とある日のAnti-void。大きなクッションに背を預けた俺は黙々とマフラーを編んでいた。何に引っ掛かったのかは知らないがつい最近、俺が首に巻いていたマフラーが大きく破けていたからだ。
こういうときはインクに直してもらうのが一番早いのだが、あいつはいろいろと面倒なので自分でマフラーを編むことにした。あいつはいろいろと面倒くさい。主に性格とあいつの頭が。
そういえば今日はインクが来ていない。きっとこのまま何もなく平和に……。
「エラー!!」
だよな、そんな気はしていたよ。盛大に舌打ちが弾ける。噂をすればなんとやら、守護者のお出ましのようだ。
「んダようるせぇナ」
「えー!? せっかく遊びに来たのにひどくない!?」
「お呼びジャねぇョ」
俺はタワーのように積まれた本の一冊を取って、インクに投げる。どうか当たるようにと祈った。
「うわっ!? ちょっと、危ないよ!」
マフラーを編んでいるので見てはいなかったが、どうやら当たっていないらしい。くそっ、顔面に当たっていればよかったのに。またしても舌打ちが弾ける。
「知るカ。お呼びじゃネェから帰レ」
俺は虫を払うように手を振る。
「えぇ……。嫌だよ、言いたいことがあるもん」
「は? 言いタいこと?」
インクは俺がぶん投げた本を持って隣に座ってきた。お呼びじゃないと言っているのに帰らなかったのはそれかよ。俺は少し距離を取る。触ってほしくないからだ。
「どうせろクなことじゃナイだろ」
「いやいやいや! 僕を何だと思ってるの!?」
「うるせェ奴」
「ひどいっ!!」
インクは頬を膨らませて怒る。守護者のくせに子供みたいだ。
「もー……、ひどいよエラー……」
あっ、こいつ泣きそうな表情をしている。こいつ、俺が泣かれることが嫌いなのを知っていてこういうことを。腹が立ってくる。気づけばマフラーを編んでいた手が止まっていた。
「わかったワカった、俺が悪カッたから用件を話セ」
「本当に!? ありがとうエラー!!」
なんでこう毎回俺が謝らないといけないんだ。たまにはこいつに土下座してもらいたいものだ。さっきの泣きそうな表情とは一転、太陽のように眩しい笑顔を見せたインクは俺の体に抱きついてくる。
「アアあアあああアあああ!?」
案の定、体がビリビリと音を立てる。もしかしたらフリーズするかもしれない。そうなればラッキーだ。フリーズすれば早くても一時間は再起動するのに時間がかかる。
しかし、こういうときに限ってフリーズすることはなかった。くそが。
「あっ、ごめんつい」
「……覚えトケよ」
別に今攻撃してもよかったが面倒なのでやめた。こいつが忘れた頃に仕返しするとしよう。
「デ、用件はナンだ?」
「えっとね……。ソウルレスの僕が言うのもおかしいと思う……けど」
インクは俯いた。それから一呼吸置いて、俺の目をまっすぐ見る。
「僕は、エラーのことが好き!!」
インクの口から放たれた意外な言葉に、俺は呆然としていた。思考が回らなくなる。しばらくの沈黙のあと、思考がはたらき始める。
「……返事……は?」
インクは不安そうな眼差しで俺を見てくる。何と返そうか。少し考えた俺はひとつの答えに行き着く。
「コレだ」
俺は迷いもなく、右手の中指を立てたのだった。
「ちょっと!? せっかく人が告白したのに『○ね』はないでしょ!?」
「そレ以外返すことがネェよ」
なんかギャグ多くない? どうも花影です。
とりあえずインエラでギャグを。こんな会話してる姿が想像できる。
そういえばお気に入りが増えてました。あと、高評価もいただきました。謎の通行人δさん、ありがとうございます!