地面に寝転がり、上を見上げる。真っ白な天井が目に入った。ああ、広い草原の下で太陽の光を浴びながら寝転がってみたかったものだ。もう叶うことはないであろう望みに、俺は小さなため息をつく。
この世界は退屈で仕方なかった。俺は、Gルートを完遂しようとするニンゲンを、両手の指で数えきれないほど殺してきた。殺してきたというよりも、返り討ち……の方が正しいのかもしれない。
とにかく、俺はニンゲンを何度も何度も返り討ちにしてきた。ニンゲンの決意とやらが折れて壊れるまで。しかし、あるGルートでのことだった。俺は負けた。あの頃は油断していたな、と思う。
攻撃を受けた体は塵となって消えてしまう。完全に消えて無くなってしまう前に、俺はこの場所へと飛び込んだ。
俺は自分の手を見る。真っ白な天井に負けず劣らずの白い手。この体は、このセーブ画面から抜け出した途端、消える。白い塵となって。
俺が生きるためにはここにいるしかない。しかし、セーブ画面というのは退屈で仕方なく、俺が避難したときは何もなかったので適当に家を作ってそれから家具を作って置いてみた。
……が、それは一時的に暇を潰せるだけであって、今となってはやることがない。やはりゲーム機器も作るべきだったかな。あのときに渋ったのはどう考えても家具を作ることしか眼中になかったからか。
「よう、ジェノ」
また何か作ろうかと考えていたそのとき、頭の方から声が聞こえてきた。少し低めの声、あいつか。
「……まーた来たのか? 死神というのは暇なものなのだな」
俺は身を起こして振り返る。そこには黒くて丈が長い衣装を身に纏い、大きな鎌を持ったSansこと、リーパーが浮いていた。
リーパーは少し前に会ったSansだ。ReapertaleというAUのSansで、彼に触れたり触れられたりしてしまうと命を落とすという。
それはニンゲンに限ったことではなく、植物でさえ命を奪ってしまうらしい。こんな物騒な死神が世の中にはいるものだな。まあその死神サマは暇のようだが。
「死神っていうのはいつも暇だぞ」
「適当に刈りに行けばいいじゃないか」
俺はソファーに座る。勢いよく座ったせいか、少しだけ体がバウンドした。
「行ったら行ったで怒られるんだよ」
リーパーは不機嫌そうに顔を歪めて向かいのソファーに座る。人の
「そりゃ退屈なことで」
「だろ? それにオレは友達と言える奴が少ないからな」
「なんだ、ぼっちか」
「ひでぇなあ……」
お前が自分から『友達と言える奴が少ない』って言ったからだろうが。ため息が漏れる。命の神様とかならまだしも人の命を刈る死神に友達がいるのはおかしいのでは?
「んで、何の用なんだ? 俺は呼んだ記憶はないぞ」
俺は足を組む。
「ああ、呼ばれた記憶なんてないさ。これをやろうと思ってな」
リーパーは自身のポケットに手を突っ込み、何かを取り出してテーブルの上に置いた。それは小さな袋だった。赤いリボンで結んであり、中にはお菓子らしきものが見える。
「……お菓子?」
「そっ。お前たしかクッキー好きだったろ?」
「まあそうだが……」
そういえばこの前、こいつに『好きなものはなんだ?』って質問されたな。あのときはよく分からなかったので『クッキー』と適当に回答したが、まさか持ってくるとは。
「兄弟が作りすぎたとか言っててな、オレにくれたんだよ」
「お前は食べないのか?」
「……どうにも甘いものは好きになれねぇんだよなあ」
リーパーの顔がまた歪む。こいつは甘いものは好きじゃないのか。また一つ、こいつのことを知ることができた。
「ま、そんなことだ。せっかくだし適当に食べといてくれよ、兄弟が悲しむからな」
「はいはい、あとで食べるよ」
「そうか、そりゃよかった」
リーパーはソファーから立ち上がる。
「そんじゃ、オレは帰るかな」
「はいよ。気をつけて」
見送る気はないので俺はひらひらと手を振る。リーパーはすっと片手だけを上げて姿を消した。一人だけになる。
「さあて……」
リーパーが帰るのを見送った俺は、袋を手に取って紐をほどく。チョコレートの香りが微かに匂ってきた。一枚取って口に運んだ。サクサクしていて、美味しい。リーパーの兄弟は料理が上手いんだなと確信した。
「お返しどうしようかな」
待ちました? ということで初ジェノくんと初リーパー様です、はい。
この二人の性格がよく分からなくてとりあえず私から見た二人の感じで書かせていただきました。
あと、UAが1000を突破しました! ……マジかよヤバイなあ。皆さん、いつも見ていただきありがとうございます。