アークナイツRTAトロフィー『消えゆくヒカリ』取得ルート   作:イカ墨リゾット

67 / 74
ソーンズを昇進2にしたので初投稿です。あぁ^〜デストレッツァの音ぉ^〜!


人工モンスター

オペレーター達に指示を飛ばし、今まで戦っていた一般兵士とは、比べ物にならない程の経験を積んできた遊撃部隊の戦士を打ち破りながら、ドクターは考える。

龍門の崩壊、又はウルサス帝国と炎国の戦争という最悪の未来を回避する為にチェルノボーグに乗り込んだチェンを追いかけ、投入出来る最大限の戦力を引き連れたロドスの一行は、そこでパトリオット率いる遊撃部隊に苦戦を強いられていた。

 

個々の戦闘力や揺らぎない精神に統率力、装備の品質まで上質な歴戦の勇士達。さらにはパトリオットが仕込んだと思われる巫術『人喰』。レユニオンとの争いも最終局面を迎えていると感じさせられる戦闘の数々は、ロドスの希望をより輝かせる。

 

もはや質量爆弾と化したチェルノボーグを止める為に、一行は二手に別れる。恐らくタルラや他の幹部達が集結しているであろう中枢司令塔には、戦闘に長けたアーミヤやロスモンティス。石棺についてある程度の知識を持ち合わせているケルシーとドクターが、シティホールの地下に進行を始めた。

チェルノボーグを止めるには、石棺から都市に供給されるエネルギーを遮断し、緊急ブレーキを作動させる必要がある。恐らく大量の敵が護衛する石棺を停止させ、幹部の誰かが持っている鍵を入手して塔の最上階に辿り着くという、無茶にも程がある作戦だった。しかし次は無い。今ここで成功させなければいけない決死の作戦だ。

 

作戦成功の為にも、まずは石棺を停止させなければいけない。それよりも先に緊急ブレーキを入れようものならば、ブレーキ自体が破損して使い物にならなくなるからだ。徐々に厚くなる敵の防衛戦を突き進みながら、ドクターとケルシー、そして選ばれた十二人のオペレーター達は待ち受ける脅威に決意を滾らせる。

 

先程、アーミヤ率いる地上部隊からレユニオン幹部とその他少数精鋭で編成された部隊との交戦を開始したとの通信が入った。その部隊の中には、ドクターが懸念していた例の不死身の如き再生力を持つ子供もいるらしい。通信機越しに聞こえる巨大な物体が唸りを上げながら飛んでいく音は、戦闘の激しさを暗に伝えていた。

 

タルラ及び幹部の全員が地上にいるとのことだ。司令塔の守備を徹底的に固める事にしたのか、それとも石棺が何かしらの罠に変容しているのか。確かめる術は無いが、それでも立ち止まる訳にはいかなかった。

 

それからも進行速度を緩めずにシティホールの地下を目指し、敵の守備隊も壊滅寸前といったところで、ドクターの携帯している無線機から通信が入った。

若干の焦りが含まれている声で話すアーミヤ。その内容は、レユニオン特戦兵士にして幹部のカイキがファウストとメフィストを連れて撤退したとのいうもの。十中八九石棺の防衛に向かっているとの事だ。

カイキはロスモンティスの攻撃により体の真ん中が千切れかかった状態で地面に縫い付けられていたが、下半身を強引に千切り脱出した後にファウストの協力により下半身を傷口に付けて再生させ、クラウンスレイヤーやフロストノヴァ、パトリオットと一、二言言葉を交わしてから撤退していったらしい。その時、フロストノヴァがカイキに何かを手渡したのも確認されている。

 

敵の増援の知らせを受け、ドクター達はより一層足を早めた。地上での交戦地帯はそこまで遠くなく、地下に到着するのにさして時間はかからないだろう。せめて準備を整えさせる時間だけは与えまいと、オペレーター達は奮起した。

 

 

 

 

 

所々照明が割れ、薄暗い場所が散見される地下通路。背負っていた機器に縋り付くようにして連絡を送っていた敵伝令兵に止めを刺したシュバルツは、多くの足音が此方に向かってくる音を捉えた。残っていた遊撃部隊との戦闘も終わり、静寂が訪れるとその音がはっきりと聴こえた。バラバラな足音。何かを引き摺っているような音もすれば、大声で何かを叫ぶ声も聴こえる。

 

遂に敵の増援が到着したらしい。クロスボウにパーツを取り付け始めたシュバルツを見て、他のオペレーター達も各々の準備をした。ケルシーは小さなピストルの様な物に薬剤を込め、ドクターは段々と暗くなっていく通路の先に目を凝らす。

 

ゲートが破壊される音が地下空間に響き渡り、オレンジ色や赤色に輝く光がどっと流れ込む。そこにすかさずオペレーター達による総攻撃が叩き込まれた。

全てを切り裂く斬撃。どんな獲物も仕留める巨大な矢。辺り一帯を焦土に変える火球の流星群に火炎の濁流。その全てを受けながらも、蠢く光達は歩みを止めなかった。

 

無事な照明に照らされて、光の正体が判明する。龍門にレユニオンが侵入した際に暴れていた、源石に犯し尽くされた人間の成れの果てだ。見開かれ、オレンジ色や赤色の光を発する瞳に理性は宿っていない。

身に纏うプロテクターの至る所から源石結晶を露出させる重装兵を先頭に、恐れなき寄生兵達が我先にと走っていた。ある者は頭を抱えながら絶叫を上げ、またある者は自身の体から源石結晶を引き抜いては刺すを繰り返す。総攻撃に倒れた屍をなんの戸惑いもなく蹂躙しながら踏み越え、ただ只管に敵を目指して突撃する狂気の部隊。その悍ましさは見せ掛けなどでは決して無く、炎に舐め取られて倒れていた者達もぽつりぽつりと起き上がり始め、単純なプログラムの様に同じ行動、つまり敵を目指しての突撃を再開する。

 

その勢いは衰える事を知らず、寧ろ敵を発見した歓喜や興奮により、さながら雪崩の様に全てを飲み込みながら押し寄せる。オペレーター達の総攻撃をものともしない事実を見せつけられるも、ドクターが狼狽える事は無かった。

 

ドクターの意思に呼応し、重装オペレーターを防衛の要としての陣形が形成される。全神経を目の前の人の波に集中させ、絶対に背後に行かせまいと身構える。

一方、寄生兵達は闇雲に走っているだけで、中には武器すら持たない者もいる。それでも源石で強化された身体能力を武器に腕を振り上げ、敵を殺さんと狂乱する。

 

両陣営が激突するまであと僅かといったところで、寄生兵達の中から一際早い影が躍り出た。

両肩から腕にかけて血塗れなレユニオンの制服を纏い、割れた仮面から片方だけ覗く赤い目は濁り切っている。フードの隙間から垂れる白髪を振り乱し、先程の総攻撃で被弾したであろう右手を再生させながら走る子供。

 

この短い間に、何度もロドスの前に立ち塞がった悲哀の怪物。レユニオン幹部が一人、カイキ。赤黒く染まった下腹部は、ロスモンティスの攻撃の激しさを物語っている。

 

すかさずエイヤフィヤトラが噴火の如き炎を浴びせるが、カイキは肩から引き抜いた源石結晶を急成長させ、そうして作られた剣で炎を薙ぎ払う。捌き切れなかった火球が幾つも着弾するが、特に苦しむ様な素振りは見せなかった。

 

顔面に飛来するシュバルツの矢を掠りながら避け、もう片方の手で握った刀をサリアに向かって振り下ろすが、防がれる。こうして、一つの戦いの火蓋が切られた。

ドクターに向かって殺到する理性無き獣達を他のオペレーター達に任せ、改めてサリアは盾越しにカイキを見つめる。サイレンスが見せてくれた写真に写っていた無邪気さが溢れる子供は、完全に変わり果てていた。憎悪の視線でサリアを睨め付け、純粋な殺意だけを叩き付けている。

 

嘗て誰かが言っていた。怪物は生まれるものではなく、作られるものだと。その最たる例がカイキだろう。脳にまで到達した鉱石病の影響により記憶や感情が欠落し、近くに居てくれた者達を守る為だけに戦う。その暴力性は凄まじく、何度致命傷を与えても起き上がる。

 

自分がもう少ししっかりしていれば防げたのだろうか。もっとライン生命に不信感を抱き、近くにいる者だけを守ろうとせず、広い視野を持って行動すれば防げたのだろうか。一体何が原因なのか、サリアには分からない。しかし、自身の失態で生み出されてしまった事は確かだ。久しぶりに語りかけてくれたサイレンスや、何処か嬉しそうなイフリータが話してくれている時点で、もっと気にかけるべきだったのだ。

 

狂った様な連続攻撃を盾に繰り出すカイキは、さながら命令に従順に従い続ける殺戮兵器の様で、人間としての全てを無視されて作り上げられた怪物であると嫌でも認識させられる。メッセンジャーとなったドクターが伝えてくれた、怒ってないよと言う言葉。その言葉がサリアを、彼女達を蝕み、破滅へと導こうとしていた現状を止めてくれた。だが、この様子を見るに、既に発した言葉すら忘れてしまっている。

 

熱くなる目頭に力を入れ、攻撃に合わせて盾を力強く押し出す。直感だが、もし此処で止める事が出来なければ、そのチャンスは二度と巡って来ないだろうとサリアは確信した。それ故の無力化に走る。敵集団の奥から飛んでくる源石クラスターを弾き、押し返されたカイキを援護する様に前に出る寄生兵を昏倒させる。その光景が寄生兵達の目に留まったのか、サリアを目掛けて多くの攻撃が飛んでくる。

 

弾き飛ばされたカイキが次に標的に定めたのは、攻守を兼ね備えた独特の形をした盾、般若を振り回すオペレーター、ホシグマだった。丁度敵を捌き終えたホシグマもカイキを視認する。

ホシグマとしては自身が鉱石病に罹った元凶でもあるが、この子供の過去を知れば知るほど憎めなかった。それでも攻撃の手を緩めない。所詮は、敵だ。そう割り切った。でなければ、殆んどの人間がとうの昔に精神に異常をきたしているだろう。

 

カイキは回転する刃を剣で受け止めるが、幾ら強化されているといってもまだ子供。正面から鬼の膂力に勝つ事は難しい。徐々に源石剣に食い込み、もう片方の手にある刀で押し返そうとしても、逆に押し込められて腕の肉を削られる始末。源石剣が砕かれる瞬間を見計らい、カイキは大きく後退した。空いた方の手を腰に持っていき、何かを引き抜いた。

 

赤色に鈍く光るその石は、此処に来るまでに様々な場所で見かけた巫術『人喰い』の祭壇に備え付けられていた源石と酷似しており、現に赤い靄の様なモノを発している。それがパキパキと音を立てて成長し、先程の剣と寸分違わない形になる。

 

その剣を握った状態で腕を突き出す。前腕の肉を食い破って出てきた源石は赤黒く、それを針の様に射出した。カイキはそれに追従する様に走り出し、ホシグマも盾を巧みに操り針を防ぎ、首元に吸い込まれる様に振われる剣を弾こうとして──剣が爆ぜた。

 

辺り一帯に拡散した濃密なアーツの霧は、ホシグマの体に確実にダメージを与える。カイキにはダメージは無いらしく、もう片方の手の刀でホシグマの首を刎ね飛ばそうとするも、上から飛来してきた人物による攻撃に対応せざるを得なくなり、中断する。

 

避け切れず、カイキの左肩にハンマーが叩き込まれる。鈍い音を立てて肩がひしゃげ、あまりの威力に行き場を失った骨が飛び出す。カイキは崩れたバランスを立て直しながら、自身を奇襲したオペレーター、シージを凝視する。

振り下ろされたハンマーは、地面に到達すると同時に衝撃を発してカイキを怯ませる。シージは地に片膝を付いたカイキに追撃を喰らわせようと動くも、ドクターの鋭い指示によって即座に回避行動に移った。直後に頭があった位置を一本の矢が通過する。それを合図に、四方八方から矢が飛んでくる。オペレーター達が周囲の警戒を始めると同時に、傷付いて動けずにいた寄生兵達の傷が急に再生し始め、次々と起き上がり始める。

 

ファウストとメフィストの準備が整ったらしい。肩を再生させたカイキがシージに刀を振り下ろそうとするも、シージは先程よりも大きく回避行動を取った。いつの間にかホシグマも離れた位置におり、不思議に思っていると、真正面から炎がカイキを包み込んだ。いつからか自身をサポートしてくれる青年、フィーアに投与された強化ウィルスがあるとは言え、流石にこれは効く。全身を突き刺す痛みに思わず倒れるが、思っていたよりもすぐに火は消えた。

 

火炎の発生源に目を凝らすと、自身と同じくらいの少女がいた。手に持った筒であの炎を放ったらしいが、今はファウストの矢を回避する事に精一杯らしい。一瞬だけ目が合うが、その少女から並ならぬ感情を感じた。生憎と、カイキには身に覚えがまったく(・・・・)無い。もしかしたら、何処かで出会った事がある友達だったのかもしれない。

 

呑気にそんな事を考えていると、また新しい敵がカイキの前に現れた。確か、巨大な斬撃で味方を切り裂いていた男だ。こういう時は、仇打ちと言うものをすると良いらしい。単純な考えで殺意を増幅させ、目の前の敵に斬りかかる。

 

カイキが相手取った男のコードネームはシルバーアッシュ。その荒々しい剣撃は、洗練された動きによって全て受け流された。中々攻撃が命中せず、逆に自分はチクチクと痛い所ばかり突かれている事に苛立ちを覚えたカイキは、状況を変えようと腹部に力を入れる。自身の体中を巡る何かを腹部に集中させて、それを一気に解放する。とてつもなく痛いが、背に、背に……分からない。まぁ、いいだろう。

 

腹を突き破って無数の源石結晶が現れる。それらは不規則な形に一瞬で成長し、カイキの前方に存在する全てに向かって襲いかかる。擦りでもすれば源石の破片が血中に混ざり込み、鉱石病に即感染、又はさらに悪化させる広範囲無差別攻撃だ。これを使えば、どんな敵も逃げていく。カイキはそう確信していて、その様は年相応の子供の様だった。成長が止まったのを確認してから源石を腹部から切り離し、先程のもふもふしていそうな男の行方を探そうとする。あの男一人しか巻き込めなかったらしいが、きっとタダでは済まない、と。

 

そんな考えは容易く打ち砕かれた。咄嗟に源石結晶を生やした腕をクロスさせ、顔の前に持ってくる。瞬きする間も無く、そこには鋭い剣が突き刺さっていた。その先端がカイキの眼球に触れるか否かというところで停止している。そして突き刺さった剣が急に上方向に動き出し、カイキの両腕を一時的に使いものにならなくした。

 

驚きに目を見開いていると、腕から吹き出した血液越しにあの男が見えた。羽織っていた上着が無くなっているが、その顔にはまだ余裕がある。即座に腕を再生させて迎撃に出るが、それもほんの僅かな時間だけ。今度はカイキが圧倒される番だった。目にも止まらぬ突きに対して防戦一方になってしまい、中々反撃に転じる事が出来ない。攻撃を見極めようとするも、突如として視界の半分が闇に覆われた。

 

シルバーアッシュの相棒であるテンジンの攻撃。視界外からの思わぬ攻撃にカイキは反応出来ず、結果としてその左目はくり抜かれた。どぷりと、赤と黒が混ざりあった液体が溢れ出す。その絶好の隙を逃す程、カランド貿易のトップは愚鈍ではない。失った左目側に即座に移動し、死角からカイキの心臓を目掛けて、その剣を深く突き刺した。

 

引き抜くと同時に今までとは比にならない程の血液と源石の混合物が噴き出し、大きく仰反った。仮面越しに吐血して、首元は赤く染まり始める。カイキは心臓を取られる事はあったが、こうして貫かれる事は初めてだった。既にダメになりつつある脳への酸素の供給がストップされ、意識が飛びかける。

 

遂に両膝を付いたカイキの首を跳ね飛ばそうと、シルバーアッシュは剣を振るう。が、響くのは何か硬い物に刃物を当てた音。カイキの首からは、源石結晶が彼の首を守る様に生えており、加えて再生を終えた両腕でガードしている。くり抜かれた筈の目はいつの間にか完治しており、シルバーアッシュをじっと見つめていた。

 

カイキは死なない。心臓がやられた程度では死なない。首さえ繋がっていれば、カイキは生きていける。そのうち、それすらも克服するだろう。

 





・カイキ君
痛覚は存在するし、麻痺もしていない。ただ、表に出さないだけである。その方が怒られないし騒がれなかったからだ。

ボカロを参考に小説を書くのはOK?

  • 構わん。書け(寛大)
  • 他人の作品参考にしなきゃ書けねぇのかクズ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。