こんばんは、皆さん。
九月にfgoで新イベントが始まると聞き、どのようなイベントが来るか楽しみでならない、seven774でございます。
先週は那須に旅行に行き、温泉に入ったりしましたッ! やはり温泉はいいですね。特に山奥のものは自然を感じられて心が洗い流されます。
ちなみに日光にも行き、東照宮と中禅寺湖を見てきました。東照宮は去年も行ったのですが、中禅寺湖は途中のいろは坂も含め、小学校の修学旅行以来だったので、懐かしい気持ちになりましたッ!
今回から次回にかけて、親睦会として超次元サッカー回です。今回は前半戦、よろしくお願いしますッ!
なぜこんな事になったのか……ユニフォームを見下ろしながら、カドックは一人思い悩む。
親睦会と称して今まさに始まろうとしている、超次元サッカーなる競技。『サッカー』という名前がついている以上、これから始まるスポーツは間違いなく自分達の知っているそれだろうが、如何せん『超次元』という単語が物凄い不安感を抱かせてくる。
だが、不安こそ感じるが、何故か『大丈夫だ』という気持ちもある。訳もわからぬままに着せられた、このユニフォームの影響なのだろうか。
現に、カドックはもちろん、アンナ達も自分が着ているユニフォームを見下ろして首を傾げている。
(……? 今、
ユニフォームを着ている事に、おかしな点など一つもないではないか。それに、超次元サッカーというのも
(いや、おかしいに決まってるッ! なんで昔から慣れ親しんだ感じになってるんだ? ただのサッカーならまだしも、超次元サッカーなんて聞いた事が無いぞ? 思い返せ、カドック・ゼムルプス)
そうだ。おかしい事などいくらでもある。現にほら、超次元サッカーにまつわる思い出など一つも―――
―――瞬間、カドック・ゼムルプスの脳内に溢れ出した、
初めの頃は、サッカーなんかに興味はなかった。ただある時、ブリテン中学にサッカー部を復活させようとしていたプロフェッサー・Kに出会い、勧誘され、アナスタシアと共に加わった。
そこから始まる、サッカーとの日々。
暇さえあればボールを蹴り、必殺技の完成に勤しんで、仲間とぶつかっては、その度に仲直りして、より一層固い絆で結ばれて、合体シュートで数多の強豪校を打ち破ってきた。
そして、再戦を約束していたギリシャ中学との決勝戦に勝利し、世界一となった自分達は、次は宇宙一を目指して―――
「いやなんだこの記憶ッ!?」
どこからか溢れ出してきた存在しない記憶を振り払い、これ以上偽りの記憶に侵されないよう精神統一を図る。
アンナやオフェリアを見てみても、自分のように偽りの記憶に惑わされているような気配は無い。それがカドックに、自分が先程思い返していたのはよくわからない変な映像だと割り切る切っ掛けになってくれた。
……もし彼女達がその記憶に疑いを持っていなければ、この話は大分恐ろしい事になってしまうのだが。
『さぁ始まりました、アルム・カンパニー親睦会ッ! 今回の競技は、超次元サッカーッ! アルム・カンパニーが誇る有志達によって完成した魔術式が組み込まれたユニフォームを着用する事によって、誰もが簡単に必殺技を使用可能となった、サッカーを超えたサッカーでありますッ!』
赤色のユニフォームを着たアンナ達と、青いユニフォームを着たK達が向かい合う中。グラウンドの外に置かれた横長のテーブルに座った妖精が、これから始まる激闘を待ちきれないのか、マイクを握り締めながら叫ぶ。
今回の親睦会。参加者は主役であるアンナ達の他に、アルム・カンパニー社長のプロフェッサー・Kとその秘書であるマスクド・L。そして、アルム・カンパニーの社員として働く妖精達の中で、我こそはと躍り出た八人の妖精達。
以下がチームのメンバーと、そのポジションである。
レッドチーム。
サブメンバー―――ルーズ(FW)。
ブルーチーム。
FW―――プロフェッサー・K。マスクド・L。ソウジ。シグルド。
MF―――カドック・ゼムルプス。オフェリア・ファムルソローネ。ノッブ。
DF―――アナスタシア・ニコラエヴァ・ロマノヴァ。リョーマ。オリョウ。
GK―――テスラ。
サブメンバー―――謎のモデル
「念の為にルールの説明を。基本的には汎人類史のスポーツであるサッカーと同じく、相手ゴールにボールを入れた数が多いチームが勝利となります。必殺技は単身で行うもの、複数人で行うもの、どちらも使用可能。しかし、相手の足を故障させる、または自分の手足を壊しかねない技を使うのは禁止です。ルールを守って楽しくプレイしましょうッ! ですがその前に、両チーム代表、握手をお願いしますッ!」
司会の妖精に促され、赤色のユニフォームのチーム―――レッドチームのキャプテンに選ばれたアンナと、青色のユニフォームのチーム―――ブルーチームのキャプテンに選ばれたKが歩み出る。
「良い試合をしよう、アンナ」
「こんなにも楽しめそうな親睦会、初めてだよ。よろしくね、K」
互いに固い握手を交わし、両者は自分のチームに戻る。
予めコイントスを行っているため、ボールは勝利したレッドチームの選手の元にある。
「はじめましてだけど、知り合いに瓜二つだからあんまりそんな感じはしないなぁ……。でも、よろしくね。ジャンヌ」
「はい。よろしくお願いします、アンナさん。さぁ、オルタ、ジャル。私達三姉妹の力を見せますよッ! 失敗してもお姉ちゃんがフォローしますからねッ!」
「誰があんたの妹よッ! はぁ、ホンット調子狂う……」
「頑張りますッ!」
綺麗に整えられた金色の髪の毛を持つ女性―――ジャンヌに、彼女と瓜二つの顔を持つ、少しくすんだ金髪の女性―――オルタが牙を剥き出す中、オルタをそのまま幼くしたような外見の少女―――ジャルが小さな拳を握ってやる気をアピールする。
「うははははッ! 征くぞ、オキタッ! わしらの力を見せてやろうッ!」
「ノッブ。これはあくまで親睦会ですからね。でも、やるからには正々堂々と勝負させてもらいますッ! よろしくお願いしますね、皆さん」
「あ、あぁ……」
高々に笑う腰まで伸びた黒髪の少女ノッブと、それに呆れた様子を見せながらも闘志を漲らせるオキタに、カドックは思わずそう返す。
(この二人が汎人類史だと、日本が誇る英雄なのか……)
アンナの話によれば、今カドックが見ている二人の少女は、汎人類史では極東の国日本の歴史にその名を刻んだ者達だという。
黒髪の少女は、天下統一という悲願をあと一歩というところで討たれるも、同時期に活躍した武将達の中でも、『第六天魔王』という異名と共に随一の知名度を誇る英雄―――織田信長。
桜色の髪の少女は、信長よりも後の時代に誕生した組織、新選組の一番隊隊長を務めた剣士―――沖田総司。
そして―――
「勝つぞ、リョーマ。勝ったらカエルをいっぱい食べよう」
「はいはい。まぁ、こうして体を動かすのも久しぶりだし、張り切っていこうかな」
「ゴールはこの私に任せるがいいッ! 交流の力で、遍くシュートを受け止めてやろうッ!」
ノッブと同じくらいの長さの黒髪を持つ、どことなく蛇を連想させられる顔立ちの女性オリョウと、彼女と並び立つ優しげな好青年リョーマ。
彼らも信長や沖田と同じく、日本で名が知られている男女だという。
リョーマは、日本を夜明けを目指して奮闘した姿を『龍』と例えられた男―――坂本龍馬。
そんな彼に寄り添いながらも、最期は哀しみの果てに水の中へと消えてしまった女性こそ、リョーマの隣にいる女性、オリョウことお竜さん。
後方のゴールを護る役割を背負ったのは、数多の神話で神の力として語られる雷電の力を解明し、人類文明に電気をもたらした偉大な碩学の一人、ニコラ・テスラ。
さらに、アンナのチームの方に目を向ければ、やはり歴史に名を残した者達が揃っている。
三姉妹のような妖精の長女的ポジションに座す金髪の女性は、フランスの歴史に語られる聖女―――ジャンヌ・ダルク。他の二人はアンナもわからないそうだが、もしあの聖女に
ベンチにいるルーズは、色白の肌と金色の長髪が美しい少女だが、彼女は北欧神話に語られるワルキューレの一人であるスルーズ。そういえば、オフェリアが彼女を見た時、「本当にそっくり……」と呟いていた気がする。かつては北欧異聞帯を担当していたオフェリアだ。その時に会ったのだろう。
だが、アンナでもわからないのが一人。
それが、カドック達が属するブルーチームのベンチで待機している選手、謎のモデルΛだ。地球が誕生した時から生き続けているアンナをしても見覚えのない彼女が、いったいどのような存在なのか。それとも、史実には存在していない妖精なのか。……考えても仕方ないだろう。
こうしてみると、本人ではないとはいえ、そうそうたるメンツが揃っているものだ。
超次元サッカーをするという事で不安だったが、解説を聞く限り、余程の事がない限り危険な状態にはならないだろうし、充分に安全も確保されているようなので、安心してプレイ出来そうだ。
それはカドック以外のメンバーも同様のようで、これから始まる試合に気合が入っているようだ。
「さぁ、始めようか―――オウショウさんッ!」
「はいッ! 申し遅れましたが、実況は
オウショウが言い終わると同時、審判がホイッスルを鳴らした。
レッドチームのフォワード、バルカンがボレアスにボールを渡し、試合が開始される。
走り出したボレアスに早速ブルーチームの選手達が向かうが、ボレアスは素早い動きで彼らを躱していく。
「ほぅ。これは面白い」
サッカーという競技については、召喚された時に英霊の座から与えられた知識の中に入っていたが、プレイの仕方についてはあまり知る事は出来なかった。
しかし、このユニフォームを着ているおかげか、どのようにプレイすればいいのかが直接頭の中に流れ込んでくる。
しかも、ユニフォームには力加減の制御機能も組み込まれているようで、サーヴァントが人間に全力で体当りしても軽く痛みを感じる程度まで力を抑え込む事が出来るようだ。だが、それで着用者に不快感を与えるわけにもいかないので、その証拠として、力を抑え込まれている感覚はあるが、それに対する虚脱感は微塵も感じない。
このユニフォームだけでも、妖精達の技術もそうだが、気ままに生きる存在である彼らを完璧にまとめ上げたプロフェッサー・Kもかなりのカリスマ持ちだという事がよくわかる。
「行け、バルカン」
「おうよッ!」
同じく走ってきた弟にシュートを決めさせるべく、ボールを蹴り上げが……
「させるかッ!」
「なにィッ!?」
二騎の間に飛び出したカドックがボールを奪い取り、一気に走り出した。
ボールを奪い返そうと迫るボレアスとバルカンを躱し、オキタにパスを回す。
「ありがとうございますッ! 良いパスですねッ!」
「前を見ろッ! 来るぞッ!」
「ボールは渡してもらうわよッ!」
オキタからボールを奪うべく、自陣から出ていたペペロンチーノが走る。しかし、オキタは慌てた様子は見せず、そのままペペロンチーノとの距離を縮めていく。
そして、もう少しで両者がぶつかりそうになった時、オキタの足元から緑色の風が吹き荒れた。
「―――『そよかぜステップ』ッ!」
まるで風が導くように滑らかな動きでオキタがペペロンチーノを躱すと同時、ペペロンチーノは風に足を掬われて転んでしまった。
「嘘ッ!?」
「これが超次元サッカーですよッ! ノッブッ!」
「おうッ!」
オキタからパスを回され、ボールを受け取ったノッブが走る。
「項羽様が護るゴールに、ボールなんて入れさせるかッ!」
「うわははッ! 甘い甘いッ!」
「チィ……ッ!」
シュートは入れさせないとばかりに妨害に入った虞美人と蘭陵王を躱す。
他のディフェンスであるジャンヌ達は距離があるため、ノッブからボールを奪うには間に合わない。
腕を組んで右足で強くボールを踏みつける。
そして、項羽が護るゴールを強く見据えると同時、左足でボールを蹴る。
蒼い光を纏って蹴り出されるボールだが、ノッブはそのままボールを見送らず、ボールの進行方向に現れてはさらに足を振るい、シュートの威力を高めていく。
「―――『刹那ブースト』ッ!」
二発蹴った後、最後の一撃が繰り出され、出だしのものも含めれば合計四発ものシュートを受けた一撃が、ゴールに迫る。
強烈なシュートを前に、しかして項羽は不動。
己が果たすべき使命を果たすべく、人型の上半身を捩じる。そして、胸より湧き上がる力を右半身の腕に宿し、掲げる。
すると、項羽から放出された黄金のオーラが巨人の上半身を作り出し、構える。
「―――『マジン・ザ・ハンド』ッ!」
項羽の掛け声と共に繰り出された巨人の掌底が、一筋の蒼光を真っ向から迎え撃つ。
暫しの均衡の末、先に力尽きたのは―――ノッブのシュートの方だった。
「……大事無し」
『おぉっとッ! 項羽、余裕でノッブ選手のシュートを受け止めたッ! その威圧感も納得の貫録を見せつけたァッ!』
「『項羽』? 『様』を付けなさいよ『様』をッ!!」
『えっ? あぁ、はいッ!』
「蘭陵王殿」
項羽が投げたボールが蘭陵王に渡り、そこからボールを繋いでいく。
『蘭陵王からジャンヌへパスッ! ジャンヌ、オキタを躱してボールをアシュヴァッターマンへ繋ぐッ!』
「そう簡単には行かせられないね」
「そうかよ。だが、無駄だッ!」
「な……ッ!?」
ブルーチームのゴールへと進んでいくアシュヴァッターマンの前に、リョーマが立ちはだかる。
しかし、アシュヴァッターマンは彼の頭上にボールを蹴り上げ、彼がそれに気を取られている間に背後に回る。それにリョーマが気付いた頃には、ボールは既にアシュヴァッターマンの足元にあり、まんまと抜けられてしまった。
呆気に取られていたリョーマに「どうだ」と言わんばかりに笑うアシュヴァッターマンだが、新たな気配を感じて前に視線を向ける。
「―――『ディープミスト』ッ!」
突然周囲を濃霧が包み込み、アシュヴァッターマンの視界を奪う。
どこから来るのか、と足元のボールを取られないよう気を付けながら周囲を見渡すが、次の瞬間、足元からボールが消えた。
驚愕と共に振り返ってみれば、先程まで自分の下にあったはずのボールを足元に置いたオリョウの姿があった。
「ピースピース。リョーマの仇を取ったぞ」
「別に死んではいないんだけどね……」
「このッ!」
「渡さないぞ。オフェリア」
アシュヴァッターマンがボールを取り返しに来る前にオリョウがボールを蹴り、オフェリアに渡る。
ボールを受け取ったオフェリアが蹴り進んでいくと、彼女の前にアンナが立ち塞がった。
「今は敵同士だから、全力でやらせてもらうよッ!」
「それはこっちも同じッ! 悪いけど、抜かせてもらうわ」
密着しかねない勢いでボールを奪おうとするアンナと、彼女から逃れる隙を窺うオフェリア。
アンナを抜けようと体を動かすが、アンナも彼女の行動を先読みして移動してくる。
チラリと背後に視線を向けるも、後方にいるメンバー全員がレッドチームのメンバーによってマークされてしまっている。それに焦りが生まれ、オフェリアが無理矢理にもアンナを押し切ろうとするが―――
「貰ったッ!」
「あ……ッ!」
それが仇になってしまい、アンナにボールを奪われてしまう。
「先制点は、私が貰うよッ!」
ボールを高く蹴り上げ、アンナがそれを追って跳躍する。
「―――『ドラゴン―――」
天高く舞い上がったアンナが左足を振るうと、そこから飛び出した金色の竜が弧を描く。
その中心を通り、アンナが左足でボールを蹴る。
「―――ブラスター』ッ!」
アンナがボールを蹴り飛ばす刹那、弧を描いていた竜を構成するエネルギーがボールに集約。瞬間、ドラゴンブレスと見紛う程の凄まじい威力のシュートが繰り出された。
「必ず止めるッ! フンッ!」
迫り来る強烈なシュートを前に、テスラは右手に光輝く球を生み出す。そして、軽いジャンプと同時に、その球を黄金のシュートへと投げ飛ばした。
「―――『シュートイーター』ッ!」
投げ飛ばした光球は、アンナの繰り出したシュートを呑み込み、その力を奪おうとする。だが次の瞬間、ボールは自らを覆った光の防壁を突破した。
「なッ。ぐ、おぉおおぉおお……ッ!!」
技を突破された事に驚愕するも、すぐに両手でシュートを押さえにかかる。しかし、技である程度威力は削がれているとはいえ、必殺シュートの威力は強力なもの。抑え切れるはずもなく、ボールはテスラを弾き飛ばしてゴールネットに突き刺さった。
『ゴールッ!! アンナ・ディストローツの必殺シュートが、見事テスラの壁を打ち破ったッ!』
オウショウの声が轟き、スコアボードに記されているレッドチームの欄に『1』の数字が刻まれた。
「やったぁッ!」
「ナイスですね、アンナさんッ!」
「うんッ! ありがとう、ジャンヌッ! これが超次元サッカー……うんうん、楽しいッ!」
これで1点リード。だが、この1点は中々大きい。
最初に点数でアドバンテージが取れたのは、仲間の士気を上げる事が出来るし、先制点を取られないという安心感が生まれるのだから。しかし、それは同時に、相手チームをより攻勢に出させるものでもある。
「先制点は取られてしまったか。しかし、まだ終わったわけじゃない。前半はまだ時間がある。巻き返そうッ!」
『おうッ!』
その証拠に、先制点を取られた事に影響されたブルーチームのキャプテンであるKが、チームの士気を高めていた。これからは今までよりも苛烈な攻め方をしてくるだろう。これを如何に防ぎ、如何に点差を開くかによって、今後の勝負の結果を左右する。アンナ達レッドチームも、これからはさらに攻守共に気を配らなければならなくなった。
『さぁ、試合再開ですッ! プロフェッサー・Kからマスクド・Lへとボールが渡るッ!』
「オラオラオラァッ! L様のお通りだッ、道を開けやがれッ!」
試合再開のホイッスルが鳴ると同時、Kからボールを受け取ったLが一気に走り出す。
その細身に見合う素早さで風を切りながらも、しっかりと鍛え上げられた筋力によって齎されるパワーは、相応の威圧感を伴ってレッドチームを牽制する。
『おぉっとッ! マスクド・L猛進ッ! 圧倒的なパワーとスピードに、レッドチームの選手達を寄せ付けませんッ! ……あぁっとッ!?』
「これ以上は行かせない……ッ!」
『これはッ! 虞美人がLの前に躍り出たッ!』
「ハッ、テメェ一人でなにが出来るッ!」
自身の前に単身飛び出してきた虞美人を嘲笑し、Lが弾き飛ばす勢いで速度を上げるが、虞美人は真っ向からそれの迎撃に向かう。
「―――『スピニングカット』ッ!」
「ぅ、ぐぁ―――ッ!」
赤いオーラを纏った右足を振るうと、そこから飛んだ衝撃波が地面に刻み込まれる。それと同時、そこから発生したエネルギーの壁がLを弾いた。
「チッ、この……」
「貴女に、項羽様へのシュートは許さないわ。オルタッ!」
「ディフェンスに攻めさせる気? でも、いいわ。私もシュート技使えるしねッ!」
『オルタ選手、ディフェンスに似合わぬ攻めの姿勢ッ! ディフェンスを他のメンバーに託し、自らゴールへと向かっていくゥッ!』
巧みなボール捌きでブルーチームの選手達を掻い潜っていったオルタが高くボールを蹴り上げる。すると、彼女の背後から青色の体色を持つ巨大なワイバーンが飛翔する。
ボールはワイバーンが旋回すると、水色の輝きを纏ってオルタへと落ちてくる。
「―――『ワイバーンクラッシュ』ッ!」
強く蹴り飛ばしたボールと共に、ワイバーンが高らかに吼えて飛んでいく。
選手達の頭上を越え、ゴールへと向かっていくシュートを、誰もが見送るしか出来ない―――がッ!
「シュートはもうやらせないよ」
「行くぞ、リョーマ、オキタ」
「はいッ!」
リョーマ、オリョウ、オキタがゴールを護るテスラの前に立ち、三人でオルタの必殺シュートに立ち向かっていく。
「「「―――『パーフェクト・タワー』ッ!」」」
オリョウが両腕を振るい、それを合図にリョーマとオキタが前に飛び出る。
オリョウによって足元に出現した巨大な塔に飛び乗った二人が、迫るシュートに跳び蹴りを繰り出した。
ゴールに喰らいつこうとしたワイバーンは、しかしその前に立ちはだかった巨塔によって阻まれた。
『凄いッ! ブルーチームの選手達による必殺技が、ワイバーンクラッシュを防いだッ! レッドチーム、得点ならずッ!』
「反撃開始です。オフェリアさんッ!」
「えぇッ!」
オキタが蹴ったボールが向かっていくのは、オフェリア。
そのままパスを回しながらレッドチームへと攻め入るのかと思いきや、なんとオフェリアは、そのまま右足を後方へと引いた。すると、彼女の足元に薄緑色の魔法陣が出現する。
「なっ、まさか……ッ!」
その構えにオルタが青ざめた瞬間、オフェリアの右足がボールへと叩きつけられた。
「―――『オーディンソード』ッ!」
掛け声と共に蹴り出されたボールが、北欧神話に伝わる神の剣となって飛んでいく。
だが、それだけでは終わらない。そのシュートの先には、プロフェッサー・Kが立っていた。
「良いシュートだ、オフェリア。なら、私も負けてはいられない」
ボールが真横を通り抜ける瞬間、Kの右足がボールに叩きつけられる。
勢いを増したボールに、Kが凄まじい速度で追いつき、宙返りした後に両足をボールに押し当てる。
「―――『ゴッドキャノン』ッ!」
オフェリアのシュートに、さらにKの必殺シュートが付け足され、その威力と速度を倍増させてレッドチームへと飛んでいった。
『こ、これはァッ! オフェリア・ファムルソローネのオーディンソードに、プロフェッサー・Kのゴッドキャノンによるシュートチェインだァッ!!』
「ディフェンス」
「「「―――ッ!」」」
『オーディンソード』と『ゴッドキャノン』の二つの技を受けたボールの威力に構えを取った項羽の前に、ディフェンスの三人が移動する。
「「「―――『ディープ―――」」」
ジャンヌ、ジャル、虞美人の三人が、熱帯雨林を駆け抜けるターザンのように、ツタに掴まりながらシュートへと向かっていく。
「「「―――ジャングル』ッ!」」」
ツタによる加速を得た三人による蹴りがシュートを阻む。しかし、シュートの威力を完全に殺し切る事は出来ず、容易く突破されてしまった。
「―――『ムゲン・ザ・ハンド』ッ!」
項羽が両手を合わせると、彼の背後から無数の緑色に輝く腕が現れる。
それらは項羽が腕を前に突き出すと、一斉にシュートの勢いを削ぐべくボールへと殺到する。
「ぐ、ぅッ! オオォオオアアァァア―――ッ!?」
しかし、ディフェンス三人のブロック技と、項羽によるキャッチ技を以てしても、シュートの威力を完全に殺す事は出来ず、無数の腕を形作るエネルギーは木端微塵に粉砕されてしまった。そして、項羽自身も技を通して腕に走った痺れに怯んでしまい、止められなかったボールが自らの横を通り過ぎていく様を見ている事しか出来なかった。
『ゴォオオオルッ!! ブルーチーム、必殺シュートのシュートチェインによって、項羽様のムゲン・ザ・ハンドを破ったッ! これで両チーム同点ですッ!』
オウショウがレッドチームとブルーチームの得点が同点になった事を告げた刹那、審判が前半終了のホイッスルを鳴らした。
『ここで前半終了ッ! 両チーム、一進一退の攻防でした。ここから先、どのような試合になるのか、後半戦に期待が高まりますッ!』
前半が終了した事で、両チームの選手が休憩を取るべくベンチへと戻っていく。
Now Loading...
「Kにオフェリア……項羽様のキャッチ技を破るなんて……ッ!」
「どうどう。落ち着いてよ、ぐっちゃん。これはスポーツで試合なんだから。なにも殺し合いをしてるわけじゃないから、ね?」
「でもアンナ……ッ!」
ベンチに戻って早々、爪を噛んでブルーチームにいるKとオフェリアを睨みつける虞美人をアンナが制止する。
やはりというか、彼女はスポーツであったとしても、自分の愛する夫が護るゴールが破られたのが癪に障るらしい。それ程項羽を愛していると言えて、戦場であればその反応は妥当とも言えるものであるが、この場合にそれは適当ではない。
アンナの制止を得ても尚、怒りは収まらない様子の虞美人であったが、そんな彼女を見かねた項羽も制止に加わる。
「止めよ、我が妻」
「項羽様……。ですが、彼らは……」
「アンナ殿の申した通り、これはあくまで親睦を深める為の催事。点を取られ悔やむのなら良いが、怨恨を抱くのは戴けない。これは競技であり、互いに勝敗を奪い合うものである。『楽しくプレイ』である」
「楽しく、プレイ……。……わかりました、申し訳ございませんでした。アンナも、ごめんなさい」
「大丈夫だよ。ちゃんと反省してくれたんだから」
項羽の説得もあり、素直に謝罪した虞美人の背中を軽く叩き、「さて」とアンナは腕を組み始めた。
「前半終了寸前のところで点を取られちゃったから、また振出しに戻っちゃったなぁ。後半戦も頑張って点を取りに行かないとね」
「そうねぇ……。でも、どうするの? 私達のチームの主力って、ぶっちゃけあなた達三姉弟でしょ? オルタみたいにディフェンスでシュート技を使える選手もいるけど、いつも攻めていられるわけじゃないわよ」
「そうなんだよねぇ。やっぱり、私達を主軸に置いたプレイがいいかも。でも、いいの? 私達の為の親睦会だけど、ちゃんとジャンヌ達の活躍の場も見せたいんだけど……」
「いいんですよ。私達は私達の役目を果たすだけです。ゴールは許してしまいましたが、次はしっかり防いでみせます。アンナさん達は、安心してプレイしてください」
「ま、この親睦会の主役はアンタ達だからね。主役を食っちゃうわけにもいかないでしょ?」
「そうですッ! 私達は私達の、アンナさん達はアンナさん達の役目を果たしましょうッ!」
「三人共……ありがとう」
自分達が主役だという事はわかっているが、やはり社員であるジャンヌ達の見せ場も用意したかったアンナにとって、彼女達の言葉は助かるものだった。笑顔で感謝の言葉を述べた後、アンナは拳を振り上げる。
「後半戦、いっぱい点を取って勝とうねッ! 頑張るぞーッ!」
『おうッ!!』
アンナのやる気に満ちた声に、チームメイト全員が威勢よく答えた。
Now Loading...
「なんか、芥に凄い睨まれてるんだけど……」
「気にするな。お前の打ったシュートがゴールに入ったからだろ。上手くアンナと項羽が説得してくれると思うし、すぐに無くなるだろ」
レッドチームのベンチから凄まじい殺意を垂れ流す虞美人に若干困惑するオフェリアに、スポーツドリンク片手にカドックがそう返す。
「そう……。ならいいんだけど……」
「あの、虞美人さんってオフェリアさんの事嫌いなんですか? その、凄い殺気なんですけど……」
「否定。彼女は夫が護るゴールにシュートを決められたのが悔しかったのだと、当方は推察する」
「嫌われるような事はしてないわ。ただ彼女の場合、項羽……旦那さんへの愛が振り切っててね。ああなるのも当然なのかもしれないわ」
「旦那さん……。妖精の私には、あまりわからないものですね」
「そうなの?」
「えぇ。私達妖精に、あなた達のような生殖機能はありません。なにかしらの形で死んだ場合、記憶こそなくなりますが、どこかでまた次代の妖精として誕生するだけですから」
「元々自己で完結するから、他者との間に子を持つ必要がないという事か」
「そうですね。ですから、それでも恋人や伴侶を迎える妖精というのは、本当に希少なんです。代表的な妖精といえば、妖精妃モルガンに仕える妖精騎士ガウェインや、城砦都市シェフィールドの領主を務めているボガードですね。ボガード様は今のところ伴侶がいるかはわかりませんが、ガウェイン様には現在人間の恋人がいらっしゃったはずです」
妖精騎士ガウェインに、城砦都市シェフィールドの領主ボガード。
気になる妖精達の名前が出てきたが、今はその事について考えても仕方ないだろう。今は後半戦について考えなければならない。
「先制点を取られはしたが、オフェリアのお陰で、我々はなんとか同点に持ち込む事が出来た。だが、我々が目指すのは勝利。後半戦で点を取って勝ちたいところだが、それは相手も同じ事。そして、相手のチームの主力は、恐らくアンナ、ボレアス、バルカンの三人だ。彼らを上手く封じる事が出来れば、我々が勝てる確率はかなり上がると考える。カドック、オフェリア、ノッブ。ミッドフィルダーである、君達の意見を聞きたい」
ミッドフィルダーは、試合の状況を常に把握して味方をサポートする役割だ。前半戦ではあまりそういった面での活躍が出来なかった分、後半戦ではそのポジションとしての役割をしっかりと果たしていきたい。その為にはまず、プロフェッサー・Kや他のメンバー達と話し合い、今後の試合をどう運んでいくのか考えていこう。
そう考えたカドック、オフェリア、ノッブは、取り敢えず三人で簡単な情報を出し合った後、それぞれの意見が噛み合う作戦を他のメンバーに伝える事にした。
こうして試合は、後半戦へと続く―――
流石にチームだけでも合計で22人も扱うとなると大変ですね……。今回見せ場が無かったキャラクターは、後半戦でしっかり活躍させたいと思いますので、楽しみにしていてくださいッ!
項羽はサーヴァント化していないので未来演算機能は相変わらずのチート級ですが、ユニフォーム着用時限定でかなり弱体化します。ボールを蹴れない機体の構造上、ゴールキーパーとしてでしか参加出来ませんが、彼も彼なりに、どんなシュートが打たれるのかわからないこの親睦会を楽しんでいます。
また、今回登場した妖精はほとんどが元ネタのキャラと同じ名前持ちですが、汎人類史の彼彼女らとは完全な別人です。社員の中で汎人類史から流れてきたのはミス・クレーンだけです。
そして現在、アンナ・ディストローツのイラストを製作中でございます。イラストを使う場面は今後の展開によって明らかとなりますが、必ず完成させますので、こちらも楽しみにしていてくださいッ! 服装は変わらないですが、髪形が少し変わっていると思いますが、温かい目で見てくださればと……。
次回もよろしくお願いしますッ!