アークナイツRTAトロフィー『消えゆくヒカリ』取得ルート   作:イカ墨リゾット

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今回は賛否両論わかれるかもしれません。

サイレンスをお迎え出来そうなので初投稿です。


ライン生命での想い 怠惰

安堵よりも疑問が生まれた。

 

何故彼は脱走なんかしたのだろうと。

毎日の検査では肉体面でも精神面でもこれと言った異常は見られなかった。

 

イフリータとも仲が良かった筈だし、何かトラブルを起こしたと言うわけでも無い。

彼はイフリータにこの事を話していたのだろうか?

 

そして疑問から憂鬱が生まれた。

 

彼は脱走の際に周囲の物をアーツで巻き込みながら直進していたらしい。恐らくは暫くの間、イフリータとの面会も出来ないだろう。その為にも、私は今あの子の元に向かっている。

イフリータに彼の様子を聞かなければいけないし、あの子は精神に何かしらのダメージを受けたのかもしれないのだから。

 

私があの子と会えない間に、何かされるかもしれないと気が気でならない。本当に、心配だ。

何故こんな事になったのだろう?

 

疑問から怒りが生まれた。

 

彼に脱走する程の力があったのなら、何故あの子を連れて行かなかったのだ。

もし彼が話してくれたのなら、きっとイフリータは大喜びするだろうし、私も手助け位は出来た。

しかし彼は何も言わなかった。何故だ。

 

もしかしたら彼はイフリータを利用していたのかもしれない。

 

本当はこんな事を考えてはいけない。彼の心配をする筈なのに、言葉で言い表せないなんとも言えぬ怒りの矛先が彼にゆっくりと向かって行く。

 

聞くところによると、彼は事前に道を把握していた様な動きをしていたらしい。それこそ、随分と前から計算していた様な動きを。

 

彼の診断を担当していたチームとイフリータを診断していたチームは違うので、当然行き先も違う。

イフリータに施設の構造を話させていたのかもしれない。

 

あの子に辛い思いをさせないと決意した矢先にこれだ。まさか私が守っていて彼が原因になるのかもしれないなんて。

『裏切られた』という言葉が脳裏を過ぎる。

人間、誰しもが生きているのなら、違いはあれど1度は経験する筈だ。私も経験した事がある。

 

あともう少しで出来た筈なのに、あの警備課の主任に装置を停止された時は、本当に腹が立ったし、同時にまさかやられるとは、というような失望感を抱いた。

 

最近はあの非道な手術も優しい物になり、食べ物とは到底いえない様なアレも、かなりマシになってきた。イフリータの笑顔は未だ記憶に新しい。

 

イフリータから語られる彼の事を聞くと、何か嫌な所があると言う訳でも無く、寧ろ兄妹の様に優しく接している事が分かった。

 

私も彼に何度か励まされた覚えがある。『貴方まで暗くなってしまったら、あの子を笑顔に出来る人は誰もいない。』と。

 

そんな嬉しい言葉も、今となってはただの上辺だけの物に聞こえてきてしまう。頭を振って考え事を止めようとする。出来ない。

 

私は今、最低な事を考えてしまっているのだろう。自分が嫌になる。

実際のところ、イフリータを若干贔屓していた面はある。あの子は彼と出会うずっと前から一緒に居たのだから、それは仕方の無い事なのかもしれない。

 

せめて後もう少し大人しくしていてくれば、確実に上手くやれた筈なのに、これでぐちゃぐちゃになってしまった。

 

拳を強く握り締める。彼も辛かったのだ。何故誰の目にも悟らせないようにしていたのかは完全に謎だが。

そう自分に言い聞かせても、怒りは収まらない。ああ、本当に自分が嫌になる。

 

彼は常に笑顔だったし、何か辛い事があった様にはとても見えなかった。もしかしたらだが、今回の脱走は、彼の精神に限界が来たからかもしれない。そんな考えを即座に頭から消す。

 

メンタルケアの結果は常に良好だったし、身体に何かしらの手術痕も見られなかった。本当に何故なのだろうか?

 

強化ガラス製の自動扉が開く。そこには瓦礫の山と、その周辺を忙しなく動き回る大勢の警備員とエンジニア達。マゼランやメイヤーの姿も見られる。

元あった壁を源石結晶の爆発で破壊したらしい。知らなかった彼の一面を知った様な気がした。思わず苛立ってしまう。

奥の方からは月明かりが差し込んで来ていた。不謹慎だが、あの子にも見せてあげたい程、綺麗だった。

 

ふと横を見ると、そこには呆然と立ち尽くしているあの屑の姿があった。

恐らくあの狂人に取って彼は興味を抱く対象だったのだろう。いい気味だ。

 

彼と目が合う。直ぐに逸らそうとしたが、また合わせられてしまう。

 

「……ねぇサイレンス君。僕はどうすればいいと思う?まさかこんな事になるなんて。世界が灰色に染まって見えて来たよ。」

 

「誰にも迷惑が掛からない様なところでくたばればいいと思うわ。その方が貴方の為、世の為よ。」

 

「えぇ……。幾ら何でもそれは酷いと思うなぁ!それが同僚を気遣う態度なのかい?」

 

「あら、貴方にも気遣って欲しいという気持ちがあったのね。てっきり、必要無いのかと。」

 

「何か何時もよりも冷たくないかい?あ、もしかしてお気に入りのマグカップが割れたとか!?」

 

「貴方も復旧作業を手伝ったら如何かしら?もう彼はいないのだからただ突っ立ってる必要は無いでしょう?」

 

「……あ、もしかしてだけど、いや、まさかな。サイレンス君に限ってそんな事無いか。イヤイヤ。まさか……?」

 

「私はこれからあの子の元に向かわなければいけないの。言いたい事があるのならさっさと言って欲しいわね。」

 

「じゃあ言うけど……、サイレンス君。君さぁ……カイキ君に怒ってるだろ?何でだい?そこは普通心の底から喜ぶところじゃ無いのかな!」

 

瞬間、背に氷柱を入れられたのかの様に鳥肌が立ってから、ぶわっと汗が滲み出て来る。

 

「え!?まさかの大当たり!?やったぁ!」

 

「そんな筈が無いでしょう。彼の事を何も知らないくせに、余計な事を言わないで。」

 

必死になって反論する。私だって彼の事を素直に喜びたい。しかし、イフリータを連れて行ってくれなかったという事実が邪魔をする。

 

「おいおいおいおい、カイキ君の事を知らないのはサイレンス君、君の方さ。僕だって、残念だけど、残念だけど!少しは喜んでいる一面があるんだぜ?」

 

「だからさっきから何を言っているの。邪魔よ。さっさと退いて……。」

 

「ああ!そうかそうか!そう言えばそうだった!ハハッ!そりゃそんな反応するよねぇ〜。」

 

「ねぇサイレンス君!君ってさぁ………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

見たことあるの?カイキ君のカルテ。」

 

目を大きく見開く。呼吸が荒くなる。一瞬何の事か分からなかった。

 

彼のカルテ。確かにいつも上層部から渡されるのはメモ書き程度の物しか書かれていない紙で、彼のカルテを見た事がない。

 

とてつもなく嫌な予感がした。

 

「そうだよねぇ!見た事無いよねぇ!何でだと思う?」

 

さっきまで考えていた事は直ぐに消し飛んだ。今頃私の顔は、側から見れば真っ青になっているだろう。

 

「人間、知ってはいけないと言われると、どうしても知りたくなるものさ。凄い分かるよ!でもね、好奇心は猫を殺すんだよ。……サイレンス君はリーベリだけど。」

 

そんな事を宣いながら、狂人ーーーいや、本当はーーー彼は自分のIDカードを差し出して来た。

 

「覚悟があるのなら、行って来なよ。情報保管室。知りたいんだろう?」

 

彼のIDカードを奪う様に手に取ると、その場から全力で走り去った。

 

 

 

 

破壊された保管庫の直ぐそばを横切る。

周囲には私の上司に当たる人物が複数人おり、更には上層部の人間までもがいて、皆一様に顔に焦りを浮かべている。

確か、3ヶ月ほど前にマゼランやメイヤー達がエンジニア達と協力して作っていた物だ。余程大事なサンプルでも保管していたのだろうか?

 

通路には沢山の箱が散乱していたが、1つだけ蓋が空いている物があった。思わず見てしまう。

 

中からは赤い塊が飛び出していた。思わず顔を顰める。何度も医学書で見た事があるのにも、だ。

 

それは腸だった。綺麗に畳まれていた様だが、今ではその長い体を床に広げている。

まさかこんな物を保管していたとは。恐らくマゼラン達は知らない筈だ。本当にこの企業は……

 

 

 

 

 

最悪の事態が頭を過ぎる。嘘だ。そんな筈は無い。

何度否定しても、ソレはどんどん現実味を帯びて行く。

 

あの保管庫は彼が来てからそう時間が掛からないうちに作られ始めた。

保管庫が作られてからは、給料が以前に比べて良くなっていたし、あの子達が食べる物も随分と良い物になった。

 

足の回転率を上げる。息が切れて苦しいが、止まる訳には行かない。

嫌だ、違う、何で、何で………

 

 

 

 

 

 

情報保管室に到着する。此処まで来るのに、永遠とも感じられる様な、途轍もなく長い距離を走った気がする。そんな筈は無いのに。

 

呼吸を整えながら、タッチパネルを操作する。いつもなら淀み無く動く指先が震えている。とても焦れったい。

 

彼のIDカードを認証させて、すぐに室内に飛び込む。そこには、膨大な量のカルテが並んでいた。まるで図書館だ。

近くに置いてある機器に『カイキ』と打ち込むと、即座にアームが動き、私の前に彼のカルテを運んで来てくれた。随分と遅く感じる。

 

それを見た瞬間、思わず声が出てしまう。他のカルテに比べて、彼のカルテは『分厚かった。』それも異常な位だ。

 

震える手でカルテを手に取る。まるで冬の日に薄着で外出したみたいに体全体が震えている様だ。

 

開けたく無い。認めたく無い。知りたく無い。しかし、此処で引き下がっては、もう2度と真相を知る事は出来ないだろう。

意を決して表紙を開く。

 

ページを捲る。なんなんだ、この記録は。ページを捲る。私が知らない様な薬品の名前が載っている。彼に投与されていた物の様だ。ページを捲る。嘘だ。ページを捲る。違う。ページを捲る。涙が溢れる。ページを捲る。嗚咽が漏れる。ページを捲る。かつて無い程の罪悪感が私を襲う。ページを捲る。その場にへたり込む。ページを捲る。誰かに思い切り頭を殴られた様な気がした。ページを捲る。目眩がして来る。ページを捲る。何かが音を立てて崩れた。ページを捲る。絶叫したい。ページを捲る。全て嘘なんだと否定したい。ページを捲る。現実を突き付けられる。ページを捲る。全ては何かしらの犠牲の上に成り立っていた。ページを捲る。やり直したい。ページを捲る。許して欲しい。ページを捲る。お願いだから。ページを捲る。吐き気が込み上げる。ページを捲る。何で黙っていたの?ページを捲る。私は信用出来なかった?ページを捲る。捲る。捲る。捲る。捲る………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は必要無かったのだ。いや、そんな筈は無い。でも気付けなかった。気付こうとしなかった。ただ目の前にある虚像を見て幸せだと感じていた。それが血濡れているとも知らずに。彼が無理をしているのだと分からなかった。それに気付いて、何とかするのが私の役目だったのに。見えない力に心臓が押し潰されそうになる。ああ、ああ………

 

 

 

 

 

 

私があの無邪気な笑顔を守っていたんじゃ無い。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

守られていたんだ。あの無邪気で、引き攣った笑顔に。怒りを、悲しみを、苦痛を、全て押し込んだあの笑顔に………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その号哭を聞いた者はいなかった。誰1人として。

 

 




ちょっと長過ぎるので前半後半で分けようと思います。

如何でしたか……?(震え声)

ボカロを参考に小説を書くのはOK?

  • 構わん。書け(寛大)
  • 他人の作品参考にしなきゃ書けねぇのかクズ
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