あとくっそ中途半端です。
「……ということで、俺は少しの間出掛ける」
俺の目の前にいる人物は腕を組ながらそう言った。黒い体、液体が垂れて機能を失った右目、シアン色に輝く、目。
そう、俺のセンパイであるナイトメアだった。……上司とも言う。
俺とナイトメアは同居している。居場所を無くした俺を、ナイトメアが引き取って(?)くれたのだ。最初はわけが分からなかったものの、今となってはここが俺の家だったのではないかと思うぐらい馴染んできている。
「お供しましょうか?」
「いや、別にいいさ。ちょっと友人に会いに行くだけだ」
「まあそいつが俺のことを友人と思っているのかは知らんがな」とナイトメアが呟いたのを、俺は聞き逃さなかった。
しかし珍しいものだ。彼が出掛けるときは決まって俺も巻き添えになるのだが。俺が必要ないくらい安全だと言うのだろうか? それとも、自分一人の力で平気とでも言うのだろうか……。
「平気に決まってるだろ。あと、俺が出掛ける場所は地上じゃない」
心で思っていたことをピッタリと当てられ、体が跳ねる。ナイトメアの方を見ると、彼は明らかに不機嫌そうな表情を見せている。そういえばこの人心が読めるんだった。
「そ、そうですか。いつぐらいに帰ってくる予定なんですか?」
とりあえず反らす。それを分かっていたのかナイトメアは湿度の高い目で俺を睨み付けると、目を閉じた。十数秒後、ナイトメアはゆっくりと目を開ける。
「晩飯までには帰ってくるよ。それまで頼んだ」
「……分かりました」
ナイトメアは満足そうに頷くと、俺に背を向けて歩き始める。ドアに手をかけたその時、なにかを思い出したのか、ナイトメアはこちらに振り返る。
「そうだ、言い忘れていたことがある」
「なんでしょうか?」
俺は首をかしげる。ナイトメアの顔が険しくなった。
「ドリームには気を付けろよ」
そういうと、ナイトメアはドアを開けて外へと出ていってしまった。ドアが閉まる音が空気を揺らし、やがて静寂へと還っていく。
「……ドリーム先輩?」
意味が分からず、かしげた首の角度が大きくなった。
ソファーに埋もれ、ぼうっと天井を眺めていたときだった。不意に風が吹いたような気がして、俺は身を起こす。誰もいない……気のせいか?
そう思ってもう一度ソファーに沈もうとしたその時だった。突然部屋が明るくなり、風が吹き始めた。気のせいじゃなかった! 俺は勢いよく身を起こす。
やがて、部屋全体が目も開けていられないほどに輝き始め、俺は両腕を顔の前で交差させながら目を閉じる。Crossだけにって? うっさい。
「やあ、こんにちは」
俺は交差させた腕を下ろして目を開ける。そこには黄色の衣装に身を包んだSans、ドリームが笑顔を浮かべて立っていた。彼の足元には黄色の魔方陣が。……なるほどポータルにして飛んできたのか。
「ああどうも。お久しぶりですね」
ナイトメアの弟であるドリームと会うのは、いつぶりだったか。頭の隅で考えるが、思い出せなかった。
「何かご用でしょうか? センパイなら出掛けてますが」
「んー、特にないけど遊びに来たよ」
ドリームはソファーに座る。来客が来たからにはもてなすのがマナー。俺はソファーから立ち上がり台所に行こうとした……のだが。
「だーめ」
ドリームの腕が俺の腰に回される。あっ、と思った頃には遅く、俺はドリームの膝の上に背を向けて座っていた。
「ちょっ……!?」
「やっぱり成長してないよね。なに? 成長期終わっちゃった?」
煽るようにそう言われる。というか29歳で成長期とかあり得るわけがない。顔が歪んだ。
「遠回しに小さいって言わないでくださいよ」
「本当のことじゃん」
ドリームの吐息が近づいてくる。夢だと思いたいが、はっきりと聞こえてくる。何されるんだ俺……?
彼に背を向けて座っているので後ろが見えない、怖い……。
「でもね、身長が低いっていうのはボクからすればラッキーな方なんだよね」
ふと、首に何かが当たった気がした。無意識に体がはねる。……これって、服に手をかけられてないか?
「どういうことですか……!」
「あれ? 分からない? 本当に君は純粋だよね」
嫌な予感がしてきたので身動ぎしてみる……が、状況は変わらない。
「こういうことだよ」
ぺろり。舐めるような音と共に、何かが体をはしる。俺の口から「ひゃいっ!?」という情けない声が漏れた。
……もう一度だけ成長期来ないかな。
はい中途半端。
このあとはご想像にお任せします、夢が広がりますね(ニッコリ)