変なところはあるかもだけどとりあえずは完成したので投稿しちゃいます。
おいおいおい、ずいぶん厄介なのがきたな!
僕はデカい水槽の中で困惑しているメロという青髪の人魚を見てこれから起こるであろう戦いに頭がおかしくなりそうになっていた。
会場ではほとんどの者が人魚の美しい姿に目を奪われてしまっており大いに盛り上がっていた。
「人魚だえ〜!人魚が売っているえ〜!わちしあれ絶対ほしいんだえ〜!」
人魚の登場にはチャルロス聖もかなり興奮しており薄汚い笑みを浮かべながら立ち上がっていた。
「人魚か、これは珍しい」
そして大興奮のチャルロス聖の隣にいるロズワール聖もこれには驚き、自身の顎髭を触る。
この様子からして彼らはあの人魚を落札するつもりでいるようだ。
もし彼らの手にあの人魚が渡ってしまったら彼女のこれからの人生は絶望しかないだろう。
毎日のようにあらゆる苦痛を与えられ続け、人の尊厳を踏み躙られるような生活を強いられる。その上もし逃げ出そうものなら首に付けられている首輪が爆弾する仕組みになっており、数分もすれば確実に死へと誘うのだ。
逃げても逃げなくても地獄しかない。
そうさせないためにも僕は必ずあのメロという人魚を落札して救い出さなければならない状態に直面している。
でなければ僕はモス爺に合わせる顔が無くなるし、何よりあの腐り切ったロズワール家の奴らの手に渡るのは僕としては許容できない。
(だがこれはいくら金を使うことになるのか…)
問題としては金銭に関することだ。
モス爺から貰ったお金は何人かの奴隷を落札したため残り5億ベリーとなっている。
ロズワールド家はあとどれくらいの残金を持っているかわからないがあまり油断はできないだろう。
最悪5億ベリーでは足りないかもしれないがその時は自腹で払う他ない。あまり使いたくないんだが人の命には変えられないから仕方ない。
そもそも何故こんなところに人魚がいるんだか…
まぁ僕が推測するに地上に憧れを持った彼女がこっそりと地上にやってきたところを人身売買屋に捕まってしまったとかそんなところだろう。
たまにいるんだよなぁ…人間について無知な人魚たちが。
基本的に人魚族や魚人族は魚人島から出ることがあまりなくそのため魚人島に1番近い場所にあるシャボンディ諸島でも滅多に見ることはない。
その理由として人魚族や魚人族は大昔から人間から差別を受けており、
無闇に近づかないのが理由である。
そういった理由により人魚(特に女性)はかなりの高値で取引され、最低でも7000万ベリーもするという。
200年前から魚人島リュウグウ王国は世界政府の加盟国となったものの人魚族、魚人族の差別は以前と変わらないのが現実なのだ。
「それでは皆様さっそく始めていきましょうか!」
司会者が開始を言うと会場にいる全員に緊張が走り、眼を猛獣のように光らせてその時を待つ。
「まずは7000万ベリーから始めていきま…」
「5億だえー!」
司会者が最初の金額を言い切る前にチャルロス聖が立ち上がりさっそく5億ベリーと高額を宣言した。
「え、えぇ…」
これには司会者は唖然とし、掠れたような声が漏れる。
司会者だけでなく他の貴族達も同様に唖然として言葉を失っており会場はまるで時間が止まったかのように静寂に包まれていた。
「お前はまた無駄遣いを…先月魚人族の奴隷を買ったばかりだろうがえ」
静寂の空気の中、隣にいるロズワール聖が呆れたように自身の息子に問いかけていた。
「あんなのもういらないんだえ、だからあの人魚がほしいんだえ」
その問いにチャルロス聖は鼻くそをほじりながらそう答える。
「まぁお兄様ったら、ならあの人魚を買うなら先程買った海賊の船長は私が貰ってもよいアマスよね?」
するとロズワール聖のさらに隣にいたチャルロス聖の妹シャルリア宮がそんな要求をしてきた。
「ふん、まぁあの人魚が買えたら別にあれはいらないえ」
妹の要求にチャルロス聖はあっさりと許可してほじった鼻くそを前方に飛ばす。
「ダメだ…相手が悪過ぎた」
そんな彼らを他所に1人の貴族が小さく諦めの声を漏らす。他の者も同様に負けを悟り残念そうに肩をすくめていた。
「6億だ」
誰もが諦めている中で1人の男の声が会場に響き渡る。
そう天竜人はもう1人おり、ギルレットが番号札を挙げチャルロス聖より1億多い金額を宣言する。
「ぬぅ…またあいつだえ」
チャルロス聖は僕の宣言を聞くと、たちまち不機嫌さを露わにしてこちらを睨みつけてきていた。
「なら7億だえ!」
そしてすぐさま切り替えチャルロス聖は負けずとさらに1億多い金額を宣言して対抗してくる。
「8億だ」
しかし僕はまたそれよりさらに1億追加で番号札を挙げる。
「なら9億だえ!」
「10億だ」
少しずつ上がっていく金額に周囲の貴族たちは次元の違いを思い知らされ2人の争奪戦を緊張した様子で見る。
「ぐぬぬ…なら!」
少しずつ金額を追加していく僕に対してさらに不機嫌さを露わにしながらもチャルロス聖はさらに金額を追加しようと番号札を挙げようとしたが…
「おい、もうそれぐらいにしておけチャルロス!」
それをロズワール聖によって敢えなく止められてしまう。
「何故だえお父上!」
父の止めに対してチャルロス聖は父親に向かって怒りをぶつける。
「お前のおもちゃ如きにそれ以上の金を無駄遣いするのは無理だえ、今回は手を引くえ」
チャルロス聖の問いに対してロズワール聖は淡々と理由を説明して諦めさせる。さすがに息子1人のために10億以上を超える金額は出したくないのだろう。
「うぬぬぬぬぬ〜!」
理由を聞いたチャルロス聖は青筋を浮かべ納得できないといった顔でしばらく父親を睨み見る。しかし、しばらくしてさすがに父親に逆らうのは無理と思ったのか渋々諦め席に荒々しく座りこむ。
(ふぅ…これはなんとかこちらの勝ちのようだな)
それを見て僕は内心で完全に勝ちを確信したためようやく肩の荷がおりるのだった。
「ギルレット様、手持ちには5億ベリーしかないはずですが残りの5億はどうなさるおつもりなのですか?」
ほっとしている僕に対してセリシアが心配そうな顔でこっそり耳打ちしてくる。
「あぁそれね、仕方ないから以前に討伐した海賊から譲り受けた財宝とかを売って補うつもりだよ」
僕の貯めてきた財産が減るのは少し嫌ではあるがあの人魚の命がかかっているのだ、しょうがないね。
おのれチャルロスめ!余計に金額追加してくるから10億も払わないといけないじゃないかよ!
「……はっ!え、えーっと一応確認しますが他に番号札を挙げられる方はおられるでしょうか?」
司会者がようやく現実から目を覚ますと会場全員に最終確認をする。
当然であるが皆唖然とするばかりで誰も番号札を挙げる者はいなかった。
「ゴホン、では人魚のミロは世界貴族のノルシュタイン聖の10億ベリーで落札です!」
司会者が高々と木槌を叩き僕によって人魚が落札されたことを公表する。
こうしてようやく奴隷オークションは僕の10億ベリーという規格外の金額で幕を閉じたのであった。
◯
「ふぅ…ようやく終わったかぁ…めっちゃ疲れたー」
オークションを出てから僕は腕を伸ばしながらそう言う。
いや〜本当に大変だったよ。
会場を出るまでチャルロス聖がずっとこっちを睨みつけてきて鬱陶しかったし、数人奴隷を買ったためその手続きとかで時間かかったし…
ちなみに落札した奴隷たちに関しては気絶させてこっそりと亜空間に収納しているため誰かに見られることはない。
奴隷を引き連れていたら色々と手間だし、それに外観的に悪いから僕としてはなしだ。
本当にスペスペの実の能力は便利でいいね!
「ギルレット様本日の予定は達成されましたがこれからどうなさいますか?」
ストレッチを終えた僕にセリシアがこれからの予定を聞いてくる。
「うんそうだな……少し寄って行きたい場所がある」
「寄りたい場所ですか?」
「うんせっかくシャボンディ諸島に来たんだ、久しぶりに
僕はニヤリと笑い、作り出したワープ空間を指すのであった。
◯
〈シャッキー’’S ぼったくりBAR〉にて
「……ふぅ」
とある男がカクテルを軽く飲み、息を漏らす。
店内は静かで落ち着きがあり、男の持つカクテルに入った氷の音が店内でよく響き渡っていた。
「いやはや今日はなんだか良いことが起きそうだな」
そんなことを呟くこの男の名は冥王シルバーズ・レイリー
彼はかつて海賊王ゴール・D・ロジャーの船で副船長をしていた男で世界中で彼を知らない者はいないほどの有名な人物である。
「ちょっとレイさんもうそれぐらいにしておけば?飲み過ぎよ」
するとカウンターで煙草を吸う女性がレイリーに酒を控えるよう促す。
彼女の名はシャッキー
このぼったくりBARの店主でかつて伝説のロックス海賊団の船員だった人物である。
「いやいや今日は気分が良いんだ、酒を控えるのは無理がある」
しかしシャッキーの注意をレイリーは軽く聞き流して置いてあるつまみを食べ始める。
ガチャッ
2人が話していると突如扉が開く音が聞こえてくる。
「おーいレイリー、シャッキーいるー?」
中に入って来たのは片手を上げ挨拶をするギルレットとセリシアである。
「おぉギルじゃないか久しぶりだな!元気にしていたかね」
「あらギルちゃんじゃない久しぶりね」
2人は僕の登場に嬉しそうな顔で歓迎してくれた。
「うん久しぶり、2人とも相変わらず元気そうだね」
僕は2人の元気そうな顔を見られて一安心してすぐさまカウンターの席に腰をかける。
「あら?そっちの綺麗な子はもしかしてギルちゃんのガールフレンドかしら?」
するとシャッキーがセリシアを見て煙草を吹かしながらそんなことを聞いてくる。
「が、ガールフレンド!?ち、違います!私はギルレット様の従者であってガールフレンドなどでは!」
シャッキーの質問に対してセリシアは明らかに動揺して顔を真っ赤にしながら慌ててそれを否定する。
「あらそうなの?でもその感じからして実際にはギルちゃんのことが…」
「わー!やめてください!」
シャッキーが言葉を言い切る前にセリシアは大きな声を出してそれを掻き消す。
「フフフそんなに慌てちゃって可愛いらしいわね」
シャッキーはセリシアの反応を見て微笑ましい表情をしていた。
「はぁはぁ……ふぅ…」
それに対してセリシアはすごく疲れたような顔をしながらなんとか心を落ち着かせようとしていた。
「シャッキーあんまり僕の従者を揶揄わないでくれよ」
とりあえずセリシアが色々と可哀想なので僕はシャッキーにやめるよう注意する。
「あらごめんなさい、反応が可愛らしいものだからついね?」
シャッキーは悪びれた様子はなかったがとりあえずはセリシアを揶揄うのをやめてくれた。
それにしても今日のセリシアはほんといつものクールモードが機能していないな。
まぁセリシアはあの見た目に反してそういったのに弱いから仕方ないけどさ。
「えーそれじゃ落ち着いたことだし紹介するね、彼女の名前はセリシアで僕専属の従者として仕えてくれてる子だよ」
「よ、よろしくお願いします」
僕が紹介するとそれに続きセリシアはおずおずと2人に律儀に軽く挨拶をする。
「フフ、よろしくねセリシアちゃん」
「うむ、よろしくセリシア君」
それに対して2人は笑顔でセリシアを歓迎してくれた。
「ところでギル、しばらく顔を見なかったが何かあったのか?」
レイリーはふと気になったのかそんなことを聞いてくる。
「いやぁ…ちょっと色々と忙しくて…」
僕はレイリーから目を逸らしながらそう言う。
言えない…モス爺にこっぴどく怒られて外出禁止にされてたなんて …言ったら絶対笑われるだろうし。
「ギルレット様はモストレア様に無断で外に出かけたことが理由で外出自粛になっただけですよ」
わざわざ僕が話を濁したのにセリシアがあっさりと事実をバラしてしまった。
「ちょいセリシアさん!?何ありのまま言っちゃってくれてるの!」
僕が驚きそう言うとセリシアはプイッと顔を横に向けるだけでなにも言わなかった。
なんで無視やねん
「ハハハ、そうかそうか!なんともギルらしいな!」
レイリーはよほど面白かったのか爆笑してつまみをさらに食べ進める。
チキショウやっぱり笑いやがったぜこの人は!人の不幸をつまみのネタにするなんてひどいやっちゃ!
どうでもいいけどそのつまみ美味そうだな
「それにしてもギルちゃんここに来てもう10年は経つかしら?」
僕がつまみに目を向けているとシャッキーがふと懐かしそうにそんなことを言う。
「そういえばそうだね僕ももう17になったし」
そう考えると昔はよくここに来たものだなとつくづく思う。
僕がレイリーたちと知り合ったのは僕が当時8歳の時である。ヤンチャだった僕はスペスペの実の能力を使ってよくシャボンディ諸島に無断で訪れ、色々な場所を点々としていた。
そんなある日のこと、僕は遊び疲れたため何処かで一休みしようとうろうろしていた時に偶々このぼったくりBARに出会ったのである。
こんな明らかにぼったくる気満々なお店初めて見たし何より面白そうと思ったため僕には行く以外の選択肢はなかった。
そして僕は好奇心で中に入るとそこで目に入ったのは何処ぞのチンピラの顔をボコボコにしていたシャッキーとその光景を見てつまみを食べるレイリーの姿だった。
あれはなかなかインパクトの強い出会いだったよ。
そこからなんやかんやあって2人とは仲良くなりちょくちょくこの店に訪れるようになったのだ。
「そうかもうそんな歳か…感慨深いものだな」
レイリーはまるで自身の子供の成長を喜ぶ親のように嬉しさと寂しさのある表情をしていた。
「それに力も一段と強くなっているし、覇気も以前よりも洗練されたようだ」
「まぁ自粛中に修行してたからね、強くはなるよ」
そのおかげで僕は武装色・見聞色を以前より鍛えることができた。
特に見聞色はだいぶ未来を見通すのが慣れて難なくコントロールができるようになった。
せっかくだしまた今度アイツとも久しぶり再戦しようかな
「そうか、これからももっと励むことだな」
そう言ってレイリーはカクテルを再び飲み出した。
「ところでその服装を見るからに今日は奴隷オークションに行っていたのか?」
レイリーは僕のこのダサい防護服を見てそんなことを聞いてくる。
「うん、モス爺が急に用事ができたんで代わりに行くことになったんだよ」
そう言うと僕はだるそうな顔で出されたオレンジジュースに口をつける。
あ、美味しい。
「なるほどそうだったのか、それは災難だったな」
「本当だよ〜…できればもう行きたくないよ」
そう言って僕はレイリーのつまみを勝手に取って口に放り込む。
ちなみに2人は僕が天竜人であることを知っている。出会った当時に何故かすぐにバレてしまい僕はかなり慌てたものだが、2人は15年前の時にモス爺と一度出会ったことがあったため僕が天竜人であることがわかったらしい。なんでも目がモス爺とよく似ていたんだとか。そのため2人は天竜人であるはずの僕に対して心優しく接してくれた。
天竜人がどんな存在か知っていれば普通は怖がられるか軽蔑されるかのどちらかなのに。
そのため僕は2人のことが好きであり、この店は僕にとっての憩いの場となっている。
「まぁ確かにあそこはまともな神経の持ち主にはしんどい場所だろうな」
「そうだよ、あそこに集まる奴らなんて碌な奴はいない」
「それでオークションに行ったからには何人か落札してきたのだろう?」
「うん今回はロズワール家の奴らがいたせいで6人しか落札できなかったけどね」
本当にロズワール家は厄介な奴らだよ。踊り子の女性が2人ほどあちら側に落札されてしまったし。
「それは運がなかったな、でもまぁ6人だけでも落札できただけまだよかったほうだな」
「そうかもだけどできれば全員助け出したかったよ」
そう言って僕は残っているオレンジジュースを一気に飲み干してそっとコップをテーブルに置く。
「はぁ…つくづく自分の無力さを痛感するよ…」
先程のオークションのことを思うと僕はつい溜め息を吐きながらそう吐露すると悲しい目でコップの中に残った氷を見る。
カランッ
「ギルレット様…」
セリシアはそんな僕を心配そうな顔で見ていた。
「何、そう自分を卑下にするものじゃない」
するとレイリーが優しい表情で僕を見てそう言ってくる。
「確かにギルが天竜人であることは紛れもない事実だ、しかしギルは他の天竜人たちとは違って人を傷つけたりしないだろう?」
「それはまぁ…そうだけどさ」
「ならそれでいいじゃないか、ギルは心優しい人間なんだ、だからこれからもギルの正しいと思うことをやっていけばいい」
そう言ってレイリーは残り僅かのカクテルを飲み干す。
「……」
僕の正しいと思うようにか…
それなら僕は…
◯
「ギルレット様そろそろお時間なのでここで切り上げたほうがよろしいかと」
しばらくレイリーたちとお喋りしていると突如セリシアがそう言って話を切りあげようとする。
「ありゃ、もうそんな時間なの?」
そう言われ窓を見やると外では綺麗な夕日が見え始めてきており店内は徐々に薄暗くなってきていた。
「おっと話に夢中で全然気づかなかったな」
レイリーも今気づいたのか
まぁさすがにそろそろ帰らないとモス爺に怒られるし、それに気絶させた人たちをこれ以上亜空間に放置するのもあれだからね。
「じゃあそろそろ帰るかぁ〜」
そう言って僕は席を立ち軽く腕を伸ばして身体をほぐす。
「そうか、まだまだ話し足りないが時間なら仕方ないな」
「私ももう少しセリシアちゃんとお話ししたかったわ」
2人はそう言って名残惜しそうな顔をする。
「まぁまた今度暇があったらいつでも行くから」
そう言い僕はすぐさまワープ空間を作り出し帰る仕度を整える。
「じゃあまたねレイリー、シャッキー」
「本日はお世話になりました」
僕は手を振り、セリシアは軽くお辞儀をしてワープ空間内に入ろうとする。
「ああ気をつけて帰るんだぞ」
「またいつでもいらっしゃい」
それに応えるように2人も手を振って僕らがワープ空間内に入るのを見届ける。
こうして僕らのシャボンディ諸島でのお買い物はあっという間に終わったのであった。
ちなみにギルレットは4年ほどレイリーたちと会っていなかったため2人はギルレットの成長にかなり驚いていました。