新・刀使ノ乱舞   作:エクスカリバー!!

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運命の御前試合(別side)

 

御前試合当日

 

 

御前試合会場となる折神家本家の敷地にある鎌倉市街には、街の住人だけでなく出場選手の応援に向かう刀使やその関係者などでいっぱいになっていた。

 

それもあってか、あちこちの店には刀使たちがお土産を探したり、街をじっくり見て回っていた。

 

その中には、美濃関学院の刀使の安桜美炎たちの姿があった。

 

「うわ~!さすが鎌倉!凄い都会感っ!」

 

「いやぁ~、それは比べるのが私たちの地元だからじゃない?」

 

「そうそう、都会って言うならせめて東京や名古屋じゃん!」

 

「それより美炎は会場についたら別行動なの?」

 

可奈美たちと違って今鎌倉についたばかりだが、彼女は()()()()()()

 

もし何かあればいつでも出場でれるように控えねばならないはず。

 

「ううん、みんなと同じだよ。可奈美と舞依ちゃんが棄権しないかぎり観客席で応援だよ」

 

もっとも、あの2人はそんな事はするはずは無いが。

 

必ず決勝戦まで意地でも出るだろう。

 

「ふ~ん、そっかー。あ、他校の生徒発見!もしやあれが可奈美たちの敵かっ!」

 

「いやいや、普通に私たちと同じ応援の人でしょう?」

 

「……あん?なんだ、なにガンくれてんだよお前ら?」

 

友人が他校のフードを被った少女を見つけ指を指す。

 

すると、その少女はこちらを睨みつけ、ズカズカと近寄ってきた。

 

「えっ!?えっと……その……ちょっとどうすんの!?」

 

「「………任せた!」」

 

そう言い残し、美炎を置いて一目散に逃げていく友人たち。

 

「えっーーー!?」

 

もう視界から見えなくなってしまった友人たち。そして背後からはキツい視線を感じる。

 

こうなれば!と美炎は出来るだけ相手を刺激しないように話しかける。

 

「えっと……すいません、うちのものが……その制服鎌府だよね?佩刀(はいとう)してるって事は代表の人かな?」

 

「違う。代表はアタシじゃなくてコイツの付き添……てっ!いつの間にかいねぇし!?」

 

誰かと一緒だったのか、周りを見渡すフードの少女。すると、近くの店からお饅頭の入った袋を持って出て来た鎌府の少女を見つける。

 

「あぁーー!いやがったな()()()!てめぇ、何やってんだよ!」

 

「お腹空いたから買ってきた……()()も食べる?」

 

連れを見つけたフードの刀使は、鎌府の少女に近づき怒鳴る。

 

しかしその少女の方は特に慌てもせず、呑気に答え、饅頭を一つ差し出す。

 

「いるか!それと、勝手にうろちょろすんな!お前が迷子になったらアタシが叱られんだからな!」

 

そう言いながら、差し出された饅頭を貰い、一口かじるフードの少女。

 

「(よし、今のうちに……)」

 

何とかこちらへの注意は削がれたようなので、コッソリ離れようとしたその時────

 

 

「(えっ────)」

 

 

────美炎の目に、あるものが映った。

 

 

「あ、それとお前、アタシにガンくれたんなら覚悟が出来て─────」

 

「ごめんなさい、またあとで!」

 

「なっ!?お、おい!」

 

「呼吹、アレ友達?」

 

「違うわっ!!」

 

後ろからフードの少女が何か言ってる気がするが、美炎はそれどころではなかった。

 

「(うそ……もしかして……)」

 

「あっ!美炎~!ごめんね、さっきは────」

 

「ごめん!みんな先に行ってて!」

 

「えっ、ちょっ……美炎っ!?」

 

人混みをかき分け、見失わないように急ぐ。

 

 

けど一瞬だったので正直分からない。

 

 

もしかすると人違いか、見間違いかもしれない。

 

 

いや、見間違うはずが無い。

 

 

だが、確認せずにはいられなかった。

 

 

何故ならそれは、ずっと探していた─────

 

 

◇◇◇◇◇

 

 

鎌倉市街 とあるお茶屋

 

 

ふぅ~…と、縁側の席でお茶をすする長身の青年。

 

だが、その格好はまるで平安時代からタイムスリップしてきたような青い着物を着ており、どこか浮世絵離れをした雰囲気を感じさせる。

 

しかも、かなりの美形ときた。

 

そのためか、もう一つある縁側の席には誰も座ろうとせず、彼の目の前を通る人々は彼の姿を見て、少し驚いたり、通り過ぎた後にヒソヒソ話している。

 

何かのコスプレ?

 

モデルさんか何か?

 

そんな類いのものばかり。中には、なにか勘違いして彼に話しかけ、写真を一緒に撮る。

 

だが、当人はまるで気にせず、優雅にお茶やお団子を楽しむ。

 

「ん~……時代が変わろうと、団子と茶の味は変わらず美味い……」

 

「三日月」

 

そこに、青のフード付のジャージを着た高校生ほどの少年が彼の前に立つ。

 

「お~、富田!お前もどうだ一緒に。残念ながら、お前の好物の鮭大根は無いが、この三色団子も中々美味いぞ?」

 

「……いらない」

 

それだけ言い着物の青年、三日月の隣に同じ零課の仲間、富田義勇が座った。

 

無表情でこの冷たい態度、普通の人なら印象を悪くする。

 

しかしそれは義勇の言葉が足りないだけ。

 

そして三日月は、その義勇の言葉を通訳が出来る数少ない人物。

 

なので先ほどの彼の言った事も実は────

 

 

「【俺たちは遊びに来た訳じゃない。だが休憩も必要だからな、俺はみたらし団子を頼むから】いらない」

 

 

───こう言っていたのを分かっているので、気にせず彼の代わりにみたらし団子とお茶をもう1人分、注文する。

 

「【ところで三日月の任務は】終わったのか?」

 

「ああ、この街にある監視カメラの場所と交番、刀使の休憩所の位置の確認は出来た。逃走時に見つからない道は幾つかあったぞ。先ほどセイバーにその道のりを()()()した」

 

「そうか」

 

「富田の方はどうだ?」

 

「【街中の警備状態は確認出来た。それなりの数はいるが、審神者が公安のツテを使って根回しいるから】問題ない」

 

「そうかそうか……ならば、我らはひとまず落ち着ける訳だな」

 

「【任務完了は大荒魂討伐、それまで気は抜けないから】まだ気は抜けない」

 

「お前もセイバーに負けないくらいの真面目っぷりだな。少しは肩の力を抜けよ?」

 

ポンポン…と義勇の肩をたたく三日月。

 

そして、湯飲みを手にし残ったお茶を飲み干す。

 

彼らの前に御前試合の応援に来た刀使たちがスマホの地図を見ながら、会場へと向かっていた。

 

「……仕方ないことだが、刀使たちの力を借りられないものか。彼女たちがいれば、我らの任務も────」

 

「無理な話だ」

 

「珍しく即答だな」

 

「………」

 

「確かに我らの任務は刀使たちのと似て非なる。だが、それでも我らが力を合わせ、相利共生していけば────」

 

「彼女たちは年端もいかない少女だ」

 

「ふむ………」

 

「そして俺たちが思う以上に、か弱い………そんな彼女たちとは、一生解り合えないし、共に戦うことは出来ない」

 

「(珍しく喋るな………)」

 

こんな彼は、審神者も見たことは無いだろう。そう思いながら団子を一つかじる。

 

「だから、任務の邪魔になるなら容赦なく俺は斬る」

 

そう言い、義勇はお冷やを一気に喉に流し込む。

 

「(あ、流石に喋りすぎたか………)」

 

「おまたせしました~」

 

ちょうどそこに、注文した義勇の団子とお茶がきた。

 

義勇は静かに手を合わせ、団子を一口食べ─────

 

 

「きゃあぁぁーーーっ!?」

 

 

「荒魂だっ!!荒魂が出たぞーー!」

 

 

「に、逃げろーー!!」

 

 

「………」

 

「おや、食べないのか富田?」

 

歯が団子に触れる瞬間、遠くから聞こえる悲鳴。

 

それを聞いて、団子を食えるほど、義勇は呑気ではない。

 

「【必要無いかもしれないが、逃げ遅れてる人が居ないかちょっと様子を見に】行ってくる」

 

「団子はいいのか?」

 

分かってるくせに、変わらずの三日月の顔。

 

だが義勇に取ってもそれは慣れている。

 

「会計を頼む」

 

「承知した。ただし、目立つ事はするなよ?」

 

「分かってる」

 

そうして、義勇は騒ぎが聞こえる方へと走って行った。

 

では、自分もそろそろ動くか…と席を立とうとした時

 

「あの、すいません!」

 

赤いグラデーションがかかった髪の少女が息を切らしながら、三日月に声をかけた。

 

美濃関学院の制服と御刀を所持しているところを見ると、彼女が刀使であることは明白。

 

「どうしたのかな、刀使のお嬢さん?」

 

恐らく、荒魂が出たから非難して下さいと、声をかけたのかと思ったが、少女はスマホを操作し、ある写真を三日月に見せる。

 

「こんな子、見かけませんでしか?」

 

「ふむ………」

 

少女が見せた写真には、剣道着を着、竹刀を持った小学生ぐらいの少年が写っていた。

 

それは先ほどまで一緒にいた義勇に良く似ている……いや、凄く似ている。

 

断言出来ない理由は、この写真の少年は義勇のように髪を伸ばしておらず、カメラに向かって無邪気な笑顔を見せている。

 

あの四六時中無表情の義勇とはまるで違う。だが

 

「………この少年か分からないが、良く似た人を見かけたぞ」

 

「っ!?どこ、どこでですか!」

 

「うむ、あちらの方向に向かって行ったと思うぞ」

 

そう言い、義勇が向かった方向へと指を指した。

 

すると少女は三日月に礼を言いながら頭を下げ、悲鳴が上がる方へと走って行った。

 

「……まぁ、どうなるかな……」

 

そして三日月は店員を呼び、義勇の団子をお持ち帰り用の袋に包んで貰い、店を後にした。

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

美炎side

 

 

イケメンのお兄さんから、義勇くんと似た人が荒魂が出た方向へと向かったと聞いて急いでいる。

 

もしホントに義勇くんだとしたら……

 

もし、荒魂に襲われでもしたら……

 

「なんだ、ずいぶん焦ってるみたいだな?」

 

「っ!あなたたちはさっきの……」

 

横を向くといつの間にかさっきの鎌府の2人が私の隣に追い付いていた。

 

「多分、知り合いがこの先に居るかもしれないんです……!」

 

「ふ~ん、なら荒魂ちゃんはアタシがもらうぜ!それにしても鎌倉は折神家のお膝元だってのに、荒魂出過ぎだろう!?」

 

「悪態はあと……荒魂は討伐する……」

 

「まぁいいや。なんにせよ、荒魂ちゃんと遊べるならアタシはそれで満足だよ!」

 

「呼吹……任務は真面目に……」

 

「うるせぇー、んなことどうでもいいんだよ!」

 

なんか、変な人だな……

 

それよりも、早く荒魂の元に……

 

「見えた!」

 

『ーーー!』

 

『ーーー!』

 

目の前には虫のような見た目なのに、人の半分くらい大きさの荒魂が数体、周りの電柱を倒しながら暴れていた。

 

小さいながらも荒魂だ。しかも数が多い……

 

「でも、荒魂を鎮めるのが刀使の使命!なせばなるっ!!」

 

「おっ!いい根性じゃねぇか、美濃関の!名前は?」

 

「えっ……安桜美炎だけど……」

 

「よし安桜、行くぜ!」

 

「うんっ!」

 

すると荒魂の方もこちらに気付き、向かって来る。

 

鎌府の2人と一緒に私も愛刀『加州清光』を抜き、写シを張る。

 

「行くよ、清光っ!」

 

私の愛刀、清光は他の御刀とは少し違う。

 

刃先が少し欠けている。モデルになった刀剣も欠けているらしいけど、私の前の刀使が任務中に欠けてしまったらしい。

 

けどそれでも、私はこの御刀を気に入ってる。

 

自分だけの御刀の証のように思えるのだ。

 

そうしている間に、鎌府の人たちが荒魂を斬っていた。

 

「おらっ!もっと遊ぼうぜ、荒魂ちゃんよぉ!」

 

「………」

 

フードをかぶった刀使は、二刀の小太刀と細やかな動きで荒魂を翻弄しその体に傷を刻んでいく。

 

もう1人の刀使は戦闘中はほとんど喋らないが、無駄な動きが一切見られない。

 

まるで機械のように荒魂を斬っている。

 

「(なんて、見とれてる場合じゃ無い!私も!)」

 

改めて御刀を構え直し、荒魂に向かって斬り掛かる。

 

二体ほど、私に気付いて襲い掛かってくるが、一体を避けながらもう一体をすれ違い様に斬る。

 

すると、荒魂はあっさり真っ二つになり、ドロドロのノロになる。

 

そしてもう一体がミサイルのように突進してくるので、突きの構えを取り、向かって来る荒魂を一刺し。

 

『ーーーー!!』

 

断末魔のような声をあげ、もう一体もノロになった。

 

まず二体。鎌府の人たちのを合わせて四体。

 

けど、荒魂はまだいる。私たちから少し距離を取っている。

 

「はぁ……はぁ……これであと半分……」

 

「へぇ~、やるじゃねぇか?」

 

「ありがとうございます、えっと……」

 

「鎌府中等部三年、『七之里呼吹』。あっちは同じく一年の『糸見沙耶香』だ。よろしくな」

 

「呼吹、先に行く……」

 

そう言うと、糸見さんは私が挨拶を聞く間もなく行ってしまった。

 

てゆうか、早っ!?

 

「まぁ、あんなヤツだからな。てな訳で、ここにいる荒魂ちゃんはアタシが全部ぶった斬る!……その前に1つ─────」

 

そして七之里さんは私に向かって睨みつけて

 

「いいか、アタシは荒魂ちゃんを斬るのが愉しみ……勝手にアタシの獲物を斬ったら、許さねぇからな!」

 

まさかだけど……七之里さんって、荒魂退治を楽しんでる?荒魂のことを『ちゃん』付けで呼んでるし……

 

「そんなわけで……続けようか獲物ども!アイシテルぜ荒魂ちゃん!」

 

ああ、七之里さんも行っちゃった……てかアイシテルって……『愛してる』ってこと!?

 

刀使っていろいろいるんだね……

 

『ーーーーー!』

 

「おっと、私も戦わなくちゃ!」

 

早く、義勇くんを探さないと!

 

『ーーーーー!』

 

『ーーーーー!』

 

また二体がかりで襲い掛かって来る。

 

だったら、さっきと同じやり方で倒すだけ!

 

「すれ違い様にまず一体────」

 

『ーーーー!』

 

「えっ!?」

 

上からもう一体っ!?やば─────

 

ヒュンッ    ガンッ!

 

『ーーーー!?』

 

上から襲ってきた荒魂に、どこからかお土産用の置物が飛んできて、荒魂にぶつかった。

 

「(今っ!)」

 

体を捻らせ、回転するように三体の荒魂に斬り掛かる。

 

その内一体は斬れたが、残りはかすり傷を負わせた程度。

 

『ーーーー!』

 

『ーーーー!』

 

今度こそ、残りは二体。

 

数では負けてるが、どちらも手傷を負わせているので、少しフラついている。

 

なら勝ち目はある。

 

『『ーーーーーーー!!』』

 

すると、また二体の荒魂がミサイルのように突っ込んで来た。

 

ただ突進して来るだけなら良かったが、それぞれバラバラに無規則に襲ってきた。

 

一体が右から来たと思ったら、もう一体は上から。

 

一体が左から来たと思ったら、もう一体は背後から。

 

なんとか御刀で防いでいるが、このままだと集中力が切れて、写シを解いてしまう。でも────

 

「なせばなるっ!だよ!」

 

『ーーーー!!』

 

 

また一体が真っ正面から突っ込んで来た。もう一体は死角に入って見えない。

 

だが、気配から今度は斜め後ろから迫って来てる。

 

 

だったら────!

 

 

「(ギリギリまで引き付けて……)」

 

 

二体の荒魂がそれぞれ、私に向かって迫る。

 

 

「(もう少し……)」

 

 

『『ーーーーー!!』』

 

 

「今っ!!」

 

迅移で二体の間をすり抜ける。

 

目標がギリギリで避けたので、荒魂たちはそのまま互いにぶつかった。

 

そして、動きが鈍くなったところをすかさず────!

 

「はぁっ!!」

 

ザシュッ!

 

『『ーーーーー!?』』

 

二体同時に斬り、荒魂たちは地面に落ちて、ノロへと変化した。

 

「はぁ……はぁ……そうだ、七之里さんたち!」

 

あの2人も苦戦してるだろうし、急がないと!

 

そういえばさっきの置物、何で飛んできたんだろう?

 

ちょっと不思議に思いながらも、私は2人が向かった方向へと走った。

 

 

 

ザッ…

 

「……………」

 

 

 

美炎sideout

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

「はぁ……はぁ……待っててね……美炎ちゃん!」

 

鎌倉に着いてから、市街で荒魂が出現したと情報を聞き、現場へと向かう知恵。

 

その途中、美濃関の学生たちが「美炎大丈夫かな?」と話していたのが聞こえた。

 

彼女たちに聞くと、どうやら美炎が荒魂が出た方向へと向かったきり戻って来ていないらしい。

 

それを聞いて、知恵は直ぐさま市街へと向かった。

 

あの街に大切な幼馴染みがいるのだから。

 

 

もう─────

 

 

二度と─────

 

 

幼馴染みを─────

 

 

失いたくない

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

「糸見さん!七之里さん!」

 

「ん……なんだ、お前か……」

 

置いて行かれ荒魂たちと闘っていた美炎はようやく2人の元へと追い付いた。

 

彼女たちの目の前には、既に大量の荒魂たちがノロへと溶けていた。

 

原因は目の前の2人だと思うのに、呼吹の方は何故か不機嫌だった。

 

「えっと……どうかしたの?」

 

「どうかしたのじゃねぇよ!!アタシの獲物がどこぞのヤツに盗られたんだよ!!」

 

「えっ?盗られた?この荒魂は2人が────」

 

倒したのでは?と聞こうとしたが、沙耶香が首を横に振る。

 

「もう終わってた」

 

「え?終わってた?」

 

「だ~か~ら~、沙耶香が来る前にもうこの状況だったって話だよ!あ~~!!どこのどいつだよ、アタシの荒魂ちゃんを横取りしたのは~~!!」

 

グシャグシャと頭を掻きむしる呼吹。

 

しかし、溶けているノロの数見たところ二体や三体なんかでは無い。

 

少なく見積もっても10はある。

 

しかも、大きなノロの塊も見える。つまり、大型の荒魂がいたということ。

 

「(それを全部倒したってこと?一体誰が────)」

 

ガタッ!

 

「「ッ!」」

 

近くの土産物屋から物音が。まだ荒魂が隠れているのか?そう思った矢先に

 

「おねえちゃんたち、だれ?」

 

幼稚園児ぐらいの少年が店から出て来た。

 

逃げ遅れだろう。美炎は納刀し、少年の元に駆け寄る。

 

「私たちは刀使だよ。君、大丈夫?もう荒魂はいないからね」

 

少年の頭を撫でて、直ぐさまここから離れようとした時

 

()()()()()()()()()?」

 

「お兄ちゃん?兄弟がいるの?」

 

だとしたらその子も探さないと思ったが、少年が首を横に振る。

 

「あのねあのね、ぼくね、おかあさんときてたんだけど、はぐれちゃってね。そしたら、こわいおばけがでてきてね……」

 

おばけ、恐らく荒魂のことだろう。そして、騒ぎのなかで母親と逸れたらしい。

 

「それでねそれでね、おばけがぼくのほうにきてね、たべられると思ったらね、しらないおにいちゃんがたすけてくれたんだよ」

 

「知らないお兄ちゃん……」

 

少年を助けたその人物は、この土産物屋内に少年を隠れさせ、誰か大人が来るまで出て来るなと言い、少年を残して出て行ったらしい。

 

その後しばらくの間、外で激しい音を聞いたらしい。

 

まるで何かと何かが戦っているようだと

 

「………ねぇ、そのおにいちゃんって、こんな子かな?」

 

そして美炎はスマホに保存しているある少年の写真を見せる。

 

「う~ん……おかおはよくみえなかったから、わかんない」

 

「そっか……」

 

すると外の方から多数の足音が聞こえる。見ると機動隊が20人ほど到着したようだ。その中には

 

「あれ、ちぃ姉?」

 

「美炎ちゃん!」

 

何故か知恵の姿が。そして美炎の姿を見つけると知恵は美炎の元に駆け寄り、彼女を抱き締める。

 

「良かった……無事で……」

 

「うん。ありがとう、ちぃ姉」

 

「とにかく、あとは機動隊の人たちに任せて……」

 

そして、少年を連れて外に出ると隊長らしき人が美炎に敬礼をする。

 

「皆さんの迅速な行動のおかげで、被害は最小限に納めれました。あとは近辺敬語の刀使の到着を待ちます。手早い非難誘導と荒魂殲滅、ありがとうございました!近辺住民に代わり、感謝致します!」

 

そう言い、彼女たちに頭を深く下げる。

 

「いいえ!私たち以外にも荒魂殲滅に協力してくれた人がいたみたいで……」

 

「そうでしたか、その方はどちらに?」

 

「アタシらが来る前にどっか行っちまったよ」

 

「そうですか……では、あとは我々が引き継ぎます」

 

「はい、お願いします。あ、この子逃げ遅れたみたいで……」

 

「重ね重ね、ありがとうございます。その子も我々が保護し、親御さんを探します」

 

「ありがとうございます。それじゃ、ぼく。このお兄さんたちと一緒に避難してね」

 

「うん、ありがとう、おねえちゃん!」

 

バイバイと手を振る少年を見送る美炎。

 

「そんじゃ沙耶香、アタシらは御前試合の会場に行くぞ」

 

「うん」

 

そして美炎が呼び止める間もなく、また2人はあっという間に行ってしまった。

 

「美炎ちゃん、他にも荒魂と戦った刀使がいたの?」

 

「刀使……なのかな……」

 

「?まあ、それよりも私たちも会場に行こ、美炎ちゃん」

 

「そうだね……多分この様子だと、居ないかも……」

 

「え?誰が?」

 

「うん、実は────」

 

 

 

美炎は会場に向かいながら、知恵に幼馴染みらしき人物を見かけたことと、目撃情報について話した。

 

「それって、本当に義勇くんなの?」

 

「分かんない……見たのも一瞬だったし……小さい頃の写真に似ていたってで、確証は……」

 

「そっか……美炎ちゃん、御前試合が終わったあと、時間ある?」

 

「えっ……たぶん少しはあると思うよ……?」

 

「じゃあ、一緒に義勇くん探そう。美炎ちゃんが見たって言うなら、義勇くんは鎌倉に来てる。2人で探せば見つけられるわよ」

 

「ちぃ姉……そうだね。見つけられるよね!なせば、なる!だよね!」

 

「フフ……そうね」

 

そうしていると、会場が身の前に見えた。

 

「それじゃ美炎ちゃん、またあとで連絡してね」

 

「うん、またねちぃ姉」

 

そうして美炎と知恵は別れ、それぞれの学園の応援席へと向かった。

 

 

 

「あぁー!美炎ぉー!こっちこっち!」

 

応援席エリアで友人たちを探していたところ、向こうから見つけてくれて、ようやく彼女たちと合流する美炎。

 

「ごめん、遅くなっちゃって!可奈美と舞衣ちゃんは?」

 

「まだ宣誓が終わったばっか。これから第1試合が始まるところ」

 

 

 

それから試合は続き、遂に準決勝。

 

対戦カードはまさかの可奈美と舞衣。美濃関同士のぶつかり合い。

 

結果は可奈美の勝利。

 

舞衣がとっておきの居合いで可奈美を仕留めたかと思いきや、可奈美は片手でそれを阻止。そのまま彼女にひと太刀入れ、勝負は決まった。

 

「ハァ~、ドキドキしたーー!」

 

「舞衣って、居合いが出来たんだね~!」

 

「凄い試合だったよ……」

 

そして、試合から戻ってきた舞衣が合流し、一行は決勝戦の会場へと移動した。

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

会場外

 

 

会場近くのタバコ販売店の前に立つ三日月の元に、富田がゆっくり歩いてきた。

 

「片付けたか、富田」

 

「【あぁ、荒魂は殲滅したし、逃げ遅れも無事だから】問題無い」

 

「もうすぐで決勝戦だ。そろそろ本来の任務だ」

 

「そうか」

 

それだけ言い、義勇は三日月の隣で腕を組みながら壁にもたれる。

 

「緊張してるか?」

 

「【してないと言ったら嘘になるが、体と心は落ち着いているから】問題無い」

 

「無理はするなよ。我らはあくまで()()()()だからな」

 

「分かってる」

 

そして、2人の間に暫しの沈黙の時間が流れる。

 

その間、三日月は義勇の顔をチラチラと見ながらニヤついている。

 

何かあるのかと思ったが、今は任務に集中しようと無視する。

 

「(この様子だと……あの少女とは会ってはいないか……さてさて、どうなることやら……)」

 

「(そういえば、あの美濃関の刀使……どこかで)」

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

美濃関一行は決勝戦会場の応援席へと座り、試合開始まで待っていた。

 

「ついに決勝戦だね……まさか可奈美がここまで勝ち上がってくるなんて……」

 

「うんうん、でも私は可奈美と舞衣の決勝戦が見たかったな~あ、ごめん舞衣……」

 

「ううん、気にしないで。しょうがないよ。今年は勝てなかったけど、次は必ず決勝で可奈美ちゃんと戦うよ」

 

「舞衣にしては珍しい……でも、次に御前試合に出るのは私だよ!」

 

「はいはい、舞衣も美炎も、今は可奈美の応援だよ」

 

そこに、会場入りした可奈美が美炎たちの方に手を振る。

 

彼女たちも可奈美から声援を送る。

 

「ここまで来たら優勝だよ!」

 

「頑張ってね!」

 

「可奈美、勝ってね!」

 

「ありがとう、美炎ちゃん。みんなも……頑張るよ!」

 

その時

 

「見て、紫様よ!」

 

「御当主様だわ……」

 

「相変わらず凛々しくて素敵ね……」

 

試合場から真っ正面、貴賓の観覧席となる御殿の奥から折神家当主、折神紫が出て来たのだ。

 

二十年前、荒魂が引き起こしたある災厄を沈めた英雄の登場に会場内は静かに興奮を高めた。

 

「うわ~!御当主様の前で試合するんだね、可奈美」

 

「ヤバい……すっごく緊張してきた……!」

 

「「今さら、何言ってんの?」」

 

「あれっ!?」

 

 

 

「これより決勝を始めます。選手は前へ!」

 

「「はい」」

 

定刻となり、審判の元、可奈美と姫和は会場の中心の試合場に立つ。

 

可奈美は今まで危ない勝ち方をしてきているように見えるが、咄嗟の判断力と反射神経で勝利をものにしてきた。

 

一方姫和は小回りの効いた動きと相手の隙を見逃さない観察眼で確実な勝ち方をしてきた。

 

「(この勝負、長引くかも……けど、絶対負けないっ!)」

 

「(ようやくここまで来た……)」

 

「お互いに、礼っ………構え………」

 

「「………」」

 

お互いに頭を垂れて相手に向き、抜刀し、構える。

 

可奈美は真っ直ぐ姫和を見ているが、心なしか姫和の方は別の何かに意識を集中しているように感じる。

 

「写シ……」

 

写シを張る可奈美と平城代表の刀使。

 

美炎は決勝戦のドキドキと同時に、何故か妙な胸騒ぎを覚える。

 

「(なんだろう……ワクワクとは違う……)」

 

「始めっ!!」

 

審判の合図と同時に、姫和は重心を落とした『車の構え』をとる。

 

それに対し可奈美は、臨機応変を身上とする『無行の位』。

 

互いに古流とされる剣術の構えだが、あり方は真逆だ。

 

そして─────

 

 

会場全てに衝撃が走る─────

 

 

姫和の姿が試合場から──────

 

 

消えた────

 

 

ガキンッ!!

 

 

「────それがお前の()()()()()か?」

 

 

「────っ!?」

 

 

次に姫和の姿を現した場所は折神紫の前。

 

彼女に刃を振るい、それを防がれていた。

 

「(ならば、もう一度────)」

 

「させんっ!」

 

ザシュッ!

 

「くっ……!?」

 

もう一度、紫に斬り掛かろうとしたが、今度は背後から真希に斬られ、写シが消えてしまった。

 

そして今度は、自分が真希に斬られそうになり、目を閉じようとしたその時

 

ガキンッ!

 

「迅移っ!」

 

「……っ!」

 

可奈美が2人の間に割り込み、それを防いだ。

 

それと同時に、姫和は迅移でその場を離脱。可奈美も後に続いた。

 

夜見が後を追おうとするが

 

「構わん、追うな」

 

夜見、真希、寿々花は指示に従ったが、1人だけ違った。

 

「アハハ!」

 

「なっ!?待て、結芽!」

 

結芽だけは、2人の背後から回り込み、2人の正面に立ち御刀を抜く。

 

「私とも遊ぼうよ?」

 

「(くそっ!)」

 

「(やるしか……!)」

 

戦うしか無い。そう判断しようとした時────

 

「どりゃぁっ!!」

 

 

ドォーーーン!!

 

 

今度は別の何者かが3人の間に割り込むように刀を地面に叩き込んだ。

 

すると、その衝撃で会場全てが土煙で覆われた。

 

「えっ何?どうなってんの!?」

 

「可奈美ー!」

 

周囲が困惑する中、美炎は姿が見えなくなった可奈美を探す。

 

「いいから、逃げるぞっ!!」

 

「ま、待って!私もっ!」

 

すると何者かが姫和を抱えて砂煙から飛び出し会場を抜け出した。

 

そして、何故か可奈美もそのあとを追って行った。

 

「え、えっ!?なになに、ホントに何が起きてんの!?」

 

友人が困惑するのも分かる。

 

だが状況は見たまんまだ。

 

平城代表の刀使が紫に襲い掛かろうとしたが失敗。

 

そして何者かによって会場から逃亡したこと。

 

その逃亡に何故か可奈美が協力したこと。

 

平城代表はともかく、可奈美が紫に刃を向ける理由は無いはず。

 

一体何が起きたのか、一番知りたいのは美炎の方だった。

 

「なんで……どうして……可奈美ぃーー!!」

 

 

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