あと、後書きがやりたい放題です。
「失礼……します」
ノブを回して部屋に入る。ベッドの上で足を組むナイトメアの姿が目に入った。機嫌がよさそうに見えるのは俺の気のせいなのだろうか。
メア「よく来たな。まあ、座れよ」
ナイトメアは床を指差した。闇の帝王と呼ばれているだけあるのか、ナイトメアは他者を自分より下に座らせることが多い。
それは俺に限ったことではなく、キラーやマーダー(もちろんナイトメアの命令を聞くわけがない)、果てには自分の弟であるドリームでさえ下に座らせている。
ただ単に他者を見下しているのかもしれない。彼に『平等』なんて言葉が似合うわけないのだ。俺はナイトメアの足元に正座をする。
「何のご用件でしょうか?」
朝ごはんを終えた直後のこと、ナイトメアは俺に「午後になったら部屋に来い。時間はお前に任せる」と半分適当に言って、自分の部屋に戻っていった。
先輩の命令(拒否権はもちろんない)に逆らえるわけもなく、俺はこうしてナイトメアの部屋に来ている。
メア「ちょっとしてほしいことがあるんだが」
そう言うと、ナイトメアの背中から四本の触手が出てきた。それは他者の拘束から、自分を大きく見せるためなど様々で、硬度も自由に変えることができるらしい。
「触手? あの、何をしろと?」
メア「毛繕い」
「はあ?」
俺の口から呆けた声が出る。毛繕いは猫とか犬に対して使う言葉なのでは?
メア「毛繕いならぬ触手繕いってやつだな」
「俺がやるんですか?」
そう言うと、ナイトメアはぽかんとした表情を浮かべる。触手がすーっと背中に仕舞われた。その表情は本来、俺が浮かべるもののはずだが?
メア「お前以外に誰がいるんだよ?」
「いやいやいや! 触手をどうやればいいんですか!?」
メア「普通に撫でればいいんだよ」
「いやでも、普通に先輩が撫でれば……」
撫でればいいじゃないですかと言おうとした俺の口が止まる。顎に当てられたナイトメアのスリッパが、俺の言葉を溶かしていく。
メア「今は機嫌がいいんだ。機嫌を損ねないうちに命令を聞いた方がいいぜ?」
ナイトメアを口角をあげながらそう言った。この人、機嫌を損ねると面倒くさかった記憶しかない。機嫌を直すために俺がいろいろしていた過去の記憶が脳裏をよぎる。
「……分かりました」
メア「分かればいいんだよ。ほれ、こっちに来い」
ナイトメアは自分のベッドの布団をぽんぽんと叩く。それを見て、俺のソウルがどくどくと脈打ち始めた。こんなこと、滅多にないのに。よほど機嫌がいいようだ。
俺は立ち上がり、ベッドにそっと乗る。ふかふかしていてとても柔らかい。
メア「足を伸ばせ」
「あっ、はい……」
言われるがまま、俺は足を伸ばす。すると、ナイトメアは俺の膝の上に腹這いになった。
体温が上がっていくのを、嫌でも感じた。体が震える。ナイトメアの背中から触手が出てきた。撫でろと言わんばかりに動く。
メア「ほれ」
「えっ……と、失礼しますね……」
俺はナイトメアの触手に手を伸ばし、触れる。何故だろう、猫とか犬の体毛を撫でている感じがする。普段はねちょねちょという液体の音がしていたはずなのだが。
メア「どうだ?」
「なんか……猫とか犬を撫でている気分なんですが……」
メア「なんだ、撫でたことがあるのか?」
「猫なら……」
地上に出向いたときに、野良猫がこっちにすり寄って来たので撫でたぐらいだ。
メア「そうか」
「撫でたとは言っても、あまり撫でていませんけどね」
部屋が沈黙で満たされる。しばらく撫でていた俺は、ナイトメアが嬉しそうにしていることに気づいた。自分のポジティブで気持ち悪いとか言わないでほしいものだが……。
ふと、触手の付け根に触れたとき。
メア「んっ……」
小さな声が聞こえた。その声を、俺は聞き逃さなかった。
「先輩、今……」
メア「なんだよ」
「いや、今ここ……」
俺はもう一回触手の付け根を触る。
メア「あっ……ん……」
もしかして気持ちいいのか……? ちょっといじってやりたいとは思うが、相手は先輩(上司とも言う)なので判断に迷う。というか、行動次第で殺されるよな、俺……。
分かってはいつつも、触りたくなる。いっそのこと聞いてしまうか。
「付け根って気持ちよかったりします?」
メア「んなわけ……こらっ、やめろっ」
やめろとは言っているが、嫌そうに見えない。このままいじってやろうかと考えてしまう。
メア「クロスっ……、止まれっ……あっ……!」
「気持ちいいんですか?」
メア「そんな、わけっ……」
とか言いつつ触手を引っ込めないじゃないか。
メア「ああもうっ、やめろっ!!」
「い"だっ!?」
いきなり触手が伸びて、俺はひっぱたかれる。頬に鈍い痛みがはしった。ナイトメアは素早く俺から距離をとる。
「痛いですよ! そこまでしますか!?」
メア「俺の触手で遊ぶからだろ!」
そう言ったあと、ナイトメアはハッとした表情になった。俺は痛む頬に手を当てる。
メア「でも……。案外、悪くなかった……かもな」
「えっ? 案外、悪くなかった?」
メア「はあ!? なんで聞こえてんだよ!?」
ナイトメアは俺を指差しながら怒鳴る。しかし、顔は真っ赤ではっきり言って可愛い。
「いや、聞こえましたけど……」
そう言うと、ナイトメアの背中からまた触手が伸びてきた。それは俺の体に巻き付き、持ち上げて締め上げ始める。
「いだだだだ!? 先輩、首は駄目です……って痛い痛い痛い!!」
メア「今のはなかったことにしろ、いいな!?」
もはや殺気すら籠った目でナイトメアは俺を見た。触手は容赦なく首を閉め続け、俺の視界がぼやけていく。
「わか……り、まし……たっ」
ぼとっと投げ捨てられた。
メア「……次やったら命はないと思えよ」
「……はい」
とか言って、殺さないんでしょ。
そう思いながら、俺は頷いた。
新年早々に可愛い先輩が見れました。
書いてて思ったのはクロメアも良きということですね。個人的にはメアクロが好きなんですけど、クロスくんが攻めでもいいかなと思いました。
さすがメア様の嫁((小声