〈シャボンディ諸島〉
「はぁ…ようやく到着かぁ…面倒くさいなぁ」
シャボンディ諸島に着いて僕は早々そんなことを呟き出す。
「まだ着いたばかりですのに何を仰っているのですかギルレッド様」
そんな僕の呟きに隣にいるセリシアが呆れたを含んだ声でそんなことを言ってくる。
「だってしょうがないじゃん…オークションとかマジで行きたくないんだから」
屋台やショッピングでお買い物ならまだしもよりによって奴隷オークションでのお買い物だしなぁ…
「お気持ちは非常にわかりますがどうか我慢なさってください」
「…へーい」
不貞腐れながら僕は返事をする。
まぁ行かないとモス爺に旅の許可もらえないからちゃんと行くけどさぁ…
「ではオークション会場までご案内を致しますので逸れないようにしてください」
セリシアはキリッとした感じでオークションまでの案内を始める。
「わかってるよ、じゃあさっさと行くか〜」
そうして僕は重い足取りでオークション会場に向かって行く。
それにしても僕は今、非常にうんざりしています。
理由は2つほどある。
一つ目はこの防護服!
何これ本当に!めっちゃ動きにくいし、暑苦しいし、ダサいし、良いところ何一つ無いじゃん!
この防護服を普通に着ている他の天竜人たちの神経を疑うね僕は。
それに他の天竜人は地上の民と同じ空気を吸いたくないとか意味不明な理由でシャボン玉でできたマスクを被っているらしい。
まぁ僕は邪魔だから絶対つけてないけどさ。
そして二つ目は周りの状態だよ!
僕が来た瞬間全員慌てて道をあけて跪き、綺麗な一直線の道をつくるのだ。全員顔を下に向け怯えた表情をして僕が通り過ぎるのを待っている。そのためこの場ではかなり緊迫した空気が流れていた。
(まぁ天竜人の対応としてはこれが普通なんだろうけどさぁ…本当に嫌な感じだなぁ)
僕は跪く人達を見ながらそんなことを思うのだった。
しばらく歩いていると前方で何やら騒がしいのに気づく。
(うわぁ…マジかよ…よりによって他の天竜人いるじゃん)
なんと前方にいたのは僕と同じ天竜人であり何か揉め事があったようだった。
◯
「うぇ〜ん!うぇ〜ん!」
「おばえムカつくえ!!よくもわちしの前を歩きやがったえ!!」
ある天竜人の男が怒りの形相でボールを抱えた少女にピストルを向けていた。
彼の名はチャルロス聖
ロズワール聖の息子で醜悪な容姿とそれに勝るとも劣らない下劣な性格をした男である。この男は気に入った女性を見つけたら無理矢理妻にし、気に入らない者がいれば持参しているピストルで撃ち殺すなどをする。外道の一言に尽きる男だ。
「うえ〜ん!うえ〜ん!」
「お願いしますやめてください!その子は私の娘なんです!」
すると人混みの中から少女の母親らしき人物がチャルロス聖の前に飛び出そうとしていた。
「ま、待て早まるな!行ったら君が殺されるぞ!」
しかしそれを周囲の人達に全力で立ち塞がれてしまい敢えなく止められてしまう。幸いにもチャルロス聖はそれに気づくことはなかった。
「おばえがジャマしたせいでお父上様達とはぐれてしまったのだえ!どうしてくれるんだえ!」
「うぇ〜〜ん!うぇ〜〜ん!」
しかし少女は怒鳴られたことでさらに泣き出す始末である。
「えぇい本当にうるさいんだえ!もういいんだえ、さっさと死ぬんだえ!」
我慢の限界となったのかチャルロス聖はピストルの引き金を引く。
バンッ
「キャーー!!」
周囲から大きな悲鳴が響き渡った。
誰もが少女がチャルロス聖により撃ち殺されたと思った。
しかし少女は撃ち殺されることはなかった。なぜなら…
「はいはい、ちょっと落ち着こうか」
ギルレッドがいつの間にかチャルロス聖の横に立ち、彼のピストルを地面に向けて下げていた。
そのため幸いにも少女に命中することはなくただ地面を撃っただけとなった。
チャルロス聖や周囲の人たちは突然現れた僕に対してかなり驚いた顔をしていた。
それもそのはず、まさかあの天竜人が少女を救ったのだから。
「おばえ誰だえ?なぜわちしのジャマをするのかえ?」
チャルロス聖は突然現れた僕に対して怒りの形相で睨みつけてきて質問をしてくる。
「僕が誰かなんてどうでもいいだろ?それに邪魔したわけではないよ、ただそんなことしている暇あるのかと思っただけさ」
チャルロス聖の質問に対して僕は平静な態度で答えピストルから手を離す。
「どういうことだえ?」
チャルロス聖はよくわからないのか首を傾げる。
「ほら今日って奴隷オークションがあるだろ?時間的にもそろそろ始まるだろうし早く行ったほうがいいと思うよ」
「チャルロス様、確かにあまり時間がないため急いだほうがよろしいかと」
隣にいた黒服の男が僕が言ったことが事実であることをチャルロス聖に伝える。
「……ふん、まぁいいんだえ、こんなガキに構ってる暇なんてなかったえ、はやくオークション会場に行くえ」
少女に構う気が失せたのかチャルロス聖は自分の奴隷を引き連れてさっさと奴隷オークションに向かって行ったのだった。
(………ふぅ…相変わらず碌でもない奴だな、たかが前方に少女がいただけだろうに)
僕は遠ざかっていくチャルロス聖を見て呆れたように肩をすくめる。
(さてと…次はこの少女をどうにかしないとな)
「うぇ〜ん!うぇ〜ん!」
僕は少女見ながら泣き止ます方法を考える。
(…子供を泣き止ますためには…あれでいいか)
僕はこっそりと手のひらサイズの亜空間をつくり、手を突っ込んであるものを探す。
(えーっとど〜こだったっけ……お、あった!)
しばらくして亜空間から目的のものを見つけることができ、それを取り出した。
「ほらお嬢ちゃん、これあげるから泣き止みな?」
僕はしゃがみ込み優しい声でキャンディを少女に差し与える。
「ぐすっ……うん…」
少女は目に涙を溜めながらキャンディを受け取り少しずつ舐め始めた。
「……!…おいしい!」
キャンディが相当美味しいのか少女はたちまち笑顔となり夢中でキャンディを舐める。
ちなみにこのキャンディは以前に訪れた四皇ビックマムが縄張りとするトッドランドでのお土産で貰ったものの一つである。
「お、うまいか。それはよかったよ、子供は笑顔が1番だからな」
少女の笑顔が見れて僕は嬉しくなりそのまま少女の頭を撫でる。
パチパチパチ!
少女の頭を撫でていると突如周囲から盛大な拍手が聞こえてくる。
天竜人が少女を助けることがあまりにも意外だったためか周囲の人達は歓声を上げながら大喜びしていた。
まさにパレードの演者になったような気分である。
こんな大勢に拍手されたことがなかったため僕は少し恥ずかしくなり頬をかく。
まぁ嬉しいけどさ
「ほれ、君もそろそろお母さんのもとに戻りな」
僕は恥ずかしいのを誤魔化すようにして少女に母親のもとに戻るよう促す。
「うん!お兄ちゃんキャンディありがとう!」
そうお礼を言い少女は笑顔で母親の元に走って戻っていき、少女の母親は涙を流しながら娘を抱きしめて喜んでいた。
「子供は元気があっていいねぇ…」
「ギルレッド様も似たようなものですよ?」
すると近くにきたセリシアが僕にそんなことを言ってくる。
「何を言うか、僕のどこが子供っぽいと言うんだよ」
僕はセリシアの子供扱いに納得できないためそう聞き返す。
「よく勝手にどこかに行ってしまうところやピーマンが嫌いなところや他諸々です」
さも当然のようにセリシアはスラスラと僕の子供っぽい点を挙げていく。
「……」
なるほど…否定できぬ
「それは良いとしてあの少女を助けた行動は非常に素晴らしいものでした、従者として私は非常に鼻が高いです」
セリシアは誇らしげに僕のことを褒めてきた。
「まぁ幼い少女が殺されるのは僕としては看過できないからね…当然だよ」
あれはどうかと思ったし何より子供が殺されるところなんて見たくないからね。
「フフ…やはりギルレッド様はとてもお優しい方です」
そう言ってセリシアは凛とした表情から笑顔に変わる。
基本的にセリシアは仕事中はクールな感じでいることが多いがたまにこうして笑顔になることがある。それと…
「…やっぱりセリシアは笑顔のほうが可愛くていいね」
「な、かかか可愛いだなんて!か、揶揄わないでくださいギルレッド様!」
するとセリシアは今度は笑顔からあたふたとして恥ずかしそうに頬を紅く染める。
「事実を言っただけなのに何をそんなに慌ててるんだよセリシアは…」
僕は表情が変わりまくるセリシアを見て少し呆れたようにそう言う。
こうして少し可愛いと言うだけでいつものクールなセリシアが嘘であるかのように照れるのである。
「きゅ、急に可愛いとか言われたら誰だって慌てます!」
セリシアは少し冷静さを失っているのか顔を真っ赤ににして大きな声でそう言ってくる。
「うん、まぁわかったけどセリシアここ道のど真ん中なの忘れてない?」
周囲の人たちが僕らの会話を聞きかなり色めき出しているし…
「〜〜!」
そしてそれに気がついたセリシアはさらに顔を真っ赤にして手で顔を隠す始末であった。
「…まぁなんだ、さっさと行くかオークションに?」
僕がそう言うとセリシアはコクリと小さく頷き案内を再開する。
(恥ずかしがりながらも仕事はしっかりとするんだよなセリシアは…)
苦笑いをしながら僕らは急いでオークション会場に向かって行った。
◯
〈奴隷オークション会場〉
「はぁ…やだなぁ…」
僕は特等席に座りながらそんなことばかり呟いていた。
それにしても周りの貴族たちの反応もひどいものだよ
僕が来た途端ピタリと葬式のように静かになり、怯えたように僕から目を逸らすのである。
まぁ僕が天竜人なためこの反応は仕方ないのだが…
本当に嫌われすぎやろ天竜人
ちなみに少し離れた横の席には僕より先に来ていたであろうロズワール家御一行の姿も見えた。
(はぁ…ロズワール家の奴らがいると何人かあっちに落札されそうだなこれは…)
僕はこれからのことを考えるとさらに気が重くなるのを感じた。
「はやく帰りたい…」
「少しの辛抱ですギルレッド様、これが終わればあとは自由ですので」
落ち着いて仕事モードに戻っていたセリシアが僕にそう言ってくる。
「わかってるよ、それでもこの雰囲気は嫌なんだよ僕は」
そう言い僕は頬づえをしながらオークション会場にて来る前に買ったドリンクを飲む。
「まぁそれはわかりますが…」
セリシアも同じ気持ちなため苦い表情をする。
しばらく2人で話していると…
「えーそれでは皆さん、長らくお待たせ致しました。まもなく毎月恒例1番グローブ、ヒューマン大オークションを開催致したいと思います」
ステージに証明がつき、ついに奴隷オークションの始まろうとしていた。
「そして司会はもちろんこの人! 歩くスーパーバザールこと、ミスターディスコ〜!」
そう言うと派手な演出とともに星形のグラサンをした1人の男が出てきて、歓声が周囲から湧いてきた。
始まってしまったか…
「どうも皆さま!今回も良質な奴隷たちを取り揃えることができました!皆様ラッキー!本日は目玉商品を用意しております!」
司会者がそう言うと周囲の貴族たちは大いに歓声を上げる。
(本当にどいつもこいつも嫌な連中だよ…反吐が出る)
僕は怒りを表情には出さなかったものの内心はかなり怒っている。
「それではさっそくオークションを始めましょう!エントリーNo.1!サウスブルー出身、3000万ベリーの海賊の船長!」
最初に出てきたのはガタイのいい海賊団の船長だ。
説明によるとこの海賊の船長は人殺しから窃盗まで悪事のすべてに手を出しておりかなりの悪名のある海賊であるらしい。
「さぁこの男3000万の懸賞金なだけありかなりの力持ち!力仕事させるも良し、サンドバッグにするも良し!」
司会者は奴隷を高値で売りつけるためうまい言葉を使って奴隷を売ろうとしていた。
すると数名ほど貴族達が名札を挙げて海賊船長を落札しようとする。
その光景を見て海賊船長の男は青ざめまるで病人のような顔をしていた。
(まぁ…少し可哀想ではあるがこれまでの経緯が悪過ぎるからさすがに助ける気にならないな…)
僕は基本的に人殺しなどといった悪事をしていない人のみ助けるようにしている。 過去にモス爺がとある悪名海賊を落札して助けた時、その海賊は恩を仇で返すようにモス爺を人質に取り金と船を要求したらしい。
まぁモス爺はそれをあっさり倒し監獄送りにしたらしいけど。
まぁそのため僕はそのリスクを避けるためまず奴隷の情報をしっかり聞いてから落札するか判断している。
(はぁ…本当にしんどい)
溜め息をつきながらも僕はオークションに集中するのであった。
◯
僕は数人の奴隷を落札してから気だるげに次に紹介される奴隷を待っていた。
「ギルレッド様、次で最後の商品になるそうです」
するとセリシアがスケジュール表を見せながら終わりが近いことを報告してくる。
「そっか、やっと終わるのか…」
終わりが見えてきたことに僕は安堵して亜空間から取り出したチョコレートを頬張る。
長時間ここにいて疲れたしさっさとこんなの終わらせて帰りに何処かに寄って帰ろうかね。
「ゴホンッ、それでは皆様お待ちかね!本日最後の目玉商品をご紹介しましょう!」
するとまたもや派手な演出が始まりサイドステージからカバーが被さった何かが運ばれてきた。
(!おいおい嘘だろ)
僕は運ばれてきたものの中に何が入っているのか
「お探し求める方も多いはず、ご覧くださいこのシルエット!」
するとカバーにライトが当たり中から人魚らしきシルエットが映し出された。
するとそれを見た貴族達は今まで以上の歓声を上がり会場全体に響き渡る。
「多くは語りません、その目で見ていただきましょう。お待たせ致しました、とくとご覧ください!」
そしてカバーがはずされ見えてきたのは青い髪に花の髪飾りをした美しい人魚の女性だった。
「魚人島からやって来たメロォ〜!」
その姿を見て先程よりも会場は大きな歓声が湧き広がる。
(はぁ…面倒なことになった…)
僕は水槽に入った人魚を見て頭を抱えるのだった。
時系列的にはまだルフィがゾロとナミあたりと出会ったあたりという設定にしています。なので今回のオークションではまだケイミーたちは出て来ません。
ちなみにメロという人魚は作者個人的に可愛いと思った人魚だったので勝手に出してみました! 後悔はしていない!