アークナイツRTAトロフィー『消えゆくヒカリ』取得ルート 作:イカ墨リゾット
今回は前半後半に分ける事にしました。1話で纏めろって?無理です(無慈悲)
空調が作動する音だけが聞こえる部屋。
その部屋の中央に1人の少女が座っていた。彼女の周囲には、人形などの玩具が散乱している。
少女は1体の人形を手に持つと、おもむろに遊び始めた。しかし、直ぐに飽きてしまったようで、人形を放り投げる。
寂しい。少女は部屋の中央に大の字になりながらそう思った。
此処は彼女の母親が勤める研究所、その一部屋である。留守番中に何かあってはいけないと言う事で、少女は毎回この部屋に連れて来られては、母の仕事が終わるまで待っている。
寂しい。彼女の母は良い親だ。家では常に笑みを絶やさず、彼女を見守っているし、休日には公園で一緒に遊んでくれる。世間的には普通だが、その普通が守れている親は何人いるのだろうか?兎に角、彼女の母は普通だが、良い親である。
寂しい。胸にぽっかりと、穴でも空いている気分だ。何も無い部屋に少女を入れて、食事だけを出し、10時間以上も待てと言うのは酷と言うものだろう。実際そうだ。だから、この部屋には、退屈な気分を紛らわせてくれる物がある。人形、本、スケッチブックと色ペンが沢山、小さなピアノ。と言った、年頃の少女が遊ぶにはもってこいの品々だ。
寂しい。それでも、それなりの広さのある部屋でたった1人。誰かが来るのは、時計の針が12時を指した時だけ。
誰だって寂しく思うし、段々と不安になってくるだろう。なにせ、少女はまだ子供である。小学校で言うところの、5年生に分類される年齢だ。
話し相手がいないだけで、こんなにも退屈で、こんなにも寂しいのか。少女は寂しさから逃れようと、目を閉じて夢の世界へ行こうとする。
少女は気遣いの出来る人間だった。だから、母に寂しいとは言わなかった。余計な手間を増やしたくないからだ。今、彼女の為に働いているのだ。それをどうして邪魔しようと思うのか。
少女ーーーリュドミラは、今日も1人ぼっちだ。
リュドミラは最近、酷い孤独感に悩まされていた。
自分以外の誰もいない部屋で、10時間。母が部屋の扉を開けて帰ろう、と言ってくれるのをただ待っていた。
彼女には友達がいなかった。いつも遊ぶ相手は母1人。彼女はそれで十分だと思っているが、母はそれを密かに心配していた。公園に行って、同年代の子と遊んできたらと言っても、彼女は母の手を掴んでいた。
寂しい時に、友達の事を想えば、少しは寂しくなくなるだろう。でも、リュドミラには友達がいない。……リュドミラは、友達の必要性に気付けないでいた。
だから今日もこうして、1人だけの時間を過ごす。本を読み、軽く部屋中を歩き回ってみて、自身の尻尾を撫でて、虚空を眺める。
リュドミラはとても寂しかった。無意識のうちに誰かを欲していた。そう、母以外の、此処に一緒にいてくれる誰かが。
寂しさを分かち合えば、きっと仲良くなれる。自分の思いを、素直に受け止めてくれる。そんな誰かが来てくれる事を、リュドミラは夢見ていた。
ある日、母が扉を開けて部屋に入ってきた。仕事が終了する時間まで、まだ時間がある。リュドミラは今日は早く帰れるのかと、耳をぴょこんと立てるが、どうやら違うようだ。耳はしなしなと倒れた。
暫く頭を撫でていた母が、後ろを振り返り、誰かを前に出した。自分よりも小さい誰かだ。
どうやらこの少年ーーーカイキは、今日からリュドミラと一緒にこの部屋で過ごすようだ。彼がおずおずと彼自身の名前を告げた。
母があなたの方が年上なんだから、ちゃんと面倒を見てくれると嬉しいわ、と言って引き返して行った。リュドミラはカイキと目線を合わせる為に、少しだけ屈むことにした。
病人が着るような服を着ていて、右側頭部から1本の角が下に向かって生えている。
初めて見る角を興味深く眺めて、少し視線を動かすと、長い黒髪の隙間から此方を覗く目と目が合う。カイキははにかみながらリュドミラの名前を尋ねてきた。
彼女が自身の名前を告げると、彼は右手をゆっくりと差し出してきた。
どうやら握手をしたいようだ。リュドミラは僅かに彼の手が震えている事に気付いた。もしかしたら、不安なのかもしれない。
握手をしてみる。次の瞬間、彼は花が咲いたような笑顔を浮かべ、よろしくと言ってきた。
リュドミラもよろしくと言い返した。彼女の顔には笑顔が浮かんでいた。胸のぽっかりが、少し埋まったような気がした。
次の日に、あの部屋に入ると、カイキは部屋の隅っこで布団を敷いて眠っていた。彼は此処で寝泊まりをしているようだった。
扉の開閉音に気付いたのか、彼は上半身を起こして、眠たそうにおはようと言った。おはようと言い返す。悪くない気分だ。
彼が食事を取っているのを横から見ていて、気付いた事がある。パックジュースを手に取って、『オレンジジュース』と書かれている部分を凝視している。あまりにも険しい表情をしていた為、何かあったのかと声を掛ける。
彼は此方に顔を向けた、たどたどしくこう言った。なんて、書いてあるの?と。
彼は字が読めないと分かったリュドミラは、ひとまずオレンジジュースと書いてあると教えて、彼が食事を終えると、自身の膝まで引き寄せて座らせ、スケッチブックを取り出した。
人に何かを教えるのは初めてだった。スケッチブックに文字を書き、その文字を声に出して発音する。彼は熱心に耳を傾けている。
この日、リュドミラはお姉ちゃんと言うものは何か、それを理解した気がした。
カイキは、偶に部屋の外に連れ出される事がある。ほんの10分程で帰ってくる事もあれば、1時間以上帰ってこない事もある。そして、戻ってくる時には大抵疲れた様な顔をして、何も言わずにリュドミラの手を握る。
どうしたと訊いてみれば、彼は『お勉強』と答えた。彼は勉強が苦手らしい。文字を教えた時はそうには見えなかったが、一体何故だろうか。
1人ぼっちだったリュドミラの日常に、カイキという色が加わった。以前まで感じていた孤独感は感じなくなり、寂しいと思わなくなった。
リュドミラは理解した。これはカイキがやって来て、私と友達になってくれたからだと。彼女が友達になろうと言った事は無いが、ほぼ友達と言っても差し支えは無いだろう。
それと同時に、リュドミラには、1つだけ困っている事があった。2日程前から、カイキに『お姉ちゃん』と呼ばれるようになったのだ。思わず目を見開いて動揺する。次第に顔が熱くなっていき、心がむずむずする。初めての感情に戸惑ったが、悪い気分はしなかった。むしろ逆でもある。
リュドミラは幸せになれた。家では母が、部屋ではカイキが一緒にいてくれる。こんな生活がずっと続けばいいのになと願う。
そんな少女の願いは聞き入れられなかった。永遠なんてモノが無いように、少女の幸せもすぐに終わった。
テラでは生きたいと願っても生きる事が出来ない、そんな事はザラにある。それならば当然、この幸せを続けたいと願えば、その幸せが絶たれる。リュドミラは悲劇を知らなかった。
カイキ君
字を読んだり、やたら丁寧に喋れるのはクラウンスレイヤー姉貴のおかげ。じゃあ恩返ししなきゃな!
リュドミラ
幼き頃のクラウンスレイヤー姉貴。この頃はまだ引っ張られたり押し出されたりされてないので、純粋な心を持っている。
ボカロを参考に小説を書くのはOK?
-
構わん。書け(寛大)
-
他人の作品参考にしなきゃ書けねぇのかクズ