キラ「マーダー!」
「……」
台所から、キラーの幼い声が聞こえてくる。オレは無視を決める。
キラ「マーダー?」
「……」
キラーの呼び掛けを、オレは無視する。読んでいた本を顔に近づけ、目の前の文章だけに集中する。パピルスは俺の様子を見て察しているのか、何も言ってこない。
キラ「ねぇちょっと」
ぼふっという音がして、キラーが隣に座ってきたことをオレは理解した。黙殺に耐えられないのか、キラーは貧乏揺すりをし始める。はっきり言って、揺れが邪魔である。
キラ「ねぇってばー」
「あああ、もううるせぇな! なんだよ」
耐えられなかったのはこっちだった。本を乱暴に閉じるオレの横で、キラーは「反応したー」と嬉しそうに言った。
声や容姿は可愛く見えるが、彼がやっていることはオレと同じ。キラーという名前にふさわしく、EXPを得るためなら容赦なく殺す奴だ。
キラ「呼んでも全然反応しないから心配したよ?」
「うるさいから無視してただけだ」
キラ「えー、ひどいなあ」
キラーはむすっと頬を膨らませる。この前、「なんで僕って幼女って言われるんだろ?」とか言っていたが、原因はそれだろう。
「で、用件でもあるのか?」
オレは乱暴に閉じた本をまた開く。紙面が少しだけ折れていた。
キラ「特にないけど、構ってほしいなあって」
「……」
キラ「ちょっと! また黙殺する気!?」
「昨日かまってやっただろ」
キラ「確かにそうだけどさ……」
キラーは構い足りなかったのかばたばたと両足をばたつかせる。子供かよ、こいつ。しかし、そこが可愛いと思ってしまう俺は、こいつに毒されているのかもしれない。
「……仕方ねぇな。来いよ」
オレは自分の膝をぽんぽんと叩く。むすっとして頬を膨らませていたキラーだが、俺を見るなり喜んで立ち上がり、オレの膝に座る。視線が交わる。
奇跡というべきか、オレとキラー以外は出掛けているので、見つかることはないだろう。
キラ「やったー」
「明日はしてやらねぇからな。満喫しろよ」
キラ「とかいってどうせやってくれるんでしょ?」
「うるせぇ」
ふいっと顔をそらすと、キラーはクスクスと笑った。そんなキラーをオレは横目で睨む。いつの間にか、パピルスはいなくなっていた。
キラ「ねぇ、マーダー。こっち向いてよ」
「なんでだよ」
キラ「だって、フードが邪魔で顔見えないもん。今どんな顔してるか気になるなあ」
塵がかからないようにフードを深く被っているが、そうしておいてよかった。
キラ「こっち向いてってばー」
「はあ……分かったよ。向けばいいんだろ、向けば」
オレは外した視線をキラーに向ける。キラーは視線を合わせるなり、オレの首に両手を回した。さらに密着する。
「何してんだよお前……!」
キラ「キスしていい? ダメ?」
それが目的かよ。
「お前なあ……」
キラ「いいじゃん、別にこれが初めてじゃないんだからさ。それとも別のほうがいいの?」
キラーは妖しく目を細めながらオレを見下ろしてくる。ソウルが馬鹿みたいに脈打つのが分かってしまう。
「はあ……。したいならすればいいだろ……」
キラ「んじゃ、遠慮なく」
口に感じた柔らかい感触。オレとキラーの口が重なる。
永遠のようで、一瞬だった。
すっと口が離れる。オレは口を開いた。
「深くしないのか?」
キラ「今度、ね」
キラーはオレを抱き締めながら言うのだった。
いつか練習しないとね、深い方
キラーくん妖艶説……。
我が家のキラーくんは幼女です。