ポータルから出た僕を迎えたのは、白い大地と切り株。Dreamtale。数あるAUの中でも悲惨な運命を辿ったAU。そして、ドリームとナイトメアの生まれ育った場所。
この世界に来るのはいつぶりだろうか。ドリームとどうでもいいような会話をしてから……んーと……思い出せないや。
何の用事があってここに来たんだっけ。僕はスカーフを手に取る。僕にとってのメモ帳。忘れないようにするための対策。僕は記憶力が壊滅的すぎる。そのせいでエラーに何回ぶん殴られたことか……。スカーフのはしっこには、『ドリームに会いに行く』としか書かれていなかった。
会いに行くだけじゃ分からないってば(というか日にちが書かれていないのは何故だ?)。少し前の自分に文句をつきながら、僕は白い大地を歩く。この世界は感情を司る世界のはずだが、静寂に包まれている。響くのは僕の足音だけ。切り株の上に、月の形が彫られた冠が置いてあった。僕はそれを手にとって眺めてみる。
見事な金色に、黒色で彫られた三日月。その色合いがなんとも言えず、僕は時間を忘れるほどそれを眺めていたが、用事を思い出して冠を切り株の上に置いて身を翻す。
「……ん?」
ふと、後ろから気配がして振り返る。目に入ったのは、切り株と先程の冠。誰かいたような気がしたのだが……。気のせいか。
Dreamtaleに入ってから何時間経っただろうか。道が分からずただぶらぶらと歩いていた僕は、童話に出てきそうな家を見つけた。ここまで来るのに、どのくらい時間をかけたのか忘れた。森の中をひたすら歩いていた記憶ならあるが。
それにしても足が痛い。歩きすぎちゃったかな、この世界広すぎるよ……。そんなことを今さら思っても仕方ないので、僕は洋風な家のドアをノックする。
「ドリーム? いる~?」
何回かノックするが、反応はない。時間を間違えてしまったのだろうか? ためしにノブを引いてみると、ドアはゆっくりと開いていった。首をかしげる。なんで開いているんだろう? 鍵でもかけ忘れたのかな? とりあえずお邪魔するとしよう。
「お邪魔しまーす」
洋風なだけあってか、家の中は落ち着いていながらも高級な雰囲気が漂っている。玄関の棚の上には、写真立てが一つ。手にとってみる、写真の中には二人。一人は水色のシャツと青色のズボン、そして黄色のマントを羽織っている。もう片方は、紫色のシャツとズボンに身を包んでいる。
片方はドリーム、もう片方は……ナイトメア……。それも、豹変する前の姿……。この世界で起きた惨劇。僕が会って間もない頃のドリームは泣いていた気がする。思わず笑いがこぼれた。
仕方ないでしょ、クリエイターが決めたことなんだから。なんてかわいそうな兄弟。この世界も、結局は作られた世界。クリエイターには抗えないのだから、従うしかないのにね。写真立てを棚に戻す。
「ドリーム~? いないの~?」
いるのかと思って来たのだが、反応がない。もしかして寝ているとか? となれば寝室か。でも、僕はこの家の構造を知らないのでしらみつぶしに寝室を探すしかないようだ。
僕は玄関に入ってすぐの扉に手をかけた。
「あとは二階だけっと……」
玄関に戻ってきた僕は呟く。一階にはリビング、洗面所やお風呂場があるだけで、寝室はどこにもなかった。となれば、二階ぐらいしかない。僕は二階に続くであろう階段を上っていく。
廊下に出た。突き当たりにはいたって普通の扉が一つ。その途中にも扉が一つある。二分の一かあ。とりあえず一番近い扉から開けていこう。僕は一番近い扉のノブに触れて向こう側へと開く。ゆっくりと開かれた扉の向こうはぼんやりとした闇に包まれていた。
部屋の中に入る。暗いが、周りが完全に見えないほどではなかった。本棚に机にぬいぐるみ。まるで子供部屋みたいだ。動物のぬいぐるみが、棚の上にきれいに置いてある。
「ドリーム~?」
天井から宇宙をイメージしているであろうモビールが下がっている。なんか、ドリームっぽいな。もしかしたらナイトメアの部屋なのかもしれないけど。
部屋をうろうろしていた僕は、微かに聞こえてくる呼吸音で動きを止める。集中して聞くと、本当に微かにすーすーという呼吸音が聞こえた。この部屋に誰かが寝ているらしい。ドリームかな? 部屋のあちこちに視線をさまよわせていた僕は、ベッドの上に誰かがいることに気がつく。
頭の冠。肩が出た衣装。……ドリーム? と思ったのだが、一つ引っ掛かることがあった。……体の色だ。黄色で縁取られていながらも、その体は黒い。まるで今のナイトメアのように。
「ドリーム……なのかな?」
見た目はドリームっぽいけど……。どうなんだろう、起こしてみようかな? 僕はベッドまで近づき、肩に触れてみた。ドリームらしき骨は少し唸った。
やがて、その目がゆっくりと開かれた。今気づいたのだが、左目に液体らしきものが垂れている。
「ん……」
「あっ、おはよう!」
足が痛むが、出来るだけ元気そうに振る舞ってみる。
「……誰だ、お前」
……え? 誰だ、お前? この子はドリームじゃないの? ドリームの姿をしてはいるが、明らかに顔を歪めている。不機嫌なのだろうか。
「私の睡眠の邪魔をするとはいい度胸じゃないか。誰なんだ、お前」
ええええええ!? なんかいろいろと違うんだけど!?
「僕はインク! 君は、ドリーム……?」
「インク……ああ、なるほど、お前がインクか。兄さんからいろいろ聞いているよ」
兄さんって誰のこと……? いろいろと疑問がわくけど、とりあえず、この子は僕のことを知ってるらしい(彼の言う兄さん経由で)。
「私はシャッタードリーム。言っておくがドリームとは別人だ」
あれ、別人なんだ。にしては容姿がそっくりなんだけどなあ。液体らしきものが垂れた左目等を除けば。
「なんて呼べばいいのかな? シャッターとか?」
「他からはそう呼ばれてるからそう呼ぶなりしろ。私が分かればそれでいい」
シャッターは不機嫌な表情を隠そうともしない。僕は睡眠の邪魔をしてしまったらしい。これ、代償とか待ってるんじゃ……。何故か背筋が震えた。
「とりあえず自己紹介は済んだところで、だ。お前は私の睡眠の邪魔をした。それは分かるな?」
「うん、見てすぐに分かったよ……」
「なら埋め合わせが必要だよな?」
シャッターの口角が上がった。あー、これはダメみたい。馬鹿と言われてる僕でも分かる。これは確実に代償を払わないといけないパターンだ。何を要求されるんだろうなあ……。
「来い、私の抱き枕になれ」
シャッターは人差し指を自分の方に返すようにクイッと動かす。なんというか……ドリームに似てるけど、シャッターは別人って言っていた。お互い、似て非なる存在ってわけか。
「……ちなみに拒否権は?」
晴れた空から急にどしゃ降りの雨が降るかのように、シャッターの表情が変わる。
「あるわけないだろ。睡眠の邪魔をしておいて逃げるというのか?」
だよね、そんな気はしていたよ。諦めた僕はシャッターに近づく。
「来たのはいいけど、どうしたrうわっ!!??」
「軽いな」
体が宙に浮いたかと思えば、そのままベッドに叩きつけられる。加減なしか、シャッター……。どうやら触手に捕まってこうなったらしい。彼の背中に細長くてうねうねしたものが戻っていくのが見えた。
シャッターはベッドに横になる。僕も(強制的に)横になっているため、彼と向かい合う形になる。こうやって向かい合うのはいつぶりだろう……。
「……なんか、添い寝みたい、だね……?」
ああああなんで照れてるの僕!! めっちゃ声が上ずってるしなんならちょっと暑いし!
「……だな」
僕の背中に回された手。聞こえてくるのはソウルの脈打つ音。そうか、僕とは違ってソウルがあるんだ。そりゃそうか、ソウルレスなのは僕ぐらいしかいないし。……じゃなくてだよ。なんで冷静になってんのさ僕。ソウルがないからかな。
「ふむ、悪くない」
どうやらシャッターは気に入ったらしく、引き寄せたまま目を閉じた。……逃げないように地味に僕の体に触手が巻き付いているのは気にしない方がいいのかな。というか逃がす気微塵もないよねこれ。
「……しばらくこれかあ」
僕の呟きが、彼に届いたのかは知らない。
ちなみにこのことがナイトメアに知られていじられるのはちょっと別のお話。
シャタイン流行りませんか?(唐突)
ということでどうも花影です。もう一個投稿していた小説は消しました。やっぱり衝動的に書くのはダメですね、ちゃんと考えてから作るべきだった。
リクエストあれば活動報告に書いてくだされば(駄目なものじゃなければ)執筆します。
活動報告ではちょっと……という方はメッセージでどうぞ。