【UT_AU】雲外蒼天【短編集】   作:花影

50 / 55
48.看病(メアクロ)

「三十八度五分……か」

 

クロスの口から体温計を取り出し、そこに表示されたデジタル数字を見て顔をしかめる。明らかに平熱を越えている。

 

「うぇ……そんなにあるんですか俺……」

 

ベッドの上では荒い息をつきながら、クロスが横たわっていた。事の発端は今日の昼下がり。いきなりクロスが倒れたのだ。それを見かけた俺が部屋へと運び、熱を測った。そして、今に至る。

 

「まさかそんなにあるとは思わなかったです……」

「無茶した結果だな。ったく、倒れるまで我慢しやがって」

 

体温計の電源を落として、机に放り投げた。クロスは顔を背けて、「すみません」と謝っている。

 

「まあ幸いなのは、俺がいたことだな。俺がいなかったら危なかっただろうし」

 

そう。今この家にいるのは俺とクロスだけ。キラーたちはEXP狩りに外に出ていったし、エラーはAnti-voidで裁縫をしているだろう。もし仮に、俺がどこかに出掛けてクロス一人だけだったら、手遅れになっていたかもしれない。

 

「そうですね……。ありがとうございます」

 

クロスは咳き込む。咄嗟に彼の背中をさすった。

 

「何か食べたほうがよさそうだな。何がいい?」

「そんなに、食欲湧いてないですよ……いらないです」

 

クロスは自虐的な笑みを浮かべた。俺は首を振る。

 

「ダメだ。食欲が湧かなくても何か食べないと生きていけないだろ。お粥でも作るから、お前は寝てろ」

「すみません……本当にありがとうございます……」

 

ドアに手をかけた途端、感謝の言葉がかけられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほれ、あーん」

 

お粥をのせたスプーンをクロスへと近づける。クロスは顔をしかめている。

 

「……センパイ」

「なんだよ。食わねぇのか? せっかく作ってやったのに」

「俺は子供じゃないんですけど」

 

子供じゃないって……。お前、俺より遥かに年下のくせになに言ってんだか。

 

「俺からしたらお前はガキなんだよ。いいから黙って食え」

「むぐっ!?」

 

僅かに開いたクロスの口に、俺はお粥をのせたスプーンを押し込む。食わないならこうするしかない。クロスは蒸せながらも、もにゅもにゅと咀嚼している。飲み込んで、ため息をついた。

 

「ひどいですよセンパイ。口に押し込むなんて」

 

風邪のせいか、文句の勢いがない。まあもとから勢いはないけど。なんて言ったら怒られそうなので黙っておいた。

 

「お前が食わないのが悪いんだよバーカ」

 

べー、と舌をだしながらそう言うと、クロスは唇を尖らせた。

 

「ほい二口目。あー……」

「いいです」

 

クロスが、スプーンと椀を俺の手から取った。

 

「あとは自分で食べますから。……センパイは戻っていいですよ」

「なんでだよ」

「センパイまで風邪ひいたら迷惑かけるでしょ。だから戻っていいです」

 

強く言われ、俺はしぶしぶ椅子から立ち上がる。

 

「わーったよ、お前がそこまで言うなら戻ってやる。ただし……」

 

俺はクロスのおでこにキスを落とした。クロスは何が起きたのか分かっていないらしく、こちらを見たまま固まっている。

 

「お大事にな、後輩クン」

 

俺はひらひらと手を振って部屋から出る。

 

「……センパイのバカ」

 

聞こえないフリをしながら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの表情をもう一度見てみたい……なんてな。




UAが3000突破しました。……いったい何があったんでしょうか?これからもよろしくお願いします。リクエストがあればどうぞ!
『こんなの書いてみたら?』っていう感じでもいいので……。
リンク→https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=260417&uid=326461
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。