「三十八度五分……か」
クロスの口から体温計を取り出し、そこに表示されたデジタル数字を見て顔をしかめる。明らかに平熱を越えている。
「うぇ……そんなにあるんですか俺……」
ベッドの上では荒い息をつきながら、クロスが横たわっていた。事の発端は今日の昼下がり。いきなりクロスが倒れたのだ。それを見かけた俺が部屋へと運び、熱を測った。そして、今に至る。
「まさかそんなにあるとは思わなかったです……」
「無茶した結果だな。ったく、倒れるまで我慢しやがって」
体温計の電源を落として、机に放り投げた。クロスは顔を背けて、「すみません」と謝っている。
「まあ幸いなのは、俺がいたことだな。俺がいなかったら危なかっただろうし」
そう。今この家にいるのは俺とクロスだけ。キラーたちはEXP狩りに外に出ていったし、エラーはAnti-voidで裁縫をしているだろう。もし仮に、俺がどこかに出掛けてクロス一人だけだったら、手遅れになっていたかもしれない。
「そうですね……。ありがとうございます」
クロスは咳き込む。咄嗟に彼の背中をさすった。
「何か食べたほうがよさそうだな。何がいい?」
「そんなに、食欲湧いてないですよ……いらないです」
クロスは自虐的な笑みを浮かべた。俺は首を振る。
「ダメだ。食欲が湧かなくても何か食べないと生きていけないだろ。お粥でも作るから、お前は寝てろ」
「すみません……本当にありがとうございます……」
ドアに手をかけた途端、感謝の言葉がかけられた。
「ほれ、あーん」
お粥をのせたスプーンをクロスへと近づける。クロスは顔をしかめている。
「……センパイ」
「なんだよ。食わねぇのか? せっかく作ってやったのに」
「俺は子供じゃないんですけど」
子供じゃないって……。お前、俺より遥かに年下のくせになに言ってんだか。
「俺からしたらお前はガキなんだよ。いいから黙って食え」
「むぐっ!?」
僅かに開いたクロスの口に、俺はお粥をのせたスプーンを押し込む。食わないならこうするしかない。クロスは蒸せながらも、もにゅもにゅと咀嚼している。飲み込んで、ため息をついた。
「ひどいですよセンパイ。口に押し込むなんて」
風邪のせいか、文句の勢いがない。まあもとから勢いはないけど。なんて言ったら怒られそうなので黙っておいた。
「お前が食わないのが悪いんだよバーカ」
べー、と舌をだしながらそう言うと、クロスは唇を尖らせた。
「ほい二口目。あー……」
「いいです」
クロスが、スプーンと椀を俺の手から取った。
「あとは自分で食べますから。……センパイは戻っていいですよ」
「なんでだよ」
「センパイまで風邪ひいたら迷惑かけるでしょ。だから戻っていいです」
強く言われ、俺はしぶしぶ椅子から立ち上がる。
「わーったよ、お前がそこまで言うなら戻ってやる。ただし……」
俺はクロスのおでこにキスを落とした。クロスは何が起きたのか分かっていないらしく、こちらを見たまま固まっている。
「お大事にな、後輩クン」
俺はひらひらと手を振って部屋から出る。
「……センパイのバカ」
聞こえないフリをしながら。
あの表情をもう一度見てみたい……なんてな。
UAが3000突破しました。……いったい何があったんでしょうか?これからもよろしくお願いします。リクエストがあればどうぞ!
『こんなの書いてみたら?』っていう感じでもいいので……。
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