フェニックス家息女の許嫁   作:何処でも行方不明

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EP.2

レティシアを眷属に入れた夜。

本来なら悪魔の時間だが俺と俺の眷属はろくに悪魔稼業として契約は行わない。

各種領地で生産し、その製品を取り扱った交易。

それで俺は生計を立てている。

なので夜は特にやることは無い。

 

「レティシア、調子はどうだ?」

「夜は苦手なのですが……いつも感じる気だるさは感じません」

「よし、どうやらちゃんと悪魔になっているようだな」

 

母さんの伝手で借りたホテルの一室。

ふたつのベットがあるスイートルームにて俺たちは話していた。

 

「そういえば今までどうやって寝床を確保してたんだ?」

「主に自分の花に閉じこもったりしてましたよ……ですが、休まるものじゃなかったですね。落ち着いた環境で寝るのは数ヶ月ぶりです」

「なら存分に寝ろ。当分俺は北欧に在住するからな」

「そうですか……ではお言葉に甘えて休ませてもらいます。おやすみなさいませ、主様」

「おう、お休み」

 

ガサゴソとベッドに入り、スヤスヤと寝息を立て眠り始めるレティシア。

どうやら相当今までの生活で疲労が溜まっていたようだ。

 

「……こう見るとやっぱり女の子なんだな」

 

今日のやたら板に着いた大人ぶった喋り方も恐らくは演技だろう。

自分が生き長らえられるかどうかの瀬戸際だったんだ緊張していて当たり前だろう。

 

「さて、俺もやるべきことを……」

 

と言いながらハンドバッグから領地に帰ってから行われる商談の資料に目を通す。

が……

 

「海樹のヤロー……」

 

そこに資料は無く、デカデカと

『ヤスメ』

とマジックペンで書かれてる厚紙があった。

枚数を入れ重みを付けてるあたりタチが悪い。

恐らくは父さんの入れ知恵もあるだろう。

……やることないな。

俺も寝るべきか?

……寝るか。

どうせなら幸せな夢が見れるよう祈って寝るか

 

※※※

 

そして目が覚めた。

朝日が登ったから?

日は出てるがノーだ。

元々そんなに眠くなかったから?

それもノーだな。

原因は簡単。

俺の腕にレティシアがいつの間にか抱きついていたからだ。

それが浅い眠りに入ったタイミングで体が違和感に気が付き脳が起きたのだろう。

だがまあ、この程度で揺らぐような精神構造はしていない。

ごあいにくというべきか

発育のいい眷属の添い寝という点だけで見ると黒歌が何度も仕掛けているからだ。

最近はきわどい格好で迫ることもあるからか、海樹の糸で拘束されたり

一糸しか纏ってない姿(ほぼミイラ)でつるされていることもあるが。

まあ、というわけでうろたえるようなことでは……

ことでは……

 

「……黒歌と違ってレティシアはルークの転生悪魔だったな」

 

戦車の駒で転生した悪魔の特徴は頑健さと力強さ。

ようはその力強さが無意識に発揮され、俺の腕を抱き枕代わりにしているレティシアにより起き上がることができない。

甘い花の香りが漂うベッドの上

まるで俎板の鯉のようになにもできない俺。

さて何をして過ごそうか……

 

「そういえば電話があったな」

 

いつも枕元に置いてある端末を起動、カコカコとボタンを押し電話帳を開く。

一番上には当たり前だが

レイヴェル

その次に眷属が並び、父さん、取引先。

そして最後に母さんの名前がある。

誰に電話したものか……

まず、眷属はない。

そもそも日本で暮らしているのが大半なうえに時差であっちは今から寝るところだろう。

次の候補は父さん。

まあ、しないけど。

朝から両親に連絡するほど俺は両親を思っていない。

同じ理由で母さんもなし。

取引先なんて論外だ。

となると……

 

「ここはレイヴェルにかけるか」

 

悪魔が住む冥界の時間は確か日本を基準にしている。

しかもどの地域でも全く同一の時間だ。

そういう意味ではレイヴェルも今から眠るころだろう。

だが、婚約の際とある約束をした。

それは毎日の連絡を欠かさないこと。

時差があるため正直、約束を守るのが難しそうだったが……

などと思案しているうちに電話が鳴った。

画面に表示された名前は……

 

【レイヴェル】

 

「……!もしもし」

『おはようございます、シキア様。そちらは朝でしょうか?』

「ああ、今太陽が昇ったところだ」

『なら良かったです。お時間よろしいでしょうか』

「レイヴェルのためならすぐにでも大丈夫」

 

本心からの言葉を伝える。

レイヴェルに惚れた理由はほぼ一目惚れみたいなものだが

仲は良好……だと信じている。

 

『そういえばお聞きになりましたか?』

「なにをだ?」

『リアス・グレモリー様の女王がやっと決まったそうです』

 

リアスの女王か……

候補として半分堕天使の人間の少女か神器(セイクリッド・ギア)持ち陰陽師家系の少年だったか。

どちらも適正は女王だけであり、どちらか片方だけが悪魔になるとは聞いていた。

当人の二人曰く『愛する人を守るためなら当然』とのこと

どちらが転生してもいいとは思うし

リアスの問題だからこそ俺はそんなに手を出さなかった。

だが、結果は気になる。

 

「どっちになった、朱乃か?女王は側近だからな、そういった意味では同性の方がやりやすいだろう」

『いいえ、テンドウ・ソウマ様です』

「そっちか。異性が女王か……リアスも蒼真もその気はないのに珍しいな」

『そのあたりは何も……私はエイキ様から聞いただけですので』

「エイキに聞いてもはぐらかすだろうな……まあ、そういうのは余計な詮索か」

『そうですね。互いの戦力について探り合うのはレーティングゲームでもない限り無作法というものです』

「だな。あ、そうだ眷属といえばアルラウネのあの子、正式に眷属にした」

『……そうですか。本日は確かドワーフの方々とコンタクトをとるのですよね?』

「ああ。俺の領地にはまだその手の技術がない。オリジナル性があるのが衣類だけとなると少し分が悪い」

『そのようなお考えならドワーフよりダークエルフの方が貴金属の加工は得意だと小耳にはさみましたよ?』

 

 

※※※

 

「なるほど、ダークエルフという手もあったか」

 

と朝にレイヴェルと行った通話からドワーフではなくダークエルフの職人がいる場所へとやって来た。

ドワーフは特に職人意識が高く、悪魔の眷属になった例が少ない。

だが、ダークエルフはその見た目からか眷属にしようとする悪魔自体も多く、実例もそれなりに上がっている。

 

「ダークエルフの職人街……初めて来ました」

 

レティシアもどうやら初めてのようで目に映るものに興味があるみたいだ。

……まあ歳を重ねた女性なら貴金属のアクセサリーには目を奪われたりすることもあるだろう。

ただ……

 

「その服で来たんだな」

「……?」

 

レティシアは現在、母さんが【何故か】持って来ていた魔法少女服を着ている。

まあ、確かに様になっているしこういう人もいるんだと思ているのかそこまで目を向ける人はいないが……

 

「母さん絶対これしか服がないって嘘だろ……」

 

俺は知っている。

父さんが母さんにまともな服を着せるために常に複数着事務服を用意していることを。

ただ、あの時の母さんの目は新しい玩具を見つけた子どものそれであり、止められるのは誰もいやしなかっただろう。

 

「あ、見てください。銀で作られた剣がありますよ」

「……銀の剣か。儀式用か?」

 

武器としての強度は鉄製のものに比べると格段に落ちる銀は普通は武器には使用しない。

大方、店の技術力アピールのための非売品か、儀式や儀礼用のものだろう。

 

「ふむ、凝った装飾に見事な刀身だ。見てくれだけならどんな防具も斬れるといわれても信じてしまいそうだな」

 

そう呟いた時だった。

いきなり走ってきた少女にガッと腕をつかまれ

 

「旦那!いい目してんじゃねぇか!」

 

と声をかけられた。

 

「不遜な態度の娘ですね」

 

ムッとした様子でレティシアは声をかけてきた少女を見る。

褐色の肌にとんがり耳、そしてその瞳は金色で髪の毛は銀。

この街に多く生息しているダークエルフの少女だろう。

 

「やっっとオレの業物に目を止めてくれる客人が来たぜ!」

「やっと?」

 

よく見るとその少女は腰に銀で作られた鞘に剣を差しており、髪にはこれまた銀の装飾品。

篭手と胸当ては銀製と銀尽くしの装備だ。

凛とした顔立ちと雰囲気から鍛錬を受け研ぎ澄まされたワザを持つようにも見える。

興奮しているのかその顔は少し赤みがかかっている。

 

「な、な、オレの業物もっとみたいだろ?」

 

必死なのかなんなのか赤い顔でブンブンと手を振る。

 

「……まあ、興味はあることにはある」

「オッケー!」

 

が、まあ心配することもある。

例えば……周りの人の目が『かわいそうに……』みたいなものだったからだ。

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