出来損ないドラゴン、旅をする   作:捻くれたハグルマ

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 異種族×女の子が書きたいと思った。
 私はドラゴンが好きだ。
 私は女騎士が好きだ。
 よし悪魔合体させよう。

 そういう欲望にのせられて書いた作品ですので、気軽に楽しんでくれれば幸いです。


ドラゴン 人間と出会う

 

 私は出来損ないだ。

 いや、私自身出来損ないと思ったことはない。

 けど、出来損ないなのだ。

 

 私はドラゴン、大陸最強の種族。

 これだけで出来損ないとは程遠い。

 けど、出来損ないなのだ。

 

 私は同族の中でも強かった。

 とてもとても強かった。

 炎のブレスをの中を突き進める鋼鉄の体。

 大地を砕くほどの強靭な四肢。

 山のどてっぱらに大穴を掘りぬいて坑道すら作れる無敵の顎。

 一振りするだけで森すらをなぎ倒す太い尻尾。

 そのすべてを持つ私は族長たちを除いては、まさに最強であった。

 族長たちは生きてる年数が万年単位で違うのであれは例外だ。

 

 しかし、私には翼がなかった。

 そう、翼だけが私には足りなかった。

 空を飛ぶ同族より速く駆けることが出来た。

 だけど翼がないドラゴンはドラゴンではない。

 それが一族の掟であった。

 それゆえに、族長たちから名を与えられずに私は里を追われた。

 

 私は出来損ないの鎧竜。

 名もなきドラゴンである。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 「ふぁぁぁぁ……。今日も平和だなぁ。」

 

 私は里を追われて、幾里も離れた山に住み着いた。

 もとより争いが嫌いだったので、自尊心が強くて喧嘩ばかりの同胞たちから離れられたのは幸運であった。

 もっとも、同い年のものたちに喧嘩で負けたことはなかったがね!

 とにもかくにも体を縮める魔法を使って、それなりの洞穴でおとなしく生活しているのだ。

 

 「ドラゴンさんは今日もぐーたらですか?」

 

 「ぐーたらぐーたら。」

 

 「ふふ、最近山向こうの人間族が騒がしいらしいですよ、お気をつけて。」

 

 「あぁ、ありがとう妖精たち。気を付けるよ。」

 

 私はご近所付き合いも上手だ。

 生態系に細心の注意を払い、妖精たちとも仲良くするほどに大人しく暮らしている。

 彼らのような基本的に個体名を持たない種族たちにはシンパシーを感じているので、こうして会話するのは結構楽しい。

 

 さて、私たちが住むこの世は様々な種族にあふれかえっている。

 私のようなドラゴン族、妖精族を代表とする魔法生物や、人間族やエルフ族などで構成される亜人族がいる。それぞれの種族が戦ったり寄り添いあいながら共に暮らしているのだ。

 

 しかし、人間族が騒がしいとなると同族同士の殺し合いだろうか。

 奴らは我らドラゴン族同様に同族同士の闘争を頻繁に行う野蛮な種族だ。

 私のこのナイスな山とグレイトな洞穴にまで闘争の火種を持ち込まれるのは不味い。

 戦っても負けないだろうが、住処をまた追われるのは精神的につらいものがある。

 いくら長命のドラゴン族でも心のダメージはかなり来るのだ。

 

 「考えても仕方ないか。あいつらの考えていることは難解なくせして狂気じみているフシがあるからなぁ。」

 

 私はよっこいせと体を上げた。

 水浴びタイムだ。私の体は鋼鉄。その鈍い輝きは私の誇りなのだ。

 お手入れは定期的に行うことにしている。

 

 「水浴び、水浴び……。この時期の水は雪解け水で清潔なんだよなぁ。」

 

 いざ、山の中腹の湖に行くぞっ!

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 「生き返るぅ……。」

 

 私は体を湖につからせて至福の時を堪能していた。

 本当は元のサイズでざぶざぶしたいのだが、山の生き物たちが怯えてしまうのでそれは叶わぬ夢だ。

 しかし、このサイズ感になって分かったことがある。

 小さい生き物たちのなんと美しいことか!

 同族たちはこのささやかな光景の美しさを弱きもののごみ溜めと呼んだが、私はそうは思わない。

 春の花の香り、鳥たちのさえずり、川のせせらぎ……。素晴らしすぎる。

 

 「いやぁ、快適だよなぁ……。

 里から追放されたのは悔しかったが、こうして楽しく暮らせているからいいか!」

 

 「私たちからしたら大迷惑なんだけど!」

 

 「いいじゃないか、私はとても大人しい。迷惑もかけていないぞ。」

 

 「あんたみたいなのがそこらをほっつき歩いてる時点で怖すぎるんだけど!」

 

 私にがみがみと文句を言ってくるのはこの湖に住まうマーフォークだ。

 彼女はこうして文句を言ってくるのだが、実はけっこう私に気を許してくれている。

 そうでなければ私に対してこうやって強く出てこれるはずはない。

 私はドラゴンなのだから。

 

 「ねぇ、聞いた?」

 

 「何をだね。」

 

 「人間たちが騒がしくなってるって噂。」

 

 「あぁ、聞いたな。」

 

 「それ、あんたのせいじゃないでしょうね?」

 

 「それはない。私は上手く隠れながらここまで来た。

 きちんと隠蔽の魔法を使ってな。」

 

 全く、心配性なマーフォークのお嬢さんだ。

 生粋の魔法生物であるドラゴン族がそう簡単に魔法を看破されるはずはない。

 私は魔法にたけている方では無かったが、それでも大丈夫だろう。

 魔法が得意でない理由は、単純な話殴ったほうが早いからだ。

 そんなことはどうでもいい話だがね。

 

 「そうならいいけど……。

 最近じゃミノタウロス達が傭兵まがいのことしてるらしいし……。

 何かあったら、あんたがちゃーんとこの山守ってよね?」

 

 「任せたまえよ。私は強いんだ。」

 

 「水浴びドラゴンが何言ってんだか……。」

 

 「酷いなぁ、これでも私は喧嘩で負けなしだったんだぞ?

 この四足で突進すれば一撃で相手を倒せたし、二足で立って拳を振るえば硬い鱗を簡単に砕けたんだ。」

 

 「嘘つきはよくないわよ?」

 

 「失礼なお嬢さんだ。さて私はもう行くよ。散歩の時間なんだ。」

 

 「いってらっしゃい、ぐうたら水浴びドラゴンさん。」

 

 私は体を振るって水を落とすと、いつものお散歩ルートに向かって歩き始めた。

 私の通った道は一種の獣道になっているのだが、流石に私を恐れてほとんど動物たちは近寄ってこない。

 こないはずなんだが……。なんでこんなに騒がしいんだ???

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 「オラぁ、待ちなぁ!」

 

 「待てと言われて待つ馬鹿がいるかッ!

  頑張ってくれダルシアン!」

 

 まさか、この私がミノタウロス相手に逃げなくてはならないとはなッ!

 くそ、あの宰相め……。

 よりにもよって、あんなことをしようとするなんて!

 愛馬ダルシアンよ、もっと速く駆けてくれ!

 

 「ちッ、お前らは周りこめ!」

 

 「あいさ!」

 

 「へへへっ、犯していいって聞いてるからよ。楽しみだぜぇ!」

 

 くそくそくそくそ!

 私は純潔の騎士と謳われた女だぞ!

 初体験があんな下品なミノタウロスなんて御免だ!

 せめて毎日水浴びするような清潔感のある男でないと困る!

 

 「ダルシアン、私のために走ってくれ!って、しまッ?!」

 

 不味い、落馬する……ッ!

 うぐぅ、まさか木の根が隠れていたとは……。

 

 「ぐへへぇ、俺が一番乗りだぜぇ!」

 

 「く、っくるな!」

 

 「行かせてもらうぜぇ!」

 

 もうおしまいなのか……。

 すまない我が愛しき王国。

 さらばだ我が愛しき騎士団。

 さようなら私のまだ見ぬ運命の相手よ……。

 

 「あ~……。私の散歩コースで何をしているのかな。」

 

 なんで……。なんでこんなのがここにいるんだろう……。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 「で、何をしているんだい?」

 

 うむ、目の前には甲冑を纏った女性と三匹の武装したミノタウロス。

 困ったな。言ってる傍から私の目の前に災難が転がり込んできた。

 

 「な、なんでドラゴンがこんなところにいんだよォ?!」

 

 「いや待て!コイツ翼がねぇ、出来損ないだ!」

 

 「なんでい、出来損ないのトカゲ野郎かよ!」

 

 ……流石に怒るぞ。

 いくらなんでもトカゲ呼ばわりは我慢ならん。

 それに、私は出来損ないなどではない!

 友人でもないミノタウロスがやかましい!!

 

 「ゴォアァァァァ!!!」

 

 私は吠えた。結構本気で。

 ドラゴンの咆哮は全ての命あるものに死の恐怖を与えると言われている。

 後になって後悔するのだが、私は結構怒りっぽかったようだ。

 むしろ里で我慢していたことがここにきて限界が来たのだろうか。

 

 

 「……ッ、逃げるぞ!」

 

 「ひぃぃ!!」

 

 「お助けぇぇ!!」

 

 ふむ、逃げ出してくれてよかった。

 しかし、何をしていたかまでは聞き出せなかったか……。

 さて、目の前で倒れているこのお嬢さんに聞いてみるか。

 あ、しまった。気絶させてしまったようだ……。

 しょうがない、私の洞穴に連れていくとしようか。

 何気に初めてのお客さんかもしれないなぁ……。

 




  
 ドラゴン族の習性

 里で生まれ育ち、一定年齢まで育つと族長たちから名を与えられて外界へと飛び立つ

 ほとんどのドラゴンたちは他の生物をすべて見下す傾向にある

 一部のドラゴンがごく稀に 人間族の知識と勇気を評価したり
 
 特定の種族に肩入れすることがある
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