?「クーロースー!」
「うぉわっ!?」
背後から聞こえてきた幸せそうな声。俺が振り返る直前、それは俺の首に手を回した。金色の手袋……まさか。
「どうもこんにちは、ドリーム先輩」
そう、俺の背中に抱きついてきたサンズはドリーム。ポジティブな感情のガーディアンで、ネガティブな感情のガーディアンだったナイトメアの弟。ナイトメア曰く永く生きているらしいが、年齢は教えてもらっていない。
ドリ「うん、こんにちは。久しぶりだね、元気にしてた?」
「ええ、元気にしてましたよ。ナイトメア先輩も元気です」
ドリ「へぇ、元気だったんだ。今、ボクが来てるから元気じゃなくなるかもね。ふふっ…」
頭上から、妖しげな声が降ってくる。俺より身長が高いドリームは、兄のナイトメアと対立している。それは今に始まったことではないらしい。
今俺たちがいるのは闇AUの一部のサンズ(俺も含む)が住む世界。奇跡的にキラーたちはいないものの、これを見られたら少なくとも半年ぐらいはネタにされかねない。
……ここは俺の部屋だし、まあ、バレないか……。
ドリ「にしても、クロスって小さいから抱きやすいんだよね。落ち着くなあ……」
ドリームは優しく俺を後ろから抱き締める。小さいと言われ、俺はむすっとなった。
「小さいってなんですか。俺そこまで小さくないと思うんですけど」
ドリ「いーや、ボクからしたら小さいほうだよ。試してみる?」
俺の答えを待つ間もなく、ドリームは体を動かして俺のベッドに座る。それに引っ張られた俺もベッドに座る形になっ……てない。
気づけばドリームの体の中にすっぽりと収まっていた。
「え、ちょっ、先輩!?」
ドリ「うん、やっぱり小さいね」
トクントクンと、ドリームのソウルが脈打つ音が聞こえてくる。ああ、生きてるんだなと改めて思った。
いや、そんなことよりも。
「あのっ……先輩……離してもらっていいですか……?」
ドリ「え、嫌だけど」
速攻で切り捨てられた。
ドリ「クロスの部屋に来る前に見たけど、どうやら他のサンズたちはいないっぽいね。ただ、ネガティブな感じはしたからメアはいるようだけど……。まあ、そんなこと関係ないけどね、クロスはボクのものだし」
「はいっ!?」
体が大きく震え、体温が上がり始める。そりゃそうだ、いきなり前触れもなくボクのものと言われたのだ。しかもナイトメアの弟、ドリームに。
?「ほう、よく言うようになったな、ドリーム」
反論しようとしたその時、低く冷たい声が聞こえてきた。まさか……。俺は声のした方を見る。そこにはさっきまでなかった黒い水溜まりが出来ていた。
やがて、その水溜まりが、人の形をつくっていく。それは俺が見慣れた姿だった。彼特有(?)のねちゃねちゃとした音が聞こえてくる。
ドリ「あーあ、来ちゃったか……」
ドリームは俺の背中と足の下に手を差し込み持ち上げ、お姫様抱っこの体制にすると、ベッドから立ち上がった。
……待てよ、お姫様抱っこ!?
メア「ごきげんよう、ドリーム」
ドリ「ごきげんよう。で、何の用?」
ドリームは兄のナイトメアを冷たい目で見ている。が、ナイトメアも負けていない。触手が俺の腕に巻き付く。
メア「クロスを降ろして返せ。こいつは俺のものだ」
「ええっ!?」
またしてもか。体温がどんどん上がっていく。ソウルが馬鹿みたいに脈打つ。
ドリ「メアもよく言うよね……。クロスはボクのものだよ?」
メア「いつからお前のものになったんだ? こいつは俺に従ってるんだぞ」
ドリ「従ってるからって自分のものになったわけじゃないよ。それに、クロスにとってここは先輩しかいないし、従うのも無理はないよ」
しばらく言い合っていた二人だが、ふと急に。
メア「あっ、そうだクロス。お前に聞きたいことがあるんだが」
ドリ「あっ、ボクも」
「何でしょう……?」
「好きな人いるの?」「好きな奴いるのか?」
二人の声が重なる。唐突な質問、またしても前触れもない。俺は目を丸くすることしかできなかった。
「え? えっ……とー……」
ナイ「いるのか? なあ? いるのか?」
ドリ「すっごく気になってたんだよね、好きな人……。あっ、人だけとは限らないか」
「いません……けど」
沈黙で満たされる。ちょっと待って、苦しい。誰か喋ってくださいお願いします。というか降ろしてくださいドリーム先輩。
メア「……ほーう。いないのかぁ……」
ナイトメアは目を細めて俺を見た。その口角は上がっている。……嬉しそう。
ドリ「ふふっ、よかった。もしいたら殺してたところだったよ?」
ドリームはまだ俺をお姫様抱っこしたまま、にっこりと笑う。いや怖い、怖すぎる。
メア「奇遇だな。俺も殺してたところだ」
怖いんですけどこの兄弟!? 笑顔で物騒な言葉を口にしてますけど!? ナイトメアはまだしもドリームは言っちゃ駄目なのでは!?
俺が相手にしている先輩は全員物騒な気がする……。
「ところで……降ろしてもらっていいですか?」
ドリ「嫌だよ。降ろしたら可愛がれないし」
俺はペットか何かですか。
このあと結局、俺はドリームが帰るまでお姫様抱っこされたままであった。
「ようやくお姫様抱っこできたぞ」
「降ろしてくださいよ……ご飯作れなくなります……」
「クロスー、ご飯作る……」←ドアを開ける
「「あっ」」
個人的にドリームくんはラストくんみたいな口調だといいなあと思ってます。