【UT_AU】雲外蒼天【短編集】   作:花影

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ここのメア様とシャッター様は同居してます。


13.蜜柑(Nightmare,Shattereddream)

テーブルの上のかごに伸ばされた手が、またひとつ蜜柑(みかん)を取る。

 

「おい」

 

俺は蜜柑を取った本人を見た。当の本人は不思議そうにこちらを見ている。

シャッタードリーム。本来生まれるはずのない存在。彼は俺の弟であるドリームではあるものの、彼とは別人らしい。体は黒く、俺とよく似ている。

 

シャタ「どうした?」

「それは何個目だ?」

 

呆れながらそう言うと、シャッターは自分の近くに置かれた蜜柑の皮を数え始める。

 

シャタ「七……八……九個目だが」

「食い過ぎだろ」

シャタ「そうか?」

 

シャッターは蜜柑の皮をめくり、千切って一つずつ口に運んでいく。テーブルの上のかごの蜜柑はもう片手で数えきれるほどに減っていた。

 

「そのうち黄色になって元に戻るかもな、お前」

 

俺は体を伸ばす。とても気持ちがいい。

 

シャタ「それはないだろうな」

 

蜜柑をもにゅもにゅと咀嚼しながら、シャッターは否定する。既に半分ほどが消えていた。炬燵(こたつ)に蜜柑は最高の組み合わせらしいが、いったい誰がそんなことを思い付いたのだろうか。

 

シャタ「たかが蜜柑ごときが、私を封じ込めることは出来ないだろう」

「そうだな」

 

俺も蜜柑を手に取り、皮をめくる。

 

シャッタードリームは黒いリンゴをドリームが食べた末路だ。彼にだけは俺のようになってほしくなかったのに、あいつは『分かち合い』と言って食べてしまった。

 

今頃、何をしているのだろう。

 

シャタ「それに、ドリームは『分かち合い』と言っていたからな。あいつは兄さんの痛みをよく知っていると思うよ」

 

兄さんと言われた瞬間、俺の顔が少し歪む。ドリームからは『メア』と呼ばれていたのに、シャッターは俺のことを『兄さん』と呼ぶ。

 

姿は変わっていても兄弟なのだから、ちゃんと名前で呼んで欲しいものだが、シャッターは恥ずかしいのか俺の名前で呼ぼうとしない。

 

「そうか……。ドリームは何をしているんだ?」

 

そう言うと、シャッターは服の上から自分の胸に手を当てた。

 

シャタ「……寝ている。私と意識を交換するまでは寝ていると決めたらしい」

 

二重人格みたいだ。シャッターは胸から手を離し、蜜柑をもにゅもにゅと咀嚼する。

 

シャタ「兄さんは?」

「俺か?」

 

俺も胸に手を当てた。眠る昔の俺の姿が脳裏をよぎる。

 

「俺も同じだ」

シャタ「そうか……。はあ、食べた食べた」

 

ようやく満足したのか、シャッターは静かに手を合わせた。

 

「何事も適度が十分だ。あまり食べ過ぎるんじゃないぞ」

シャタ「分かってる。少し寝るよ」

 

そう言うなり、シャッターはカーペットが敷かれた床に転がる。

 

「皮どうすんだよ」

シャタ「あとで捨てる。じゃ、おやすみ……」

 

すぐに微かな寝息が聞こえてくる。どんだけ寝つきいいんだよこいつ。俺が近くにいるからか?

 

「あとで捨てるってお前……」

 

どうせ忘れるだろ。この前、捨てるのを忘れて寝てたし。仕方ないので俺はシャッターが食べた蜜柑の皮をゴミ箱に捨てた。

 

眠るシャッターを見る。服装を見て、俺はハッとした。そういえば、ノースリーブだった。この真冬にノースリーブとは……。部屋が暖かいとはいえどうにかしている。

俺は指を鳴らしてタオルケットを出して、かけてやった。

 

「風邪引くだろ、馬鹿」

 

シャッターの頭を撫でながらそう言う。彼は穏やかに笑っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

また買いにいかないとな、蜜柑

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