アークナイツRTAトロフィー『消えゆくヒカリ』取得ルート 作:イカ墨リゾット
行っちまったか。
カイキがこの後、何処に行くかは聞いていなかったが。まあ、そこまで心配する事はないだろう。
きっと何処に行っても上手くやっていける筈だ。
俺がアイツを信頼しているのにはちゃんとした理由がある。
話を聞くに、どうやら気付いた時には龍門のスラムにいて、そこで生活してきたと言う。
ガキが1人で龍門のスラムを生き延びるのは簡単な事じゃない。
スラムって言うモノは暴力が全てを支配する無法地帯だ。
弱い奴は強い奴に決して逆らえないし、何をされても文句を言えない。
大人ですら厳しさに耐えかねて自殺するのも珍しくないって言うのに、ガキなら尚更だ。
そう考えるとアイツはそこそこ運がいい。サルカズなら大抵の種族になら勝てる。大人にですら一泡吹かせられるだろう。ウルサスだったら無理かもしれねぇがな。
何より男に生まれた事だろう。もし少女が1人でスラムに放りだされたら、待ってるのは悲劇でしかない。
そういう趣味の奴に連れてかれて、死ぬまで吐口にされてこの世の全てを呪いながら死ぬんだからな。
女は男に比べて力も弱いし、まぁ、頭が回るかもしれねぇが、それでも人1人殺せる力がなきゃ死ぬ。
アイツはこの世の最底辺を蛆虫みたいに這いずり回って生きてきたんだろう。初めて会った時のアイツの目はそういうのに耐えて来た死んだ目だった。
それでも、その下にはナイフみたいに鋭い意志と覚悟があったがな。
ガキらしくねぇ。それがアイツの第一印象だった。
ガキってのは無邪気で純粋で、元気一杯で周囲に笑顔を振りまく奴の事を言うと、俺は思っている。
しかし、鉱石病がそれを許さない。
最初こそ、新たなるエネルギー源として、期待されていたが、蓋を開けてみりゃそこは地獄だ。
感染した奴は迫害され、激痛にのた打ち回って死ぬ。喉に源石結晶ができれば窒息するし、目にできれば内側から潰される。
人じゃないのに、あそこまで酷い殺し方をするところからは、カミサマの悪意を感じる。
けどよ、俺はこんなふざけた病を治してやるんだ。絶対に。
アイツは俺の夢だったモノを聞いても笑わなかった。むしろ肯定してくれた。
諦めた俺の事を罵り、発破をかけてくれた。
俺にかつての夢だったモノに、もう一度向き合わせてくれた。
そして、今。俺は再びその夢を追いかけようとしている。1年前までには有り得なかった事だ。
アイツには感謝しきれねぇな。大の大人が情けない。
通りのベンチに座り、さっきコンビニで買ってきたコーヒーを飲みながら求人誌を開く。
あそこまで言ってくれたんだ。やるしか無い。
空を見上げれば、そこには雲一つない、綺麗な夕焼けがあった。
アイツは無事に龍門から出る事が出来たのだろうか?
少し前に、アイツの龍門での移動手段を見せてもらったが、スゲェな。あれはパルクールとか言う奴だ。
あれならゲートを越える事なんて楽勝だし、近衛局の連中なんか目じゃ無い。
まぁ、大丈夫だろ。
それに、いつかまた何処かで会える気がするしな。
そんな事を考えながら、求人誌に書いてある文字を目で追っていく。
できるなら医療機関に、そうでなくとも研究機関がいい。
しかし、ここで元シシリアンという肩書きが重くのしかかる。
けど、それでも受け入れてくれる所はあった。
そうだな、ライン生命か…。ん〜。いや、やめておこう。
あそこは側から見れば、スゴい優秀な企業だってのは分かる。しかし、なんて言うんだ?こう、得体の知れないモノを感じる。
まぁ、他がダメだったら大人しく行ってみるがな。
…ん?出身、経歴、鉱石病の有無、問いません。実力と強い意志…か。
製薬会社 ロドス・アイランド、か。………いいな、ここ。
ちょっと変だけど、何処か眩しかった。それが初めて会った時の感想かな。
確か、3年くらい前のことだったかな。あの時はまだ弱くて、強い奴らのモノをコッソリ盗んだり、残骸やゴミを食べて過ごしてた。
綱渡りもいい所だったね。
そんな風に、一生懸命生きていた訳だけども、絶対に失敗しない人間なんかいないわけで、遂にやらかしちゃった。
最後に食べたのが2日前でーーとても人が食べる物じゃ無かったけどーー兎に角、お腹が減っていた。
適当にそこそこ強い奴の家に忍び込んだんだ。
探ってみたら、みんなから暴力で巻き上げた食料が沢山出てきた。缶詰なんか初めてみたかな。
やった、て思いながら抜け出したんだけど、目の前の物に注意が行き過ぎて他の意識が疎かになっていたらしい。
強い奴に鉢合わせた。
…そこからは酷かった。
後ろには強い奴の仲間、弱い奴までいて、無事なところが無いくらいに殴られて、蹴られた。
隙を伺ってみても、当然、囲まれていれば逃げるなんて無理な訳で。
それでも強い奴は怒りがまさっていたのか、犯されはしなかった。本当に運が良かった。
意識が朦朧としてきた時に、変化が起きた。
真っ暗な筈の通りに青い光が灯った。バチバチという音を聞いてから、漸くソレが強い奴がアーツで生み出した電撃だと気づいた。
初めてアーツを見た。だから、何が起こったのか分からなかった。
瞬間、痛みが爪先から脳天まで体中の全てを貫いて、地面にへたれこむ。
強い奴が舌打ちをして、漸く電撃を喰らったのだと気付いた。
出力が不安定だったみたいで、命に関わる物では無かった。少しだけほっとした。
それも強い奴の手がさっきよりも強い光と音を立てた途端消え去った。
ああ、こんな所で死ぬのだと。
もっと生きたかった。美味しい物を食べたかった。此処から出たかった。
普通の女の子として生きたかった。
この時、ボクの涙腺が渇いていないことに気付いた。ホント、どうでもいい。
アイツの手が迫ってきて、もう諦めた時だった。
アイツの首が有り得ない方向を向いた。後ろにはいた奴らはいつの間にか居なくなっていた。
もう動かなくなり、ただの肉塊と化したモノが倒れたところにカイキはいた。
下向きに生えた角と肩の源石結晶が月明かりを反射して綺麗だったな。
そのままカイキはボクを治療してくれた。
ボクはなんで助けたのか聞いてみた。助けられたのは初めての事だからだ。
今でもカイキが行った言葉を覚えてる。
ーー女は男が守るものだーー
それを聞いて呆けてしまったボクは悪くないと思う。
何を言ってるんだ?コイツは。
此処はスラム。優しさなんて邪魔なだけだ。
どうせ、後でボクに何かするつもりだろう。カイキに背負われながらどうやって殺すかを考えていた。
その時は動けなかったのだ。あの時もっと匂いを嗅いどけば良かったと後悔する。
1週間目、何かをしてくる様子はない。むしろ食べ物を毎日くれた。
2週間目、居心地が良くて、悪くないと思っているボクがいる事に驚いた。
3週間目、動けるようになった。…出て行く気はしなかった。利用出来ると思ったからだ。英断だったぞ。過去のボク。
それからは、警戒心も薄れていって、助け合って、仲良くなって…。
好きになっちゃった。
もしボクがスラム暮らしじゃなくて、強い奴が悪漢で、そこでカイキが助けてくれたらその時点で惚れていただろう。要するに時間の問題だったわけだ。
そして今朝に至る。今思い出すだけでも思わず口の端が緩んでしまう。
一緒に生活してから、あんな事は初めてだった。
もしかしたらカイキもボクの事が………頭を振る。
プレゼントと称して鉤縄をくれる奴だぞ。…まぁ、嬉しいけど。
それでもいつか、このスラムを出る事が出来たら…なんて考える。
今はまだ夢物語だけど、絶対に叶えて見せる!
そんな決意を抱きながら家に帰る。
…カイキは帰ってきていない様だ。珍しい。
まあ、帰ってきたら仕返しとして抱き着いてやろう!そんな事を考える。
ああ!…早く帰って来ないかな〜。
え?
ホモ君にはライン生命で生まれ変わって貰います。(鬼畜)
誤字報告ありがとナス!
ボカロを参考に小説を書くのはOK?
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構わん。書け(寛大)
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他人の作品参考にしなきゃ書けねぇのかクズ