「さあシキちゃん、北欧に行くわよ☆」
母さんの唐突な提案により俺は眷属を置いて北欧行きの自家用飛行機に乗っていた。
前々から眷属を探すために母さんの友人らしきオーディンのおっちゃんにアピールし続けていた。
その甲斐あっての行動でもあるし、息子娘妹を溺愛する母さんらしき行動でもあるんだろう。
だが急だ。
ジェット機の操縦は父さんがやっているが、だいぶ職員さんたちに謝っていた。
昔から母さんの尻拭いしてる面が目立つ……
この家大丈夫か?
「シキアは2回目の北欧だっけ?」
父さんが飛行機をオートパイロットに設定したのかそう話しかけてくる。
「小さい頃に行ったらしいけど、父さん覚えてる?」
「3歳の時のシキアとエイキをオーディンに見せに行くってセラが聞かなくてね」
やれやれとでも言いたげな顔で母さんの隣に座る。
「だってかわいい子どもたちの顔を知らないなんて人生の3割を損してると言えるわ」
「はいはい」
『リヴィエール・シトリー』
名付け親はなんと先代のレヴィアタンだという転生悪魔の父さん。
元種族は驚くことなかれ【龍神】だ。
なんでも天使、悪魔、堕天使の三大勢力の戦争の時に悪魔サイドの存在として参加し、その過程で一度命を落としたらしい。
昔、
本当に種族が龍神だっていうならそうそう死なないんじゃないの?
と質問したことがある。
それに対する回答は
『サマエルの毒は不死を手放してでも解放されたいものなんだよ。ギリシャの賢者ケイローンの気持ちが痛いほどわかった……実際、地獄のような痛さだったけど』
とのこと。
「両親が仲良くて俺は安心したよ……」
俺のはボソッと呟くように出た発言は無事2人の耳がバッチリ拾ってしまい。
父さんはポリポリ頬を掻きながら。
母さんはフフンと鼻を鳴らし……
「まあ、僕らは結婚までの過程があれなだけでね……」
「私がリヴィちゃんを嫌いになるなんて絶対にありえないわ☆」
両者共にそういった反応が帰ってくる。
……常々父さんとかグレイフィアさんとかの現魔王の配偶者を見ると思うんだが
苦労してるだろうな、絶対。
レイヴェルと結婚しても俺は迷惑をかけないようにしよう……できる限りの範囲で。
あ、ちなみに両親の結婚の原因は母さんの妊娠……ようはデキ婚です。
あくまで母さんの下僕という立ち位置にいる父さんがなかなか首を縦に振らなかったので強硬手段に出たとの事。
……苦労してるな、父さん。
「心配してるところ悪いけど、シキアはセラ寄りになってるから最悪、セラみたいな性格になるよ」
「え……嘘」
「2人で私を蔑ろにしないでー!」
だって母さんでしょ……
既婚者で子持ちで魔王で外交官らしき職なのに
平たくいえば
どこかに大事なネジをほっぽり出してる気がする。
……そんなのになってしまうのか?
やだね。
「そういえばエイキは?」
「エーキちゃんは学校よ。シキちゃんも駒王学園行けばよかったのに……」
「あそこ女子校でしょ?やだ」
駒王学園……たしかリアスやソーナは来年から、エイキは2年前から通っている人間の世界の学園だったか。
たしかほぼ女子校と聞いてるが……
「ソーナちゃんとエーキちゃんが高等部に上がる頃には共学になるわよ?」
「……眷属が揃ってきてから考える」
ここで領地に残してきた眷属のことを思い返す。
まずは俺の初めての眷属
【
兵士二枠の元人間の転生悪魔。
蜘蛛の糸を作るセイクリッドギアを保有していて、俺にとっては弟のようなもの。
そして、常日頃心配をかけている相手だ。
こういう理由は他の眷属……いや、とある猫又のせいでもある。
それが
【
俺の僧侶であり、歳は多分俺より少し上。
悪魔に保護される形で当時日本に行ってた母さんと俺に接触。
そのまま俺の眷属になる形で悪魔社会に参入した。
何が困るって、子作りをせがんでくるところだ。
なんでも優れた遺伝子が欲しいとの事。
……正直悪い気はしない。
だが、貞操はレイヴェルに捧げると決めている。
ので、するとしたら結婚成立後だ。
まあ、魅力的な女性ではある。
……海樹が苦労する原因なんだが。
あと、妹の【
そして最後に――
【リーゼロッテ】
愛称はリゼ
アドラメルクという悪魔の血を継ぐ一族の生まれで俺がスカウトしに行った悪魔。
元から悪魔で、眷属になる時に兵士の駒をひとつ与えた。
悪魔社会についてだいぶ熟知していて尚且つ、被服が上手い。
俺の眷属のドレスアップ担当だ。
そのおかげもあってか、いつも服装で恥をかいたことはない。
以上3名だ。
……だいぶ少ない。
だからこそおっちゃんのとこで眷属探しに行く訳だが……
どうやら既に俺が眷属探しに来訪することが噂と広まっているみたいで、コンタクトを取ってきた相手がいた。
「シキアの眷属候補の子ってアルラウネだっけ?」
「あ、うん。噂を聞き付けてコンタクト取ってきた意欲的な人」
「養分にされないように注意しなよ?」
アルラウネは元来、男性を捕食(色んな意味で)することで生き長らえるとされている。
最近はそういったのは絶滅したりしてほぼいないらしいが、それでも警戒するに越したことはない。
眷属にすることのメリットはだいぶあると踏んで今回の北欧行きでコンタクトを取るつもりだ。
どうやら、相手方は製薬などを生業としているようで、そういった人材は欲しいところだったからだ。
俺の領地は商業や製造を盛んにするつもりだからで、現状は海樹とリゼの糸関連の製品のみ。
それ以外にも有効な手だてが欲しいというものだ。
……あとは狙い目なのは金属加工を得意するらしいドワーフかダークエルフ辺りか?
「海樹がアッチ方面のことはだいぶ制限するからそういった人じゃないといいな……」
※※※
というわけでやって来ました北欧世界。
件のアルラウネさんはオーディンのおっちゃんが用意した異空間に既にいる模様。
おっちゃんたち北欧の神様に用がある母さんと別れ、俺は父さんの案内でその異空間へ向かった。
異空間にした理由としては表立って出来ない会話(まあ、確かに往来で眷属がどうのという会話は控えめに言って不適切だ)や今回は眷属として採用するかどうかの試験のようなものだから、自分の長所を活かすアピールをしやすいようにとの事だ。
「僕は補足説明のためにいるだけだから交渉は全部シキアがやるんだよ?」
「わかってる。自分の眷属ぐらい自分で決める」
俺は父さんの問いにそう答え扉を開け入室する。
そこには新緑の長髪に花のつぼみを模した髪飾りをつけたおおよそ同い年らしき女の子がいた。
……ただ、俺は全体像としてその子を捉えた時ギョッとした。
まさに育ち盛りの体は何も覆い隠すものもなく大っぴらけに晒されており、太ももから下あたりが巨大な花で構成されていた。
前情報としてアルラウネがそういう種族だと聞いてはいたが……
実際見てみるまでわからないものだ。
服という概念が未だに種族全体として浸透していないらしく、少しギョッとした俺を見て何を驚いているのかわからない表情を浮かべていた。
「何か変でしょうか?肌の色も人間や悪魔の方々と大差ないと思うのですが……」
彼女は自分の裸体を一通り確認し更に疑問符を浮かべた。
……まさか文化の壁がここで生きてくるとは。
「いや、服を着ないのだなと」
「……ああ、なるほど。私たちの常識では服は不要なものでしたから」
《私たち》という部分に妙な引っ掛かりがあった。
だが、そう気にすることじゃないだろう。
「だとしたら申し訳ありません。服に該当するものは持ち合わせていないのです」
「謝るほどの事じゃない。眷属に志願してきてくれたんだ。それぐらいはこちらも譲歩すべきだ」
「助かります」
「さて、そろそろ志望動機を聞こうか」
見てくれはまるで色気付いた少年少女のおままごと。
だが、彼女が悪魔である俺の眷属に志願するのはそれなりの理由があるだろう。
「私の種族【アルラウネ】に関してどれほどの知識をお持ちでしょうか」
「……正直なところを言うと伝聞で聞いた程度だ。ほぼ無知に等しい」
「では軽く説明しますね」
【アルラウネ】とは
人型の植物性魔物のことを指し、一般的に人間の女性を模した姿をとる。
大きな花と一体化してる姿をよく描かれ、本体と花は分離することが可能で花には蜜などを蓄えているケースが多い
昔のアルラウネは人間の男性を捕え何らかの手段で養分を搾取することで養分を蓄えていたが
最近の個体は食性も人間に近くなり、それに伴い人間と同じ特性を得た個体も多い。
先程話した花との分離もそのひとつであるとされる。
繁殖は主に男の生物と交わることを手段とする。
「ここまでは宜しいでしょうか」
「問題ない」
種族としての特徴の解説。
これを理解しない者は将来、多種族の主になるのに相応しくない。
「では続けます。私はアルラウネの……そうですね。人の言葉を借りるならコロニーから追放された存在なのです」
「追放?」
「そうです」
親から見限られ勘当されたということだろうか。
「私は集めた蜜と他のものを混ぜ合わせることで多種多様の薬品を作ることが出来ました。ですが、コロニーの仲間たちはこの技術を……浅ましいと蔑み……」
「追放したと」
「……はい」
なるほど、悪魔の旗下につき保護してもらおうと。
「孤立したアルラウネは格好の的です。私たちの根……厳密には脚には万病に効く霊薬の素材となるという逸話があります。根も葉もない噂ですが……それを狙って錬金術師が日夜問わず襲ってくるのです」
「そしてどうしたものかと悩んでる時に俺が眷属探しでこの地域に来ると聞いたのか」
「そうです。志望動機はこのようなもの……自己保身でもありますが……いえ、今はいいでしょう」
居場所のない孤独なアルラウネ……か。
海樹や黒歌の時もこうだったな。
どうやら俺はその手の人物との縁がかなりあるらしい。
「……どうでしょうか」
正直なところ性格に大きな問題がなければ眷属になってもらうつもりだったが、居場所がないと言うのなら保護欲も湧いてくるというもの。
断る理由がまずない。
「ああ、問題ない。君を……あー……そういえば名前をまだ聞いていなかったな」
「そうでしたね。レティシア……と申します」
「そうか、ではレティシア。君を俺の新たな眷属……家族として迎え入れよう」
こうして俺はアルラウネのレティシアを【