【UT_AU】雲外蒼天【短編集】   作:花影

34 / 55
32.Please call(メアシャタ)

最近悩み事がある。

 

「兄さん」

 

シャッターが俺の名前を呼んでくれない。

 

「なんだ?」

「今日はおもしろいことがあったんだ。聞くか?」

 

シャッターはソファーに座って足を組んだ。俺はなぜか顔を反らしてしまう。

 

シャッターが俺の名前を呼んでくれないのは今に始まったことではない。彼が生まれて同居し始めた時から、『兄さん』呼びは始まった。それが何十年と続いて、今に至る。

 

彼と同居し始めて分かったのは、彼がどこかの破壊者並みにツンデレということ。理由もなしに抱きつくことが俺にはあるのだが、その度に冷たい発言を受けている。「やめろ」と言われることも珍しくない。だが、俺はやめない。可愛いから。

 

「……兄さん? 聞きたくないのか?」

「聞くぞ。すまん、少し考え事をしていた」

 

シャッターは不思議そうな表情を浮かべながら、「そうか」と言った。俺は他人の心が読めるが、彼は読めるのだろうか? 仮に読まれていたとすれば……。いや、ないか(ただしシャッターがポーカーフェイスだと面倒だ)。

 

「で、今日は何があった?」

 

本題に入るように促しながら、頭の隅で今日の晩飯を考えることにした。昨日はカレーだったな。

 

「いつも通りさ。堕としたよ」

「そうか、ご苦労さん」

 

オムライス? オムレツ? それとも、和食?

 

「そのなかに、一人の子供がいたんだ。そいつは、親と一緒にいた」

 

シャッターは俺の方を向くことなく口を開く。視線を追ってみると、ただの白い壁だった。顔が歪む。ソウルに黒い渦が巻き始める。晩飯を考えることはやめた。

 

「とても眩しかった。私は思った。それを引き離したらどうなるかと。そして、子供が離れた隙に親に手をかけた」

「どうやって?」

 

この質問は癖になってしまっている。結果よりも、どうやって殺したのかが気になってしまう。即死か、それともなぶり殺しか……。

 

「まずは周りの人間を殺して四人だけしかいないようにする。もちろん死体の後始末なんてしてないから、匂いで気づく。空は暗くなり、やがて光が見えなくなる。そこから、親を拘束して子供が帰ってくるのを待ったんだ」

 

ああ、彼らしい。仮に俺がそこに向かうとすればそうしていたかもしれない。

 

「おそらく異変に気づいたんだろうな。子供が帰ってきた。そこで目の当たりにした、親が拘束されていることに。子供は親の名前を呼ぶが、彼らは反応しない」

 

何故だと思う? シャッターに質問される。考えるまでもなかった。

 

「喉笛を潰したから」

 

そう言うと、シャッターは満足そうに頷いた。けれど、こっちを見ようとはしない。なんでだよ。見てくれたっていいだろ。俺は、お前に……。

 

「何度呼んでも反応してくれない、子供は泣いた。ああそう、喉笛を潰したのは事実だがそれに加えて……」

「シャッター」

 

もう我慢ならない。俺は話を遮って、名前を呼ぶ。「なんだ?」と言ってこちらを向くこ彼の姿が見えた瞬間__。

どさりと押し倒す。一瞬だった。

 

「え……あ、に、兄さん?」

 

流れるようにシャッターの両手首を押さえる。押されられた彼の頬が薄い黄色に染まっていくのを、見逃すはずがなかった。

 

「シャッター、お前は何かが足りないな?」

「何か……?」

 

こりゃ恥ずかしい思いをさせなきゃならないようだ。そうでもしないと俺が満足できない。すっ、と顔を近づけてキスを落とす。

 

シャッターの体がびくりとはねた。僅かに空いた口の隙間に舌をねじ込み、絡ませる。ぴちゃぴちゃという水音と、少しの甘い声が部屋に静かに響いた。

 

適当なところで口を離してやると、彼の頬は見事に黄色で色付けされていた。唇を舌で舐めとり、味を口の中に運ぶ。少し塩っぽかった。

 

「はっ……はあっ……にぃ、さっ……」

「これからお前に課題を与える。……俺の名前を呼んでみろ、そうしたら解放してやらんこともない」

 

自然と口角が上がっていた。シャッターは荒い呼吸を何度も繰り返す。優越感がソウルを満たしていく。彼の開いた両手に、自らの両手を重ねて指同士を交差させる。まるで、恋人みたいに。

 

「……メア……」

「違う。俺の名前、忘れたわけじゃないだろ?」

 

顔の横で低く囁いてやると、シャッターの体がまたはねた。甘い優越感、疼いていたソウルを満たすには充分すぎる。

 

「ないと、めあ……ナイトメア……」

 

くすりと、笑みが漏れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ようやく呼んでくれた。




生 き て ま す 。
ということで二週間ぶりにどうも、花影です。リアルが多忙で更新がめっちゃ遅れました、すみません。
リクエスト箱は消しました。ノートに書き出したら以外とネタがありましたので。枯渇してきたらまた作ります。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。