新・刀使ノ乱舞 作:エクスカリバー!!
プロローグ(刀使side)
『……ああ、そうか……こんなにも簡単なことだった……』
それは今でも分からない不思議な体験だった。
『ありがとう。君のおかげで私は、
幼い頃に出会った、不思議なひと。
『全ては今日……この未来の為にある。君の母上が、君という
お兄さんの言っている事は、未だに理解出来ない。
分かるとしたら、彼は何か答えを得たという事だ。
『僕は世界を守り、そして……君を守るよ、可奈美』
そう言い残し、光となって消えた不思議なお兄さん。
もう、顔はほとんど覚えていないけど、また……会えるかな?
● ● ● ● ●
ドンドン…!
「可奈美ちゃーん!起きてるー?」
「う……う~ん……」
ここは刀使の育成機関である『美濃関学院』。そして刀使とは世の平和を守る為に剣を振るう巫女達である。
その美濃関学院の寮内の1つの部屋
そこで鳴り響くノック音、そして少女の声。
その2つにより、この部屋の主で美濃関学院中等部2年『
「ふぁ~い~~(m´Д`)m」
「ふぁーい、じゃないよ、可奈美ちゃん」
そう言うのは、可奈美と同学年で親友の『
よく見ると、彼女の腕には大きな旅行鞄があった。そして、何か急いでいるようにも見える。
「おはよう、舞衣ちゃん。どうしたの?」
「もう……可奈美ちゃん……今日は何の日か覚えてるかな?」
ニッコリと笑う彼女。だが心のそこから笑ってる訳ではない。
「えっと確か……今日は鎌倉の御前試合の会場に行く日……だよね?」
この2人は、鎌倉で行われる御前試合の代表選手に選ばれた2人だ。
「うん。そして、今の時間は分かる?」
「えっと……」
チラッと、部屋にある時計を見ると─────
「7時………30分過ぎ……」
そういえば、新幹線の時間は────
「8時14分だよ」
「(;゚ロ゚)」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
美濃関学院 学長室
カキカキ…と書類にサインや内容に目を通す女性。そして、窓の外を見ながら
「そろそろ、衛藤さん達は駅に向かったかしら……」
「寝坊したーー!!」
「まだみたいだったみたいね……」
ハァ~…とため息をつくのは、美濃関学院の学長『羽島 江麻』。
「本当に、貴女によく似たわね……
そう言って、机の上に飾ってる写真を懐かしそうに見つめた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
岐阜羽島駅
「いやー、危なかった危なかった……」
「ホントにそうだよ~!」
「舞衣が起こして、私たちが手伝ってなかったら、どうなっていたやら……」
「ホントにすいませんでしたー!」
もう土下座する勢いで同級生達に頭を下げる可奈美。
あの後、大急ぎで着替えて、昨夜に準備した荷物を同級生達に頼んで、羽島学長が用意した車まで運んで貰い、駅に到着。何とか新幹線の時間には間に合ったのだ。
「可奈美、降りる駅間違わないでよ?」
「もう!そんな子供みたいなこと───」
「可奈美ならあり得るかも」
「美炎ちゃんっ!?」
「あ~、確かに~……」
「この間の親善試合も、遅刻したあげく、試合会場間違えてたっけ?」
「うぐっ!?その事を言われると……言い返せない……」
トホホ…と項垂れる可奈美。しかし、すぐ頭を上げて
「で、でも舞衣ちゃんがいるから間違えないよ!絶対っ!!」
「結局、舞衣頼みかいっ!?」
「夫婦か!」
「だとしたら可奈美が奥さん?」
「いやいや美炎、可奈美がダメ旦那、舞衣がちょー出来る奥さんだよ」
「なるほどっ!」
「なるほどっ!、じゃないよっ!?なんで私がダメ旦那なの!?」
「「剣術以外は見どころがない!!」」
「Σ( ̄□ ̄)!」
アハハ…!と皆で笑いあってる内に、新幹線の時間が迫ってきた。そして、皆で改札へと向かう。
そこで、仲間の1人である『安桜 美炎』が前に出て来る。そして2人は黙って拳を合わせる。
「行ってくるね、美炎ちゃん」
「優勝……してきてよね。代表戦で私に勝ったんだからさ。それと……楽しんで来て」
「うん……もちろん!」
「私もみんなと一緒に後で鎌倉に応援に行くから。一応補欠だけど、私の出番とか作ったら許さないから!」
「分かった、頑張る!あと、帰ったらまた立ち会いしよ!美炎ちゃんとの試合、凄くワクワクするから!」
彼女と戦った準決勝。流派に縛られない動きで、少し押されそうになったが、可奈美はそれに打ち勝てた。
「///なっ!?ちょっ……照れちゃうじゃん~!あーー!もう、分かった!じゃあ帰ったら再戦!約束だからね!」
「うん、約束だよ!」
そうして仲間たちからの声援を受けて、可奈美達は新幹線に乗り込み、御前試合がある鎌倉へと向かった。
ぐぅ~……
「うっ……そういえば、慌てて朝ごはん食べてなかった……」
一応新幹線に乗る前に駅弁は買ってあるが、食べるにはまだ早い。だが、腹の虫は我慢が出来ないようだ。
「はい、可奈美ちゃん」
そこに、舞衣から小さな箱を手渡された。
蓋を開けると、サンドイッチが入っていた。
「うわー、サンドイッチー!ありがとう、舞衣ちゃんっ!」
「お礼なら、学園長に言って。『衛藤さんは絶対朝ごはん食べ忘れるから』って」
「なんだろう……嬉しいけど何故か、悲しい……」
そう言いながらサンドイッチを1つかじる。
野菜はシャキシャキしており、ハムが少しジューシーさを感じさせ、ピリッと感じるマスタードの辛みで目が覚めるようだ。
「それと、これはデザートだよ」
そして今度に出したのは、可愛らしい柄の小さな袋。
その中身はと言うと
「うわ~い!舞衣ちゃんのクッキー!」
趣味がお菓子作りの舞衣お手製のクッキーが詰まっていた。
そして、羽島学長のサンドイッチを食べながら、お茶を飲む可奈美。そこに舞衣が
「そう言えば、今日も見たの?可奈美ちゃんがたまに見るって言う不思議な夢。この間の御前試合の日も見たんでしょ?」
不思議な夢。あの青年と出会ったあの夢。あれを見ると、大抵可奈美は寝坊するのだ。
「確か、小さい頃……お母さんが亡くなった頃に会ったって言ってたっけ?」
「うん。顔はよく覚えてないけど、不思議な人だったのは覚えてる。なんか『ありがとう』とか、『未来のために』とか……なんか『守る』って言ってた気がする……?」
「不審者とかじゃないよね?」
「分かんない。いつの間にかそのお兄さんが居なくなってたし……」
そして、可奈美は舞衣のクッキー1つを口に放り込む。
「モグモグ……う~ん!やっぱり舞衣ちゃんのクッキーは最高っ!私、舞衣ちゃんのクッキー大好きだよ!」
「私は、そう言って美味しそうに食べてくれる可奈美ちゃんの顔が好きだよ」
そうして2時間、新横浜までクッキーを味わい、舞衣と会話をしながら可奈美は明日と御前試合へのワクワクを高めていた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
可奈美達が新幹線に乗り込んだ頃
岐阜羽島駅前
可奈美達を見送った後、美炎はある女生徒と話していた。
「行っちゃったね。あの子たちが、美濃関の代表?」
オレンジ色の制服で、美炎よりも年上の女生徒。長船女学院の『
「そうだよ、『衛藤可奈美』ちゃんと『柳瀬舞衣』ちゃん。2人とも私なんかよりずっと強いんだよ!私ももっともっと頑張って、強くならなくちゃ!」
そうまるで嬉しそうに、話す美炎を見て、変わらないな~と思う智恵。
この2人は学院は違うが、幼なじみである。幼い頃、智恵の方は親の都合で岡山へ引っ越して行ったが、2人の交流は続いていた。
そして、今回の御前試合前に、智恵が久々に美濃関に遊びに来たのだ。
「頑張ってね。それじゃ、私はそろそろ帰るとするわ。ちょうど良いから西行きの新幹線でね」
「えっ!?ちぃ姉もう帰っちゃうの?」
「美炎ちゃんも鎌倉行きの準備があるんでしょ?大丈夫、直ぐまた会えるわ」
そして、智恵は駅の方へと向かって行こうとしたが、美炎の方へと振り返り
「美炎ちゃんもやっぱり
「うん……ごめん、分からない。家の人もいつの間にか居なくなってたって言ってたし……捜索願いも出してるけど……」
「そっか……大丈夫だよ美炎ちゃん。
「……うん!」
そして、智恵は駅内へと歩いて行った。
3人を見送った美炎は、晴れた青い空を見上げながら
「そうだね、大丈夫だよ……必ず生きてる……そうだよね……義勇くん?」
そう願い、自分に言い聞かせながら、いつも持ち歩いてる
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
鎌倉駅
昼過ぎ、可奈美たち一行は鎌倉へと着いた。
駅周辺では、美濃関以外に『鎌府女学院』、『綾小路武芸学舎』、『長船女学院』の生徒がチラホラ見えた。
この中に明日の御前試合の相手が居る。そう思うと、可奈美の心はワクワクが溢れ出そうだった。
そして2人は明日の御前試合の会場であり、刀使達をまとめ上げる『折神家』へと向かった。
そこはまるでお城のような門と、山1つ丸々を拠点としたお家が建っていた。
「うわ~!凄い、凄いね舞衣ちゃんっ!!」
「これが折神家……」
可奈美はキャーキャーと、騒いでいるうちに舞衣は壮大の日本風の正門で言葉を失いかけていた。例え自家の柳瀬グループでもそこまで大きな建築がなかったはず。
「ねぇねぇ、ちょっと記念写真撮ろ────」
スマホのカメラを出した瞬間、可奈美の目に1人の刀使の姿が入る。
距離がちょっと遠いけど、肉眼が捉える視界に自分と同じくらい年頃の刀使がいた。
制服の色から、『平城学館』の者ということが分かる。
すると、向こうもこちらに気付いたのか、こちらに向かって来る。
「こ、こんにちは!貴女も明日の試合に出るの?」
「………」
長い髪の刀使は何も答えず、その場を後にしようとした。その瞬間────
ポォーーーー……
「「っ!?」」
突如、2人の持っていた御刀から不思議な音と、感覚を感じる。
二人は同時に抜刀の構えをするが……その音が直ぐに収まった。長い髪の刀使もその不思議な音の後、何事も無かったかのようにその場を後にした。
「えっと……大丈夫、可奈美ちゃん?」
「う、うん……けど、今の……」
一体何があったのか、と自分の御刀『千鳥』を見つめた。