【UT_AU】雲外蒼天【短編集】   作:花影

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02.真夏のアイス(インエライン)

「あっつ~……」

 

手に持ったうちわでパタパタと扇ぐが、涼しいというには程遠い。目の前……というか僕の周囲にはたくさんのAUたちが浮いている。

 

僕の仕事はAUを守ること。手助けをしたり遊びに行ってみたり等々、のんびりと過ごしている。なぜAUを守るのかって?

 

そりゃ……守護者にはちゃんと対立する存在がいるんだよ? 破壊者が、ね?

 

「……これで扇いでも涼しくないなあ。あっ、そうだ」

 

僕は背中に背負った筆を取り、すっと筆で色をつける。僕なりの、移動の仕方。塗料さえあれば僕はそれをポータルにしてどこにでもいける。これを使って他のAUに行くのも容易い。

 

破壊者は……元気にしてるかな? 僕は塗料の中に入った。

 

 

 

 

 

 

 

塗料からちょっとだけ顔を出す。灰色のクッションに背を預ける彼の姿が見えた。振り返っていないということは気づかれていないのかな。僕は塗料からそっと抜け出す。

 

エラ「……何しに来タ」

 

あっ、バレてた。

 

「遊びに来たよ?」

 

僕は彼の隣に座る。露骨に嫌な顔をされた。この世界には彼とクッション以外なにもない……はずだったのだが、エラーの近くに小型の扇風機が置かれていた。いつ買ったのだろうか。でも、ラッキーだ。

 

エラ「嘘つケ。今日ハ暑いカラな。どうセ、涼もウとして来たンだろ」

「いいじゃんかー。うちわで扇いでも暑いんだしさー」

 

僕は頬を膨らませる。エラーは青いマフラーに黒いコートを羽織ったいつもの姿だが、暑そうに見えない。

 

エラ「だいタイ、なンで扇風機を買わなカったンだ?」

 

エラーはざまあというような表情で僕を見る。分かってるくせに。

 

「……画材買いすぎた」

 

僕は体操座りをして膝に顔を埋める。

 

エラ「ソレガ原因ダな。ま、自業自得ッテやつダ」

 

きっと、エラーは薄笑いを浮かべながら言っているのだろう。出来るなら画材を買い漁ったあの日の僕に説教がしたい。

だいたい暑くなるとか聞いてないし。僕は気まぐれな気温に文句を言う。

 

「ねえ、エラー」

 

僕は顔を上げる。これは賭けだが、当たるだろうか?

 

エラ「ナンだ」

「アイスないの?」

 

僕はアイスに賭ける。エラーはチョコレートも好きだがアイスも好きだったはず。あればいいのだが。

 

エラ「あー…チョッと待ってロ」

 

そう言うと、エラーはグリッチを出して手を突っ込み始めた。僕はわくわくしながら待つ。

しばらくグリッチに手を突っ込んでいたエラーが何かを取り出した。その手には白色の棒アイスが握られている。よっしゃ。

 

「あっ、あったんだね! ありがとうエラー!」

 

僕はその棒アイスに飛び付こうとしたが_

 

「……えっ?」

 

すっとかわされた。

 

エラ「確かニアイスはあル。だがナ……お前ニあげるタメのアイスではナイ」

「えぇそんなー! ずるいよー!」

 

僕は棒アイスめがけて何度も飛び付くが、エラーは腕を動かして僕の手をかわしていく。指先に棒アイスの包装が当たっても、握れなかった。

終いには、

 

「……酷い」

 

ショートカット(近道)で距離を離されてしまった。

 

エラ「誰ガあげるッテ言ったんダよ」

「うぅ……エラーの馬鹿ぁ……。酷いよお……」

 

半分涙目になりながら訴える。すると。

 

エラ「ああア、もうウルセェな! あげレばいいンダロ、あげれば!」

 

痺れを切らしたのかは知らないが、エラーが戻ってきた。彼はクッションに背を預けると、包装を破り始める。

 

「え、いいの?」

エラ「あア。ただシ、一口ダケナ」

「やったー! エラー大好きー!」

エラ「ハァ!?」

 

大好きという言葉を口に出した瞬間、エラーは大きく体を震わせた。言い終えてからあることに気づく。これ、フリーズしちゃうのでは、と。

しかし、フリーズはしなかったようだ。エラーはため息をつくと、一口棒アイスをかじる。

そしてそのまましゃくしゃくと咀嚼し始めた。

 

「……ちょっと、まだー?」

 

もしかして、さっきのは嘘? そう思った瞬間_。

 

「んっ!?」

 

口を塞がれた。えっ、これって……。

突然のことで思考が回らず、僕は何をすればよいのか分からなかった。すると、

 

「んんんっ!?」

 

僕の口に何かがねじ込まれる。それはエラーの舌だと僕は理解する、してしまう。ないはずの心が跳ね上がり始める。

 

「んっ、んー!!」

 

舌と舌が交わる中で、冷たいものが僕の口に流れ込んできた。それを確認したのか、エラーは口を離す。銀色の糸が僕たちの口を繋いだ。

 

エラ「甘いカ?」

 

僕は咄嗟に俯く。さっきよりも体温が跳ね上がっている。熱でも出してしまいそうに。

エラーから渡されたアイスを僕はしゃくしゃくと咀嚼する。少しどろりとしているのはあまり気にしないことにする。

 

「……うん、甘いよ。でもさ……」

 

僕は顔を上げる。恥ずかしさよりも、怒りたかった。

 

「いきなり口移しする必要あったの!? 僕、すごくびっくりしたんだけど!!」

 

今思っていることを言葉にしてエラーにぶつける。エラーは腕を組みながら笑った。

 

エラ「お前がいきナリ大好きって言うノガ悪いんダよ。まあ……それを言わなクてもしてタと思うけドナ」

「……ばーか……」

 

そんなところも、僕は好きだよ。

なんて、とても言えない。

 

 

守護者のくせに俺のところにきて、笑って。

ちょっと悪戯をしてやれば、頬を膨らませて、怒って。

そんなところも、俺は好きだ。そして、お前は俺が好きだろ?

な、インク。

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