とある日の昼下がり。オレは台所に立ってオムライスを作っていた。
「あれっ、マーダー先輩?」
チキンライスの上に卵を乗せようとしたその時、背後から声が投げられる。オレは首だけ回して振り返る。そこには白と黒の制服を着たSansが立っていた。右目は血のように赤く、その下にはZのような傷がついている。
「あー……誰だっけ。……白黒?」
「クロスです」
白黒……じゃなかった、クロスは湿度の高い目線をこちらに向ける。パピルスが「兄ちゃん! 仲間ぐらいは覚えなきゃダメだぞ!」と言ってきたのでオレは軽く返事を返しておいた。……クロスが首をかしげていたのは気にしないことにする。
「珍しいですね、何を作っているんですか?」
「オムライス。ホラー、何も食ってねぇし」
俺は二階のとある部屋の扉を見る。ホラーは基本的に食ったら寝るを繰り返しているが、あまりにも空腹になると部屋から出てきて冷蔵庫を漁ったりしている。
最近ではナイトメアの触手を食べ物と勘違いしているのか、斧を持って追いかけ回している。まあ、八年間も飢餓に耐えていたらしいし。
「そうなんですか」
「とりあえず、朝食も一緒に持っていく。ああ、それと……」
オレは棚から、ホラーの分のあんパンを取る。
「今度、料理の作り方を教えてくれないか? オレ、下手だからよく分からねぇし」
そう言うと、クロスは頭をぶんぶんと縦に振った。……首取れそうだな。そう簡単に取れるわけないけど。
「もちろんです!」
二階に上がったオレはホラーの部屋の扉を開ける。そこには。
「おーなーかーすーいーたあー」
ベッドから身を起こして大声を上げるホラーの姿があった。……うるせぇ。フードで軽減はされているが、それでもかなりうるさい。ていうか起きてたなら出てこいや、わざわざ作ってやったんだぞ。料理下手なオレが。
「うるっせぇな。ほら、飯だぞ」
「……ほへ? あ、おふぁよ……」
部屋の電気をつける。ホラーは眩しいのか目を細めた。……口の端からよだれが垂れている。おまけに腹の音まで聞こえてくる。にしても寝すぎなんだよなあ。
オレは皿とスプーンをテーブルに(割れない程度に)叩きつける。
それを見たホラーはのそのそとベッドから降りてスリッパを履くと、導かれるように椅子に座る。
いただきますを言うこともなく、ホラーはスプーンを持ってもぐもぐとオムライスを食べ始める。我ながら形がぐちゃぐちゃだが、ホラーがもっとぐちゃぐちゃにしていくので実質問題ない。
「上手いか?」
「ふふぁい」
何を言っているのか分からない。見ると、ホラーはリスのように頬を膨らませている。そりゃまともに聞き取れるわけない。しかしなんだろう、ちょっと可愛い……?
オムライスを五分ほどで食べ終えたホラーはあんパンの袋に手を伸ばしてそのまま口へ__。
「って、おまっ!」
あんパンの袋を取り上げる。ホラーは不機嫌そうな表情を見せた。
「……お腹空いた」
「それは分かってる。だけどな、袋ごと食べるバカがどこにいんだよ」
袋は食べ物じゃないのに。オレはため息をつきつつもあんパンの袋を破って中身をホラーに差し出す。怪訝そうな表情を浮かべていたホラーだったが、あんパンを貰うなり、まるごと口に放り込んだ。オレはあんパンの袋をゴミ箱にぶちこむ。
しかしまあ、よくあんパンを丸ごと食べて平気だよな。少しずつ消えていくあんパンを眺めながらオレはそう思う。
「……ふう」
「満足したか?」
そう言うと、ホラーは自分の腹を擦り始めた。
「……まだ入る」
返事をしようとしたオレは、ホラーの口元に飯の粒がついていることに気づく。
「おい、ホラー」
「……んー?」
緩慢にこちらを見たホラーの頬に触れ、口元にキスを落とす。と同時に米粒も取ってやった。
「……ほえ?」
「米粒、ついてたぞ」
そう言うと、ホラーの顔がみるみると赤くなっていった。
なんだ、可愛いところあるじゃねぇか。
個人的には天然(?)なホラーくんがいい。どうも花影です。
天然というか食べることだけに夢中でその他のことはあまり知らなさそうな感じです、我が家のホラーくんは。
そろそろ設定とか書いたほうがいいのかな……?