【更新停止中】緋雷ノ玉座   作:seven74

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 ドーモ=ミナサン。
 とある小説を読んでアトラル・カと戦いたくなり、3DSを起動したところ壊れていた事に気づき、switch版XX購入を視野に入れ始めたseven774です。
 サンブレイクは技が豊富&スキルが簡単につけられるので楽しいのですが、その分簡単すぎて少し味気ない感じがしてしまうんですよね。XXはまだスキルポイントでスキルがついたりつかなかったりするので、自分に合うビルドを求めて防具や珠を作るのが楽しかったですねぇ……。ブシドー双剣とブレイブ太刀の黄金コンビ大好きです(両刀プレイヤー)。

 サムライレムナント、二週目クリアしました。
 知っている会話をもう一度聞くのは少しアレですが、早送り(スキップ)が出来るのが大変嬉しいですね。未読の会話がある場合は事前に赤文字でお知らせしてくれるのも助かりました。

 fgoの星4交換、皆さんは誰を交換しましたか? 私は美遊を交換し、遂にプリズマ三姉妹が揃いましたッ!
 また、聖杯戦線も来ますね。皆さんはサーヴァントの育成はできていますか? 私はヘラクレス縛りで行こうかなと考えています。流石に絆ヘラクレスがいると無双してしまうので……。

 今回はマキリ・ノワ戦ですッ!
 それではどうぞッ!


漆黒の白夜

 

 マシュが盾を横薙ぎに振るうと、彼女から放出された光のエネルギーが立香達の体に溶け込んでいく。

 

 

「皆さん、これであの凶気に吞まれることはありません。全力で戦ってくださいッ!」

「ありがとう、マシュッ! ―――っ、躱してッ!」

 

 

 こちらに向かってくるマキリ・ノワの、僅かに開かれた牙の隙間に黒い炎のようなものが見えた立香が叫ぶ。

 その次の瞬間に放たれるブレス。マスターである立香を抱えたマシュを始め、ダ・ヴィンチ達がその場から散開する。

 直後、彼女達がいた場所目掛けて放たれたブレスが着弾し、爆発を起こした。

 

 散開した者達の中で、背後からの爆風に身を委ねた村正が着地すると同時に両足のバネで一気に走り出す。

 マシュによる加護を受けた事により、瘴気の闇を蹴散らして走る村正の体が、一瞬だけ眩い蒼色の光に包まれた。

 

 

「頑張れ村正ッ!」

「助かるッ!」

 

 

 自分に向けて杖を振るい、身体強化の魔術を施したアルトリアに感謝し、手元に己の身の丈を超える野太刀を作り出す。

 

 

「オォラッ!!」

 

 

 跳躍と同時に野太刀を振るう。

 長大な刀身から飛ばされた斬撃を、しかしマキリ・ノワは再びブレスを放って迎撃。斬撃を相殺させた事で生じた黒煙を突き破り、村正に突っ込んでくる。

 

 

「ヤッベ―――」

「やらせるかよッ!」

 

 

 凄まじい速度で迫る巨大な質量を前に顔を引き攣らせた直後、地面から飛んできた無数の火炎がマキリ・ノワを側面から攻撃した。

 側面からの攻撃に進行方向を逸らされた古龍の突進は村正(ひょうてき)を捉えず、代わりにすれ違った際の突風で吹き飛ばすに終わった。

 

 思わず地面に視線を向ければ、そこには自分の前に展開させた魔法陣から火炎を放っているグリムが見えた。その自分を見つめる「貸しだ」と言わんばかりの眼差しに不敵な笑みを返していると、アルトリアが村正の下に魔力で固定した足場を作り出した。

 態勢を整えて着地し、そのままマキリ・ノワへと続いていく魔力の道を駆けていく。

 

 背後から追ってくる者に気づいたマキリ・ノワが放出している凶気のエネルギーを球状に固めて飛ばしてくるが、村正は吹き飛ばされながらも手放していなかった野太刀を振るって切り裂いていく。

 凶気の球を切り裂いた村正がマキリ・ノワの頭上に掌を向けると、数回の金属音と共に十本もの刀剣が出現。村正が掌を振り下ろすと、それに応えるように十本の刀剣が急降下。下にいるマキリ・ノワの背中や翼に突き刺さる。

 

 

「―――弾けろ」

 

 

 掌を握り、スイッチを入れる。

 即座に刀剣を構成していた魔力が暴走。一秒もかけずに己を封じていた殻を打ち破り、爆発を起こした。

 

 

「ギャァアアッ!?」

 

 

 背部で起きた爆発によるダメージを受け、苦悶の声を上げたマキリ・ノワが飛行を中断する。

 その隙を逃さず、彼の前に二つの影が飛び上がってきた。

 

 

「「喰らえッ!」」

 

 

 マシュの盾で打ち上げられたダ・ヴィンチと、自前の糸車に乗ってきたハベトロットが魔力光線を発射。刀剣の爆発で怯んでいたマキリ・ノワにこれを躱す時間はなく、寸分違わずに二本の魔力光線はその頭部へと直撃した。

 マキリ・ノワを包み込む黒煙。ダ・ヴィンチ達は追撃を加えようとするが、ほぼ無意識に体をマキリ・ノワの前から動かしていた。

 次の瞬間、先程まで彼女達がいた場所を黒いブレスが過ぎていき、それは先にあった山に直撃すると、大爆発と共にその一帯を抉り取った。

 

 標的を逃すも、マキリ・ノワはブレスを吐き続けながら飛行し、地上にいる立香達を狙ってくる。

 

 立香は背後から大地を砕きながら追ってくるブレスから逃げながら、胸元に掌を当てる。

 

 

「礼装、切替―――ッ!」

 

 

 立香の言葉により、彼女の纏う礼装に組み込まれた術式が起動。

 淡い光を放ちながら彼女の纏う礼装が、黒い決戦礼装から橙色と白色を基調としたものへと変化した。

 

 

「立香ッ!」

 

 

 上空から降りてきたハベトロットが糸車から糸コマを飛ばしてきた。

 今にもブレスに呑まれそうなところに垂らされてきた―――と表現するには似合わない速度で飛んでくる蜘蛛の糸を、立香は握り締める。彼女が糸コマから伸びる裁縫糸を掴んでくれると確信していたハベトロットは糸を手繰りながら糸車の速度を上げる。

 あわやブレスに吞み込まれかけた刹那、立香の体が浮かび上がりブレスの猛威から逃れる。

 

 両手で糸を掴んでスイングした立香は糸を手放し、未だこちらを狙おうとする古龍に人差し指を向けようとするが、それより先にマキリ・ノワが折れた角に炎を纏って突っ込んできた。

 

 マズイ―――と思ったのも束の間、焦燥する立香の体がふわりと持ち上がった。

 

 

「マシュッ!」

「間一髪ですね、先輩ッ!」

 

 

 盾を消滅させ、立香を抱き抱えたマシュは離れた場所で彼女を下ろし、改めて出現させた盾を両手で握って走り出す。

 

 あと一歩のところで、と立香を捉え損ねたマキリ・ノワが、それを邪魔したマシュに向かって咆哮を轟かせた。

 真正面、しかも近距離から大音量の咆哮を受けたマシュの体が本能的な恐怖によって足を止めかけるも、彼女は怯える本能を理性で抑えつけ、右手で持ち上げた盾を投擲した。

 咆哮を上げながらも翼で盾を防いだマキリ・ノワがマシュに反撃しようとするが、肝心の彼女の姿がどこにも見えない。

 

 いったいどこへ、と思った次の瞬間、マキリ・ノワの頭部に鋭い激痛が走った。

 

 

「グギャアァアッ!?」

「ぐ、ぅううう……ッ!」 

 

 

 それは己の頭部へ飛び乗ると同時、前方へ伸びている二本の角の間に剣を突き刺したマシュによる痛みだった。

 惜しくも脳には届かなかったものの、神経を裂き頭蓋骨に当たった剣先によって齎される痛みは絶大なもの。

 

 なんとか頭上にいる存在を振り落とそうと暴れ、マシュもまた負けじとしがみつきながらも剣を振るって攻撃する。

 

 

「マシュ、そのまま抑えててッ!」

「―――ッ!」

 

 

 そこへ響く立香(マスター)の指示。頷く余裕はなくとも、それに応える為に全身に力を込めてマキリ・ノワに張り付き、攻撃し続ける。

 今度こそマシュを振り落とそうと、全身から凶気のオーラを迸らせようとするマキリ・ノワ。しかしそこへ、今度こそ、と銃口を向けるように人差し指を構えた立香が叫んだ。

 

 

「―――ガンドッ!」

 

 

 それは、北欧に伝わる呪いの魔術。

 指先から放たれたのは、クルミ程度の大きさの小さな魔力弾。ドンッ、という音を轟かせて飛び出したそれが、ブレスを止めたマキリ・ノワの体に着弾した途端、マキリ・ノワは体を小さく痙攣させて落下し始める。

 

 現在、立香が纏っている礼装の名は、カルデア戦闘服。

 本来であればAチームを始めた者達が特異点を修復する際に着るものだが、長い戦いが予測される中においてダ・ヴィンチ達が彼女に与えたのだ。

 この礼装に組み込まれた魔術の一つであるガンドは、これまで彼女を多くの危機から救ってきた魔術である。

 

 たとえそれによって齎される敵の妨害時間が数秒程度のものであれ、サーヴァントを用いた戦いにおいては充分すぎる時間。落下していくマキリ・ノワに、地上にいたアルトリアが飛ばした円形の光が襲い掛かる。

 マシュがマキリ・ノワから離れた直後、魔力を圧縮、回転させた円形の光が鱗を切り裂き、その奥にある皮膚にも大きな傷跡を刻み付けた。

 さらにそこへ、グリムによって強化を施された刀を持った村正が加わる。

 グリムの魔術によって強度と切れ味を増した刀に炎を纏わせた村正が、アルトリアによってつけられた切り傷に刀を突き立てる。

 

 傷口から体内に侵入し、周囲にある骨や肉を炎で炙られ、溶かされる痛みは最早想像を絶するものであろう。マキリ・ノワは絶叫を上げながらも村正を離そうと急降下。村正を擦り潰すべく彼がしがみついている右前足を地面に押し付けるが、その瞬間に村正を青色の光が包み込んだ。

 

 

「無茶すんな村正ァッ!」

「助か―――うおぉッ!?」

 

 

 アルトリアの魔術によって護られた村正はなんとかマキリ・ノワの巨躯と地面に擦り潰されなかったが、背中を削る衝撃と前方より圧し潰さんとする古龍の圧力に手を放してしまい、地面を跳ねていく。

 

 数度地面を跳ねるものの途中で掌を地面に当てる事でバランスを整え、新たな刀を手に取って着地した。

 

 再び飛び立ったマキリ・ノワだが、その表情は苦悶に染まっており、その視線は先程村正に攻撃された右前足に注がれている。

 村正が手を離した後にほぼ無意識的に刀を爆発させたのもあり、その前足は肉が弾け飛び、中心にある骨も少し動かしただけで砕けてしまいそうになっている。

 

 

「よしッ! いい感じッ!」

「これなら……ッ!」

「いえ……まだですッ!」

 

 

 明らかな深手。このまま押していけば勝利できる―――そう、誰もが思う中、マシュが油断せず叫ぶ。

 

 

「―――グギャァアアアアアアアッ!!!」

 

 

 マキリ・ノワが咆哮を上げる。

 それに合わせて妖しい光の渦が一瞬マキリ・ノワを包んだかと思うと、これまでマシュ達によって受けた傷が瞬く間に塞がり始める。

 千切れかけていた前足までも、時間を巻き戻すように再生していく様に、ダ・ヴィンチが驚愕した。

 

 

「自己再生能力ッ!? そんな……」

「っ、角まで……」

 

 

 以前、ストーム・ボーダーの図書館で読んだ古龍種に関する本には、古龍種は己の操る能力を角で制御しているという記述があった。

 マシュの宝具によって砕かれていた角が再生していく事が、いったいなにを意味するのか。それを立香達に知らしめるように、マキリ・ノワの周囲に半透明のバリアが出現した。

 

 これまで立香達の奮戦を嘲笑うかのように、これまで受けた傷の全てを回復したマキリ・ノワが彼女達に襲い掛かろうとした、その瞬間だった。

 

 

「……ッ! なにかが後ろから来て―――うわぁッ!?」

 

 

 自分達の背後から迫る気配を感じて真っ先に振り向いたダ・ヴィンチが、咄嗟に頭を下げる。

 彼女や立香達の頭上を通り過ぎていったのは、紫に染まった無数の氷塊。こちらに目掛けて真っ直ぐに向かって来ていたマキリ・ノワが着弾すると、内部に閉じ込められていた炎が爆発し、黒煙でその姿を覆った。

 

 

「―――グルォアアアアアッ!!」

 

 

 攻撃に数秒遅れる形で姿を現したのは、燃え盛る炎に凍てつく氷という、相反する属性を備えた龍。

 立香達など歯牙にもかけずに飛翔する龍に、立香達は心当たりがあった。

 

 

「あれは……ッ!」

「“熾凍龍”ディスフィロアッ!? どうしてここに……ッ!」

 

 

 呆然とする立香達の視線の先で、黒煙が吹き飛ばされる。

 黒煙の奥から現れたマキリ・ノワの周囲には半透明な紫色の障壁が張られており、傷一つついていない彼の体が、先程のディスフィロアの攻撃が防がれた事を語っている。

 

 しかし、それを最初から知っていたのか、ディスフィロアは怯む事なく己を炎と冷気で包み込み、そのままマキリ・ノワへと突っ込んだ。

 

 

「グギャァ……ッ!」

「グルオァッ!!」

 

 

 バリアは破れずとも、衝撃までは殺せない。

 己とほぼ同じ大きさを誇る体躯を持つディスフィロアによる突撃を受けたマキリ・ノワは大地へと叩きつけられた。

 

 バリアを通して襲ってきた衝撃に怯んだ影響で一瞬バリアを維持できなくなったマキリ・ノワの首元に、ディスフィロアが喰らいつく。しかし、マキリ・ノワもまた大人しく喰らいつかれているわけもなく、全身から凶気のオーラを放出してディスフィロアを吹き飛ばし、反撃とばかりにタックルを繰り出して弾き飛ばした後に翼を広げて飛び立った。

 

 それを追って翼を羽ばたかせたディスフィロアが上空から幾つもの氷塊を降らせながら、開いたアギトから己の体躯を包み込める程の熱線を発射する。

 

 マキリ・ノワは己を狙って飛んでくる熱線を回避する。しかし次の瞬間、彼の前に落ちてきた氷塊に熱線が直撃したかと思いきや、熱線は氷塊の中で二本に分かれて別々の氷塊に当たり、左右からマキリ・ノワを挟撃した。

 惜しくもマキリ・ノワを傷つける事は叶わなかったが、彼を護るバリアに亀裂が入った。さらにそこへ炎によるブーストをかけたディスフィロアが追撃を加える形でバリアが砕き、その奥にあるマキリ・ノワの尻尾に嚙みついて放り投げ、熱線を吐き出して再び地面へと叩き落した。

 

 

「なんでディスフィロアがここに……」

「大方、モルガンがマキリ・ノワの討伐に派遣したんだろうな。この異聞帯で、あの古龍を動かせるのはあいつしかいない」

「……ッ、ディスフィロアがッ!」

 

 

 ハベトロットの指差した先では、さらなる追撃を仕掛ける為か、マキリ・ノワを組み伏せようとしていたディスフィロアが、起き上がり様に自分に向けて発射されたブレスに押し飛ばされていた。

 起き上がったマキリ・ノワが再度ブレスを放ちながら、周囲から凶気のオーラを立ち昇らせて球体を作り、ディスフィロア目掛けて一斉に飛ばした。

 

 咄嗟に即席で作った氷の壁でブレスを防いだものの、全方位から襲い来る凶気の球による攻撃を受けてしまう。なんとか空を飛ぼうとするも、それを阻止するように勢いを増した球に妨害されていると、氷の壁を打ち破ったブレスがディスフィロアに直撃した。

 

 地面を削りながらもブレスを耐えたディスフィロアだったが、今度は炎を纏ったマキリ・ノワの突進がその巨体を捉え、何度か転がった後に建物に叩き付けられた。

 体に降りかかる瓦礫を熱気と冷気で吹き飛ばしたディスフィロアの首元にマキリ・ノワが食らいつき、そのまま放り投げたところを見た立香の肩に、グリムの手が乗せられる。

 

 

「おい、立香。ここは撤退する方がいいと思うぜ」

「グリム……。でも……」

 

 

 立香の視線は間一髪でマキリ・ノワのブレスを回避したディスフィロアに注がれている。

 マシュの様子、そして今まで戦っていた間にも、マキリ・ノワという古龍がどれほど危険な存在なのかは理解できている。ディスフィロアも、このブリテンの支配者であるモルガンの相棒という立場や、単体でマキリ・ノワと互角に戦っている事からその実力は確かなもの。

 だが、ここでもしディスフィロアが倒されてしまった場合、マキリ・ノワが次にどんな行動をするのかは―――わからない。

 

 ならばここはディスフィロアに加勢し、マキリ・ノワをここで必ず討伐するのが一番なのではないか―――という立香の考えを見通したのか、グリムは「駄目だ」と一蹴した。

 

 

「もし仮にマキリ・ノワを討伐できたとして、ディスフィロアがこっちを狙ってこないとは限らない。いいか? あいつはあのモルガンの相棒で、オレ達はこの國を滅ぼそうとする反逆者って事を忘れるな。それに見てみろ」

 

 

 遠くでは炎ブレスを受けたマキリ・ノワが再度バリアを展開しようとするも、ディスフィロアが追い打ちをかけるように放った炎ブレスによる火柱を発生させ、バリアの再展開を妨害した。

 怯んだマキリ・ノワに炎を纏った突進で吹き飛ばした後、上空に打ち上げた火球を雨あられと周囲に降らせ始めた。

 

 

「あの中に突っ込んで、オレ達が無事でいられる可能性は低い。下手すりゃ攻撃の巻き添えでお陀仏だ」

「…………わかった。撤退しよう、みんな」

 

 

 確かに、あの死地に下手に手を出すと余計な損害が出てしまうだろう。それに、マシュと合流し鐘を鳴らすという当初の目的は達成しているのだ。

 もう、ここに自分達が留まる必要はないのだ。

 

 巻き込まれないように足早に撤退しようとした、その時だった。

 

 

「グルォアアアアアアアアアッッッ!!!」

「グギャァアアアアアアアアッッッ!!!」

 

 

 (もつ)れ合うように廃都へと落ちた二頭が互いに距離を取り、暗雲渦巻く空に飛び上がる。

 

 ディスフィロアは大地から天を衝くかのように、炎を纏った無数の氷柱を屹立させる。さらに空からは炎と氷で構成された竜巻が何本も現れては瞬く間に廃都を破壊していく。

 マキリ・ノワは大きく翼を羽ばたかせると大地に黒く染まった結晶群を発生させた後に高度を上げ、咆哮と共に滾らせた凶気のオーラを伴う。前へ伸びる二本の角の間から発生させた黒い球体を弾けさせ、己の身を漆黒の渦で包み込んで急降下し始める。

 

 

「凄いエネルギーだ……ッ! みんな、早く離れてッ!!」

 

 

 ダ・ヴィンチの言葉を合図にその場にいた全員が踵を返して全速力で走り出す。

 

 瞬間、ディスフィロアが放射したブレスと、全身から浴びせられる魔力に呼応して氷柱から放たれる光線、そして竜巻が一斉にマキリ・ノワへと殺到する。

 対するマキリ・ノワも身に纏う凶気の密度と速度を上げ、まさに隕石が如き勢いでブレスと光線を迎え撃つ。

 

 凄まじい風圧に吹き飛ばされた立香達が溜まらず地面を転がり、間髪入れずに周囲へ飛ばされた衝撃波が地面を捲り上げながら彼女達を呑み込もうとする。

 

 

「―――無元の剣製(つむかりむらまさ)ッ!!」

「―――灼き尽くす炎の檻(ウィッカーマン)ッ!!」

「―――きみをいだく希望の星(アラウンド・カリバーン)ッ!!」

「―――いまは遥か理想の城(ロード・キャメロット)ッ!!」

 

 

 立香達を護るべく態勢を立て直した者達の宝具が、自分達を呑み込まんとした衝撃波を迎え撃つ。

 斬撃が、巨人が、壁が、城が―――護るべき者を護る為出現したそれらは幾度となく地表を抉り取りながら襲い来る衝撃波を前に耐え凌ぎ、やがて衝撃波が止むと、役目を終えたとばかりに消えていった。

 

 

「先、輩……。大丈夫、ですか……?」

「マシュ……ありがとう……」

「クソ、余波だけでこれかよ……。もし生身で受けてりゃあ……」

 

 

 震える腕を抑えた村正が周囲を見渡す。

 自分達がいるのはオークニーから少し離れた場所。だが、自分達がいる場所以外は地面が削り取られており、凄惨な破壊の痕跡が残されている。

 

 

「オークニーは―――なッ!?」

 

 

 アルトリアが、先程までオークニーのある場所を見て愕然とした。

 

 そこには、かつて都であったオークニーがあったはずだった。しかし、今となってはそれは過去の話。

 

 ―――更地だ。

 建造物の名残も、瓦礫の欠片も存在しない。かつてそこに文明があった痕跡はどこにもなく、あるのは巨大なクレーターと―――その中心で佇む一頭の古龍のみ。

 

 唸り声を上げながら周囲を見渡すディスフィロアだったが、先程まで目の前にいたはずのマキリ・ノワが音もなく消えた事に気付くと、どこにいると叫ぶように咆哮を轟かせ、夜空の彼方へと飛び去っていった―――。

 

 

 

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 コツ、コツ、と、ヒールの音が嫌に大きく反響する。

 

 この場所に来たのは、いつ以来だろうか。少なくとも、ベリルがこの國に姿を現してからはあまり来ていなかった気がする。下手すると、己のサーヴァントであるカリアと一緒に来た事もないかもしれないし、彼女と共にこの場所に来た記憶もない。

 ……随分と長い間来なかったのか、と思いながら、バーヴァン・シーは目の前を歩く男に問いかける。

 

 

「なぁ、まだ着かねぇのか?」

「すまねぇな。でももうちょっとで着くからよ。我慢してくれ」

「そう……」

 

 

 振り向かずに答えてくるベリルに呟き気味に返し、左右を見る。

 

 今彼女達がいるのは、ニュー・ダーリントン。

 かつては妖精達が暮らしていた街だったが、あの赤い光を纏う蟲によって破壊されてしまった場所に新たに建造されたもの。

 といっても、この地に妖精はおろか人間すらも生活しておらず、あるのは汎人類史を模倣して建造されるも廃れてしまった教会と、その地下にある、國内で罪を犯した者達を収容する牢のみがある。

 松明のみが明かりの役目を果たしているこの地下牢では、格子の奥から時折呻き声のようなものが聞こえる。過去にこの地に収容される程の罪を犯した者達の声なのだろう。それに嫌な気分を覚えながら足元を見れば、僅かに黒い靄のようなものが見えた。

 ただの靄であるはずなのに、それが意思を持って自分に纏わりつこうとしているかのような不吉な予感に顔を顰めていると、立ち止まったベリルの背中にぶつかった。

 

 

「なんだ? なにか考え事でもしてたか?」

「別に。で? その扉が?」

「おう。目的地だ。―――ようこそ、オレの工房(・ ・)へ」

 

 

 背中にぶつかられた事に疑問を覚えたベリルだったが、バーヴァン・シーの言葉に頷いて重々しい扉を押し開く。

 

 いったいなにがあるのだろうか―――微かにワクワクしていた彼女だったが、次の瞬間にはそう思っていた自分を殴り飛ばしたくなった。

 

 

「ベリル……これは……」

「モルガンに許可を貰ってここに拘束してたのさ。あの凶気について研究したいって言ってな」

「オォ……オオオオオオオォォオオッ!!!」

 

 

 そこにいたのは、鎖で雁字搦めにされている一人の妖精だった。

 鎖に拘束されながらも、なんとかそれを振り解こうと暴れるその男は、かつてシェフィールドの領主であった男―――ボガードだった。

 

 シェフィールド崩壊後間もなく行方不明になったと聞いていたが、まさかニュー・ダーリントンにいるとは思わなかった。

 そしてバーヴァン・シーは思い出す。なんの為に自分がこの地に呼ばれたのかを。

 

 

「……こいつに、あの魔術を使うのか?」

「あぁ。お前に教えたのは、対象の霊核を奪う黒魔術(ウィッチクラフト)。今のオレには、それがどうしても必要なのよ」

「こいつに……」

 

 

 今も尚暴れるボガードを前に、バーヴァン・シーは立ち尽くす。

 

 ここにカリアがいれば、彼女なりの考えが聞けたのかもしれない。それを参考にして答えを出す事も出来たかもしれない。

 だが、ここにカリアはいない。相も変わらずどこかへふらりと出かけてしまっている。

 少ないながらも、一つ一つが大きな情報を幾つも与えられ、バーヴァン・シーの脳裏に『念話をする』という考えが浮かばなかった。

 

 それが―――彼女の運命を分けた。

 

 

「なぁ、ベリル。これは、この國の、お母様の為の行動なんだよな……?」

「そうさ。だが、ここで見た事、起きた事は絶対に黙っていてほしい。でなきゃ、オレはモルガンの役に立てなくなる」

「……わかった」

 

 

 元々善良すぎる妖精であったバーヴァン・シー。モルガンの影響で多少はその気がなくなったが、それでもまだ時折自己犠牲と慈愛の片鱗が垣間見える事がある。

 それが今、顔を覗かせてしまっていた。

 

 掌をボガードへ向け、力を籠める。

 容易く発動した黒魔術はボガードの頑丈な体をすり抜け、その奥にある霊核に触れる。

 己の魂というべき霊核に干渉されている事に気付いたボガードが暴れるが、鎖は無慈悲に彼の動きを制限する。

 

 ゾッとするような不快感。そして、なにかを引き抜いたような感覚を覚えたと同時、あれ程暴れていたボガードが項垂れ、やがてなにも言わなくなってしまった。

 

 

「……これでいいの?」

「よぉしやったッ! 大成功だ、レディ・スピネルッ!」

 

 

 バーヴァン・シーの掌に乗っている、心臓に酷似したボガードの霊核をひったくるように取ったベリルが歓喜する。その傍らで、バーヴァン・シーは先程の魔術の感覚を思い返し、二度とあんな魔術は使うかと心に刻んでいた。

 そんな彼女だったが、「ところで」とベリルに声をかけられて顔を上げる。

 

 

「なにか体か調子に変化とかあるか? こう、気持ち悪い〜吐き気がする〜とか」

「え? ……ないけど」

 

 

 試しに体を動かして調子を確かめてみる。

 動きは良好。他に足元に落ちてた石ころを背後に放り投げ、ノールックでフェイルノートを奏でる。

 フェイルノートから放たれた音の斬撃は寸分違わずに石ころを切り裂いた。

 

 それを見たベリルは、「マジかよ……」と喉元まで出てきた言葉を咄嗟に飲み込み、引き攣りそうな顔でなんとか笑顔を作った。。

 

 

「よ、よし。大丈夫みてぇだな。ありがとよ、レディ・スピネル。お前のお陰で、オレの研究はまだまだ続けられそうだ」

「ん。じゃ、私はもう行くぜ。いつまでもここにいたら調子が狂いそうだし」

「それじゃ、ここでお別れだな。気を付けて帰れよ」

 

 

 ひらひらと手を振ったバーヴァン・シーを見送り、扉を閉める。

 

 

「ちょいと予想外だったが……本当に、ありがとな」

 

 

 閉められた扉の先にいるであろう少女に、ベリルは不敵な笑みを以て告げる。

 クツクツと静かに笑うベリルの背後には、かつて勇猛果敢な戦士だった男の灰が積もっていた―――。

 




 
・『礼装切替』
 ……今作のオリジナル要素。ゲームをプレイしている際に「どうやってバトル毎に礼装を変えているのだろう」という疑問を自分なりに解釈した結果、このようになった。

・『バーヴァン・シーの様子』
 ……黒魔術を使った代償を負っているはずが、ぴんぴんしている。しかし、完全に無効化しているわけではなく……。

・『ボガード』
 ……シェフィールド陥落後、オベロンが捕らえてニュー・ダーリントンへ輸送した。元々凶気に侵され、暴れ続けた影響で体力を消耗していたのもあり、バーヴァン・シーの黒魔術によって霊核を抜き取られ、絶命した。バーヴァン・シーはその時の光景を見ていない。

・『ベリル』
 ……黒魔術の代償を払ったはずのバーヴァン・シーがぴんぴんしている事に引いている。今回で自分の戦闘力が跳ね上がった。


 次回の更新について、皆さんに報告です。
 私事ながら、来週から2週間程群馬に行ってきます。色々とやる事があるため本編の更新は難しいかもしれません。
 その場合、ifや番外編を投稿できたらいいなと思っております。
 私事で大変申し訳ございませんが、ご了承ください。

 それではまた次回ッ!
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