ひとしきり泣いて、泣き疲れて、気が付いたら授業の終わりを告げつ鐘の音が聞こえてくる。そんなに泣き続けていたのかと、その事に驚いてしまうも、だからといって教室に戻るのも気まずい。
「どうしようかな……高校に入学してからは、授業、サボった事はなかったのにな」
途方にくれて空を眺めていると、凪夢のスマホから聞きなれた着信音が聞こえてくる。画面を見てみると、予想した通りそこには「光莉」の文字が書かれていた。
凪夢はその電話にでるか迷ったが、結局、電話にでるのをやめた。教室に戻る気はもうどこにもなく、そして、行く当てもなくした彼女はふらふらと何かを求めるように屋上から外へと出ていくのだった。
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話を終えた二人は教室に戻ってきた。しかし、凪夢の姿は教室になく、気になった光莉は直接凪夢に連絡を取ってみる事にした。しかし、コール音はなり続けるも、スマホの向こうから彼女の声が聞こえてくることはなかった。
「凪夢っち、電話にでないな……」
光莉は耳に当てていたスマホを下ろし、画面を見る。何度見返してみても、そこに書かれているのっは「凪夢」の名前だ。
「私、嫌われちゃったかしらね」
寂しげに呟く白音に、光莉は「そんなことはねぇよ」とぶっきらぼうに答える。
「たぶん、そう思っているのは、凪夢のほうだよ。あんな約束してたらさ、あいつの性格だと白音に会わせる顔がないとか思ってんじゃないかな」
「……」
「凪夢はさ、怖がりで、泣き虫で、でもさ、優しくて、温かい、そんなやつなんだよ」
自分の親友の少女のことを、光莉は自慢するように話す。
「あいつ、中学の時にこっちに引っ越してきてさ、中々周りに馴染まないし、いつも教室の隅で本を読んでるようなやつでさ。最初見た時は絶対に仲良くはならないなって思ってたんだけど……」
「けど?」
「私、水泳を長い事やっててさ、中学2年の時に団体戦でレギュラーになってさ。初めての公式戦ってことで練習頑張ってたんだけど、本番に足を攣って、途中棄権。それで、大会は敗退って事になってさ。でも、私はこんな性格だから、周りに心配かけたくなくて、教室では笑ってたんだけど、凪夢だけはそんな私に気付いてくれた」
『泣きたい時に泣けないのは辛くはないの?』
「なんだこいつって思ったよ。でも、それと同時に、ああ、私は泣いても良いんだって。無理、しなくてよかったんだって思ったんだよ。そこからかな、気が付いたら一番の親友になってた」
光莉はそう言ってはにかみながら白音を見た。
「なにそれ? 自慢かしら?」
「そ、私の親友の自慢なのさ。だから、私は、凪夢っちの力になってあげなくちゃいけない。あの子の本当の願いを聞いていたのだから」
「ならどうするの?」
「決まってるじゃん。あの子を捕まえて話をする。まずはそこからでしょ!」
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凪夢たちの通う高校、公立大瀬崎高校は市街地から少し離れたところに建てられており、そこから少し離れた所に広い公園があった。自然豊かな公園は週末は地元民の憩いの場としてにぎわいを見せるが、平日の昼間となると人は疎らだ。
そんな人気の少ない公園の、ひときわ目立つ高台のベンチに凪夢は座っていた。何か悲しいこと、辛いことがあるとここに来たくなるのは、きっとここから見える景色が好きだからだろうと、凪夢はぼんやりと考える。
高台から見える街並みの光は、自分とはかけ離れた遠い幻影。手を伸ばしたい光であっても、いつまでもその一つになれない自分。そんな情けなくて、弱い自分のことが凪夢は嫌いだ。
「……こんな私が、約束、叶えられるわけないじゃん。なんで、約束したのよ」
膝を丸め、そこに顔を押し付けながらポツリと呟く凪夢。誰もいないはずの場所に、二つの影が加わってくる。
「ホント、何かあるとここに来る癖、変わんないわね」
「……光莉」
額に汗をにじませながら、光莉は凪夢を見ながら苦笑した。それにバツの悪い顔をして凪夢は目を背ける。
「凪夢さん……私は」
「私は!」
言葉をかけようとする白音を遮るように、凪夢は大声で叫ぶ。
「臆病者で、泣き虫で、憧れて願う癖になにもしようとしない。あなたと約束を守れるような、ラブライブに行けるような人間じゃないの! こんな私がスクールアイドルなんて、出来るわけないの! だから、だから……」
「そんなの、私だって叶えられる自信、あるわけないわよ」
凪夢の言葉に、白音はあっけらかんとした表情で答える。その言葉に、凪夢もぽかんとした顔を浮かべる。
「全国にどれだけの高校があって、年々スクールアイドルがいる学校が増えているわ。それなのに、どうして自信をもってラブライブに行けるって言えるのよ」
「……でも、なら、どうして」
「なんでかしら。私も、あの時どうしてあんなにすっと言葉が出たのか、よく分からないの。でも、一つだけ言えるとしたら」
白音は胸に手を重ね、そして言葉を紡ぐ。
「きっと、あの約束があったから、私は私のまま、頑張ってこられた。凪夢、あなたは違った?」
「私は、でも、私は……ッ!」
「凪夢っちは、凪夢っちは頑張ってたよ!」
言葉に詰まる凪夢に、光莉はぎゅっと凪夢を抱きしめながら言葉をかけた。
「ごめん、凪夢っちがあの時、なけなしの勇気を振り絞ってくれたのに、私は、何も言えなかった!! 凪夢っちはあの時、踏み出そうとしていたんだよね? 私と、スクールアイドルを始めようと誘ってくれていたのに!」
『光莉、あのさ、これAquarsってスクールアイドルなんだ。私が、大好きで、憧れてて……光莉、これ見てどう思ったかを教えて』
「私は、親友の私はあの時の凪夢っちの気持ちに気付いてあげられたのに、何もしなかった! ただ、自分からはかけ離れた人たちとしか思えなかった! でも、凪夢っちは違ったんだよね?」
「みつ……り」
「私、全然可愛くないし、ガサツだし、向いてないかもしれない。でも、凪夢っちが誘ってくれたんだ」
光莉は凪夢と向き直った。その顔には流れ出た涙が頬を何度も伝ったのが分かるくらいに痕が残っている。けれど、その晴れやかな表情には一点の迷いも見られえない。
「やろうよ、スクールアイドル。凪夢っちが一緒なら、私はきっとできると思う」
「光莉、いいの?」
「……最初に誘ってきたのは凪夢っちじゃん。ごめんね、もっと早く答えてあげるべきだったのに」
「いい、良いの! 私は、私がもっとちゃんと伝えないといけないのに……」
「良い雰囲気のところ悪いんだけどさ」
いつまでも終わらない会話に業を煮やしたのか、白音が二人に声をかける。
「何よ、お邪魔もの」
「あのね、私も凪夢さんと話をしていたのだけど?」
「ご、ごめんなさい白音さん! それで、話したいことって……」
「ああ、そうね、でも私の話も同じよ」
白音は真っすぐな、どこまでも純粋な眼差しを凪夢に向ける。凪夢は、逸らしそうになる気持ちをグッと堪え、白音に向き直った。そんな凪夢に嬉しそうに表情を緩め、そして言い放った。
「約束は違った形になるけれど、凪夢さん。私とスクールアイドルをしてみない?」
凪夢の答えは言うまでもないものだった。高台に泣き声と笑い声が響きわたり、いつまでも消える事は無かった。
というわけで第2話になります。
時系列が混乱しそうなので少しまとめてみると
Aquarsラブライブ優勝
↓
廃校から2年後に凪夢、白音が浦の星女学院に訪れる。(中学2年春休み)
↓
その年に凪夢は長崎に転校(中学2年)
↓
3年経過
↓
白音転校(高校2年生)
といった感じです。正直がばがば時空なので、そのうち修正すると思います。
『次回予告』
スクールアイドルとして活動する事にした3人。正式に部活動登録をしようと生徒会に申請しようと訪れると、すでに大瀬崎高校にはスクールアイドル部が存在していた。せっかくなので入部しようと部室に行くと、そこには一人の少女がいた。「遊び気分で入部されても迷惑よ、出てって!」
次回、「勇気はきっと、君の胸に」
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