新・刀使ノ乱舞 作:エクスカリバー!!
日本のとある屋敷。
まるでそこだけ時間の流れが江戸時代から止まったような広々とした屋敷。
だが、日本にいる人々……いや、この世界でこの屋敷の存在を知る者は片手で握れるほどの数しかいない。
そんな屋敷に朝が来た。
「ふぁ~……眠ぃ……」
「
一つの襖がガラッと開かれ、その部屋から長い黒髪を掻きながら、胸元を大きく開けた青年と、中学生のような体格をした、真面目そうな少年が出て来た。
青年の名は『
「だってよ~、セイバーの奴が中々辞めようとしなくてさ~」
部屋を出て、食堂へと向かう2人
「前もそう言ってたけど、実際は兼さんだって辞める気無かったでしょう?セイバーさんにも聞いてたけど、どうせ『俺が1本取るまでやるぞ!』って、また言ったんでしょう?」
「ギクッ……だって、もう少しで、アイツに勝てそうだったんだよ~!それなのにセイバーのヤツ、『明日、任務もあることだし、そろそろお開きにしない?』だと……ふざけんな!勝ち逃げはさせねぇよ!」
そう意気込む和泉守。そんな彼に文句も言わず付き合ってくれるセイバー。
「ハァ~……ホントに仲良いよな……」
「和泉守の相棒は大変だね?」
曲がり角の所にさしかかった瞬間、別方向から声がする。そこには、日本人のような顔つきなのに、どこか西洋風な雰囲気を漂わせる黒髪で、瞳が蒼い青年。
彼が2人の会話に出て来た人物『セイバー』である。
「おはようございます、セイバーさん」
「おはよう、堀川くん。和泉守も」
「おぅ!今日は少し遅めの起床だな?」
「確かに……セイバーさんいつも、もう少し早く起きていませんでしたか?たまにありますよね?」
「うん、今日はちょっと夢見が……ね」
言葉を濁すセイバー。そこでハッと和泉守だけは気付いた。セイバーが遅めに起きてくるときは、
「すまん、セイバー……」
「気にしないでくれ。もう慣れた」
そんなことより行こう、とセイバーに言われ、彼らは食堂へと着いた。
食堂に着くと、長い机があり、すでにその上には食器が並べられていた。
奥の部屋から、良い匂いが香ってくる。その部屋にのぞき込むと、割烹着を着た青年が包丁で野菜を切っていた。
「おはよう、
「おはようございます、セイバーさん。僕が好きでしてる事です。それに
料理をしている手を一時的に止めて、顔だけ振り向くの青年『
「おはよう、菊一文字」
「おはようございます、和泉守さん。堀川くんも、おはよう」
「おはようございます、菊一文字さん。何か手伝いましょうか?」
堀川が手伝いを名乗り上げると、セイバーと和泉守も自分たちもと言ってくれた。
「ありがとうございます。お味噌汁はもう出来るから、セイバーさんは全員分を入れて下さい。和泉守さんはそろそろ焼き魚が焼けると思うので、その準備を。堀川くんは
「「了解」」
そして手分けして、セイバーは味噌汁とついでに、ご飯をお椀によそう。
和泉守は、いい焼き目の付いた焼き魚を皿に盛り付け、ご飯や味噌汁と共に、机に並べた。
堀川はこの屋敷の主であり、彼らの主を起こしに行った。
そこに、次々とセイバーたち以外の他の住人たちが食堂に揃う。
「ふぁ~……悪ぃな一文字、今日は任せっきりにして」
よっこらしょと、自分の場所に座るのは、赤みかかった髪で、見た目に反して年寄りの雰囲気を感じさせる青年『
「いえいえ、昨晩は僕の刀を打ち直してくれていたので、コレくらいは」
「まぁ、それが刀鍛冶の
「いやいや、村正。お前も
そう言って、彼の前に朝ごはんを並べる和泉守。
「は!何が刀剣男子だ。和泉守、何度も言うが、
もちろん、
「それでも君は村正だ。
そうニコリと笑いかけるセイバー。すると、村正もヤレヤレと言いながら、それ以上は何も言わなかった。
そこに、新たに2人が入って来た。
「よう、みんな!おはようさん!」
「おぉ、中々良い香りがするな。今日は一文字か?」
白髪でにこやかに入って来た青年は、『
背が高く体格が良い青年は『
「よぉ、鶴丸に蜻蛉切、おはよう」
「おはよう。和泉守殿、拙者も手伝おうか?」
「もうちょっとだから、座っててくれ」
「そうか……なら、お言葉に甘えさせて貰おう」
「相変わらず驚くほどに真面目だねぇ、蜻蛉切は……」
「てめえは普段から、もう少し手伝いやがれ」
和泉守に叱られ、てへペロとしながら自身の場所に座る。
蜻蛉切も村正の隣に座り
「おはようございます、
「おぅ蜻蛉切、おはよう。それと『兄上』は止めろと言ってるだろうが……儂は────」
「いえいえ!貴方はあの『千子村正』と違っても、我が兄上であることは変わりません」
「ったく……分かった、好きに呼べ……」
村正が根負けしたその頃、次に食堂入って来たのは
「おぉ……今日の朝餉も良い匂いだな。そうは思わぬか炎定よ?」
「うむ、一文字くん!また料理の腕を上げたようだな!流石だ!」
「おはよう、
「おお!それはすまないな!セイバー殿!」
「だから、声がデケぇって……」
「驚く程に目が覚めるな……アイツの声は……」
この中で一番背が高く、村正のような年上の雰囲気を纏いながらも、どこか浮世絵離れをした青年『
そして、炎のような赤髪と紅い瞳をし、和泉守と鶴丸の耳を苦しめる程の、人一倍声が大きい青年『
「なんだ、俺たちが最後か?」
「………」
次に入って来たのは、堀川と同じ位の年頃だが、キリッとした目をした少年と、背中まで無造作に伸ばした髪を首のあたりで一つに結ぶ高校生位の無口の少年。
『
「おはよう、薬研。富田もおはよう」
「よう、セイバー」
「あぁ……」
「あぁー、富田、お前。相変わらずちゃんと挨拶出来ねぇんだ?」
「……なぜだ?」
「いや、なぜって……」
「まぁまぁ、村正。富田はいつもの事だよ。それと、彼はちゃんと挨拶したみたいだよ?」
「はぁっ、本当かぁ?」
そう、富田はちゃんと挨拶はしたのだ。自分自身では
「あぁ【、おはよう】」
「【ちゃんと、挨拶はしたのに】なぜだ?」
この通り。富田は無口と言うか、言葉足らずの名人なのだ。彼の言葉を翻訳出来るのは、セイバー、三日月、そしてあと1人、彼らの主。
富田が自分の場所に座ると、隣の三日月が尋ねた。
「ところで富田、
「【一応、部屋の外から声をかけたら、返事があったから】起こした」
「うん……恐らくそれだと────」
ドタドタ……!ガラッ!!
「あっぶなーー!!俺、大丈夫だよね?まだ
寝癖を直さず慌てた様子で、食堂に駆け込んで来たのは、金髪で、富田と同い年位の少年『
「うむ!安心しろ、ギリギリ間に合ったぞ!」
「だから炎定、声デケぇ」
それを聞いて、良かった良かったと黄瀬は自分の場所に座る。そして、真正面に座る富田の方を向き
「おい富田っ!部屋隣なんだから、起こしてくれよ!」
「【いや、部屋の外からだが、声はかけた。それでちゃんと起きなかった】お前が悪い」
「んだとっ!(怒)」
「はいはい、そこまでですよお二人さん」
会話を断ち切るように、菊一文字が黄瀬の前に朝ごはんを並べる。
そして、菊一文字も自身の場所に座る。
そこに、堀川が食堂に戻って来て、彼の後に男性が入って来た。それと同時に
ザッ────
セイバーや食堂にいた面々は男性に対して頭を下げる。
「「おはようございます、審神者様」」
「ああ、おはよう。今日も皆元気そうで何よりだよ」
そうニコリと笑いかけるのは30後半程の歳で、前髪の半分が左目を隠すようなっている男性が、この屋敷の主にして、セイバーたちの主である『
「いえ、審神者様も変わらずのご様子で何よりでございます」
セイバーが代表として返答する。そんなセイバーや皆の態度にヤレヤレとなで肩をおろす審神者。
「前々から言っているだろ、任務外では、家族のように接してくれって。四六時中そんな態度を取られると正直私が困ってしまう」
「はっ……」
セイバーたちはそう言われ、頭を上げた。それを見て、審神者も机の一番奥の方へと座る。
審神者から見て、前左右には和泉守とセイバーが座っている。
そのセイバーの隣から、村正、蜻蛉切、三日月、富田、薬研。
和泉守の隣から、堀川、菊一文字、鶴丸、黄瀬、炎定と並んで座っている。
【図解】
審神者
セ 和
村 堀
蜻 菊
三 鶴
富 黄
薬 炎
「それより遅くなってすまない。それでは、朝食を頂こう」
審神者が言うと、皆一斉に手を合わせ、いただきます、と合掌し食事を始めた。
「ん……おい、一文字。味噌汁の味、変えたか?」
「確かに……いつもより味に深みを感じるような……」
流石は村正とセイバーだな…と菊一文字は思い、いつもと違う味噌を使ったと話した。
「もしかして、お口に合いませんでしたか?」
「いや、これはこれで、中々良いじゃねぇか……」
「うん。具の味もより一層引き立ってる感じがするよ」
「ありがとうございます」
「うまい!うまい!うまい!」
別では、バクバクッ!と、ご飯や味噌汁、おかずを頬張る炎定。
「炎定、うるせぇ!」
「仕方ないよ兼さん。一文字さんの料理は本当に美味しいから」
「ありがとう、堀川くん。おかわりはまだあるからね」
「では、一文字殿!おかわりっ!!」
「「早っ!?」」
ハハハッ…と賑やかな食事の時間が過ぎていった。
皆それぞれの腹が満腹になったところで、皆で手分けして食器の片付けと洗い物をし、再び机に集まる。
「では、朝会の方は
「「はっ!」」
そして、それぞれの部屋へと戻り、支度をする。
セイバーも自身に用意された部屋へと戻った。
部屋に戻ってからは、寝間着からいつもの黒スーツに着替えたあと、自身に霊力を集中させると、彼の体に風が纏い、スーツ姿から、蒼銀の騎士甲冑へと変わった。
そして、部屋の奥にある棚に置いてある、
すると、剣にも風が纏い、その姿が見えなくなった。
「………行こう、世界を救いに」
それが、僕の宿命だから────
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
富田用自室
「………」
自室に戻った富田も、支度を整えていた。
旧日本軍の軍服を思わせる服の上に、右半分が赤の無地、左半分は亀甲柄の羽織に袖を通し、壁に立てかけてある愛刀を腰に差す。
最後に、机の上にあるペンダントを手に取る。そして、カチャッと蓋を開けるとそこには1枚の写真が。
幼い頃に、幼なじみ2人と撮った彼女たちとの最後の思い出。
「………」
しばしその写真を見つめたあと、ペンダントの蓋を閉め、ポケットに突っ込む。
そして会議室へと向かった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
第1会議室
仕事用のスーツへと着替えた審神者は会議室の前まで着いた。
屋敷は和風だが、会議室内は近代にしてあるので、入り口も襖ではなくドアになっている。
そして審神者が会議室に入ると、既に揃い、机に座っていたセイバーたちが立ち上がる。
審神者はぐるりと皆を見渡す。
セイバーは蒼銀の騎士甲冑を纏い、和泉守は赤い袴の上に浅葱色のダンダラ模様の羽織を着ている。
菊一文字も和泉守と同じ羽織を羽織っているが、羽織は雪のような白色を着ている。
堀川と薬研は学生服と軍服をミックスしたような服を着、村正は黒いライトアーマーの上に白色の羽織をマントのように肩にかけている。
蜻蛉切は紫と白よ袖無し着物を身につけ、両腕には篭手が付けられている。
三日月は蒼い着物を、鶴丸は真っ白なフード付の着物を身に付けている。
富田は柄が左右違う羽織を着、炎定と黄瀬は富田と同じ軍服を着ているが、炎定はその上に炎の模様の羽織を、黄瀬は雷模様の羽織を纏っている。
そして何より、先ほどの食事とは違い、皆の顔から、ビシビシと闘気を感じさせる。
「座ってくれ…………さて、いよいよ明日、鎌倉にて折神家主催の御前試合が行われる。我々は政府からの要請により、
「やれやれ……なんで俺たち
「ちょっと兼さん……」
和泉守が嫌そうに毒づくと堀川はアワアワ…と慌てるが、審神者の方は気にしていなかった。
「確か『吉野長官』からの命令……でしたっけ……?」
「またあのオッサンかよっ!?オレたちを便利屋か何かと間違えてないっ!?」
菊一文字からの情報で、黄瀬も嫌そうに愚痴る。
「ハハハ……確かに我々零課の任務は、
「
和泉守と黄瀬に続いて、村正も口を開く。
「ここ最近、
「
「「…………」」
「その密会が行われたとされる日には必ず、
「審神者様、となるとやはり……」
「そうだ、セイバー。密会の相手は『時間遡行軍』で間違いない。そして
その事を聞き、皆に緊張が走る。
「ならば、我々零課の出番だろう?」
彼等の所属する組織『警視庁公安部公安零課』。
その任務は2つ。1つは刀使たちのように荒魂討伐であるが、あくまでそれはついで任務のようなものだ。
本当の任務は、時間を遡り、歴史改ざんを目的とした謎の集団『時間遡行軍』の討伐である。
時間遡行軍は隠世よりもその先にある異世界からの侵入者たち……と言う事しか零課を発足させた初代零課責任者にも分からなかった。だが、それでもこの世を乱す存在であることには変わりない。
その為に組織されたのが『公安零課』である。
ここに所属する者はただの人では無い。そのほとんどは────
「折神紫とどんな計画を立てているか未だに分かっていない中での御前試合。何か起きる可能性は非常に高い。いや、断言しよう……絶対起きる」
「何か、あったのですね……?」
あの審神者がここまではっきり断言するなんて滅多に無い。不思議に思った面々を代表としてセイバーが問うた。
すると、審神者が頭を机の上に落とす。
「何のつもりか知らないけど……舞草が『十条 姫和』に
すると、皆があぁ~……と納得した。
「それは確かに……」
「確実にな……」
「驚きもしないな」
「若いとは良いなぁ~……」
「やりかねませんな」
「うむ!確実に何かしらの行動は起こすな!」
堀川を始めとし、薬研、鶴丸、三日月、蜻蛉切、炎定が口々に言う。
審神者も頭を押さえ、何も言い返せなくいた。心当たりがたくさんあるからだ。
「ハァ~……それを踏まえての、班分けを発表する……まずは十条姫和が行動を起こした場合にいち早く彼女を保護し、安全が確保出来る場所まで護衛する役目を……セイバーと和泉守にお願いする」
「お任せを」
「しっかり守ってやるぜ、主!」
「頼むよ……次にその2人の支援と刀剣類管理局の監視を……村正と鶴丸、菊一文字に頼む。なお後で3人には管理局のスタッフ用の制服を渡す」
「了解した」
「おぅ!」
「はっ!」
「次に舞草の動きを監視するのを、薬研と蜻蛉切に。舞草が十条姫和に何かしらの行動を起こそうとするなら、セイバーたちに連絡を」
「了解だ、大将」
「この命に代えましても」
「そこまで気張らなくて良いよ……次に富田と炎定、黄瀬、三日月はしばらくの間は各班のフォローを。状況に応じて4人には別の任務を与える」
「「はっ!」」
「堀川は私のサポートを頼む。今回はあちこち飛び回るかもしれないから」
「分かりました、主様!」
「主の事を頼んだぜ、国広!」
「兼さんも無茶をしないように。セイバーさん、兼さんの事をお願いします。この人、結構無茶するんで」
「いやになるほど知ってるよ」
「フフフ……では、零課諸君……時間遡行軍による現代への侵攻ならびに計画を阻止、世界を守る事を任務とする」
「「はっ!!」」
「では、各員行動開始、鎌倉へ向かってくれ……皆の健闘を祈る……」