新・刀使ノ乱舞   作:エクスカリバー!!

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刀剣類管理局 とある部屋


カタカタ……ガチガチ……

薄暗い部屋の中、パソコンのタッピング音と爪を噛む音が鳴り響────

ダンッ!

「クソッ!!何故だ!?何故手がかりが見つからないっ!?」

ダンッ!ダンッ!と机を叩き、イライラを隠す気が無い練府学長の高津学長。

彼女は先ほどから、反逆者が現れたとされる場所の周囲の防犯カメラ映像を解析しているが、どういうことか、一向に手がかりが掴めずにいた。

まるで、先んじて映像を改ざんされたかのように。

このままではダメだ。

反逆者を捕らえて、紫を守らないと、自分がここにいる意味が無い。

『相変ワラズ荒レテイルナ?』

そこに何者かが、高津学長の背後に現れる。

高津学長は驚きもせず、むしろ鬱陶しがるように振り向き

「なんだ、何の用だ!私は忙しいのだ、邪魔をするのなら────」

『コノナンバーの車ヲ探セ』

そう言って、何者かが高津学長に1枚のメモ書きを差し出す。

「なんだこれは?」

『オ前ガ欲シガッテイル、手ガカリダ』

それを聞くと、高津学長がバッとメモ書きを奪い取る。

「……確かなんだろうな?」

『信ジルカ否ヤ、ソレハオ前次第ダ』

そう言う何者かは、暗闇の中で不気味に笑っていた。





無想の剣 VS 刀鍛冶

 

 

羽島学長の知り合い『恩田 累』により、彼女のマンションへとやって来た可奈美たち一行。

 

シャワーを浴び、食事を済ませ、テレビをつけてニュース番組を見る。

 

ニュースには、今日芸能人が一日駅長したことや、動物園からサルが逃げ出した等が流れ、最後に御前試合に関するニュースが流れた。

 

可奈美や姫和は、緊張しながら見るが、彼女たちが折神紫を襲撃したことは一切報道されなかった。まるで何事無かったかのように。

 

とりあえず一安心していいのか分からないが、可奈美はテレビのチャンネルを変えて、他のニュース番組をチェックする。しかし、やはり何処のニュース番組も2人のことは報道されていなかった。

 

「警察発表はされてないみたいだね」

 

「………あなたは何を、どこまで知っているんですか?」

 

累が缶ビール片手に話しかける。そこに未だに御刀を片手に持つ姫和が尋ねた。

 

「一応羽島学長から一通り。まさかあの()()の折神紫に御刀を向けるなんて。まあ、余計な詮索はしないけど。学長からも言われてるしね。もちろん、あなたたち(セイバーたち)のことも」

 

()()()()()()()、の間違いでは?」

 

「……ノーコメントで」

 

そして累は明日、仕事が早いということで、先に自室へと行った。留守の間は、この部屋は好きに使って良いとも言って。

 

「……さっきのはどういう意味だ?」

 

「さて、君たちも寝なさい。僕ら2人は交代で外を見張ってるから」

 

「え、寝ないの?」

 

「2人は気にせず、ゆっくり休んでくれ」

 

「げっ!?またかよ……」  

 

「当たり前だ(いつ時間遡行軍が介入してくるか分からないからね)」

 

「了解……(それもそうだな)」

 

セイバーたちもリビングに用意された布団の上に座り、まずセイバーがカーテンの隙間から、外の警戒にあたり、和泉守が先に仮眠を取った。

 

可奈美もセイバーの言葉に甘え、彼女たちに用意された和室に向かおうとした時

 

「可奈美、少しいいか……?」

 

「?」

 

 

和室に入ってから、姫和は可奈美に彼女が見たと言う折神紫の背後のものについて聞いてきた。

 

「えっと……一瞬だったからよく分からなかったけど……姫和ちゃんを睨んでるように見えたの」

 

「睨む?荒魂が……?それはどんな形だった?」

 

「う~ん……形と言うか、なんというか……ギョロッとした目がある感じで……」

 

「目、それは確かか?」

 

「うん、それは確かに」

 

「何故言い切れる」

 

「そりゃ刀使だから!」

 

「………一瞬と言ったな。気配が消えたと言うことか?」

 

「ううん。なんて言うか……刀使が写シを張る時の感じに似てたかも。えっと、隠世(かくりよ)?ってとこに潜った感じかな?ご当主様が御刀を抜いた時に見えたから……」

 

()()()()()()()()()……!」

 

姫和が紫に刃を向けた時、紫が使った御刀は『大典太光世』と『鬼切安綱』。どちらも名高い名刀、オリジナルは折神家が保管していると聞く。しかしその御刀の存在は聞いたことがない。もしかすると、隠世に保管しそこから取り出したと言うことになるのか。

 

「(だとしたら、他にも名高い名刀を持っているのか……?)」

 

「ねぇ、セイバーたちと協力して、みんなにご当主様のことを話して、みんなで倒せないかな?」  

 

「それが出来たら既にやっている。刀剣類管理局や特別祭祀機動隊は既に折神紫が完全に掌握している。揉み消されて終わりだ。しかも、警察組織とも繋がりがあるから、警察も当てに出来ない」

 

「うぅ~……ダメか~」

 

どうするべきか…そう考えてた時、ふと可奈美が聞いた。

 

「ねぇ……姫和ちゃんはやっぱりもう一度ご当主様に挑むつもりなの?」

 

「ああ。2度目は無いと思っていたが、この命がある限り、必ず大荒魂を折神紫ごと倒す」

 

「………それは無理だと思う」

 

「なに?」

 

「なんとなくだけど……ご当主様の実力は桁が違いすぎる。姫和ちゃんがもう一度挑んでも、たぶん同じになると思う」

 

「…………」

 

そんなこと、言われずとも姫和が一番分かっている。分かっているが、挑むしかないのだ。

 

それが姫和の使命であり、彼女の生きる理由なのだから。

 

「(それに……)」

 

ふと、部屋の外にいるセイバーたちのことを思う可奈美。

 

荒魂を倒せる彼ら。その実力は自分たちを遙かに凌ぐ。そしてあの時、彼らは()()()()()()()()

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

チクタク…

 

 

暗い部屋の中、時計が静かに音をならす。

 

そしてカーテンの隙間から月日が僅かに入り込んでいる。その光を頼りに、セイバーはスマホに届いた審神者からの連絡を見ていた。

 

「(練府が本格的に……遂に我慢の限界らしいな……折神紫と親衛隊は未だに本部から動く気配無しか……)」

 

「Zz……Zz……」

 

隣ではぐっすりと眠る和泉守。そろそろ交代だが、もう少し寝かせようと思うセイバー。

 

「(()()()()()()()……これで準備は良いな……)」

 

そして、可奈美たちが寝ている部屋の方へと向く。

 

「とりあえず、今のとこはこちらも問題なしっと……」  

 

ポチッと返信を送ったセイバー。ふぅ~と一息を入れてキッチンへと向かい、コップに水を入れひと飲み。

 

「それにしても、可奈美があの迅移を見えていたとは……」 

 

姫和が見せた迅移を超えた迅移。それを捕らえることが出来たのは、あの会場内で、零課でも練度が高いセイバーと和泉守、菊一文字ぐらいかと思っていたが、まだ少女の可奈美も目で捕らえていた。

 

「流石、『藤原美奈都』さんの娘か……それとも……」

 

それから少しして、和泉守と見張りを交代し、眠りについた。

 

 

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

? ? ?

 

 

「相手が小手狙いで来たら後詰めに持ち込んで……引いて上段で来たら、合い掛けに仕掛ける────」

 

白い霧でほとんど周囲が見えない空間。

 

僅かに大きな鳥居と、長い階段が見える。

 

その階段に腰掛け、ひたすらイメージトレーニングをするある御刀を持った黒い学生服を着た少女が1人。

 

「じゃあ下段で来たら……えっと……」

 

「くねり切りで良いんじゃないかな?」

 

そこに、下から可奈美がやって来た。すると学生服の少女は待ってました!と言わんばかりに立ち上がり

 

「来たね~、いやぁ~退屈でホント死ぬかと思ったよ?」

 

「ははは……(()()()()()()()()()()()……)」

 

「そんじゃ、いつものやりますか!って……どしたの、元気無いじゃん?」

 

一目で悩みがあることを見抜く学生服の少女。流石だな~…と思い、ここ最近のことを彼女に話した可奈美。

 

 

「そっか~……そりゃ、大変なことになってるねぇ~……」

 

「うん……私の勝手で、舞衣ちゃんに迷惑かけてるし、美炎ちゃんや羽島学長、美濃関のみんなに心配かけちゃって……」

 

「けど、可奈美のその行動で、もう1人の友達を助けられたんでしょう?可奈美の行動は確かに可奈美らしいと思うよ。だから、友達も何も言わずに送り出してくれた。心配をかけた人たちには、全部終わったらちゃんと謝ればいい」

 

「そう……かな?」

 

「そうだよ!それに、可奈美は1人じゃない。そのセイバーって言う人たちも可奈美の行動を認めてくれてるんでしょ?」

 

彼女の言う通り、セイバーは可奈美の意志を尊重してくれた。可奈美の行動を支持し、迷えば導いてくれる。

 

そんな彼の行動こそ、褒められたものだと思う。そしてそんな彼の背中は誇らしく、どこか寂しさを感じさせる。

 

「ねぇ……もし、誰にも言えないくらい重いものを背負ってる人が目の前にいたら……どうすれば良いと思う?」

 

「う~ん……それは……」

 

「それは?」

 

すると、学生服の少女はニコッと笑いかけ

 

「可奈美、それはもうあなた自身が分かってると思うよ」

 

「えっ、それって────」

 

「さあ!揃っ立ち会いしよっか、立ち会い!」

 

「えぇ~!?教えてよ~!」

 

「それじゃ、私に勝ったら教えてあげるよ!」

 

「よ~し、今日こそ私が勝つよお母さん(師匠)!」

 

「かかっておいで、私の可愛い弟子(可奈美)!」

 

 

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

翌日 鎌倉 

 

 

「可奈美、まだ見つからないのかな~?」

 

「舞衣も残るって言うし……」

 

「美炎もなんか任務で行っちゃうし……」

 

「一体どうなるのかな……」

 

ようやく御前試合に来ていたそれぞれの学院の生徒たちは解放され、それぞれの学園に戻ることになった。

 

ただし、今回の事件は他言無用、口外はするなと命令を受けて。

 

そして、美濃関の仲間たちが高速バスに乗り込む様子を離れた場所から見送る舞衣。

 

「みんな、ごめんね……ん?」

 

ふと、隣に止まっている車を見ると、銀髪の刀使が車に乗り込んでいた。その顔には見覚えがある。

 

「あの子……確か練府の代表選手の────」

 

「Hay、Ladyヤナセ!」

 

突如、英国とカタコトの日本語で声をかけられ、振り向くそこにはまるでこれからバカンスにでも行くのかと思うような各国をした2人組。

 

彼女たち顔も見覚えがある。

 

「あなたたちは長船の……」

 

「YES!『古波蔵エレン』デース!こっちはカオル」

 

「『益子薫』だ……」

 

「任務ご苦労さまデシタ!お友達のこと心配だけど、落ち込まないで下サーイ!」

 

「は、はぁ……」

 

初対面の相手を慰めてくれるいい人なのだろうが、ちょっと調子が狂うような相手だな…と思う舞衣。

 

「ご挨拶出来て良かったデース!ワタシの両親とアナタのDaddyはお仕事のパートナーデスからね!」

 

「えっ、父と?」

 

舞衣の父親、即ち柳瀬グループとエレンの両親は仕事で繋がりでもあるのか。そう思ってた時、隣の薫が面倒くさそうな顔をして

 

「おい、エレン……早くしろよ……」 

 

「そう言えばそう格好、これからどこへ?」

 

「ワタシたち、やっと自由にナリマシタ!なのでこれからVacationデース!」

 

「絶好の海日よりだからな!」

 

『ネー!』

 

ヒョコッと薫の頭から出て来たのは、リスのように小さいが、明らかにリスとは違う生き物。

 

「それって!荒魂じゃあ!?」

 

「違う、オレのペットだ。名前は『ねね』」

 

「ねねはカオルの友達デース」

 

『ネネー!』

 

よろしく!と鳴く荒魂こと、ねね。すると、その視線は舞衣の顔から下の方へと下がっていき

 

「?どうかした?」

 

胸「キラキラ✨」

 

『ね、ね、ね~……ねねー!』

 

何か目つきがいやらしくなり、ピョンと舞衣の胸へと飛び込んで────

 

ガシッ!

 

「やめろ、エロ荒魂」

 

『ねねっ!?』

 

「こんなことしてねぇで、サッサと行くぞ」

 

『ねね~……(涙)』

 

「では、また会いましょう!See you,()()()()!」

 

バイバイ!と手を振る彼女たちに、とりあえず手を振り見送る舞衣。最後まで、彼女たちのペースに飲まれてしまった。

 

「え、『マイマイ』って私のこと?」

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

刀剣類管理局本部 休憩所

 

 

「お疲れーっす」

 

「お疲れさん」

 

「なぁ、今日飲みに行こうぜ?」

 

「いいね!」

 

事件はまだ片付いていないが、休憩所にはそこそこの局員たちがくつろいでいた。

 

その中には、局員の制服を着た鶴丸が紛れ込んでおり、スマホを眺めていた。

 

「(えーと……長船は岡山に向かって先ほど出発。薬研と蜻蛉切が追跡を開始と……まあ、舞草の本拠地だからなあそこは……)」

 

ピコン♪と、また通知が表示され、今度は村正からだった。

 

「(セイバーたちのマンションに到着、これから2人のサポートにまわる、ね……あの爺さん、珍しく張り切ってるな~……)」

 

そして、スマホをポケットに入れ、飲み干したコーヒーをゴミ箱に放り投げる。

 

「さて、俺も仕事しますか!」

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

累のマンション

 

 

ポォォ……

 

朝になり、累は既に出掛けた後、姫和は御刀を抜き精神を集中させ、状態を確かめる。

 

「………よし、完全に回復した」

 

これでまた全力を振るえる。だが、それでこれからどうするのか。

 

セイバーは朝早くにゴミ袋を持って累と同じぐらいに出掛けた、と和泉守が言っていた。つまり今この部屋には、姫和と可奈美、和泉守の3人が残っていることになる。

 

すると、隣の居間でガチャガチャと音がした。何事かと思えば、可奈美が昨日セイバーたちが片付けたゴミ袋をまとめようとしていた……のだが

 

「さっきより散らかってないか?」

 

「うぅ……お世話になったから、せめて掃除しようと思ったのに……(T-T)」

 

「……和泉守はどうした?」

 

「冷蔵庫がほとんど空っぽだったから買い物に行くって……」

 

つまり、この散らかった部屋を彼女たちだけでなんとかするしかないようだ。

 

「(~_~;)……」

 

 

 

「ふ~ふふ~ん~♪」

 

「これは燃えるゴミ……こっちは……」

 

それから数時間……姫和の指示であっという間に片付いていき、昼頃には掃除だけでなく、溜まっていた洗濯物や洗い物全部片付いていた。

 

「だいたいこんなもんかな?」

 

「スゲぇな、帰って来たら昨日と全然違う……」

 

あまりの部屋の片付き具合に、危うくパンパンの買い物袋を落としそうになる和泉守。

 

それほどまでに、あのゴ○ブリが出てくるような部屋が綺麗になっていたのだ。

 

「凄いでしょ!凄いでしょ!ま、ほとんど姫和ちゃんのおかげだけどね!(ドヤ顔)」

 

「何故お前が威張る……それにしても、ホントに凄いな十条」

 

「別にこのくらい……」

 

なんてことない、と言うかのようにキッチンで和泉守が買ってきた食材を冷蔵庫にしまう姫和。

 

「いやいや、実際に凄いだろう。俺とセイバーじゃ、こうはならなかったぜ。月並みだが、お前は良い嫁になれるぜ。その相手が羨ましいぜ」

 

「………そうか」

 

そう言い、姫和は冷蔵庫に和泉守が買ってきた食材を入れる。和泉守は可奈美を手伝い、ゴミ袋をまとめ玄関の方へと運んだ。

 

そしてその時、和泉守は気付かなかった。姫和の耳が少し赤くなっていたことを。

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

管理局本部 指令室前

 

 

「ハァ~……」

 

指令室で報告を終えた舞衣の表情は暗かった。練府学長の高津学長にこっぴどく叱られた後だからだ。

 

 

「何故逆賊を捕らえなかった!?」

 

 

「ノロの回収など後回しにしろ!」

 

 

「討伐など……まさか逃亡を手助けした訳ではあるまいな!?」  

 

 

確かに舞衣の任務は可奈美たちを捕らえること。だがそれ以前に彼女は刀使。目の前の荒魂を放置する事こそ如何かと思う。

 

だから舞衣は、その事を高津学長に言った。

 

 

「わ……私は刀使、です……荒魂から人々を守るために、私たちがいるのでは、ないのですか?」

 

「なんだと、貴様っ!!」

 

「っ!!」

 

 

流石に言い過ぎたと、後から思った。高津学長の怒りが高まっていることを、離れた場所にいる舞衣にも十分伝わるほどに。

 

そして、高津学長が舞衣の元にズカズカ近付こうとしたが、親衛隊の真希がそれを止めた。

 

「高津学長、彼女の言うことは確かです。それを咎める理由はありません」

 

「貴様っ!紫さまの親衛隊のくせに!」

 

「親衛隊である前に、自分も彼女と同じ“刀使”です。あなたもかつてはそうだったでしょう?」

 

「………ふん!」

 

 

その後、真希に言われ舞衣は指令室を後にしたのだ。

 

部屋を出た後、彼女の手は汗だらけで震えていた。

 

分かってはいる。自分のしたことは命令違反であることを。あんなことは言い訳に過ぎないと。

 

けれど─────

 

「柳瀬さん」

 

「っ!……羽島学長……」

 

声をかけられ、振り向くと羽島学長が舞衣の元にやって来た。

 

「大丈夫、柳瀬さん?」

 

「すいません、羽島学長……ことの重大さは分かっています。でも!私は可奈美ちゃんを信じて─────」

 

「柳瀬さん」

 

ニコッと笑いかける羽島学長。そして舞衣の耳元に近づき、周りに聞こえないように呟く。

 

「衛藤さんたちなら、大丈夫よ」

 

「えっ、それって……?」

 

何故彼女がそんなことを言えるのか?そして、歩き出した羽島学長の後をついて行こうとした時

 

「ねぇねぇ、せっかく見つけたのに逃げられたってホント?」

 

今度は誰かと思ったら、これまた予想外の人物だった。

 

親衛隊の制服を着た、小柄の少女。

 

「親衛隊第4席の……!」

 

「(ニヤッ)」

 

 

ヒュンッ!

 

 

「……!?」

 

「アハハッ!弱い弱い~!」

 

一瞬だった。一瞬の迅移で間合いに入られ、御刀の刃先が舞衣の頸元を捕らえた。

 

舞衣に全く反応させず。あまりにも自然に、また鮮やかに。

 

「そもそもお姉さんじゃ、あの人たちには勝てないよ?」

 

「っ!」

 

「燕さん、御刀を納めない」

 

羽島学長に言われ、はぁーい、と大人しく御刀を鞘に戻す結芽。そしてもう興味を無くしたのか、舞衣たちの元から去って行った。

 

 

 

「やっぱりあのお姉さんたちじゃないとダメだな~……あのお姉さんたちを倒せば……菊兄に追いつける……!」

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

累マンション近くの公園

 

 

無邪気に遊ぶ子どもたちや、会話を楽しむ老人たちでいっぱいの公園。その中のベンチの1つに腰をかけるセイバー。

 

鬼ごっこをして楽しむ子どもたちを見ながら、少し和んでいる彼に、背後から気配を感じる。

 

「………任務、ご苦労さまです」

 

「いえ、仕事ですから………」

 

背後には、黒スーツを着た男性。男性は誰にも見られないようにセイバーの隣の席に小さな封筒を置く。

 

セイバーは封筒をあけ、中を確認する。

 

中には管理局に潜入している鶴丸と菊一文字、赤羽刀調査隊の監視をしている義勇たちの状況を記したものだった。

 

「では、私はこれで」

 

フッと、気配が消える。どうやら行ってしまったらしい。だかセイバーは気にせず、中身を読む。

 

「(長船が行動開始、薬研と蜻蛉切が追跡中……赤羽刀調査隊は原宿の青砥館にて情報収集……そして────)」

 

その先には、セイバーがずっと気になっていたことが書かれていた。

 

「ここ最近、次元の歪みを頻繁に観測………か」

 

そろそろ、本格的に事が進むかもしれないことを、感じ取るセイバー。

 

そして、報告書を封筒に戻し封のせんをなぞると

 

ボォッ!

 

一瞬で封筒が燃え、灰になった。

 

「そろそろ、戻るか……」

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

累の部屋

 

 

グツグツ…ジュウ~…

 

キッチンから姫和の作る煮物の美味しそうな香りが、部屋中に広がりつつあった。

 

その隣では、和泉守がフライパンで豚肉を豪快に焼いている。

 

「うわ~!姫和ちゃんと和泉守さん、料理上手だね!」

 

「料理上手の知り合いたちから少し教わっててな、まだ難しいものは出来ないが、これくらいは出来るぜ?」

 

和泉守の記憶に、台所に立つ2人の刀剣男士の姿が浮かび上がる。

 

「私は以前、母親によく作っていたからな。最近は滅多にしなくなったが……」

 

それでも、体は覚えているものだなと思う姫和。

 

「お母さんに?」

 

「ああ……私の母も元刀使だったんだが、長患いで去年、亡くなった……」

 

「………そっか、姫和ちゃんのお母さんも………」

 

「………」

 

隣で聞く和泉守は、2人のその辺りの事情は知っていた。だが、やはり良い気分なものでは無い。

 

「ん……」

 

「な、なんだ?!」

 

すると、和泉守はワシャワシャ…と姫和の頭を撫でた。

 

「いや………なんとなく………」

 

「?」

 

一体何なのだ?と思う姫和だったが、僅かに感じる和泉守の温もりと優しいさを感じとり、それ以上は何も言わなかった。

 

そんな光景をフフフ…と笑う可奈美であった。

 

ガチャ…

 

「ただいま~」

 

と、そこにセイバーが戻って来た。

 

「あ、お帰りセイバー」

 

料理中の2人に代わって、可奈美が玄関でセイバーを出迎えた。

 

「あれ、それどうしたの?」

 

帰って来たセイバーの手元に、ビニール袋が握られていた。買い物なら、和泉守が行っていたはずだが。

 

「ああ、コレはね────」

 

ガサゴソ…とセイバーが袋から取り出したのは、パックに入った真っ白な大福餅であった。

 

「うわ~、大福餅!」

 

「食後のデザートにね」

 

やった!と喜ぶ可奈美の見て、良かったと思うセイバー。

 

 

それから、可奈美とセイバーで食器類を準備し、姫和と和泉守が作った料理をリビングのテーブルに広げる。

 

そこにタイミング良く、累が帰って来た。

 

彼女は、まるで引っ越した時のように綺麗になっている部屋と、食欲がそそられる料理を目の前に驚きを隠せずにいた。

 

「うわー!どうしたの、これ!?」

 

「えへへ……お世話になっているお礼に、私たちでお部屋のお掃除と料理を作りました!」

 

「ありがとう~!凄く嬉しいよ!」

 

累の喜んだ笑顔で、やったね!と姫和たちに振り向く可奈美。セイバーや和泉守はやったね!と笑い返してくれるが、姫和の方は、別にこれくらい…と言いたそうだった。だが、僅かに照れていたことを可奈美は黙っててあげた。

 

その後、食卓についた累は早速、和泉守の生姜焼きに箸を伸ばす。

 

「モグモグ……うん、タレの味が効いてて肉汁も溢れてくる~!」

 

「ま、格好いいだけが取り柄じゃないんでね!」

 

「あれ、そうだっけ?」

 

「喧嘩売ってんのかセイバー?」

 

男2人は放っておいて、次に累は姫和の煮物を口に入れる。

 

「う~ん!こっちも中までしっかり味が染みこんでて美味し~!姫和ちゃん、意外と女子力あるね?」

 

「///べ、別にそんなことは……」

 

普段は強気な姫和は、一日にこう何度も褒められるのは慣れていないのか、また少し顔を赤める。

 

「姫和ちゃんいいな~、私はあんまり料理得意じゃないし……」

 

可奈美がそう呟くと、セイバーが

 

「別に料理が出来るか出来ないかが女性の全てじゃない。可奈美だって、他の人には負けない魅力があるよ。困ってる人がいれば、真っ先に助けてあげる、その優しさや色々と。だから可奈美だって他の人に負けない魅力があるんだよ」

 

「セイバー……ありがとう!」

 

セイバーに言われ、エヘヘッ……と少し照れながらも笑いかける可奈美。

 

すると累は、何故か目元を押さえる。

 

「っ~~~!!私にもあったな……こんな青春時代が……!」

 

「「??」」

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

刀剣類管理局 指令室

 

 

「場所をようやく特定したわ。部屋の持ち主は『恩田累』。元美濃関の刀使で御刀は返納済み、現在は『八幡電子株式会社』に勤務────」

 

通信で捜索に向かわせた刀使に、()()()の潜伏先の情報を送る高津学長。

 

()()()()()()からもたらされた情報でようやく可奈美たちの潜伏先を掴み、表情には出ていないが、声には少し興奮しているように感じる。

 

「良いわね、沙耶香。必ず仕留めない。我が練府の真の実力、反逆者どもに見せ付けてやりなさい?」

 

『了解……これより任務を開始する』

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

累の自室

 

 

『夕食の片付けが済んだら、見せたいものがあるの』

 

食事中にそう言った累。なんだろう?と可奈美たちは思いながらも、食事を続けデザートにセイバーがお土産で持って帰ってきた大福を食べた。

 

「う~ん!この大福スーッゴく美味しいっ!」

 

「モグモグ……うん、甘さも丁度良い……」

 

「セイバーくん、これどこで買ってきたの?」

 

「いえ、貰ってきたんですよ、知り合いからね」

 

 

それから食器類を片付け、現在累の自室に案内された可奈美たち。

 

部屋はシンプルにベットや本棚やタンスがあり、そして机のうえには幾つもの画面があるパソコンがあった。

 

姫和は累に言われるがまま、椅子に座りパソコンを操作し、チャットアプリを開く。

 

するとそこには既にメッセージが送られており、可奈美がそれを読み上げる。

 

「えっと……『ようこそグラディのご友人たち、我々は君たちを歓迎する』……グラディって言うのは?」

 

「私のこと。姫和ちゃん、好きに返信して」

 

そう言われ姫和は早速思うままに入力した。

 

 

『あなたは?』

 

 

『Ally.』

 

 

Ally(味方)と答える相手。更に続いてこう答えてきた。

 

 

『たった2人の謀反者たち』

 

 

『手紙はちゃんと持っているか?』

 

 

「っ!?」

 

姫和の持つ『手紙』のことを知っている。つまりこの手紙を姫和に送った人物なのかと推理する姫和に、更に相手から

 

 

『立ち向かう覚悟は出来ているかい?』

 

 

『YES/NO』

 

 

「………」

 

まだ何者か分からない。もしかして、セイバーたちとは違う組織かもしれない。故に、安易に『YES』と答えるのは早計だと判断した姫和。

 

「………これはお前たちの仲間か?」

 

姫和がセイバーたちの方へと振り返り問うた。そして2人は揃って首を横に振った。

 

「十条さん、少し良いかな?」

 

そして姫和はセイバーに席を譲り、セイバーが代わりに入力した。

 

 

『お話の最中に失礼します。公安零課のセイバーです』

 

 

『始めまして、世界を守りし守護者』

 

 

「なにっ!公安だとっ!?」

 

「えっ?こうあん?」

 

セイバーが入力したことに驚く姫和と、何の事かさっぱりの可奈美。

 

「公安って言うのは、要するに警察の中の警察ってとこか?通常の警察より色々出来る警察みたいなもんか?」

 

「ドラマに出て来る秘密警察みたいなもの?」

 

「そんなところだな」

 

「でも『世界を守りし守護者』って?」

 

「あ~……それはだな~……」

 

後ろで和泉守と可奈美の会話が聞こえるが、セイバーは気にせずチャットを続ける。

 

 

『始めまして。それよりも、何故彼女たちを巻き込む必要があるのですか?』

 

 

『十条姫和が、開戦の烽火(のろし)をあげたからだよ』

 

 

『元々はあなた方が彼女に手紙を送ったのが原因なのでは?』

 

 

『痛いとこをつく』

 

 

『ただ知って欲しかったのだ。あの大災厄の真実を』

 

 

『なんにせよ、そのやり方を認める訳にはいきません。ですが、大荒魂討伐には戦力が多い方が良い。前々からそちらが申し込んできた協力関係について、我らの主より前向きに検討すると伝言を預かっております』

 

 

『ありがたい。あなた方がいれば百人力だ』

 

 

『しかし、彼女たちに関しては彼女たちの意思に任せます。宜しいですね?』

 

 

『Of course.』

 

 

『では、十条さんに変わります』

 

 

そして、セイバーは姫和に席を返す。ただその際に

 

「しっかり考えて答えて欲しい。もちろん、君の覚悟を尊重はする」

 

そして、姫和は再び席につく。画面にはセイバーたちの会話の後にまた

 

 

『立ち向かう覚悟は出来ているかい?』

 

 

『YES/NO』

 

 

と入力されていた。そして姫和は覚悟を決めて『YES』と返信する。

 

 

『Excellent!今日という日は完璧になった!』

 

 

『以下の場所へと向かってくれ』

 

 

そして、とある場所が表示された時─────

 

ガキンッ!

 

「「っ!?」」

 

「なんだっ!?」

 

ガキンッ! ガキンッ!

 

突如、外から剣戟音が鳴り響く。次第に遠くなっていくが、音が鳴り止むことは無かった。

 

一体何事かと、警戒する可奈美や姫和たちだったが、セイバーたちの方は落ち着いていた。

 

「ほぉ~、意外と早かったな」

 

「そうだね、練府の仕事ぶりには頭が下がるよ」

 

「練府だと?お前たち、一体何が起きてる!?」

 

「安心しろ十条。ただ練府からの刺客が来て、俺たちの仲間が迎撃してるだけだ」

 

和泉守は、なんてこと無いように言っているが、練府からの刺客と言い、セイバーたちの仲間と言い、状況が全然読み込めない姫和たち。

 

「僕らの情報では、練府が独自に動いていることは分かっていたんだ。だからいつ襲撃が来ても対処出来るように応援を待機させていたんだ。丁度恩田さんの隣の部屋が空き室になっていたから、そこにね」

 

「じゃあ、今外で戦ってるのが、練府からの追っ手で、それをセイバーたちの仲間が戦ってるの?」

 

「ああ、中々腕の立つ刀鍛冶がね」

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

数分前  累マンション前

 

 

本部からの情報でマンション前に辿り着いた、練府の刀使『糸見 沙耶香』。

 

「………」

 

キュィィーーン────

 

御刀を抜き意識を集中させ、写シを張る。すると、彼女の瞳に妖しい光が灯り、写シが重ね姿のようになった。

 

そして、目標の部屋へと一気にジャンプし、窓を切り裂こうと─────

 

 

「させるかよ」

 

ガキンッ!!

 

「っ!」

 

突如、横から何者かが沙耶香に斬りかかり、奇襲を防がれた。それだけでなく、そのまま地面に落下しながらも、沙耶香と互角以上の剣戟を交わす。

 

シュタッと地面に着地した沙耶香は、ようやく相手の姿を視認する。

 

黒いライトアーマーの上に白色の羽織をマントのように肩にかけた、赤みがかった髪の青年。

 

背中に鞘に納められた刀を背負っているが、手にはそれとは別に、白い刀身の剣が握られていた。ただし刀ではなく、中東のものと思われる。

 

「誰、あなた………」

 

ポツリと呟く沙耶香。別に返答は求めていない。彼女の任務は反逆者たちの身柄の確保。そのための障害は全て排除、それを果たすだけだ。

 

「ふんっ、別に大したもんじゃねぇよ。()は、ただの刀鍛冶だ。そして、お前さんの任務の妨害が()の任務だ。まぁ、それよりも─────」

 

そして、青年は剣先を沙耶香にへと向けて

 

「お前さんの御刀、『妙法村正』だろう?」

 

「………」

 

何も答えない沙耶香。だが、確かに彼女の持つ御刀の銘は『妙法村正』、別名『()()()()』とも呼ばれている。

 

「正直、任務なんてどうでもいい……()はただ、てめぇがソレを振るうに相応しいか、見極めたい。だから……全力で掛かって来い!!」

 

「………」

 

青年、いや公安零課の『千子村正』から闘気がビシバシと溢れ出す。

 

それを感じ取った沙耶香も、改めて構えをし直す。

 

 

 

「さあ、糸見沙耶香。剣の実力は十分か?」

 

 

 

 

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