闇が覆う部屋のなか、私はモニターに映し出されたものを見ていた。それは、長く延びる回廊にて、ニンゲンに殺されるSansの姿。
疲れて眠った一瞬の隙を狙った赤い刃が、彼の腹に赤い傷を残す。彼は緩慢に立ち上がり、口を開いた。
「それじゃあ……オレは……グリルビーズにでも行くかな……」
血が滴る口を開き呟くようにそう言うと、ずるずると足を引きずってニンゲンの横を通りすぎていく。そして、倒れると同時に蒸発するような音がして、彼は塵となった。
それを見届けたニンゲンは導かれるように回廊をゆっくりと歩いていく。あの先は……アズゴア王がいるところ……。
この世界の住民はほぼ消えた。そろそろこの世界も終わりを迎えるようだ。私はモニターを消して自分の手を見る。この手も、体もいずれ消えるだろう。この世界と共に。ああ、最後に出来ることはないものかと部屋を見渡すが何もない。
黙って終末を迎えるとしよう。……何処からかナイフの振り下ろす音が聞こえてきた。数秒後、またしても蒸発するような音。終わったようだ。
目が覚めた。暗い部屋だった。私はいつもここにいるなと呟いた。どうやら完遂し終えたあとにまたリセットを行ったようだ。モニターを開くと、家の中でぐーたらと過ごすSansの姿が目に入った。ああ、彼はいつも変わらない。
続いて。フラウィーがいる花畑を映し出す。そこにはフラウィーに話しかけるニンゲンの姿があった。何かが足りない気がして私は首をかしげる。何か……そう、ニンゲンの……大事な……ソウル?
まさか、ソウルと引き換えにこの世界を作り直したのか? もう一度やり直すために? どうせ壊すだろうに、作り直してどうするんだ? 疑問で埋め尽くされ、はっとなる。私はこんなことをしている場合か?
再びモニターに目をやる。そこには遺跡のモンスターを殺すニンゲンの姿が映っていた。壊して直して壊して。まるで破壊と想像だ。
まだニンゲンはトリエルの家までたどり着いていない。間に合うはずだろう。私はモニターを消してとあるモンスターの場所へと向かった。
とある日のスノーディン。部屋に置かれたベッドに寝転がっていたオレは、ただならぬ気配を感じて身を起こす。何かがこっちに向かってきているようだが……。ニンゲンではないことは確かだ。
「お邪魔するよ、Sansくん」
部屋中に視線を巡らせていたその時、エラー音と共に声が聞こえてきた。ああ、あいつか……。久々の再会のようだ。オレはパーカーを羽織りベッドから降りる。
ドアの前に、ふわりと現れた男。顔はひび割れ、何を身に纏っているのか分からない。時々現れるグリッチが彼の姿を歪ませている。
「よう、久しぶりじゃないか。研究者さんよ?」
「……君は相変わらずな生活のようで」
「Heh、元からさ。それで? 何か用があって来たんだろ?」
Gasterはよほどの事態がないと来ないはず。そのGasterが来るということは何かあるだろう。……まあ、なんとなーく分かるのだが。
「流石、分かっているようで何よりだ。さて、話に入ろう。君は前の時間軸で死んだのを理解しているかね?」
前の時間軸。顔が歪む。一つ前の時間軸はGenocide……。つまりは虐殺ルートなのだが、それでオレは死んでいる。
「ああ、理解しているさ。今でも鮮明に覚えているよ」
舌打ちが弾ける。本当はこんなクソみたいな記憶なんざいらねぇのに。
「まあそれはどうでもいい。Sans、君はこの世界の真実を知っているかい?」
「真実?」
「ああ、そうだ。この世界は何度もリセットされている。例え平和主義者のルートだろうと虐殺ルートであろうと……。ニンゲンは何度も何度もリセットを繰り返してこの世界を直している」
「ああ……そうみたいだな」
またしても舌打ちが弾けた。リセットがあるんだからあの回廊で諦めればいいものを、決意を悪い方面に使うニンゲンはそれをしようとはしなかった。
「今回もすでにリセットされている。そして今回進むであろうルートは……間違いなくGenocideルートだ。ニンゲンは遺跡のモンスターを殺してLOVEを得ている。いずれ、トリエルも殺されるだろう」
あのおばさんが住む遺跡の先はオレたちが住むスノーディンだ。遺跡のモンスターやトリエルを殺したことを知ったパピルスはまた止めに行くだろう。
「その先はスノーディン……HehHeh、最悪じゃないか。また警告しなきゃならないのか」
骨が折れる。審判を下すときよりかはマシだが……。
「ああ。それに、ニンゲンにはソウルがなかった。恐らく世界を作り直す代わりにソウルを失ったのだろう。ソウルレスというものだ。このままじゃ……お前はまた審判を下すことになる」
「止めろってか?」
「そうでもあるな。だが、一人で止めるのはきついことだろう?」
あのときの記憶がまた蘇ってくる。いくら殺しても、ガキは戻ってきた。何度も何度も……。オレがどんだけ諦めろと言っても、あのガキには届いていなかったようで。
「骨が折れるな」
「そこでだ。私も同行させてもらうよ」
は? オレは目を見開く。体を失ったGasterが? いやでも体を失ってるからダメージは通らない気がするがいくらなんでもいきなりすぎやしないか。
「……まさかそれを言い出すとは思わなかったよ」
「まあ。私もただただ黙って見ているのは面白くないのだよ。ニンゲンの力……気になって仕方ないのでね」
この科学者が。
「……もう時間はないようだよ。君の弟が殺された。次は……」
「言ってる時間はないらしいな。行くっきゃないか」
最後の回廊前。もうオレの友達は死んだ。あのおばさんも、パピルスも……。怒りを心に押し込み、息を吐いた。
最後の、息を。
地獄に落としてやるよ、クソガキが。
出来た……(白目)。Gasterさんのキャラ付けがよく分からなかったのですが科学者っぽく書いてみた結果があれです。はい。
謎の通行人δ様、ご提案いただきありがとうございました。
3月25日(木)追記
Sans→Classicに変更しました。どうやらSansとClassicはどちらも同じようです。