きっとこんな世界感のユグドラシルがどこかにあるはず   作:プロフェッサー餅

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平和な時こそ平和だと気がつけない

 

 

 

 

 

 

沢芽市。それは若者のストリートダンスが流行り、スポーツや子育て支援、就職支援にも力が入っている、最近注目されている近代都市である。

 

 

若気に溢れ、全体に活気もあり、都市でありながら緑にも力を入れているその街は非常に人気が高く、最近は土地代も高騰しつつあるとかないとか。

 

 

市の中央に存在するユグドラシルコーポレーションは、以前までは最新鋭の医療設備を揃える医療機器会社としてその名を広めていたが、今では建築機器、通信機器、家電製品や乗用車など、幅広くの分野を取り扱う一大企業となった。

 

 

ユグドラシルコーポレーションの製品は他と比べると少々値段が張るものの、使用されるパーツの製造から製品の組み立てまでの全てが国内生産、国内組み上げとなっており、性能や質の圧倒的な高さにより絶大な人気を誇っている。

顧客の需要を正確に把握し商品化させるその姿は消費者から「魔術師」と称されることも多く、新商品の発表プレゼンテーションは毎回国内外から大きな注目を集めるビッグイベントともなった。

 

 

ユグドラシルコーポレーションの最も大きな特徴は、その社風や雇用にある。

仕事にダラダラと長い時間をかけることを良しとせず、区切りや切り替えをしっかりと行う社風により、全員定時退社は当たり前。福利厚生に加えて育休や有給休暇の充実。週3日休暇の実装など。現在の国内において一際異彩を放つ雇用形態をしている。

私生活が充実しなければ充実した職務を行うことができない。という呉島社長の意思によるものであり、実際に社員の会社満足度は非常に高く、「ユグドラシルに慣れると他の会社では生きていけない」とさえ言われているほどだ。

傘下の子会社でもその辺の大手企業より遥かに待遇がいいので、求人を出すたびに申し込みが殺到するとうれしい悲鳴が上がっているようだ。

 

 

そして僕、呉島光実はそんなユグドラシルコーポレーションの社長の次男で、ユグドラシルコーポレーション附属高騰学校に通う高校3年生。将来はユグドラシルコーポレーションで兄とともに働き、より良い沢芽市を作るためにがんばることになっている。

 

 

なっているのだが・・・・・

 

 

「だぁ〜、もう!!また出来なかった・・・」

 

 

「はっはっはっはっは!!見事に大失敗だ!!絵に描いたように爆発したねぇ、だがここまで進んだのは素晴らしい!!精進したまえよ光実くん!」

 

 

大学に入るための受験勉強の時期にも関わらず、僕はユグドラシルコーポレーションの専属博士である戦極凌馬さんのラボに出入りして研究を行なっている。

研究の内容に関してはちょっと詳しくは言えないんだけど、一大プロジェクトの製品開発を行なっている。とだけ言っておく。

 

 

そしてアフロ頭になりながら大笑いしているこの人こそが戦極凌馬さん。みんなはプロフェッサー凌馬と呼んでいて、彼に世話になっている人は非常に多く、他ならぬ僕も相当お世話になっている。

兄さんと一緒に今のユグドラシルの中枢を担っていると言われており、よくクマを作ることでも有名だ。クマが濃くなると兄さんやシドさんにお説教されたり、兄さんに物理的に眠らされたりしている。この間は3日くらいぶっ続けで寝ていたっけ。・・・・・・・落ち着いて考えると何やってるんだろうかこの人。

 

 

「もう!プロフェッサー、そんな笑わないでくださいよ!!」

 

 

「はっはっはっはっはっは!!笑わずにいられるかい?見事なアフロだぞキミも・・・・・・・ふっくっくっくっく・・」

 

 

「まったく・・・、プロフェッサー、お腹空いたんでさっさとご飯行きましょう。」

 

 

「そういえばもうそんな時間か。せっかくだから初瀬くんにも声をかけよう、僕らは髪を整えないとね。」

 

 

「そうですね、さっさと整えて初瀬くんおすすめのラーメン屋でも行きましょう。」

 

 

凌馬さんは兄さんの大学の同級生で、昔から色々とよくしてくれている。

ある意味多少ぞんざいに扱っても許してくれるのはそういうところがあるのかもしれない。でも叱るときは叱ってくれる頼れるお兄さんだ。

 

 

ちなみに初瀬くんは僕の中学生の頃のクラスメートだ。中学卒業後は高校へ行かず不良になって暴れていたらしいんだけど、何ていうのかな、更生したらしい。

 

 

「なぁ、俺も行っていいか?昼ラーメン。」

 

 

「うわぁっっ!!」

 

 

「おいおい、驚きすぎだぜ光実よぉ。おじさん傷ついちまうだろー?」

 

 

び、びっくりした・・・、シドおじさんか。

 

 

話しかけてきたハットを被った人はシドおじさん。昔チンピラだったらしいんだけど、当時からめちゃくちゃ子どもウケがよく、今はちゃんと仕事もしている。ちなみに初瀬くんを更生させたのはシドおじさんだったりする。

 

 

あれ、でもシドおじさんがこの時間にユグドラシルコーポレーションにいるなんて珍しいな・・・何かあったのかな。

 

 

「やぁシド。もちろん構わないさ、一緒に行こう。今は野郎4人で昼ラーメンを楽しもうじゃないか!!」

 

 

やっぱり何かあったんだな。凌馬さんが「今は」って言ったってことは、後で何かある。まぁでも言う通りに、今は昼食を楽しもう。何事もメリハリと切り替えだからね。

 

 

 

 

 

——————————————————

 

 

 

 

 

思い切り昼食を堪能した僕たちは、午後イチで大会議室に集合していた。

凌馬さん、今はプロフェッサーだな。プロフェッサーが神妙な顔をして口を開いた。

 

 

「さて、午後に急に呼び出してすまないね。」

 

 

「仕方あるまい、状況が状況だ。」

 

 

プロフェッサーにまず答えたのは僕の兄さん。呉島高虎だ。今日も凛としていてかっこいいなぁ高虎兄さん。

 

 

「今日が美奈ちゃんの修練の日でよかったわ。」

 

 

「ホントですね、でもこの7人が集まるってことは、まぁ予想はつきますけど・・・」

 

 

次に答えたのが耀子さんと美奈ちゃん。

耀子さんは普段はプロフェッサーの秘書をしていて、美奈ちゃんは高虎兄さんの秘書をしている。2人とも秘書にとどまらず格闘術にも精を出しており、美奈ちゃんは耀子さんに弟子入りしてるらしい。僕もうかうかしていられなそうだ。

 

 

「まぁ正直なところ、この予想は外れて欲しいけどな・・・」

 

 

そしてこの怠そうに言ったのが初瀬くん。

初瀬くんとはフードファイトの戦績が拮抗している。今は負け越してるんだよな・・・。

 

 

「そう言ってくれると助かるよ。それで今日みんなに集まってもらった理由だけど、僕よりもシドから直接話をしてもらった方が良いかな?」

 

 

正直言うと僕もあらかたの予想はついている。

この7人が集められるなんて、宴会や飲み会や打ち上げやバースデーパーティーや・・・・あれ?割と遊んでふざけてばかりに感じる・・・おかしい。

 

 

「おいおい丸投げかよ。まぁいいぜ、みんな落ち着いて良く聞いてくれ。」

 

 

だけど、シドおじさんからの報告は、

 

 

悪い意味で僕らの予想を裏切る内容だった。

 

 

まさか、こんなに早く事態が進んでしまっているなんて。

 

 

これは急がないといけないかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

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〜沢芽市・メインストリート〜

 

 

沢芽市ではスポーツが非常に発展しており、多くのスポーツがリーグ化までしている。スポンサーのみならず集客やネット配信によってもチームに収益が入る仕組みにもなっていて、ほぼ全てのチームがスポーツで収入が賄えている。

ストリートダンスもそのうちの一つで、今の沢芽市ではサッカーに次ぐ人気を誇っており、連日多くの立見客や見物の観光客でメインストリートが賑わっている。

 

 

そのメインストリートで踊るストリートダンスチームの一つに、浮世絵をプリントしたパーカーがトレードマークの「鎧武」というダンスチームがあり、最近になって人気が上昇している。

 

 

そして今日は、1ヶ月に一度のリーグ順位発表の日でもあった。

 

 

「いよっしゃあああああ!!」

 

 

「やったぜみんな!ランキング7位!メインストリートへの路上出店の権利も獲ったぜ!」

 

 

「ファンのみんなのおかげだね!みんないつも応援してくれてありがとー!!」

 

 

鎧武は男女仲が睦まじいチームで今ではファンも多いが、現在のストリートダンスリーグでは最も若い新規チームであり、結成当初は逆風も強かった。

男女混合チームが当時珍しかったのもあり、リーグ下位のチームを中心に邪魔や嫌がらせを受けることも多かったのだ。

しかしチーム鎧武は挫けず、諦めなかった。その成果が結果として現れたのだ。嬉しくないはずがない。

 

 

そして鎧武メンバーがファンたちと喜び合っている最中、鎧武へ向けての人混みがどんどんと割れ始めた。

モーゼの海のように割れた人混みの間から、一拍を置いて威風堂々とした集団が現れ、鎧武の面々に話しかけた。

 

 

「チーム鎧武。よくここまでのし上がってきたな。」

 

 

彼らはチームバロン。ストリートダンスリーグのトップに君臨する絶対王者だ。チームバロンの影響力は凄まじく、沢芽市のローカルCM3本と契約するなど、ストリートダンスチームでは最も成功しているチームでもある。

そのリーダーである駆紋戒斗が、No.2のザックと、No.3のペコを引き連れて現れたのだった。

 

 

「鎧武!思ってたよりも早かったな!」

 

 

「お前は素直に祝えんのか、ザック」

 

 

「僕はもうちょっと時間かかると思ってましたぁ。」

 

 

「ペコも言葉を選べ。捻デレか貴様は。」

 

 

なぜバロンが鎧武のところにいるのか、それは少し遡る。

鎧武は下位リーグ時代から、どんなに汚い手を使われても、どんなに邪魔をされても、決して同じ穴に落ちることをせず自分たちのスタイルを貫いていた。その姿を見てバロンは鎧武に同盟を持ちかけたことがあったのだ。チーム同士が同盟を組むことは珍しいことではなく、お互いの切磋琢磨による実力向上の他お互いのチームのイメージ向上にも効果が見込めるため、新規チームに早々に目をつけて同盟を結ぶのは謂わば既存チームの常套手段でもあったのだ。

 

 

実はバロンだけでなく、当時から鎧武のそのまっすぐな姿勢はリーグのトップ常連チームたちから高く評価されており、複数チームが鎧武との同盟を検討していたのだが、バロンが真っ先に先行する形となった。

結局のところ「今の俺たちじゃ同盟とは名ばかりで、バロンにおんぶに抱っこになってしまう」「俺たちはいつかバロンと肩を並べて、ライバルとして踊りたい」として同盟は断ったのだが、トップチームのリーダーを前にしてのその心意気をバロンのリーダーである駆紋戒斗に大きく気に入られ、同盟とは行かずとも友好的な関係を築くことになったのだった。

 

 

言うなれば今回は、バロンは友を祝いに来たのである。

 

 

「待っていたぞ、葛葉。お前たち鎧武が上位リーグで俺たちと肩を並べるこの時を。」

 

 

「待たせちまったな、戒斗。」

 

 

この男、葛葉紘太。チーム鎧武の発足者で、今では戒斗の良き友だ。

 

 

「このままバロンに追いついてやるぜ!」

 

 

そして紘太の幼馴染でチームのリーダー、角居裕也。

 

 

「戒斗もいつもフルーツの差し入れありがとね!みんなで美味しく頂いてるよ!」

 

 

そしてチームの副リーダーの高司舞。実は戒斗の幼馴染だった。

 

 

「美味しくて当たり前だ。なにせ俺が選んでいるんだからな。」

 

 

「あ〜、戒斗が舞とイチャついてる〜。」

 

 

「「イチャついてない!!」」

 

 

「まぁまぁ、それよりもバロンのベースで祝いの準備をしてるぜ、今夜は打ち上げだァ!」

 

 

「姉ちゃんが腕によりをかけて、いっぱい作ってるよ!!」

 

 

バロンは全員が鎧武の上位チーム入りを祝福していた。

 

 

「サンキューバロンのみんな!でも、、、約束、忘れてないよな?」

 

 

「忘れるものか、この日をずっと楽しみにしていたんだからな!!」

 

 

「だよな!!」

 

 

「紘太ァ!見せてやれぇ!!」

 

 

「よっしゃ!いけぇ戒斗!!」

 

 

「俺はポ○モンか!! まったく、、、よし!」

 

 

「「いくぜ/いくぞ!!」

 

 

今ここに、鎧武とバロンのエキシビジョンダンスバトルが始まった。

 

 

それは夜遅くまでメインストリート全体を巻き込んだ大盛り上がりとなり、沢芽市のトレンドにも上がることになった。しかし双方揃ってダンスバトルに夢中になりすぎたせいでバロンのベースでのディナーに遅刻してしまい、全員正座でペコの姉さんに怒られたというのはまた後日に明かされた秘密である。

 

 

 

 

 

 

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〜???〜

 

「ふむ、順調そうだな」

 

「あぁ、とっても順調さ。うまい具合に餌にも引っ掛かった。」

 

「木が釣り上げられるなんて皮肉なもんだねぇ。ユグドラシルさんよ・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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