上も、下も、左も、右も、無い。何処も彼処も書籍に関する概念で構成されるモノで埋め尽くされて居る……。コレはとても現実的とは思えない光景が広がっている。
文字が飛び交う。頁が倒れて繋がろうとする。栞が隠そうとする。本が消えようとする。闇が覆おうとする。その周囲に広がるのは真っ赤な鮮血なる血痕。それらが至極当たり前の様に蠢いている。
視界に広がるは朽ち果てた廃墟、それは図書館の様なモノが見え色褪せたセカイが広がっている。地上は褪せている事に対して上空には赫い曇天が立ち込め
地上には不気味な残骸が散乱しており、朽ち果てた廃虚街は街と言うよりも壊れた監獄の様にも見える鉄格子が視界に入り込んで居る。
その様な図書館の様な世界の奥、乱雑に放置された書籍が散乱する空間。其処に人影が見えた。真っ黒なノイズらしきモノで覆われ男か女かさえも分からない。
『菴募コヲ郢ー繧願ソ斐☆縺、繧ゅj縺??』
『迢ゆココ縺ョ謌ッ險?縺ォ莉倥″蜷医≧證?′縺ゅk縺ョ縺ェ繧峨?謌舌☆縺ケ縺堺コ九r轤コ縺』
『縺昴l縺ァ繧ゅ?∬ェュ繧?縺ョ縺具シ』
「本当に良いのか?赤ずきん」
「……仕方ないんだ。時計の針は戻せないし、私が幸せ過ぎたんだ。皆、良い人達だった……だから気付かなかったんだ。全員が全員、
「……テオフィルが降り、この数十年で世界は変貌を遂げた。それは、突如世界に降ってきた、悪夢の種の萌芽。空から降ってきたその種は、根を張った大地を腐らせ、建物は歪み、生き物は飲み込まれてその姿を変えた……そうして生まれたのが、僕達……血式少女や血式少年だった」
独白する声、それは2人の声。声の高さから少女特有の高音域。見える視界に映るのは荒廃し不気味な形状へと変貌を遂げた街並。それでも人間達が物資を掻き集めて全てを遣り繰りを続けている。以前の世界になる事を半ば諦めながらも足掻いている。
「……当然だ。既存の人間とは違う、その事は今になって思い知る。希望、渇望を求められても自分達とは異なる存在、恐怖と言う形を伴うのは至極当然の事だった」
「……バケモノ、怪物。人間達から見たら僕達は正しくその様な物に映ってしまうのだろう。もはや、この事は受け入れるしか無いのかも知れない」
「……地上には希望しか無かった筈だった。でも、希望なんてモノは無かった。それでも私達は歩みを止める訳には行かない理由がある」
「——して、お願い……眼を覚ましてッ‼︎」
声が聞こえる。白い光が朧げに見える。そして今にも泣きそうな顔の少女が見える。
「……ジャック……‼︎」
「……?」
「意識が戻って来ている。覚醒まで数十秒……無理はさせないのが懸命よ」
事務的な声が聞こえて来る。それは何処か、懐かしい声音でもあった。朧げな意識が覚醒してその光景が今、正に目の当たりとなった。
「……ジャック‼︎」
最初に見えたのは涙目のアリスの顔であった。その反対側にグレーテルが興味深いと言っても良い顔を見せている。
「……昔、視子から教わった医療術。問題なく成功に導けて何よりだったわ。具合はどうかしら?ジャック」
グレーテルがベッドに横たわる少年。ジャックにそう尋ねる。しかし、ジャックの目は動揺……或いは混乱が生じていた。
「えっと……君達は、一体……
その言葉に、アリスの時間は急速に凍結した。起き上がった最愛の相手であるジャックの口から原来、あり得ない言葉が飛び出したのだから。