃色の髪と狐耳を生やした女性を前に、白いドレスにとんがり帽子を被った女性が鼻を押さえながら喧嘩し始めた二人の仲裁に入り始めている。
「彼女達はロネ、ミズクメ、そしてミス・クレーン。今は先程届いた衣装の試着をしているところだね。ロネとミズクメは我が社が誇るモデルだよ」
「嘘……お鶴ちゃんッ!?」
「え? その声は……」
アンナの声に気付いたミス・クレーンがこちらに向き、アンナの姿を見て目を見開く。
「アンナさんッ! まさか、貴女もこの世界に?」
「そっちこそ。Kと同じように、チェンジリングでここに来たの?」
「はい。気付いたらここに。力も思うように出ず、どうしようかと思っていた時に彼と会い、ここで働かせてもらっています。そちらの方々は?」
「我が社の新しい社員だよ。今後、君に彼らの衣装を仕立ててもらおうかと考えている」
「まぁッ! ありがとうございます。……あ、自己紹介が遅れました。私、クラスはキャスター。真名をミス・クレーンといいます。よろしくお願いいたします」
「キャスター……という事は」
「はい、私はサーヴァントですよ。といっても、戦闘はあまり得意ではなく、
まさか、汎人類史出身のサーヴァントが働いているとは思いもしなかった。僕がそのように考えていると、オフェリアが「質問してもいいですか?」と口を開いた。
「その、アンナとはどんな関係なんですか? どうやら顔見知りみたいですが……」
「彼女とは、私が旅をしていた時に出会いました。少ない時間ではありましたが、とても有意義な時間でしたよ」
「……そう、ですか」
「ちなみに、貴女は?」
「私も、彼女の友人―――いえ、親友です。
「ほひぃッ!!」
『ッ!?』
なぜか自分がアンナの親友である事を強めて主張した途端、ミス・クレーンが崩れ落ちた。
「しゅ、しゅごい……。たった一言でこの破壊力……ッ! これはKさんがタッグで組ませるつもりでいたのが納得できます……ッ」
「え、なに? K、私とオフェリアちゃんでタッグ組ませるつもりだったの?」
「Lから、君達は親友だと聞かされていたからね。嫌だったかい?」
「いやいや、全然いいよ。私もオフェリアちゃんと一緒になれて嬉しいし」
「私も嫌ではないわ。一人で慣れない事をやるよりは、二人でやった方がいいわ」
「ついでに言うと、カドックとアナスタシア、虞美人と項羽もタッグでやらせるつもりだよ。場合によっては単独でしてもらう事もあるけどね。詳細は後で説明させてもらおう」
「よくやりました、K」
「アナスタシア……?」
「貴方のかわいいところをすぐ近くで見られる。これほど愉快な事は無いわ」
「……はぁ、しょうがないか」
「なんだ? 何の話をしておるのだ? 余にも聞かせよ」
僕らが話し合っていると、遠くで見ていた金髪の少女―――ロネがやって来た。その隣にはミズクメもいる。
「あら、こちらがKさんの言っていた新メンバーで?」
「その通りだよ、ミズクメ。取り敢えず、挨拶はさせておこうと思ってね」
「なるほど。あっ、私は牙の氏族の妖精、ミズクメです。よろしくお願いしますね、皆さん」
「余は風の氏族のロネである。皆の者、今後ともよろしくな」
自己紹介をしてくれた二人に僕らも簡単な自己紹介を返し、挨拶が済んだのでKが次の場所に向かおうとすると、「もし」とミズクメが彼を止めた。
「なんだい、ミズクメ」
「挨拶回りという事ですが、その必要は無いかと」
「ふむ、なぜだい?」
「どうやら、既に誰かが彼らの事を社内に広めたようでして。すぐにみんないらっしゃると思いますよ」
ミズクメが言い終わるか言い終わらないかという時、どこからともなく足音が聞こえてくる。
それも一つだけではない。数え切れない程の足音が幾重に重なっているのが嫌でもわかる。
「少し離れていた方がいいかもしれない。こっちに」
促されるままに扉から離れた場所に移動した瞬間、扉を吹き飛ばす勢いで何十人もの妖精達が入ってきた。
「まぁ、素敵な人間さんッ! ようこそ、アルム・カンパニーへッ!」
「ほぅ、これが噂の新人社員ですか」
「何人か人じゃないのもいるけど、なんだか楽しめそうね、
「そうね、
ゴスロリ調のドレスを着た少女や、所々に黒色が混じった白髪の女性、そして瓜二つの外見を持つ双子など、様々な特徴を持った妖精達が次々と姿を現し、僕らを取り囲む。
「ははは……、まさかこうなるとはね」
「おい、どうすんだよ。この様子じゃ、ほとんどの作業がストップしてるぞ」
「ふむ……。……あっ」
「K?」
「L、いい事思いついたぞ」
「うわ、嫌な予感しかしねぇ」
「なんの話だ?」
妖精達からの質問を軽くいなしてKに問いかければ、Kは「私に任せてほしい」と答えて、僕らより一歩前に踏み出す。
「みんな、彼らに色々質問したい事があるのはよくわかる。だが、一気に訊ねられては彼らも困ってしまうし、仕事も捗らない。だが、君達の努力の甲斐もあって、時間的にはかなりの余裕が出来ている。そこで、今日はこの時を以て仕事は終わりッ! ここからは、親睦会といこうッ!」
声を大にして発せられたKの言葉に、周りの妖精達が歓喜の声を上げる。
「場所はいつもの所にッ! 我こそは思う者達は来てくれ。それ以外は観客だッ! 君達は私についてきてくれ」
「は~い。さ、行こうか。みんな」
ぞろぞろと歩き出す妖精達とは別方向に歩き出したKに、訳がわからぬままついていく。
そして―――
「は……」
踏み心地のいい芝生。綺麗に整えられたライン。前後に一つずつ置かれたゴールネット。そして、ユニフォームを着た僕らの前に鎮座する、黒と白のボール。
それは、僕でも当然知っている
「始めようか。我々の技術力で可能とした、サッカーを超えたサッカー―――超次元サッカーをッ!」
相手チームのキャプテンとなったKの声を合図に、周囲を歓声が包み込んだ。
アルム・カンパニーの社員妖精達についてですが、名前こそ違えど外見は原作のレッド・ラ・ビットのようにサーヴァントと瓜二つです。例外として、ミス・クレーンはチェンジリングで汎人類史から妖精國にやって来た、という感じです。
レッド・ラ・ビットの存在が、私に「この要素を使えば、クリプターの面々で疑似カルデアが出来るのでは?」という可能性に気付かせてくれました。
ちなみに、サーモン振付師は元ネタになったサーヴァントがいない、純粋なモブ妖精です。
次回は親睦会としてサッカー勝負ですッ! アンナ達がどんな技を使うのか、楽しみにしていてくださいッ!
捕捉(解説)に記載について
-
ネタバレの可能性があっても欲しい!
-
ネタバレになる可能性があるからいらない!