自由奔放な天竜人   作:アットホーム

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お待たせしました!
ようやく書けたので投稿したいと思います。
実は納得できる内容がなかなか書けなかったので何度も書き直してました。とりあえずはこれでいこうかと思いますが変なところあるだろうなぁ… 本当文章力ないよぉ…


タートル島での冒険2

 

 

「いや〜腹も満たされたことだし、次はどうしようかな?」

 

僕は路地を歩きながらそう呟く。

僕たちは酒場を出てからしばらくして現在は最初にいた路地へと戻ってきていた。その道中で酒場でフルボッコにした海賊たちは適当に道の端っこに纏めて置いている。いずれは目を覚ますだろうけど彼ら無駄に仕返しに来ないだろうか?できれば面倒だから来ないで欲しいなぁ。

 

まぁそんなことはいいとして僕はこの島に訪れたから思っていたことなのだが、この島ではどうやら地区によって治安の良し悪しがかなり異なっているようである。

先程の路地では整備されていない足場の悪い道にそこらに生ごみや空き瓶などが散乱しており、海賊はもちろんなことヤクザや浮浪人などの表では生活しにくい人たちがよく見られた。

逆に今僕らが歩いているこの路地では道がしっかりと整備されているし、ゴミなどもあまり見られず、観光客などの人たちで賑わっていた。

まぁ気にしてもどうしようもないのでこれ以上は考えないようにするがね。

 

 

「ギルレット様、何故わざわざあんな危険な酒場で食事などをしようと思ったのですか?」

 

隣を歩くセリシアが周囲を警戒しながらそう質問してきた。

セリシアからしたら世界貴族である僕があんな薄汚れている上に、野蛮な輩が蔓延る酒場で食事をしたことにあまり良く思っていないようである。そんなさらしあの顔を見るとやや不機嫌そうな表情が伺える。

 

 

「ん?何故ってそりゃあーちょっとした好奇心だよセリシア。僕って今まで高級レストランといった豪華な店しか行ったことがなかったでしょ?だからちょっとああ言うボロい感じの酒場に行ってみたかったんだよ」

 

他の天竜人なら絶対にあり得ない考えだろうけど僕はむしろそういった店には行ってみたくなる性なのだ。まぁそんな僕でも最初はほんのちょっと不安ではあったが行ってみると飯は意外にも美味かったし、少し遊ぶこともできたし僕としては満足だったと思う。

 

 

「はぁ、そうですか…ギルレット様の考えは私にはあまり理解できませんよ。何より私はもう二度とあそこには行きたくありませんし」

 

そう言うとセリシアは先程のことを思い出しているのかすごく嫌そうな顔をしていた。何せあんな変な輩に絡まれたのだ、そんな顔になるのも当然と言える。

 

「えぇ〜僕は結構気に入ったんだけどなぁ、ああ言う食事口に合うし」

 

「おやめ下さい。ギルレット様は仮にも高貴な一族なのですよ?ですのであんな店に行くのは金輪際控えて下さいませ」

 

セリシアは懇願するようにそう言う。

目からそれがよくわかる。

 

「え、いやだよ?」

 

しかしギルレットはそれをバッサリと切り捨て拒否する。

ギルレットとしてはあんな面白い場所にもう行けなくなるのはいやであるのだ。そのためセリシアの頼みを拒否するのは自然の流れである。

 

 

「……そうですか、まぁそう言うと思ってましたよギルレット様ですからね。ですがそれでもダメです!もう危険な店に行かないことを今約束して下さい!」

 

セリシアは本気で行かせたくないのか真剣な目で頑なに約束を取り付けようとする。

 

「…まぁこの話は亜空間にでも置いといて、そんなことよりせっかくこの島に来たんだからしばらくここで観光でも楽しもうよ」

 

しかしギルレットは約束する気はないのかセリシアから目を逸らすとわかりやすく話をすり替えてそう提案する。

 

「露骨に話を晒しましたね…こっちを見て下さいギルレット様!」

 

「……」

 

ギルレットは本気で嫌なのかセリシアの呼びかけを無視して目も合わせようともしなかった。

 

「……はぁ、仕方ありません、とりあえず今回はいいでしょう」

 

根負けしたセリシアは溜め息を吐きそう言うととりあえずはこの話から引いてくれた。しかし今回はと言っていたことからまたこの話をするつもりのようである。

僕としては永遠にこの話はなしの方向でお願いしたいものだ。

 

「それと先程の提案ですが……先程の場所は最悪でありましたが今いるこの地区での観光なら私は構いません」

 

僕の提案にセリシアは少し考えてか賛同してくれた。

 

「そりゃあよかった、セリシアも賛成してくれたことだし…それじゃあ早速観光開始だ!ついて来いセリシア!」

 

そう言うとギルレットは早足で走り出す。

その姿はまるで初めてテーマパークに訪れた子どものようであった。

 

「楽しそうなのは構いませんがくれぐれも変な行動だけは控えて下さいね」

 

セリシアは呆れながらギルレットを追いかける。

 

そうして僕らはタートル島での観光が今始まったのであった。

 

 

 

[レインボール広場〉にて

 

レインボール広場、そこは多くの木々に囲まれた円状の広場で、その中心位置には甲羅に玉のようなものが嵌め込まれた亀の石像が目立つように存在していた。そして亀の石像の口からはキラキラと透き通った水が溢れるように噴き出しており、その下ではその綺麗な水が溜まり泉ができていた。そんな亀の噴水近くには大人から子供まで多くの人たちが集まっており、非常に賑やかな広場である。

 

「オォ、めっちゃ綺麗やん」

 

「そうですね、何だか心が清らかになりそうな広場ですね」

 

僕らはこのレインボーら広場を見渡しながら各々そんな感想を呟く。

僕らはタートル島の人に渡されたパンフレットを見ながら歩いていたところ、このレインボール広場が一番近いと知ったため、とりあえずこの広場に訪れた次第なのである。

 

訪れた感想としてはこのレインボール広場は聖地マリージョアにある広場に負けないほど綺麗なところで、非常に心が落ち着くそんな広場だった。でもひとつ気になることがあるとすれば…

 

 

「にしてもこの島に来てから思ってたけど…そこら中に亀が沢山いるなぁ」

 

僕が当たりを見渡すとそこには泉の中をのんびり泳ぐ亀やベンチの下で日向ぼっこをしている亀などさまざまな亀の姿がそこにあった。

ここに来る道中にもちょくちょく亀が道を歩いているのを見つけたし、ここでは当たり前のように亀が生息していた。

 

「そうですね…明らかに多いと思います。何よりこの広場にある石像も亀のようですしね。もしかするとこの島では亀は尊重すべき…守り神のような存在なのかもしれません」

 

セリシアはそう予想すると目線を上げて亀の石像を見る。

その亀の石像は天を見上げるようにしており、なんとも神々しさを感じさせる姿だった。

 

「なるほど守り神かぁ…その可能性は高いかもね。あの石像なんかカッコいいし……ん?」

 

亀の石像を見ていた僕はふと足元に何かの気配を感じ取ったため目線を少し下げる。

 

「キュウ!キュウ!」

 

するとそこにはなんと握り拳ぐらいの大きさしかない亀が僕の足元によちよちと歩み寄ってきていた。そんな子亀は甲羅がピンク色をしており、僕自身初めて見る亀である。

 

「キュウ!キュキュウ!」

 

そして僕が存在に気がつくと子亀は可愛らしい音でさらに鳴き、僕の足をガシガシと軽く引っ掻く。

 

「オォ!どうしたよ亀ちゃん、僕に何か用?」

 

僕はそう言うとしゃがみ込み、子亀の頭を優しく撫で始めた。

 

「キュウ!キュキュウ!」

 

撫でられた子亀は嬉しいのか気持ちよさそうな顔でまた可愛らしく鳴き始める。その姿はまさに天使のようである。

 

 

「めっちゃ可愛いなこの亀ちゃん、なんかすごく懐いてくれてるし…でもなんでだろ?」

 

僕は何故こんなに懐いているのか不思議に思いながらも子亀をそのまま撫で続ける。もはやギルレットは完全にこの子亀に夢中になっていた。

 

「ピンク色の亀…初めて見る亀ですね」

 

セリシアは好奇な目で子亀を見ながらそう呟く。

他のカメは緑や茶色が多いのに対してこの子亀はピンク色とかなり浮いている。セリシアは希少種か突然変異によるものかと内心で予想する。

 

 

「でも不思議ですね…この亀はかなり人懐っこいようですが他の亀たちはあまり人に関心がないように見えます…」

 

そう言いセリシアはチラッと前方を見る。するとそこにはカップルらしき二人組が楽しそうに日向ぼっこをしている亀の頭を撫でているのが確認できた。しかしそんなカップルたちに対して日向ぼっこをしている亀は一切興味がないのか大きな欠伸をしていた。他の亀たちも同様である。

 

「……」

 

セリシアは何か思ったのかそんなカップルたちを羨む目でじっと眺めるとすぐさまブンブンと首を振り頭を切り替える。

 

「どうしたのセリシア?急に首を振り出して」

 

僕はそんなセリシアを不思議そうな顔で見る。

 

「いえ…お気になさらないで下さいギルレット様…少し悲しみに浸っていただけです」

 

「いや本当に何があったし!」

 

セリシアの悲しそうな顔を見た僕は余計なわけがわからないと言った感じでそうツッコむ。

そんな時だった。

 

スッ

 

「!…ギルレット様申し訳ありません」

 

「うんわかってるよ、今横を走り去った少年…財布を抜き取っていったね」

 

僕はそう言うと後ろを振り向く。するとそこには少し遠くの方向に亀の甲羅の帽子を被った少年が急いで走り去っていくのが見えた。

 

「へぇ…結構足が速いねあの少年」

 

僕は走り去っていく少年に感心したようにそう呟く。

 

「ギルレット様何を感心しているのですか!今すぐあの盗人を捕まえてきますので少々お待ちください!」

 

そんな僕に対してセリシアは怒った顔でそう言うと走り去っていく少年の方向を睨みつけ急いで追いかけようとする。

 

「まぁ待ちなよセリシア、そう急ぐことはないさ」

 

しかしギルレットはそんなセリシアの肩を掴み静止させる。

 

「何故止めるのですか!早くしなければあの盗人を見失ってしまいます!」

 

セリシアは止められると思っていなかったのか驚きながらそう聞いてくる。セリシアとしては先程の失態にかなりの責任を感じているため、今すぐ撤回したいのである。そのためかセリシアの顔には焦りが見える。

 

「セリシア焦るのはわかるけど一旦落ち着いて。ほら飴ちゃんあげるからさ」

 

僕はそう言うと亜空間から取り出した飴をセリシアに渡して落ち着かせようとする。

 

「…何故飴玉なのかわかりませんが…ありがとうございます。…それと申し訳ありません少し冷静さを失っていました」

 

セリシアは少し恥ずかしそうに謝る。

 

飴を渡したおかげなのかセリシアは冷静さを少し取り戻したのかとりあえずは落ち着いてくれたようである。

 

「全然大丈夫だよ、僕のせいでもあるし。…にしてもミスったなぁ…まさか取られるとは思わなかったから財布亜空間にしまうのを忘れてたよ…あはは!」

 

そう言うとギルレットは軽く笑う。

その様子からして本気で焦っていないようであり、かなり落ち着いた表情をしていた。

 

「笑っている場合ではないでしょう…それに何故そんなに落ち着いていられるのですか?確かあの財布はギルレット様がモストレア様の部屋から勝手に拝借したものではなかったですか?」

 

セリシアは呆れたようにそう聞いてくる。

 

「あ、そうか忘れてた。あれモス爺の財布だったんだ」

 

僕は思い出したようにそう呟く。

そう、あの財布はモス爺からお小遣いを渡された時ついでに持ってきた財布なのである。もちろんのことモス爺には無許可で持ってきており、もしバレたらかなり怒られるだろう。何せあの財布はモス爺がかなり大切にしている財布で、確か新世界産の珍しい生き物の皮を使って作られたとかなんとか。そんな珍しい財布にもちろん興味を持った僕は是非とも使ってみたいとモス爺に頼んだのだが、一度でも貸してくれたことはなかった。まぁその財布をモス爺にバレないようこっそり持ってきたんだけどね。反省はしている…しかし後悔はしていない!

でも流石に返さないとまずいので取り返しには行くつもりだ。

 

「どうするのですか?もうあの盗人はおそらくかなり遠くに逃げて追いかけようがありませんが…」

 

セリシアは困ったようにそう聞いてくる。

何せこの広い島であの少年1人を見つけ出すのはかなり至難の技でありギルレットの能力を使ってたとしてもかなりの時間を要するだろう。現段階では絶望的と言える。

 

「いや、そうでもないんだよねこれが」

 

しかしギルレットは何か方法があるのか余裕の笑みを浮かべてそれを否定する。

 

「何か方法があるのですか!」

 

セリシアは驚いた表情でそう聞いてくる。

何せ少年を見つけ出す方法があるとは思っていなかったのだセリシアが驚くのは当然だった。

 

「うんあるよ。それはこの亀ちゃんに協力してもらえばね?」

 

そう言うと僕は子亀を抱え上げてセリシアに向ける。

そんな抱えられた子亀は顔を真っ青にしており体は怯えたようにプルプルさせて横を向いていた。

 

「その子亀がですか?いったいどういうことなのですかギルレット様」

 

セリシアは何故そこで亀が関係するのかわからないのか不思議そうに問いかけてくる。

 

「うん、何故この亀ちゃんが少年を見つける糸口かというと、それはこの亀ちゃんがあの少年とグルだからだよ」

 

「っ!その亀がですか!」

 

セリシアは予想外なのかかなり驚いた顔でそう聞き返してくる。

 

「うんそうだよ。いやね?最初はこの亀ちゃんが偶然僕に懐いてくれたのかと思っていたんだけどさ、さっきので確信したよ…この亀ちゃんはあの少年の窃盗の手立てをしていた」

 

何せあまりにもタイミングが良すぎるしこの子亀のみが僕に懐いて近づいてくるのはなんだか変だと思っていたのだ。

 

「それに実はあの少年が僕の財布を抜き去る瞬間にこの亀ちゃんをチラッと見ていたんだよねぇ。なんとも不自然だと思わない?」

 

僕はそういうと抱えている子亀に答えを求めるように見る。

そしてそんな子亀は僕の質問を聞くと真っ青だった顔をさらに真っ青にして掠れた声で鳴く。

その様子からどうやら図星のようである。

 

「確かに疑問な点はありましたが…この悪亀を見るからに本当のようですね」

 

セリシアは納得とばかりに頷くとさりげなく呼び名を亀から悪亀とランクダウンさせていた。

 

「そういうこと、見た感じかなり手慣れていたから幾度と同じようなことを他の人にもしていたかもね」

 

「まぁ確かに素人の手つきではありませんでしたね」

 

ギルレットに気づかれてしまったにしてもかなりの手つきと早さであったとセリシアは思う。

 

「まぁ兎も角にもこの亀ちゃんとあの少年はグルなんだ。必ずどこかに拠点があるはずだからそこに向かえば必ずあの少年に会えると思うよ」

 

「なるほど…どうやら今やあの盗人は袋の鼠のようですね」

 

「そゆこと、だから何もそこまで焦る必要はないという訳さ」

 

そういうと僕はドヤ顔をする。

 

「ドヤ顔をしていますがそもそもギルレット様が私を止めなければこんな回りくどいことをしなくても済んだのですが。そこのところはどうなのですか?」

 

セリシアは呆れと怒りを含んだ声でそう言う。

そう、本来ならセリシアがあのまま少年を追いかけていれば簡単に捕まえることができて万事解決であったのだ。しかしそれをギルレットがわざわざ止めたためにこうして面倒なことになっているのである。

 

「あ、そのこと?いや〜それに関しては単純にあの少年をあのまま捕まえるってのはなんか面白くないなぁと思って。だからあえて見逃したんだよね」

 

そう言うとギルレットは楽しそうに笑う。

そう本来ならギルレットは見聞色の覇気で未来を視ることができ、あのような窃盗など未然に防ぐことが余裕でできた筈だ。それなのにギルレットはわざわざそれを見逃したのだ。

 

「本当に余計なことをしましたね…流石に私もこればかりは怒りますよ?」

 

そう言うとセリシアは冷たい眼差しでギルレットを見る。

余計な仕事を増やされたのだ、セリシアが本気で怒るのは当然と言える。いつもならギルレットの馬鹿な行動には慣れている為呆れる程度で済んでいた。しかし今回は酒場でのことがあり、感情の制御がうまく機能していないのだ。

 

「いやごめんて、だからそんな冷たい眼差しで見ないで!後で埋め合わせするから本当に!なんならセリシアの大好物のみたらし団子も奢るし!」

 

僕は慌てたようにそう言いセリシアの機嫌を取ろうとする。

 

「それはもちろん後でいただきます!ですが今日とばかりは言わせてもらいます!ギルレット様は昔から変なことや危険なことばかりして私をいつも困らせて!心配する私の身にもなって下さい!そもそも先程のことと言い少しは貴族らしい心構えというものをですね!何より……」

 

 

しかしセリシアはそれでも機嫌が直ることはなく、これまでの愚痴を含め長々と説教を始める。まぁ僕が悪いにしてもかなりしんどいと思う。

 

「キュ…キュウ」

 

しばらくセリシアの説教を聞いていると僕が抱えていた子亀が耐え切れないのか仲裁するよう弱々しく鳴く。

 

 

「はっ、そうです説教をしている場合ではないのでした。まずはあの盗人から財布を取り返すことが最重要事項でした。ギルレット様この話はとりあえずは切り上げますがまた後ほどする予定ですので覚悟しておいて下さい。いいですね?」

 

セリシアは睨みながらそう言う。

 

「はい…」

 

それに対してギルレットは蛇に睨まれた蛙のように縮こまり返事する。

 

 

「さて、あの盗人にもきつい説教及び教育する必要がありますね。フフフフ…」

 

そう言うとセリシアは不敵な笑みを浮かべる。その顔からあの少年はかなりひどい目に合うのが予想でき、僕は心の中で合掌する。

本当に何をするつもりなのだか…

 

「まぁいいや…とりあえず案内を頼むよ亀ちゃん?」

 

「キュ、キュウ…」

 

僕はそう言うと子亀は恐る恐る頷き、掠れた声で鳴くのだった。顔を見るからに逃げられないことを悟り観念しているようである。

 

そうして僕ら2人と1匹はレインボール広場を離れ、亀帽子の少年を追いかけ始めるのであった。

 

 

「はぁはぁ…へへ、今日はついてるぜ!」

 

ギルレットから財布を盗んだ亀帽子の少年はしばらく長い路地を走った後、とある路地裏で腰をかけて盗んだ財布の中身を確認していた。

 

 

現在少年がいるこの路地裏は少し前にギルレットたちが食事をしていた地区である。この地区はタートル島でもかなり危険なところであり、酒場、カジノ、闇市場などが多い。そのためここでは裏の住民や海賊などがよく見られ、その為に普通の人はここに無闇に訪れることはない。そんな危険な場所に何故この少年がいるかと言うと、単純に少年の家がこの地区内にあり、帰るには必ずこの地区に入らないといけないのだ。

 

 

「服装から金持ってそうだと思ってたが…まさかこんなに入ってるとは…今日運がいいぜ!」

 

少年が財布の中身に目を向けるとなんとそこには100万ベリーほどの札束が入っていたのであった。

 

この札束はギルレットが聖地マリージョアを出る前の日にモス爺から渡されたお小遣いであり、モス爺曰くこれでもかなり少ない方らしい。

 

「それにこの高価そうな財布も売ればかなりの値になるかもな。へへこれだけあればしばらくはあいつらに美味い飯を食べさせてやれる!本当に金持ちは鈍臭くて助かるぜ!」

 

少年は先程の白髪の男のことを思い浮かべると小馬鹿にしたように笑う。男の近くに変わった格好をした護衛らしき綺麗な女の人がいたが油断していたのか簡単に盗むことができた。

 

 

この亀帽子の少年は過去にもギルレットと同じように金を持ってそうな観光客や貴族などからよく金目の物を盗んでいた。盗みが成功しやすくするために少年は自身の相棒である子亀を囮に使い、盗むを成功させてきた。その為これまで子亀の可愛らしさに数々の人が騙されかなりの金銭的被害を受けていた。

 

「オレとあいつで力を合わせれば金を手に入れるのなんて朝飯前だぜ!さすがに誰もオレたちがグルなんて思わないだろうしな!」

 

そう言う少年の顔には失敗などあり得ないといった余裕の笑みが伺える。しかし少年はまだ知らない、少年と子亀がグルであることをギルレットにバレていることに。

 

「さて、息も整ったことだしさっさと家に帰ってあいつらに今日の成果を自慢するかな」

 

そう言うと少年はすぐさま立ち上がり路地裏を出ようとする。

いつまでもこんな路地裏にいると誰に見つかるか分からないのだ、さっさとここを離れるのは当然だろう。

 

「この金で何を買おうかな?こんなに沢山あれば贅沢に肉でも食べるのもいいかもな」

 

少年はそんなことを思いながら路地裏を歩き薄暗い路地裏を抜けようとする。

 

ドンッ

 

「うわ!」

 

そして路地裏を出て角を曲がろうとした時、少年は誰かとぶつかり勢いよく尻餅をつく。

 

 

「イテテテ…どこ見てるんだよ!…げっ!?」

 

少年は睨みを利かせてぶつかった人物を見てそう叫ぶ。

しかしすぐさまそれが間違いだと気がつく。

 

「あん?ってなんだあのボロ屋のクソ生意気なガキか、テメェ何生意気に睨みつけてんだ?殺すぞ」

 

少年がぶつかったのは肥えた腹に黒い髭が特徴的な大男で、その背後には数人の子分を引き連れていた。

彼らはこの地区で暮らしている住民で、暴漢はもちろんのこと違法カジノや闇商売に手を染めているヤバい奴らである。少年もよく彼らに絡まれ虐げられることがあり、今1番関わり合いたくない奴らである。

 

「おいおい〜なんでテメェみたいな糞ガキがこんなところにいるんだぁ〜?もしかして迷子かぁ?」

 

大男の後ろにいた子分の1人が完全に馬鹿にしたようにそう言う。

そんな男の頬は若干赤く染まっている。どうやら先ほどまで近くの酒場で酒を飲んでいたようであり、ほのかに酒の匂いが少年の鼻を刺激する。

 

「う、うるせぇ!お前らには関係ないだろ!どっか行けよ!」

 

少年は睨みながらそう叫ぶ。

少年としては今彼らとは関わっている暇はなく、すぐさまここを離れたいのだ。

 

「あぁ〜ん?なんだとテメェ…相変わらず口の利き方がなってないようだ、な!」

 

「ウグッ!?」

 

しかし言い方がよくなかった為か少年の言葉に子分の1人はヘラヘラした顔から怒った表情へと変貌させ、少年の頬を思いっきり殴りつけた。そして少年は思いっきり殴られたことにより勢いよく背中から強打する。

 

「オラ!オラ!オラァ!」

 

「グッ…ガァ…ゴホォ!?」

 

そして追い討ちをかけるように男は倒れている少年の腹を思いっきり蹴ると少年は激痛に呻き声をあげ、腹を押さえつける。しかし痛みに耐える少年に大男や他の子分たちは関係ないとばかりに暴行に参加して少年の頭や背中を蹴りまくる。そしてそんな彼らの暴行に周囲にいる浮浪人たちは関わり合いたくないのか誰も少年を助けようとはせず、無視を決め込んでいた。

 

「オラ!これに懲りたらもうなどと舐めた方を聞くんじゃねぇぞ!」

 

「オゴッ!?」

 

大男は最後にそう吐き捨てると今までで1番の威力の蹴りを腹に加える。蹴りを入れられた少年は口から血を吐き、まるでボロ雑巾のようにうずくまり掠れたような声で呻き声を出す。なんとも悲惨な姿である。

 

「ふぅスッキリしたぜ〜…ん?なんだこりゃ…こいつポケットに何か入ってるぞ」

 

「や、やめろ…勝手に触るな」

 

1人の子分は少年のポケットに何かあるのに気がつくと少年の言葉を無視してポケットに手を突っ込み出す。

 

「オォこりゃ財布じゃねぇか!何だよ糞ガキいいもん持ってんじゃねぇかよ!」

 

男がポケットから財布を取り出すと嬉しそうな顔で少年にそう言う。

 

「しかも財布の中身…100万ベリーも入ってやがる!やったぜ兄貴これでまた酒が飲めるぜ!」

 

「ほう100万ベリーか、これは運がいい」

 

子分は嬉しそうにそう言うと大男はニヤリと笑みを浮かべる。

どうやら彼らは100万ベリーを酒に注ぎ込むつもりらしい。

 

「へへへ、おい糞ガキ!これはテメェみたいなガキには勿体ねぇから俺たちが有意義に使ってやるよ!」

 

男は見下しながらそう言うと財布を大男に手渡す。

 

「やめろ!それは妹たちのための金だ!勝手に取るな!」

 

しかしそれを少年がボロボロになりながらも大男の脚にしがみつき財布を奪い返そうとする。

 

「チッ、しがみつくなゴミが!鬱陶しいんだよ!」

 

大男はそんな少年に対してイラついた顔で怒鳴りつけると空いている反対の足で殺すつもりで少年の背中を踏みつける。

 

「グッ!?…絶対に渡すもんか…ウグッ!?…妹たちの為にも!」

 

それでも少年は痛みに耐えながらも大男の脚を離さずしがみつき抵抗する。

 

「糞が!本当にゴミはムカつくな…おい!ナイフでこいつを刺し殺せ!」

 

「ヘイ兄貴!了解でさぁ!」

 

大男がそう命令すると子分の1人が懐からナイフを取り出して少年に近づく。

 

「へへ、テメェが素直に財布を渡さないからこうなるんだ、悪く思うなよ」

 

そう言い終えると男はナイフを勢いよく振り上げてすぐさま少年の頭目掛けてナイフを振り下ろす。

 

「ひっ!!」

 

少年は殺されるのを悟ったのか恐怖で目を閉じる。

これまでの思い出を思い浮かべながら少年は死を訪れるのを待つ。

 

「ごめん、ちょっと待ってくれる?」

 

しかしそれはある男の声により阻止される。

 

「…………あんたは!」

 

少年がゆっくりと目を開ける。

するとそこには先程の白髪の男、ギルレットが子分の振り下ろそうとした手を握り止めていた姿があったのである。

 

 

 




ちなみに亀は声帯がない為鳴くことはないのですがそれっぽい音を出すことはあります。今回出てきた亀は鳴く設定にしています。現実じゃなくてワンピース世界だからありかなと思っています。
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