2022/01/30
誤字訂正しました。
「何回言ったら分かるんだよこの野郎!!」
暖かな空気が漂うリビングに、僕のライバル兼恋人のマーダーの怒声が響いた。この声に驚いて誰かが出てくるわけ……ではない。これは日常茶飯事のため、部屋から出てくる者は誰もいない。
「君こそ、何回言ったら分かるのさ? いい加減そのかたーい頭を柔らかくしたらどうなの?」
「硬いのはお前の頭だ!! いつもいつもEXPを横取りしやがって!!」
ここだけ聞くと、僕とマーダーが恋人だなんて思わないよね。喧嘩の内容は変わらず、EXPのことだった。この世界はモンスターを殺すとEXPというものが貯まり、一定まで貯まるとLOVEを得ることができる。EXPは簡単に言えば経験値。マーダーや僕はそれを集めている。
僕は快楽に浸りたいだけ、マーダーはニンゲンを殺すため。お互いに理由が違うから、衝突を避けることなんてできない。いや、しない。EXPはモンスターを殺した本人しか貰えないから、早く殺さなければどんどん得られる量が減っていく。これは奪い合いに等しい。陣取り合戦とか、そんな感じの。
「横取りされたくないなら早く取ればいいだけの話じゃん? そんなに怒らないでよねぇ」
「はあ……」
マーダーは俯いて大きくため息をついた。握られた拳はわなわなと震えていて、怒りを我慢しているのがはっきりとわかった。これで話はついたのかな。僕は鼻を鳴らした(骨だから鼻がないだろとか言わないでね)。
ナイフをくるくると回す。暇なときの、僕なりの時間の潰し方。さっきまでため息をつき、拳を震わせていたマーダーはソファーに沈んでいる。その姿とさっきの言葉から、とある疑問が脳裏を掠めた。
マーダーは、僕のことが好きなのか?と。
前々から思ってた。付き合ってまもないときにも、同じ内容で喧嘩したことあるけど、その時の言葉の勢いはあまりなかった。多分、気を遣ってくれたんだと思う。恋人だから傷つけたくなかったのかな、なんて。
今思えば、マーダーからあまり『好き』だとか『愛してる』だとか、そんな言葉を聞いてない。部屋の中でハグしてくれたりキスしてくれたりするけど、それは本当にまれな話。彼はいつも殺しにしか専念してない気がする。隣に何か見えるのか、それと会話してる時もある(それは、マーダー以外には見えてない。もちろん、僕にも)。
殺害にしか見出してないのかな。僕のことなんて
もやもやした感情のまま、マーダーに目をやった。顔に腕をやっているのが見えた。ああ、これは寝ようとしてる。寝たらしばらくは起きないからここで聞いちゃおうかな。ナイフをしまい、僕はソファーの近くでかがむ。
「マーダー」
声をかけつつ、僕はマーダーの腕を上げる。不機嫌そうに細められた赤い目と、目があった。
「んだよ……寝ようとしてたのに……」
「ちょっと聞きたいことがあってさ。今じゃないと聞けないかなって思ったんだけど」
「はあ、だりぃ……話すなら手短にな」
文句を言いながらも、マーダーは耳を傾けている。こういうところは優しいよね、なんて。聞いてくれるだけでも嬉しい。
「僕たちさ……いつも喧嘩してるけど」
僕は視線をマーダーにやる。
「僕のこと、ちゃんと好きなの?」
よかった、言えた。マーダーは少し唸りながら目を瞑った。逃げる気なのか? 顔を掴もうとした瞬間、マーダーが目を開く。そして口を開いた。
「……お前、バカだよな」
「はあ!? ちょっとそれはどういうk」
「話を聞け。お前のことが嫌いなわけないだろ。嫌いだったら、付き合ったりなんかしない」
さも当たり前のように言い放ったマーダーは僕をじっとりとした目線で見る。なにちょっと、そんなにジロジロ見ないで欲しいんだけど。
「勘違いしてるようだから言うけどな、俺はキラーのことはちゃんと思ってる。簡単に言えば……愛してる」
ちゃんとした言葉で言われ、僕は思わず俯いた。ああ、ダメだ。今、顔上げられないや……。だって、顔が熱い。
「……なに照れてんだよ気色悪い」
「はあ!?!? 原因はマーダーじゃんか、こんのクソ陰キャ!!」
「あっ! こら、マフラーを引っ張るなバカ野郎!!」
また喧嘩が始まりそうだ。だけど、それが楽しくてしょうがない。
まあ、マーダーには口が裂けても言えない、かな。
僕からの『好き』は言わせないよ。
というわけでリクエストでした。お望み通りに書けたかわかりませんが、楽しみながら書くことができました。ありがとうございます!
皆様が送るリクエストのおかげであれこれ迷わずに書くことができています。お礼を申し上げます。
追記 2022/01/07
ご挨拶忘れてました!なんてことを……。
あけましておめでとうございます、今年も宜しくお願いします!!