ドーモ=ミナサン。
選考やらなにやらで忙しく、執筆の時間が中々取れなかった作者です。
先週はWEBテストにイラストの練習。今週は月曜日と火曜日に草津まで泊まりに行ったり、水曜日はグリッドマン・ユニバース、そして本日は別の会社のSPIテストを受けに池袋に行ったりと、本当に忙しかったです。その影響で今回は少し短いですが、よろしくお願いします。
グリッドマン・ユニバース、大変良い作品でございました。グリッドマンとダイナゼノンの気になるポイントを全て解決してくれる、自分が見たいものを全て見させてくれる作品だったので、機会があればもう一度みたいと思いますッ!
それでは本編、どうぞですッ!
『マシュさん、大丈夫ですか?』
「はい、まだ大丈夫です。このまま下ろしてください」
糸を通して伝わってくる声に返事を返す。
時は妖精歴400年。
アルトリア・キャスターよりも前に、
ノリッジでの『厄災』に対処すべく行動していたマシュは、キャメロットにいたモルガンの放った『水鏡』によって過去の時代へと転移させられた。
そこでトネリコと、その従者トトロット、そして黒騎士エクターと出会ったマシュは、彼女達と共に過去のブリテンを旅した。
様々な勇士との出会い、戦い、そして別れ……多くの出来事を経験した彼女達は、やがて『大穴』の調査へと乗り出す事となった。
トネリコのエンチャントを受けたトトロットの糸を命綱に『大穴』を降下していく途中、マシュの耳にトネリコからの声が届く。
『貴女は
それは、彼女がこの時代に来る前に触れた原石についての話。
マシュが触れたあの原石は、このブリテンに過去から存在する災害に対する抑止力のようなものらしい。また、原石に触れた影響で、マシュには絆を結んだ者を強化する力が与えられていた。
なぜ石に触れただけでそのような能力が身につくのか、トネリコは理解できていなかったが、マシュはそれの正体をなんとなくだが理解できていた。
―――絆原石。
赤衣の男が著者である“モンスターハンター”の番外編、“モンスターハンターストーリーズ”に登場した不思議な石の名前だ。他種族の心を通わせ、絆を繋ぐ力を秘めているそれを持つ主人公が、絆を結んだモンスターや仲間達と共に世界を救うというのが、“モンスターハンター”とはストーリーだ。当時から彼らの名が、現代でも使われている『ライダー』の語源となっている。
そうして自分が触れた石の正体に辿り着いたと同時、マシュの脳裏にはとある考えが思い浮かんできた。
現在2巻まで発見されているストーリーズには、それぞれの主人公が対峙した災害があった。
“黒ノ凶気”に、“凶光化”。黒いオーラを纏ったモンスターを凶暴化させる前者と、桃色がかった赤いオーラでモンスターを凶暴化させる後者は、『凶暴化』という一点において共通点が存在している。そしてこれら二つに酷似したものを、マシュはこの時代に来る前に目にしていた。
黒いオーラに呑まれて我を忘れたように凶悪さを増したボガードに、彼が治めていたシェフィールドを崩落させた巨大なワームのような存在が出現する前兆の赤い光―――ここまで酷似していると、最早疑いのないものであった。
この答えに辿り着いたマシュは、すぐさまそれをトネリコへ報告した。
だが、トネリコ曰く、「そのような存在の気配は感じられない」というものであった。
流石に2400年も過去の世界であると、マシュのいた時代に存在すると思われる彼らも、まだ出現していないのかもしれない。
しかしトネリコもそれで終わりにするつもりはないらしく、自分達が戦いを収めた氏族の者達に捜索を依頼してくれた。それがマシュには、なぜだが嬉しかった。
『……マシュさん?』
「……あっ、すみません。少し、前の事を思い出していました」
自分が返事を返さなかったのが気になったのか訊ねてくるトネリコの声に、マシュはすぐに謝罪と共に返す。
『ふふっ、昔の事を思い出すのもいいですが、今は調査に集中してくださいね』
「はい。では、降下を続けます」
気持ちを引き締め、再び降下を開始する。
出発してから一時間が経過し、7km程降下した頃。
変わらず穴の規模に変化はなく、生命体の痕跡もない。
しかし、これまでと違ってマシュの耳は、これまで聞いていた自分とトネリコの声以外の音を捉えた。
「―――これ、は……」
それは、遠い未来にいるはずの
聞くだけでも生物としての本能が刺激され、今すぐにでもそこから離れたくなるような、不快な音。
そして、暗い世界の底に
「炎のような、赤い、光……」
今まで暗黒が広がっていた中にポツリと灯った、無数の赤い光。
それを視界に収めた途端、トネリコの焦った声が響いてきた。
『マシュさん、タラップから足を外してッ! 糸が汚染されてる、致死量の魔素が上がってくるッ!』
「え、は、はいッ!」
糸を通してマシュの真下にある存在に気付いたトネリコは、すぐに彼女にタラップから足を離すように叫ぶ。
糸越しでもわかる。これは、このブリテンどころではなく、星そのものを覆う程の呪い。だが、それだけではない。詳細まではわからないが、それ以外の“なにか”が、この呪いには含まれている―――ッ!
『いい? くれぐれも直視しちゃ駄目ッ! そこはこの世の空間じゃないッ! エクター、早く引き上げてッ!』
『おうッ!』
エクターの返事が聞こえた直後、一気にマシュが掴んでいる命綱が引き上げられていく。
だがそれでも、汚染の方が早い。絆原石の加護によって命まで落とすものではないにせよ、少しずつ意識が途切れて始めているのがわかる。
(……ッ、駄目、意識が……)
意識が落ちる瞬間、どこかから声が響く。
『大穴』の底にいる存在。虚ろな光を放つそれ―――かつて裏切りにより死した獣の神は、今にも目の前から消えていこうとする
『逃げろ、逃げろ、逃げろ』
『喰われる、喰われる、喰われる』
『呑まれる、呑まれる、呑まれる』
『蟲に、蟲に、蟲に』
絹を引き裂くような音と、ぐちゃぐちゃとなにかを咀嚼するような不快な音に包まれながら、マシュは意識を深い闇の底へと落としたのだった。
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時は現代に戻り、ロンディニウム。
多くの犠牲を出しながらもウッドワス率いる女王軍からの防衛戦に勝利した立香達の下には、グロスターの領主であるムリアンから一報が届いていた。
「アイドルイベントの、特別招待状?」
「はい。昨夜、グロスターのムリアン殿からアルトリアと立香宛に届きました」
朝早くに仲間達と共に呼び出された立香に、パーシヴァルから招待状が手渡される。
蝋で封をされたそれを開けてみると、中にはパーシヴァルの言った通り、今度グロスターで開催されるアイドルイベントの招待状が入っていた。
懇切丁寧な文面の中には『他の仲間達も連れてきてもいい』といった内容も含まれているのを見る限り、どうやら二人だけで来いというわけではなさそうだ。
「あら、遂に始まるのね。ふふっ、楽しみ♪」
「そういえば、伯爵はこのイベントの主催者とも顔見知りみたいだったね。なんでアイドルイベントなの?」
ダ・ヴィンチから問いかけに、今回の防衛戦にも参加していたペペロンチーノ―――ペペロン伯爵はにこやかな笑顔で返す。
「それはもう、あの人は人間の文化が大好きだからよ。特にアニメ系なんて目がないくらい。だから多分、今回のイベントには色んなアニメの曲が使われるんじゃないかしら」
「アニソンかぁ……そういえば最近は全然聞かなかったなぁ」
ペペロン伯爵の返答を耳にし、立香は過去の記憶を思い浮かべる。
まだ自分がカルデアの『カ』の字も知らなかった頃、よく自室で聴いていた。ゲームをする時にも勉強をする時にも、作業用として流す事もよくあったくらいだ。
カルデアに属してからは、今も活躍してくれているムニエルや、今はもういないドクター・ロマニなどなど、色々な人がダウンロードしていた音楽データを使って聴いているが、それでもやはり数は限られている。
もしかしたら、手持ちの音楽データにはない懐かしのアニソンをこのイベントで聴けるかもしれない。
そう思うと、立香の心には期待の炎が燃え上がってきた。
「でも、このタイミングでか……。確実になにか企んでるね、ムリアンは」
そんな立香だったが、オベロンが疑いの声を上げるのを聞いてすぐさまそちらに意識を向ける。
「僕らが女王軍を撃退して間髪入れずにこの招待状……『一緒に汎人類史の文化を楽しみましょう』なんて書かれてるけど、これ、絶対に僕らに考える暇を与えないって事だろ? 正直乗り気にはなれないなぁ」
「でも、これは逆にチャンスとも言えるかもしれない。『巡礼の鐘』はグロスターにもある。これを機にムリアンに直談判して、許可を貰えればこっちのものだ」
「あっ、そうか。あそこにも鐘があるんだった」
「どう考えても、アルトリアを誘ったのはこれが狙いだよね。どうしてかはわからないけど、ムリアンは私達にチャンスをくれてるみたい」
「そう。これは彼女なりの、女王と『予言の子』への意思表示とも言える。僕らは観客として招待されてる身だけど……」
そう言ってオベロンは、招待状と同封されていた、今回のイベントで登場するメンバーの一覧を指差す。
彼の指が差しているのは、『バーヴァン・シー』と『バーゲスト』、『メリュジーヌ』、そして『カリア』の名前だった。
「見てよこれ、妖精國ブリテンが誇る最高戦力が揃い踏みだ。風の噂によれば、あのモルガンも特等席で観客として来るらしい。流石にその盟友である古龍は来ないようだけど、ムリアンが自分の立ち位置を明らかにするなら、これ以上の場面はないだろう」
「村正、いきなり斬りかからないでよ?」
「馬鹿野郎。借りがあるとはいえ、
「あははっ、そうだね」
立香が軽く村正をからかっていると、オベロンは「話を逸らさないでくれよ」と半目で立香を見た。
「既にノリッジで鐘を鳴らし、ウッドワスを撤退させた僕らは反逆者だから、普通の方法でグロスターには入れない。でも今回は別だ。客として堂々と参加できる。あとはほら、ね? 女王達の目がステージに向いている間にこっそり抜け出して、秘密の部屋に忍び込むとしよう。こういうの、アルトリアの得意技だろう?」
「え、私普通に参加したいんだけど……」
「僕達の目的を忘れないでほしいなぁッ!」
まさかの返答に目を見開くオベロン。存外、アルトリアはこのイベントの招待状に浮かれていたようだった。
兎にも角にも、一行はグロスターへと向かう事が決定した。
というよりも、ムリアンが招待したアイドルイベントが今夜行われるため、今から急いで行かなければならないのが実態だったのだが……。
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「行ってしまいましたね……」
こちらに手を振りながらグロスターへと入っていった立香達の背を見送ったパーシヴァルが、小さく呟く。
「いやぁ疲れた。私、ロンディニウムから
「君もお疲れ様、レッドラ・ビット」
全速力で馬車を引いた影響で疲労したのか、肩を上下させているレッドラ・ビットに人参を差し出す。
受け取ったそれを嬉しそうにボリボリと頬張る彼だったが、ふと隣にいるパーシヴァルの顔色が優れない事に気付く。
「どうされましたかな?」
「……昨日の事を思い出していてね」
昨日の事―――そう言われたレッドラ・ビットは、即座にパーシヴァルの考えを見抜いた。
「……ウッドワス様の事、ですか」
「あぁ。あの時、僕は勝利を確信していた。君やアルトリア達の協力もあって、遂にあの排熱大公を討てると思った。けれど……」
それは、絶望へと続く落とし穴だった。
今にも倒れそうな体を奮い立たせて繰り出したトドメの一撃は、しかし彼の命どころか、体皮に傷を付ける事すら出来なかった。
極限状態。
文字通りの、排熱大公ウッドワスが有する究極の姿。
もしあの姿を最初から出されていたら、間違いなく自分達は殺されていただろう。それこそ、そこらの虫を叩き潰すのと同じように。
あの頑丈さと、彼の戦闘経験に裏打ちされた攻撃は、たとえ掠ったとしてもこの命を刈り取っていくだろう。それ程の威圧感を、パーシヴァルはあの一瞬で感じ取っていた。
あまりにも、力の差がありすぎる。
地を這う蟻が、大空を行く竜に勝てるか。無理だ。それ程までの隔絶した力量差を、パーシヴァルは恐怖と絶望と共に思い知った。
「怖いですか」
「怖いさ。そう感じない方がおかしい」
しかし、ウッドワスはこう言ったのだ。
『―――オレはいつでも、お前の挑戦を受けよう』
彼は、信じているのだ。自分がこの絶望を乗り越え、再び目の前に現れるその時を。
『情けをかけられた』のではない。『今はその時ではない』と言われたのだ。
ならば、立ち上がろう。この悔しさを、恐怖を、絶望を胸に。
「今の僕には、力が足りない。でも、彼と真っ向からぶつかる力は、一朝一夕じゃ手に入らない」
真正面から馬鹿正直に戦っても無駄だ。間髪入れずにあの拳で、足でこの身が打ち砕かれる。
ならばどうする。どうすれば、あの強大な漢を相手に立ち向かえる。
(……そういえば)
刹那、パーシヴァルの脳裏に当時の戦いの記憶がフラッシュバックする。
ウッドワスとの戦闘時、立香は影で構築された戦士達を召喚していた。その中に、ガレスの持つものよりも大きな槍を持っていた女性がいたのを思い出した。
銃槍と盾で両手が塞がっている中でも、彼女はウッドワスからの攻撃を受け止め、受け流し、的確にカウンターを叩き込んでいた。
もし、あれが自分にも出来るのなら。ウッドワスの動きを見切り、攻撃する事が出来るのなら。
「……レッドラ・ビット」
「はい」
なにか? と反応した彼に、取り出したニンジンを二本持たせる。
感謝の言葉と共にそれを同時に貪ろうとしたレッドラ・ビットだったが、「待ってください」とパーシヴァルに止められてしまう。
「レッドラ・ビット。そのニンジンで、私に攻撃してください」
「えっ? な、なぜですかッ!?」
「貴方の戦闘力はこれまでの間に何度も見てきました。貴方の得意とする槍ではありませんが、どうか私の鍛錬に付き合ってほしい」
「え~……」
「もちろん、そのニンジンが潰れる勢いでとは言いません。ですが、私が『当たった』と思ったら、そのニンジンを食べていただいて結構です」
「ヒヒンッ!? なんと……ではまさか、あの少し怖いレベルで積まれていたあのニンジンの山は―――ッ!」
バッと動いたレッドラ・ビットの顔が、立香達を乗せていた荷台とは別の荷台に積まれたニンジンの山に向けられる。
ニンジンが好物の彼にとって、それは最早宝の山に等しい。それがパーシヴァルにたった一撃当てるだけで一本食べられる……つまり百発命中させれば百本食べられるという事だ。
「お願いします、レッドラ・ビット。貴方の協力が必よ―――ウッ!?」
両腕を広げ、レッドラ・ビットの協力を仰ごうとした直後、パーシヴァルは胸部に重い衝撃を感じた。
突然肺を圧迫された影響で咳き込むパーシヴァルだが、涙で滲んだ視界の奥に、「うまっ、うまっ」と、先程自分に直撃させたであろうニンジンを食べているレッドラ・ビットの姿が微かに見えた。
「い、いきなり攻撃とは……」
「不意打ちの可能性も視野に入れましょう。これで一本です……ねッ!」
「―――ッ!」
口元を拭った刹那に突き出されるニンジン。相手の油断を誘っての一撃を、しかしパーシヴァルは間一髪で躱した。
「チッ、外しましたか……。セイッ!」
「フ―――ッ!」
舌打ちと共に繰り出される刺突を、短く息を吐いて躱す。だが、突き出されたニンジンは引き戻されず、そのまま真横にスライドしてきた。
真横から迫る
トン、と軽く側頭部に当てられるニンジン。パーシヴァルが「うっ」と短く呻くと、「ウマっ、馬っ」とレッドラ・ビットは早速ニンジンを頬張り出す。
「ふふふ、ただ突き出されるだけとは思わない事ですね」
荷台に積まれた山から新たにニンジンを二本装備し、戻ってきたレッドラ・ビットが不敵に笑う。
当たり前のことを失念していた自分に恥じ入りつつも、パーシヴァルはいつでも来いとばかりに腰を低くする。
「では、行きます―――ッ!」
その言葉と共に、突き出される二本のニンジン。
パーシヴァルはその意識を戦闘時のものへと即座に切り替え、迫り来るニンジンを躱し、時には受け流していく。
そうして、通りすがりの妖精達の訝し気な目線に晒されながらも、パーシヴァルは特訓を重ねていくのだった。
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メイク係の妖精が離れ、目を開けるよう促される。
言われるがままに閉じていた瞼を持ち上げれば、普段見ているものとは全く別の自分の顔が見えた。
「凄い……これが、私……?」
「えぇ、とても素敵でしょう? 貴女、凄くいい素材だもの。今日は大切なイベントだけど、それ抜きでも張り切らきゃ損よ損」
「そんな……。でも、ありがとう」
思わず頬に触れた彼女―――オフェリアは、自分のメイクを担当してくれた妖精に感謝の言葉を告げると、彼女は「ライブ、頑張ってね」とウィンクを飛ばして去っていった。
そうして彼女と入れ替わりにやって来たのは、オフェリアとは別のメイク係にメイクをしてもらっていたアンナだった。
「わぁ……っ! オフェリアちゃん、凄い綺麗ッ!」
「そ、そう……? でも、そう言うなら貴女もよ、アンナ」
「えっ、そう? えへへ、嬉しいなぁ」
微かに赤らめた頬を掻くアンナは、彼女の活発さを表したかのような明るめのメイクを施されている。対して、オフェリアは彼女のような活発さを押し出したものではなく、清楚な雰囲気を感じさせる大人しめのメイクとなっている。それでも、どちらか片方がもう片方よりも優れている、とは感じさせない辺り、メイク係の腕がプロ級のものである事が窺い知れる。
「あら、二人共終わったのね。ふふっ、とても似合ってるわ」
次にやって来たのは、オフェリアと似たメイクを受けたアナスタシアだ。その隣には、彼女の着ているものをデフォルメしたデザインの衣装を纏っているヴィイの姿もある。
「アナスタシアも、とても綺麗だね。あら、ヴィイもメイクしてもらったの?」
首を傾げたアンナに、自分の姿をもっと見てもらおうとしているのかヴィイがくるりと一回転した後、スカートの裾を持ち上げてカーテシーを行った。
流石はロマノフ帝国秘蔵の精霊だろうか。人形といえども、その仕草は完璧なものだった。
「ふふっ、良く似合ってるよ。そういえば、カドック君にはもう会った?」
「まだよ。でも、きっと素晴らしくなってるでしょうね。少なくとも、あのクマは無くなっていると思うわ」
「まぁ、当然だよね。あのクマがあってこそカドック君って感じだけど、流石にライブだからね……」
今も昔も研鑽を積む事を忘れないカドックは、今でも目元にはその証拠のクマがある。しかし、今夜はアイドルイベントなのだ。彼もこれまでの広告やミニライブで多くのファンを獲得しているため、化粧でクマを消す必要があった。
クマのないカドックとはあまり考えられないものだが、それ故に楽しみなのもある。
「みんな、準備は整った方だね」
「あ、K」
扉を開けて入ってきたプロフェッサー・Kに、その場の視線が向けられる。
「私がこれまで手掛けてきたものの中でも、特に力を注いだこのイベント。是非成功させてほしい」
「こっちこそ。無一文で拠点も無かった私達に色々提供してくれたんだもん。恩は返さないとね。そろそろ時間?」
「いや。まだ一時間ほどあるけれど、軽く振り返りをしておこうとでも思ってね。カドック達も後で来るよ」
「ん、わかった」
扉の近くに備え付けられていた椅子に腰を下ろした彼は、仮面の奥にある青色の瞳を嬉しそうに細める。
その瞳は、アンナの隣にいるオフェリアへと向けられている。
「……? 私になにか……」
「いや……なんでもないよ」
「そう……」
プロフェッサー・Kからの視線に首を傾げるも、オフェリアはそこで彼へ向けていた視線を逸らした。
そうしてアンナと会話をし始めたオフェリアを見ながら、プロフェッサー・Kは考え始める。
(前とは随分変わったな。これも、妙蓮寺さんの言う『恋をした女の子は強くなる』……というものか)
かつて彼女から聞かせてもらった言葉を思い返す。
オフェリア・ファムルソローネは、あまり自分を出さない性格だ。それはこれまで関わってきた中でも把握しているし、その性格が彼女の交友関係を狭めているのも承知している。
だが、今の彼女はどうだ。
以前と比べて、明らかに自分を出すようになっていた。完全に、というわけではないが、少しだけ自分という要素を前に出し、周りと積極的にコミュニケーションを取ろうとし始めている。
しかし、アンナ・ディストローツの前ではその限りではない。
カドックやペペロンチーノ、芥ヒナコよりも積極的に関わり、時には彼女を良い意味で困らせる事もしばしば。
アンナと長く関わった影響だろうか。それとも、純粋に彼女自身が変わろうと思ったのか。それとも……。
(ん……?)
瞬間、プロフェッサー・Kは眉を顰めた。
オフェリア達との会話でアンナが浮かべた笑顔が、一瞬だけ酷く歪なように見えたのだ。
まるで、自分が本当に見るべきものを迷っているような目をしている彼女に、プロフェッサー・Kは瞳を鋭く細めるのだった。
・『獣の神』
……『大穴』の底に横たわる者。死しても呪いを放つものの、実際には自らの下にいる存在を抑えつけている善性の塊。しかしその遺骸は、その下に封じている“なにか”によって貪られているようだった。
・『パーシヴァル』
……極限状態ウッドワスを前に絶望しかけたものの、彼に掛けられた言葉により奮起。影鯖として召喚されていたラメールの戦い方を参考に、レッドラ・ビットと特訓を始める。彼の人外への道が始まった。
・『レッドラ・ビット』
……一発直撃させればニンジンを一本食べられるので、パーシヴァルの特訓に付き合う。報酬が報酬なので、全力でパーシヴァルに攻撃を仕掛けている。ニンジン美味しい。
・『オフェリア・ファムルソローネ』
……大人しい性格は変わらないが、以前より積極性が増している。かつての彼女からは想像できないレベルで。アンナとの出会い、関わりが、彼女を変えているのかもしれない。
・『プロフェッサー・Kから見たアンナ』
……普段の様子は変わらないが、一瞬だけその笑顔に影がかかった。その原因まではわからないが、なにかに迷っているように見えたそうだ。
前回のアンケート回答、本当にありがとうございましたッ!
アンケートの結果、ifストーリーを投稿したいと思いますッ! 完成次第投稿しますので、もうしばらくお待ちください。
選考も今週で一通り落ち着くと思われますので、次はもう少し多めの文字数で投稿できたらと思います。
それではまた次回ッ!