新・刀使ノ乱舞   作:エクスカリバー!!

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逃亡と追っ手

 

 

御前試合決勝戦、突如出場選手の十条姫和が折神紫に刃を向け、失敗。

 

対戦相手の衛藤可奈美と謎の第三者の介入により、会場の壁を飛び越え、逃亡した。

 

「なんで……どうして……可奈美ぃーー!!」

 

応援席からその一連を見ていた美炎の叫びが会場中に響く。

 

「なになに!?もしかして可奈美はあの平城黒髪ロングとグルだったの!?」

 

「そんなわけないじゃん!!」

 

美炎が強く否定する。可奈美には折神紫を襲う理由が無い。ならば何故、十条姫和と共に逃げるのか?

 

その答えを知るには、彼女たちの後を追うしかない。

 

「あ!待って、美炎ちゃんっ!」

 

「「美炎っ!」」

 

舞衣や友人たちが止める間もなく、美炎は会場の出口へと向かって行った。

 

 

「うそ!?あれって、美炎ちゃん!?」

 

同じ頃、長船女学院用の応援席から美炎が可奈美たちを追いかけようとしていたのが目に入った。

 

ここで美炎まで会場を飛び出したりしたら、彼女まであらぬ容疑をかけられる。

 

そうなる前に止めなくてはならない。

 

そして知恵も直ぐさま会場の出口へと向かって走って行き、なんとか出口前で追い付いた。

 

「ダメっ!美炎ちゃんっ!」

 

「ちぃ姉!?そこを退いて!早く可奈美を追いかけて話を聞かないと!」

 

「だからって……!」

 

そこに会場内の警護にまわっていた刀使たちが2人の元に駆け寄って来る。

 

「そこの君たち待ちなさい!会場内の生徒は今の場所から動くなと命令が出てるはずです!」

 

「もう警備が……!」

 

「ま、待てないよ!」

 

ここで捕まるわけにはいかない。そう思った美炎は彼女たちの隙をついて、迅移で会場を飛び出した。

 

「もう美炎ちゃんっ!待って、って言ってるのに!貴女まで行ったら余計に話がややこしくなるのに!!」

 

「あぁ、ちょっと!?」

 

そして知恵も美炎を追うために、迅移で警護の者たちを振り払い、彼女の後を追った。

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

御前試合会場近く タバコ販売店

 

 

店内から双眼鏡で会場を監視する三日月。その後ろでは小型の通信機器で内部に侵入している菊一文字から連絡を受けている。

 

つい先ほどセイバーたちが目標を確保し、会場から脱出したと報告が入った。

 

同じ頃三日月も、会場から十条姫和を抱えた和泉守と、セイバーと、何故か美濃関の刀使が飛び出した。

 

美濃関の刀使については菊一文字も分からないと。

 

ともかく、第1段階はクリアした。後は彼らの逃亡を支援して、別命があるまで待機──────

 

「おや?追っ手か?」

 

そんなとき、会場から飛び出す2人の刀使。

 

現在会場内から外への連絡はこちらが妨害電波を放っているので、外に出ている警護担当からの追っ手はしばし無い。

 

だから会場内から追っ手が放たれるのは解るが、制服からすると美濃関と長船の刀使。

 

会場やここ鎌倉の警護は練府が担当している。なので追っ手が練府なら何も疑問は無いが、何故か美濃関と長船がいち早く4人の後を追って行く。

 

「さてさて、ならば─────」

 

「いや、俺が行く」

 

セイバーたちの後を追わせるわけにはいかない。そこで三日月が行こうとした時、義勇が代わりに動いた。

 

「【三日月の格好は目立つから、】ここを頼む」

 

「あい、分かった。気を付けてな」

 

「(コクン)」

 

そして義勇は刀を腰に差して、店を出た。

 

すると店の奥から、腰を曲げた老人が出て来る。

 

「ほや?お連れはどちらに?」

 

「うむ、どうやら急用が出来たらしい。なに、すぐに戻って来るゆえ、お気になさらず……」

 

「おやおや、そうでしたか……お茶や菓子を出そうとしたが……」

 

「どうもすまない。我々を店内に入れてくれただけでなく菓子まで……」

 

「いやいや、お若い方々が肌寒い外で立っているのが耐え忍びなかっただけじゃ……」

 

よっこらしょと三日月の前に腰を下ろす老人。

 

「それに何やらお忍びで折神家様のお屋敷を眺めていたご様子……」

 

「………」

 

「いや……深くは聞きますまい。その代わり……ひと勝負付き合って貰えないか?」

 

そう言ってご老人は部屋の隅に寄せていた将棋盤を手元に寄せる。

 

「承知した、ならば本気でやろうか」

 

「ほっほっ……まだまだ若いのには負けませんぞ?」

 

「(俺の方が年寄りなのだがな……)」

 

そして三日月は義勇が戻るまで、老人と将棋盤の前から目を離さなかった。

 

 

◇ ◇ ◇ ◇  ◇

 

鎌倉市街

 

 

「はぁ……はぁ……ごめん、ちぃ姉……でも止めないで……可奈美の……真意を聞かなくちゃ!」

 

「美炎ちゃん!そんなこと言ったって、逃げ切れるわけ無いでしょう!あの子たちや私たちだって!」

 

「おい止まれ!止まれと言っている!止まらなければ、お前たちも反逆者として拘束するぞ!」

 

そこに会場の警護にまわっていた刀使たち数名が少し遅れて2人に追い付きそうになっていた。

 

さすがは折神家本邸の警護担当刀使たち。

 

「もう追い付かれた!?でも……うん!なせば、なる!」

 

「あぁーー!もう、どうなっても知らないわよ!」

 

そして2人は御刀に手を伸ばし抜刀、彼女たちに刃を向けた。

 

「そっちがその気ならば……総員、抜刀!!」

 

隊長の指示により、警護の刀使たちは御刀を抜き、写シ張る。

 

「これより反逆者を斬り拘束、その後、十条姫和と衛藤可奈美を追うぞ!」

 

「「はっ!!」」

 

「「っ!」」

 

美炎と知恵、そして警護の刀使たち。互いに睨み合い、構える。

 

数では警護側が有利。だが、ここで捕まるわけにはいかない。

 

「総員……かかれっ!!」

 

「「っ!!」」

 

 

隊長の指示で、刀使たちが一斉に2人に斬り掛か────

 

 

ヒュン────ザシュッ! ザシュ! ザシュ!

 

 

「えっ!?」

 

「なっ!?」

 

2人に向けられた刃は届かなかった。

 

「なっ……だ、だれ………!?」

 

バタリッ!

 

隊長を含めた刀使たちは一瞬にして斬られ、写シを解かれた彼女たちは倒れていった。

 

そして立っていたのは、妙な格好の少年。

 

旧日本軍の軍服を思わせる服の上に、右半分が赤の無地、左半分は亀甲柄の羽織。

 

顔は前髪のせいでよく見えない。そして彼の手には、刀が握られていた。

 

「あ、あなたは……?」

 

「………」

 

チャキ…

 

「「っ!!」」

 

知恵がおそるおそる尋ねると、彼は黙って2人に刀を向ける。そして─────

 

「っ!」

 

ガキンッ!!

 

「くっ……!?」

 

「ちぃ姉!!」

 

あっという間に接近を許し、少年の刀が押し込まれる。

 

なんとか防いでいるが、思った以上に重い。

 

こちらは両手で御刀を持っているのに対し、少年は片手で刀を振り下ろし知恵を圧倒している。刀使でないのに、この力は一体?

 

「(あれ……この子……)」

 

「………」

 

「ちぃ姉から離れろ!」

 

美炎は直ぐさま横から少年に刃を振り下ろすが、その前に知恵から離れる少年。

 

「大丈夫、ちぃ姉!」

 

「あ、ありがとう、美炎ちゃん……」

 

「私たち2人ならいける!なせば、なる!」

 

「そ、そうね。いくわよ、美炎ちゃん!」

 

気を取り直して、御刀を構え直す2人。

 

少年もただ黙って、片手から両手に持ち直し構えた。

 

「(ちぃねぇ……みほの……まさか……な……)」

 

「ねぇ、あなたは誰なの?どうして私たちに襲いかかるの?」

 

「刀使でもなく、御刀でない刀……あなたは、先ほどの襲撃の件と何か関わりがあるのかしら?」

 

「………」

 

戦う前に、2人は少年に問うた。だがやはり、少年は何も答えない。ただ黙って2人に刀を向けるだけ。

 

「だったら……あなたを倒して、それから可奈美を追わせてもらうよ!」

 

そして、美炎が先に迅移で一気に距離を詰め、少年に斬り掛かる。

 

「………」

 

少年の方は真っ向から受け止める体制を取り、美炎の一撃を受け止めた────

 

ガキンッ!

 

「えっ!?」

 

「………」

 

────と思いきや、あっさり弾き返された。更にその勢いで少年の刀が美炎を狙う。それを直ぐさま迅移で避ける美炎。

 

そして横から知恵が刀を下から上を振り上げるように斬り掛かるが、それを何事もないかのように紙一重で躱され、逆に少年の蹴りを腹に受けてしまう。

 

「ぐっ……!」

 

「ちぃ姉!!」

 

知恵に気を取られた一瞬、少年の刃は美炎へと矛先を向け、突いてきた。

 

「美炎ちゃんっ!!」

 

「やばっ!?」

 

左肩を少し掠めたがなんとか体を捻るようにして避けようとしたので、致命傷は免れた。

 

だが、少年からの追撃は止まない。迅移無しに迅移を使う美炎に追い付き、斬擊を連続で繰り出す。しかもその一撃一撃が重く、鋭い。確実に美炎の急所を狙っている。

 

それをなんとか防いでいるが、いつまでもこの状態は続けられない。美炎は特定の剣術を持たない無型の剣。

 

型が無い分自由な戦いが出来るが、彼女自身はそこまで集中力を長くは保てないのだ。集中力が切れてしまうと、すぐに隙が生じそこを狙われる。

 

いや、その前に写シが解かれ戦闘続行が出来ない。

 

「美炎ちゃんっ!!」

 

「(フッ……)」

 

「っ!!」

 

押し込まれる美炎を助けようと、知恵が死角から斬り掛かるが、少年はクルッと回るようにそれを躱した。

 

そして、3人は再び睨み合うかたちになる。

 

「はぁ……はぁ……」

 

「はぁ……つ、強い……」

 

格が違う。まさにその通りだった。構え、1つ1つの動きに、攻撃、隙が見えない。

 

あったとしても、こちらの攻撃はまるで当たらない。目の前にいるはずなのに、手応えを感じない。

 

まるで、水を斬っているかのように。

 

「こんな人……初めて……」

 

「ただ強いだけじゃないわ……彼、対人戦に相当慣れてる……」

 

「ホントに、この人一体……?」

 

「(さっき斬り掛かっだ時……一瞬だったけど……)」

 

「早くしないと、可奈美たちに追いつけない……こうなったら、2人同時に行くしかないよ!」

 

「そ、そうね……」

 

すると、少年の方は刀の刃先を下へと下ろし、下段の構えをとる。美炎と知恵も対抗するように、構える。

 

「「………」」

 

「………」

 

ほんの数秒だったが、この3人にとっては長く感じさせた。そして─────

 

「「っ!!」」

 

バッ!!と2人同時に迅移で少年に斬り込む。恐らくだが、今日一番の迅移ではないだろうか?これならそこらの刀使や少年でさえも捕らえきれない─────

 

「スゥゥゥ……」

 

少年が深く深呼吸して動かない。こちらを捕らえてるようには見えない。こちらは二方向からほぼ同時に少年を狙っている。美炎は少年の腹に峰打ちを、知恵は刀を持っている右手を。

 

「ヒュゥゥゥ……」

 

呼吸音が口から漏れる。やはり動く気配は無い。

 

「(とったっ!!)」

 

「(これなら……!)」

 

「(全集中……水の呼吸────)」

 

 

 

ザバァァーーー!!

 

 

 

その瞬間、美炎に水流が見えた。見間違えでもなく、本当に水流が一瞬、見えたのだ。

 

「(参の型────流流舞い)」

 

ザシュ……!

 

「「えっ………?」」

 

目の前にいた少年が見たことの無い流れるような動きで2人の僅かな隙間に入り込み、波のように2人の体を斬った。

 

そして、写シを解かれ一気に力が抜けた2人はその場に倒れ込んだ。

 

倒れた2人を見下ろし、少年は静かに刀を納刀しその場を立ち去ろうとした時、ポケットに入れてた物の感触が無いことに気付く。

 

見るとポケットが少し斬られており、地面にペンダントが落ちており、蓋が開いていた。

 

「(あの時か……)」

 

少年は先ほどの知恵からの攻撃は完全に躱せていた。だが、美炎の方は咄嗟の判断か、それとも執念か、刀の動きを無理やり変え少年の動きについて行こうとした。

 

そのため、少年のポケットに掠めたのだ。

 

「………まだ………」

 

「っ!」

 

すると、美炎が弱々しくあるが、ゆっくりと動こうとしていた。だがやはり、ダメージのせいですぐに倒れてしまった。しかしそれでも無理に立ち上がろうとしていた。

 

「可奈美に……話を……聞くまでは……」

 

「もう止めろ。それ以上は体が保たない」

 

少年が美炎に声をかけると、ピタッと動きを止めた。言うことを聞いたのか、そう思ったが違う。

 

「その声って………」

 

 

少年の声には聞き覚えがある。昔と比べると男らしい太い声になっていたが、聞き間違うはずが無い。

 

 

そしてなにより、落ちていたペンダントの中には1枚の写真が。

 

 

それは、幼い頃の自分と知恵の写真。

 

 

そして今、少年を見上げるようになってるので、前髪に隠された顔が美炎の目に入る。それは─────

 

 

「義勇くん……?」

 

「っ!!何故……俺の……!?」

 

そこで少年はようやく目の前の刀使の顔にようやく気付いた。

 

人相を隠すための前髪のせいでよく見ていなかったが、彼女の顔は成長しているが、見間違うはずが無い。

 

「っ!お前は………」

 

すると少年、いや義勇は直ぐさまペンダントを拾い、その場から走り去ってしまった。

 

「義勇くん……どうして……」

 

その後、美炎と知恵は他の警護の刀使に身柄を拘束されて刀剣類管理局本部へと連れていかれた。

 

 

 

御前試合 決勝戦会場

 

 

()()()()()()()()()()()()()折神紫襲撃未遂から直ぐ、会場内の出入りは全て封鎖され、誰1人として、会場内から出入りする事が出来なくなっていた。

 

会場内は、先ほどの襲撃未遂の事で話がもちきりとなり、特に平城学館・美濃関学院の生徒たちはザワついていた。

 

その後すぐ折神紫により、美濃関学院・平城学館の両学長を緊急招集の命が出された。

 

さらに結芽の情報により、両刀使たちの逃亡を協力したとされる身元不明の人物2人の調査も行われた。

 

会場内全ての監視カメラをチェックし、怪しい2人の動向を探ろうとしたが、おかしなことに、()()()()()姿()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

現在警備室では、全てのカメラの映像を血眼になる勢いで2人が写っている姿を探している。

 

さらに4人が簡単に逃亡を許した件についても、警備に不備があったのでは無いか?と言うことで、警備状況の確認を徹底に行っている。

 

同時に、他の協力者がいないかスタッフ全員に事情聴取を行っている。

 

そのスタッフたちは、1つの大部屋に集められており、順番に聴取を待っている。

 

その中には、部屋の隅の長椅子に座る菊一文字の姿もあった。

 

そんな彼の隣に、赤みがかった髪の青年が座る。

 

「アイツら無事に目標を保護と離脱出来たらしいな」

 

「監視カメラの仕掛けもバッチリみたいですね」

 

他のスタッフには気付かれず、聞こえない程度の小声で話す菊一文字と村正。

 

「後は刀剣類管理局がどう動くかだな?」

 

「先ほど平城学館、美濃関学院の学長が緊急招集されました」

 

「美濃関学院か……なんでそっちの刀使まで逃亡してんだ?」

 

「さぁ、そこまでは……それと、富田さんたちかれ連絡が。会場から出た追っ手はひとまず片付けたと……」

 

「そこのお二人さん」

 

そんな2人に、1人のスタッフが声をかけた。

 

「飲み物でもどうだい?」

 

そう言いながら、2人にお茶のペットボトルを差し出す。

 

「おぅ、助かる」

 

「ありがとうございます、鶴丸さん」

 

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

逃亡グループSide

 

 

御前試合会場から抜け出し、姫和を小脇に抱え全力疾走する青年。

 

それについて行く可奈美は、会場からだいぶ離れた小さな神社の裏手に入った。

 

「……とりあえず、ここまで来れば良いか」

 

「はぁ……はぁ……あ、あの……あなたは……一体────」

 

「一体何者だ!いきなり人を攫い、小脇に抱えて────」

 

「うるせぇ!だいたいお前があんな事しなきゃ、俺たちがこんな動く必要も無かったんだよ!」

 

「私の襲撃を知っていたのか!?ますます分からない!ホントは折神紫のまわし者ではないのかっ!?」

 

「んなわけねぇだろうがっ!!」

 

「だいたい刀使でも無いのに、あの身体能力はなんだ!」

 

「こっちにもいろいろあんだよ!」

 

「それといい加減に下ろせっ!!いつまで私を抱えているつもりだ!」

 

「助けてやった恩人に礼の1つもねぇのかよ!」

 

「貴様のような乱暴者にかける礼など無いっ!!」

 

「なんだとっ!?」

 

「あの~……」

 

「「あんっ!!」」

 

下手をすれば表通りにも聞こえそうなくらいの声で喧嘩をする2人。

 

さすがにマズいと思った可奈美が声をかけるが、2人の怒りの矛先がこちらに向きそうな勢いだった。

 

「えっと……と、とりあえず彼女を下ろしてあげて……ください……あと、姫和ちゃんも1回落ち着こう……」

 

ね?と可奈美に言われ、和泉守は渋々姫和を下ろし、解放された姫和は一度呼吸を整える。

 

「ところで、なんでお前はついて来たんだ?」

 

「えっ……なんでって……決着がついてないから……かな?」

 

確かに、2人の決勝戦は姫和により中断となってしまった。

 

「なら、今ここで決着をつけてやろう……」

 

そう言って、姫和は御刀へと手を伸ばす。

 

「えぇっ!?無理だよ!あんな凄い迅移使ったばかりで!」

 

姫和が折神紫相手に使用した迅移。通常のそれとは比べ物にならないくらいのもの。

 

つまり、霊力の消耗も相当のものになる。

 

そんな状態では、真面に写シも張れないだろう。

 

「そうだ、止めとけ十条姫和。今のお前相手なら、一回戦落ちした刀使でも勝てる。断言出来る」

 

「なら、お前とも1戦交えても構わないが……()()()()は飾り物では無いだろう?」

 

そう言って、和泉守の左腰に差してる刀に目を向ける。

 

だか和泉守はその刀には手を伸ばさず

 

「悪いが()()()()()()は主義じゃ無いんでね」

 

「なんだと……!」

 

「アワワ……(゜Д゜;≡;゜Д゜)」

 

和泉守の『弱い者いじめ』と言う言葉に我慢の限界か、今にも御刀を抜きそうな勢いの姫和。 

 

しかしそれを見ても、やはり刀に触れもしない和泉守を見て、姫和の堪忍袋の緒が切れそうだった。

 

一触即発の雰囲気にアタフタする可奈美。

 

 

「落ち着いて、2人とも」

 

そんな雰囲気に、透き通るようで、同時に強い氣を感じさせる声。

 

その持ち主は、可奈美が御前試合会場で出会ったあの青年、セイバーであった。

 

「あなたは……」

 

「なんだ貴様は、貴様もコイツの仲間か……」

 

「その通りだよ、十条姫和さん。そして、僕らは敵では無い」

 

ギリッと睨みつける姫和に憶せず、真っ直ぐ彼女の前に立つセイバー。

 

「それを聞いて、はいそうですかと信じるほど、私は馬鹿では無い……」

 

「いやいや、あんな無謀なことをしておいて何言ってんだ……」

 

「和泉守は黙ってて」

 

ハァ~…とため息をつくセイバー。確かに和泉守の言うことは間違っては無い。

 

だが今は彼女を刺激する必要は無い。

 

「こちらもすぐに信じてくるとは思ってはいない。なら、これで如何かな……『二十年前の大災厄』、『大荒魂』、『柊 篝』」

 

「っ!?……何故、それを……」

 

「詳しくは言えないが、僕らはある組織に所属している。その指示で君の保護と、大荒魂討伐の命を受けている。君に危害を加えることは絶対しない。約束する……」

 

「これは、私の問題だ……私の使命だ……邪魔をするな……」

 

「先ほどのあの体たらくで何が出来る?君1人で何とかなるなら僕らは最初っからこんな事はしない。だが、事は君1人でどうにか出来る問題では無い。それは君が一番よく分かっているはずだ」

 

こうハッキリ言われてしまい、姫和は黙ってしまう。

 

そしてセイバーは、可奈美の方へと振り向き

 

「衛藤可奈美さんだったね。君は大人しく帰りなさい。十条さんの言う通り、流石に君は無関係だ。これ以上関わることは君の為にならない」

 

「で、でも……」

 

確かにセイバーの言う通り、自分は何の関係も無い。

 

だが、だけど────

 

「やっぱりほっとけないよ!関係あるか無いかなんて、それこそ関係無いよ!目の前で困ってる人がいたら助ける、()()()()()()()()()()()()()()()()()()!」

 

「っ!!」

 

選択は間違って無い、可奈美のその言葉はセイバーの記憶にある瞬間が蘇る。

 

 

 

『多くの人々が笑っていました。ならばきっと、間違いでは無いと思います』

 

 

そして彼女は剣を抜き、彼女は英雄となった。

 

 

 

「………」

 

「えっと………?」

 

「なんだ……」

 

「どうした、セイバー?」

 

頭痛でもしたのか、突如頭を押さえるセイバー。

 

そんな今まで見たこと無い彼の様子に、和泉守も心配になるが、すぐに

 

「……ホントに……この年頃の少女は……」

 

「えっ?」

 

「この先どうなるか、分かってるのかい?」

 

「うん……大変なことになるだろうし……いろんな人に迷惑をかけちゃうかもだけど、私は姫和ちゃんとあなた達と一緒に行きます」

 

そう言う彼女の真っ直ぐな目を見るセイバー。

 

その覚悟を決めた目をセイバーはよく知っている。

 

それは彼がよく知る少女も、似たような目をしていたから。

 

「………和泉守、彼女も連れて行こう」

 

「っ!?本気かセイバー!?」

 

「ああ、責任は僕が持つ」

 

そう言い切るセイバーを見て、和泉守は諦めることにした。こうなってしまえば、セイバーはてこでも動かない、そう言う性格だと知ってるから。

 

「ハァ~……俺もたいがいだが……お前も相当頑固だよな?」

 

「ありがとう、和泉守」

 

ウ~……ウ~……

 

「「っ!」」

 

そこにパトカーのサイレンが4人の耳に入る。

 

まだ遠いが、このままジッとしてる場合では無い。

 

「さあ、移動しようか────」

 

「待て……その前に、お前たちの本当の目的はなんだ?」

 

この際、彼らと行動を共にするのは仕方ない。だが、姫和にはコレだけは分からなかった。

 

彼らの本当の目的。折神紫の手のものとは思えない。

 

だが、それであっさり信用する事は出来なかった。

 

「……先ほども言ったが、君と同じ大荒魂の討伐。そして、世界を護ること。それだけさ」

 

「世界を……護る……?」

 

確かに大荒魂は世界を滅ぼしかねない存在。それは分かるが、それ以外の何かを感じさせる。

 

「衛藤さん、とりあえず君の同行は許します。ただし、こちらは十条姫和さんの身の安全を優先するので────」

 

「うん、もしもの時は私を見捨ても構わないよ」

 

「よし……十条さん、この神社に隠したものの回収を」

 

「っ!?知ってたのか……」

 

「申し訳ないが、君の昨日の動向は監視させて貰いました」

 

すまないと頭を下げられ、姫和も仕方ないと追及はしなかった。

 

そしてセイバーたちが周囲を警戒している間に、姫和神社の床下に隠していた巾着袋を回収した。

 

その巾着袋には、財布と非常食、一通の手紙が。

 

「(アイツらはこの手紙のことも知っているのだろうか……?)」

 

「あっ!そういえば私、荷物置いて来ちゃった!」

 

「残念だが諦めろ。刀剣類管理局から支給された携帯だったら、GPSで居場所がバレるからな」

 

「う~、舞衣ちゃんのクッキー~……(TOT)」

 

「それで、これからどうする気だ?」

 

姫和がそう尋ねると、セイバーは黙って、裏手に止まっているトラックに指を指す。

 

「ちょっと荷台に乗せて貰うよ」

 

 

◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

刀剣類管理局 本部

 

 

現在、折神紫襲撃未遂事件の調査のために、『十条姫和』、『衛藤可奈美』の関係者全員に事情聴取を行っているが、特に進展は無かった。

 

全員が何故彼女たちがあんな事をしたのか、まるで分からなかった。

 

試合前日、当日共に変化無し。折神紫との関係性は全く見つからず、協力者の正体も未だ掴めず。

 

親衛隊第一席の真希は慙愧の念にとらわれていた。

 

やはりあの時、命令を無視してでも、彼女たちのあとを追うべきだった。

 

「(そうすれば今ごろ─────)」

 

「恐い顔をしていますわよ」

 

舞衣の事情聴取を他に任せ、取調室を出た真希に、同じく取り調べを終えた寿々花が待っていた。

 

「柳瀬舞衣は何も知らないようだ」

 

「平城の岩倉さんも同じでしたわ」

 

「安桜美炎と瀬戸内知恵は?」

 

「両名とも、『自分たちは衛藤可奈美に話を聞こうとしただけだ』と主張してばかり……」

 

本部の医務室で治療を受けてる美炎と知恵は、そのまま取り調べを受けている。

 

しかしそうなると、やはり手がかりはゼロ。紫に申し訳なくなる。

 

彼女に御刀を抜かせてしまった。本来ならそれは親衛隊である自分たちの役目。

 

これでは何の為の親衛隊か……

 

「しかし何故紫様はお止めしたんだ……あのまま追っていれば……」

 

「何かお考えがお有りなのでしょう。紫様のなすことは、後々理由が必ず分かりますわ」

 

髪をイジりながら、ひょうひょうとしている寿々花。

 

だが彼女だって一刻も早く下手人を捕らえたいのだ。

 

「ところで今回の一件、()()()()が関わってると思います?」

 

()()か……」

 

『舞草』、度々刀剣類管理局のコンピューターにハッキング行為をしたり、管理局や折神家の事をコソコソ嗅ぎ回っている謎の組織。

 

未確認であるが、刀使も所属しているとか

 

「それも分からない……だが個人的には舞草の仕業とは思えない」

 

「理由をお尋ねしても?」

 

「今までのやり方と違いすぎる。派手な事は避けるヤツらの犯行とは思えない」

 

「では、謎の協力者については?会場中の監視カメラにほとんど手がかりが残って無いところを見ると、ハッキングして監視カメラに細工したしたのではありませんか?」

 

「……それが一番分からない。ハッキングされた形跡は無かった。だが監視カメラの方には妙な機械が取り付けられているのが分かった」

 

それを調べている途中だが、どうやらカメラにダミー映像を流し続ける機械らしい。

 

それだけでは無い。なんと会場の外で警備にあたっていた刀使や警官たちと一時連絡が取れなかった。

 

どうやら何者かが妨害電波を発していたらしい。

 

舞草の手の者の仕業か?と思ったが向こうはこちらの警備状況を知っていたかのようにすり抜けている。

 

こちらだって警戒してなかった訳で無いのに、手際が良すぎる。

 

衛藤可奈美と十条姫和の事もそうだが、協力者の情報が全く掴めない。

 

まるで形が無い存在を追っているように思える。

 

「そんな手詰まりの真希さんに1つご報告がありますわ」

 

「なんだ、その様子だと今回の事とは別のようだが?」

 

「それはですね─────」

 

「お疲れさまです、真希さん」

 

ヒョコッと、曲がり角から姿を現したのは、御前試合スタッフ用の制服ではなく、ラフな私服を着た少年。

 

朝、彼女たち親衛隊に差し入れを作ってくれた張本人。

 

「菊一!?どうしてここに?」

 

アワワ!と慌てて身だしなみを整える真希。

 

そんな様子をクスクスと嗤う寿々花と菊一。

 

「僕みたいなバイトなんかの人たちは御前試合会場の一室で取り調べられてましてね」

 

「ああ、それは知ってるが……もしかして差し入れてくれたランチボックスの回収に来たのか?」

 

それなら、完食した後に夜見が返却に行ったはずだが

 

「いえ、あんな事がありましたからね。皆さん夕食を真面に取らないかと思いましてね」

 

「「うぐっ!?」」

 

「やっぱり……それで簡単ではありますが用意させて貰ったんです。冷めても美味しく頂けるものを選んだんで」

 

そう言って、菊一は真希に新しいランチボックスを手渡した。

 

「管理局の受付に『親衛隊の皆さんお届け物です』って言ったら、寿々花さんが出迎えてくれたんですよ」

 

それを聞いて、ジロッと寿々花を一瞬睨みつける。自分だけズルいと。

 

「私はちょうど取り調べが終わったところだったので」

 

「夜見さんと結芽は?」

 

「今は紫様のお側にいると思う」

 

「なるほど……ところで捜査は進んでいるのですか?折神紫様を襲おうとしたあの子たちは?」

 

「すまない……幾ら君にでも詳しくは言えないんだ。けど、芳しくないと言っておくよ」

 

「そうですか……では、そろそろ僕はお暇します」

 

「あら、まだいらしても構いませんわよ?」

 

むしろもっと一緒に居たいと思ってるが、真希の手前、下手な事は言えない寿々花。

 

「すいません、これから別の仕事で……」

 

「またバイトか?君はホントに働き者だな?」

 

「真希さんたちもそうでしょう?……では、また」

 

「ああ、またな菊一」

 

「ご機嫌よう、菊一さん」

 

そして菊一はその場を後にし、来た道を戻って管理局を出た。

 

管理局の門をくぐる前に、4人がいる方を向き

 

「次に会うときは敵同士、か………恨まれても、文句は言えないな……けど、やらなきゃならないんだ……」

 

と悲しそうに呟き、自身の任務へと戻った菊一こと、公安零課の菊一文字宗則。

 

 

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