【UT_AU】雲外蒼天【短編集】   作:花影

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後半R-15です。


34.酒は人を呑む(エライン)

5月のとある日。自分の家であるAnti-voidで、俺はクッションに埋もれながら電話をしていた。電話の主は、闇の帝王と呼ばれて恐れられているナイトメアだ。

 

『いやぁ、あのときのお前の顔と言ったらなあ』

 

スマートフォンの向こうから嘲笑うような笑い声が聞こえてくる。あのときの記憶が蘇ってきて、俺は顔をしかめた。

 

 

 

 

 

 

 

今から数ヶ月前のこと、俺はある人物に恋をしていた。自分とは正反対の立場なそいつに惹かれたからかもしれない。くだらないAUたちを守るそいつと何度も戦うたびに、心に咲いた恋の芽。

 

それは枯れることなく成長を続け、いつしか俺を困らせることとなった。思うたびに、考えるたびに苦しくなって、クッションを泣き濡らしたことだってあった。こんなことは人生で一度もなかったのだ。

 

そんな日々を送っていた俺は、何を思ったのかナイトメアに相談した。迷っていた俺に対して、奴は。

 

『募らせるのは苦しいだけだぞ。告白してみろよ。安心しろ、残骸はちゃんと拾ってやるから』

 

と、言ってきたのだ。そのあと、俺は心を寄せていた相手に告白した。まあこれが受け入れられて、晴れて結ばれたってことだ。

 

そのときの俺はナイトメアから見れば滑稽な表情だったらしく、相談した話が広まり、俺はしばらくの間いじられることとなったのだ。あの野郎、人の恋話を広げやがって。

 

 

 

 

 

 

 

 

『今でも記憶に残っているぞ。ぶっ……ふふっ……ハハッ!』

「ざけンナこのクソ野郎!! お前ガ広げタせいでコチとらいじらレルことになったンダぞ!」

『まあまあ、いいだろ? 晴れて守護者サマと結ばれたんだしな。そのまま末長くイチャイチャしてろよ、破壊者サマ』

 

くたばれやクソが。

 

「……てメェ、マジで覚えてロヨ」

『おー、怖い怖い。あー……そういえば、小筆に会ったか?』

 

小筆……。脳裏に、スカーフを巻いたとある守護者の姿が映し出される。インクサンズ、全AUの守護者。そして、俺の恋人。俺とあいつはいろいろ違う。価値観も、『設定』も……。

 

「いや……最近会っテねぇヨ」

 

最後に会話をしたのは確か……一週間前だったはずだ。最近は忙しいのか、インクはAnti-voidを訪れていない。まさか俺が出向けとか言うんじゃないだろうな。

 

『へぇ、恋人のくせに会ってねぇのか? 今頃どうなってるだろうな』

 

向こう側から伝わる不穏な空気。寒くもないのに背中がぶるりと震える。

 

「……んだヨそのいイ方。まさか、何カしたんじャないだろウナ!?」

『さあな? 気になるなら会いに行ってみればいいさ』

 

またしても嘲笑うような笑い声が聞こえてきたところで、俺は乱暴に電話を切った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「インク!!」

 

Doodle Sphere。すべてのAUに繋がる空間で、インクの作業場所兼家。彼はここからAUへと移動している。久しぶりにここを訪れたが、柔らかな風も、ほんのりと光る地面も、何も変わっていない。

 

Anti-voidからグリッチを使ってここに来た。インクの名前を呼ぶが、反応はない。そもそもここにいるという確信はないのだ。クソッ、ドリームに聞けばよかった。後悔が生まれる。しかし、後悔に浸っている時間はない。

 

ナイトメアのあの言い方は、とても意味深だった。まさか、倒れていたりなんか……。その考えを頭蓋骨からはね飛ばそうとするが、否定はできない。あいつはAUを守るという役目がある。自分の生き甲斐のためなら体なんて惜しまないのだ。まったく、不死身は不自由なものだ。

 

ふわふわと浮く扉を勢いよく押して部屋の中に入る。筆やらスケッチブックやら散乱していた。部屋中に漂う匂いに、俺は顔をしかめた。この匂い、酒か。

 

酒に弱いのを知ってるくせにまた飲んだのかあいつは。忘れっぽいにも程がありすぎる。インクの頭に拳骨でも食らわせれば少しマシになるだろうか? なんてことを考えていた俺は、ベッドの上に横たわる物体を見つけた。近寄ってみる、予想通りインクだった。

 

「ありぇ~、えりゃ?」

 

呂律が回ってない。苦笑せざるを得なかった。

 

「久しぶリ……っテ挨拶してル場合じゃネェナ。なにしタんだよお前」

「見りゃわかりゅよ~」

 

いや、分かるけどさ。至るところに酒の瓶が落ちているのはどうなんだよ。

 

「えへへ~えりゃあ~」

 

淡い虹色に染まった顔で、インクは俺の名前を呼ぶ。こりゃ一杯飲んだじゃ済まされない。そもそも至るところに酒の瓶が落ちているんだ、一杯なわけがない。

 

顔が近づいてきたので頬を軽くつまんでみる(接触に対する恐怖はあるが、インクに触れることは平気だ)。インクはふにゃあと笑った。骨のくせに餅のように柔らかいのは気にしないことにする。……酒臭い。

 

「ん~きしゅしたい~」

「いイぞ」

 

ベッドに上がり、インクを押し倒す体制になる。そこから彼の首と後頭部に両腕を回し、顔を近づけると、カツンという軽い音が響いた。一週間ほど会っていなかったんだ、堪能しなきゃもったいない。

 

無防備に空いた口の間に舌を滑らせてインクの舌を絡めとる。少しばかりの甘い声、ソウルが甘く締め付けられたような気がした。インクも、弱々しいが俺の体に腕を回して応えてくれている。

 

それが嬉しくて、インクの頭を優しく撫でてやる。もともと酒で力が抜けていたんだ、口を離したころにはふにゃふにゃになっているだろう。

 

「はぁっ……えりゃあ……気持ちいっ……もっとぉ……」

 

口を離してやると、物足りないのか体を揺らしながらインクはそう言う。その目は蕩けきっていて、瞳孔には桃色のハートが浮かんでいる。改めて見ると、かなり色っぽいな。スカーフは首を隠せてないし、サスペンダーは片方外れてるし。きっと酒で体温が上がっているから少し外したのだろう。完全に誘っているようにしか見えない。

 

「もっとしてよぉ……はやくぅ……」

「欲しイのカ?」

「うんっ……欲しいのぉ……」

 

それが聞けて満足だ。もう我慢する必要もないしな。俺はインクのスカーフを引っ張り、彼の目にそっとのせて頭の後ろで交差させる。

 

「えりゃあ……好きぃ、好きだよぉ……!」

「俺もダ……。愛してル、インク」

 

インクの頬にそっと、キスを落とした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

酒なら小筆が『飲みたーい』とか言ってたから一緒に飲んでやっただけだぞ。まあ、あいつが先に潰れたけどな。byナイトメア




インクくん受けが美味しいですモグモグ
ということで一週間ぶりにどうもこんにちは、花影です。なんでですかね、エラインだとだいたいインクが誘ってるんですよねえ。メアインはメア様ががっつり攻めにいくんですけども。まあ美味しいから大歓迎なんですけどねモグモグ
※モグモグうるさくてすみません。

リクエスト(提案)箱つくったのであらすじに載せておきます。
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