勿体無いのでとりあえず投稿してみる
超巨大戦艦『グレードアトラスター』――それはグラ・バルカス帝国海軍が転移前に完成させた、ユグド世界に誇る史上最大かつ最強の巨大戦艦の名前である。
全長約263メートル、排水量約7万トン、主武装には45口径46cm砲を3連装3基搭載し、主砲以外にも、両用砲として60口径15.5cm砲や40口径12.7cm砲、さらに40mm機関砲を多数搭載する。
まさに戦艦の王様、或いは軍艦のバケモノ、または大艦巨砲主義の結晶――だがグラ・バルカス帝国海軍は、グレードアトラスター
海軍は
グラ・バルカス帝国のライバルたるケイン神王国がいずれグレードアトラスターを凌ぐ超々巨大戦艦を造り上げるかもしれない、なら自分達はさらにそれを凌ぐ巨大戦艦を、と海軍は求めた。
当時のユグド世界では、航空機、潜水艦の有用性が認められ始め、戦艦が冷遇されつつあり、この海軍の要求(というより海軍内の大艦巨砲主義者のおねだり)は認められないかと思われた。
が、あろうことか、その海軍の求めは認められてしまった。グレードアトラスターを凌ぐ超々巨大戦艦をさらに凌ぐ超々々巨大戦艦の建造は開始されることとなってしまったのである。
皇帝と帝国首脳部が、自国の力を対外、対内的に見せ付けるプロパガンダ用には、ひどく分かりやすい巨大兵器こそ一番であろうと考えており、この戦艦の建造を後押ししたからである。
斯くして始まった戦艦の建造。
その計画値も設計もすぐに決定した。
全長約400メートル、排水量約20万トン、主武装には50口径51cm砲を3連装4基搭載――それがグレードアトラスターの後継として計画された超々々巨大戦艦の計画値であった。
幸い、グラ・バルカスにはそれほどの戦艦を建造するのに必要な資源力と生産力と財力が十分過ぎるほどにあったし、それを造るのに必要なものはだいたい揃っていた。
それを建造するための超巨大ドックまですでに造り上げていた。過去、何をトチ狂ったか氷山空母計画なるものを計画し、その空母の試作品の整備用に何年か前に造ったのだ。
またライバルたるケイン神王国へと総攻撃を仕掛けることも決まり、工事は順調に進行、ケイン神王国への総攻撃までの就役も間に合うだろうと帝国海軍では予測されていた。
ところがここで予想外の事態が起きる。
グラ・バルカス帝国が国ごと異世界へと転移してしまったのである。
転移後の世界はケイン神王国以下のザコ国家ばかりであり、グラ・バルカス帝国はそれら国家と度々戦争になった(というより途中からは逆に戦争を仕掛けることが多くなった)。
そしてザコ国家との戦争でグラ・バルカス帝国はあることを理解した。
戦艦は不要である、と。
何せこの世界の国家は、木造帆船が主力艦船であったり、ワイバーンとかいう時速200キロ前後しか出ない翼竜が主力航空戦力だったりと、あまりにも弱すぎるのである。
弱すぎるので、駆逐艦や戦闘機などのグラ・バルカスでは比較的に小規模かつ安価な戦力ですら十分有効であり、逆に戦艦のように使い道のない強すぎる力と高価すぎる兵器は不要であった。
そのため、転移後はグラ・バルカス帝国では駆逐艦や巡洋艦、空母、補助艦艇などの建造と増産を優先して行い、戦艦は建造中、建造前のものはすべて無期限建造中止となったのである。
その中には就役直前にあった超々々巨大戦艦も含まれていた。
転移後の世界には対抗相手とされたケイン神王国が建造してるかとしれない超々巨大戦艦も当然いないため、この戦艦は明らかに無用の長物でしかなかったのである。
斯くして超々々巨大戦艦は、完成することなくグラ・バルカス史上最大の無駄遣いとしてドックの中で放置される運命となる――かに思われたとき、彼女に天運が訪れた。
転移から数年後、グラ・バルカスは異世界の全国家に対して宣戦布告、これに自称異世界最強の神聖ミリシアル帝国は自国を中心に世界中の有力国を集めた世界連合軍を組織して対抗。
やがてバルチスタ海域にて、グラ・バルカス帝国監察軍艦隊及び東部方面艦隊と世界連合軍艦隊が衝突、後にバルチスタ沖大海戦と呼ばれる海戦がここに勃発することとなった。
海戦では終始グラ・バルカス側が有利に戦闘を進めていたが、ここで事件は起きる。ミリシアルが、かつて古代文明が用いていたとかいう古代兵器、空中戦艦なるものを2機投入してきたのだ。
問題は、この空中戦艦への対抗手段がグラ・バルカス側にほとんど無いことである。
空中戦艦の名の通り、飛行するのに装甲があるため、戦闘機の持つ20ミリ機銃や対空砲は当たるが通用せず、戦艦の艦砲や爆撃機の爆弾は飛行目標なので逆に当たらない。
また空中戦艦は命中率と連射力の高い15cmクラスの砲と、着弾地点にキノコ状の爆雲を立ち上らせるほどの威力を持つ超大型爆弾、連射力の高い対空機銃を搭載している。
対抗手段のないグラ・バルカス艦隊はこの空中戦艦に一方的に攻撃されて大損害を被り、最終的に1機を撃墜したものの、それは戦艦グレードアトラスターの主砲弾がまぐれ当たりしただけである。
この海戦の結果を浮け、グラ・バルカス海軍とグラ・バルカス首脳部は恐怖した。どうにかしてこの空中戦艦に対抗するだけの戦力を保有する必要があると判断したのだ。
だがどう対抗するかは決まってない。航空機による攻撃は論外だった。グラ・バルカス軍機は空中戦艦の「まるでシャワーのような」対空砲火で近づく事すら叶わなかったという。
かといって艦船が放つ近接信管付きの対空砲弾は、命中こそするが装甲を破れないので大したダメージを与えられない。徹甲弾ではダメージを与えられても命中率が低くて当たらない。
それに艦船では、速度が航空機よりもかなり遅いので、やはり空中戦艦の砲撃と大型爆弾によりどんな大型艦ですら簡単に葬られてしまうため危険がありすぎる。
グラ・バルカスでは空中戦艦対策の議論が紛糾することとなる。大した対抗策がないのだからそれをどう解決するかは当然のようにありとあらゆる提案がなされるのだ。
グティマウン型戦略爆撃機で高度1万メートルから空中戦艦を水平爆撃する案、双発重戦闘機に戦車砲を搭載して砲撃する案、多連装ロケット砲で攻撃する案、航空機で特攻する案――。
どれもメリットと共に、なにかしらの欠点を抱えている。対策案を考える会議で帝国軍関係者が完全に困り果てたそのとき、技術者の一人が唐突にあることを思い付く。
「あの戦艦、使えないかな?」
それは完成直前に建造中止となり、ドックで放置されている超々々巨大戦艦のことであった。帝国軍の人間は疲れてたのだろう。その戦艦の有効活用で空中戦艦に対抗することで決定した。
明らかにトチ狂ってたが一理あった。空中戦艦の砲撃や大型爆弾はその戦艦の装甲なら無効化できる可能性があったし、巨大な船体に艦砲をありったけ載せれば命中弾も見込める。
斯くしてもっとマシな解決策があっただろうにも関わらず、超々々巨大戦艦の建造が再開、元々完成間近だったこともあり短期で完成、グラ・バルカス海軍へ就役した。
艦名は『グレードアトラスターⅡ世』。
まだ沈んだわけでもない超巨大戦艦グレードアトラスターからその名を冠した超々々巨大戦艦がグラ・バルカス海軍に就役したのは、中央暦1643年7月のことである。
・グレードアトラスターⅡ世型戦艦
<スペック>
全長399.9mメートル
全幅52メートル
基準排水量21万トン
速力28ノット
<武装>
50口径51cm砲×3連装4基(12門)
50口径31cm砲×3連装2基(6門)
55口径20.3cm砲×3連装8基(24門)
60口径15.5cm砲×3連装6基(18門)
40口径12.7cm砲×3連装10基(30門)
12cm対空ロケット発射基×30連装10基
40mm対空機銃×3連装40基(120門)
<備考>
同型艦はグレードアトラスターⅡ世のみ
今のところ姉妹艦の建造予定なし
集中防御方式は非採用
文字通り史上最大かつ最強、これ一隻で空母機動艦隊が何個でも造れそうな、頭がおかしいレベルのバケモノ戦艦はこうしてグラ・バルカス海軍のものとなったのである。
そんな彼女の初の実戦は、ミリシアルの空中戦艦を相手としたものではなかった。
日本だった。
ムーに派遣された日本国自衛隊がグラ・バルカス陸軍と交戦し、その最中に日本は前線視察中だった帝国皇太子グラ・カバルをたまたま捕虜にして日本本国に連れ帰ってしまったのである。
これに激怒したグラ・バルカスは日本の首都を焼き払うと宣言、グラ・バルカス海軍は対日懲罰艦隊を編成し、派遣できる限りの海軍戦力を日本本土に差し向けることとなった。
総艦艇数は400隻以上、航空機も陸上機と艦載機合わせて1800機以上からなるその対日懲罰艦隊の戦力の中に、超々々巨大戦艦グレードアトラスターⅡ世もまた含まれていた。