あっちこっちに行ったり来たり。
あてがわれた一室をウロチョロしながら俺は必死に策をめぐらせる。
議題は【どうやって今回のお見合いをボイコットないし婚約を拒否するか】だ。
13歳の子どもになぜ婚約者が必要なのか……わからない。
「少し落ち着いたらどうですか?」
俺の眷属悪魔である海樹がそういう。
こいつはあくまでマイペースにスケッチブックに何かを書いている。
「そうだ、お前のセイクリッド・ギアで俺のニセモノを作れば……」
「ダメです、バレます。それに糸だけだと結局無理です」
「そこははホラ……根性で何とか?」
「諦めて逃げたらどうですか?魔王様になんて言われるか知りませんけど」
「ぐにに……」
そう言われ何もできなくなる。
「今日はどこの家だっけ……?」
諦め海樹に今日のお見合いの細工を聴く。
「今日はフェニックス家のご令嬢レイヴェル・フェニックスさん。形式はあちらの嫁入り。珍しく同年代ですよ」
「同年代ねぇ……」
渡された写真を見る。
……正直なところ見た目は好みだ。
綺麗な金色の髪をツインテールを縦ロールに整え、若干ツリ目の瞳には幼さと強い意志を感じる。
「それにしてもフェニックスって……大層な……今回のセッティングかなり手間だったんじゃないか?」
「そう思うならいい加減に婚約結んだらどうですか?」
「嫌だね」
正直なところ何十回もお見合いをさせられうんざりとしている。
理想と合わないっていうのもあるが、どの人も野心をひしひしと感じられたからだ。
なんというか、俺を個人で見てくれそうにない人ばかりだった。
「はぁ……とりあえず行くか」
※※※
「婚約者が決まった!」
シトリー領にある我が家で叔母と双子の妹がお茶をしてる所に乱入し一報を伝えた。
「シキ、どうしました?錯乱するにはまだ若すぎますよ?」
「そうそう。シキが婚約者決めるなんて夢のまた夢みたいなものだし」
「はは、言ってろ言ってろ。俺は父さんみたく奥手にはならねーからな」
実際に俺たちの母親、現魔王のセラフォルー・レヴィアタンは
美談として語り継がれる龍神が転生し、魔王と結婚するというラブロマンスもへったくれも無い現実は、俺たち子どもが反面教師にする程度には影響を及ぼしている。
「いちおう聞いておくけど、誰と婚約したの?」
「聞いて驚け、フェニックスのご令嬢のレイヴェルさんとだ!」
「フェニックス……フェニックスと言えばリアスもフェニックスの三男と婚約してましたね」
そういえばそうか。
……だが、リアスがどうもあの三男と大人しく結婚するか?
と言われてたらノーだな。
「シーグヴァイラ蹴っておいてフェニックスとね……またゴシップが一荒れしそう」
「まあ、シーグヴァイラはなぁ……海樹にトラウマらしきもの植え付けただけで終わったし」
「眷属優先とはシキらしい……」
「エイキ、お前も早く相手見つけたらどうだ?」
「いい人いないしそれなら次期当主のソーナが優先されるべき」
「私にチェスで勝てる相手がいたら認めて上げますよ」
「どこの誰かは忘れたが追い払ったからなぁ……だが、それでいきおくれても知らねーぞ?オバサン」
ガタッと立ち上がったソーナに対して俺は「おぉこえーこえー」と言いながらその場をあとにした。