新・刀使ノ乱舞 作:エクスカリバー!!
逃亡組side
ブゥーン……
何事もなく街中を走り抜けるトラック。
まだチラホラだが、刀使や警官、パトカーが何台かその近くを走ったり、目の前に近付いて来たりするが、誰も荷台には目もくれなかった。
その中に居るとも知らずに。
現在可奈美たちは、セイバー曰くヒッチハイクしたトラックの荷台の中に入り込み、身を潜めている。
そしてトラックは高速道路へと入って行った。
「ふぅ~……上手くいったね」
「ああ、無事に高速に入ったようだな」
「まずは一安心……だな、セイバー?」
「まずは、だけどね。このまま無事に都内に行ければ良いけど……」
そう言って、こっそり荷台から外の様子を確かめるセイバー。
「そうだ!忘れるところだった……」
そう言って和泉守は自分の後ろにある段ボールを開け、中を物色する。
「おい!勝手に他人の荷物を────」
「大丈夫大丈夫、問題ねぇよ。ほら」
そして和泉守は可奈美と姫和に女物の私服と大きなギターケースを渡した。
「(予備の分入れておいて良かった……)制服だと目立つからな、それにでも着替えろ。安心しろ、外を見てるからその間にサクッとやってくれ。御刀はそのケースの中にでも隠してくれ」
そう言って和泉守はバレないように荷台から外の様子を見ていた。
セイバーも2人の方に向かないよう、スマホのような物に何かを打ち込んでいる。
それを確認してから2人は一応段ボールで壁をつくり、用意された服へと着替えた。
「(さて……)」
着替えながらも姫和はセイバーたちを警戒しながら、巾着袋の中を確認する。
こんな時のために用意しておいた普通のスマホに、非常食の乾パン、数万ほどのお金。そして
「あれ、ソレってアナログのスペクトラル計?」
可奈美が姫和の荷物から、方位磁石のようなものを見つける。
『スペクトラル計』とは、荒魂を探知するアナログ計器。約5センチ程の強化ガラス球の中に、スポイト数滴分の荒魂化したノロが入った方位磁石のような形をしている。荒魂が引き合う性質を利用し、接近すると振動するようになってる。
現在は刀剣類管理局から支給される『スペクトラムファインダー』が使われてる。スペクトラム計を近代技術によりデジタル化したプログラムで、実物の荒魂を用いたスペクトラム計は危険ということで開発されたのだ。
そしてノロは折神家の元に全て回収されているそうだが……
「これって、誰の?もしかして、
「“も”?」
「うん。私のお母さんも刀使だったんだ。凄く強かったんだって……それでね、美濃関の学園長と同級生だったんだよ!」
「……名前は……」
「えっ?お母さんの?」
「いや……お前の……」
「え~!?酷いよ姫和ちゃん!私の名前知らなかったの!?(TOT)」
「十条、確かにそれは酷いぞ。ソイツは『衛藤可奈美』だ。それと衛藤、少しは静かにしろよ」
段ボールの壁の向こうから和泉守に注意され、可奈美はしぶしぶ黙ることにした。
そんな彼女たちの様子を見て、クスリと笑うセイバー。すると、手元の通信機から声が。
『ずいぶん楽しそうですな、セイバー殿』
「おっと、運転中に騒がしくしてすまない蜻蛉切」
『いえいえ、自分もこういう賑やかなのは好きなので』
通信相手は現在セイバーたちが乗っているトラックの運転手、公安零課の蜻蛉切である。
そもそもこのトラックや可奈美たちの服は零課が検問所が構築される前の足と、保護した十条姫和(+可奈美)に着替えさせるためにあらかじめ用意していたものなのだ(もちろん彼女たちは知らない)。
『ところで、この後はこのまま本丸へとお二人を送りますか?』
「いや、本丸へは最後の手段。今は折神紫や舞草、時間遡行軍がどんな動きをしてくるか分からない状況で、本丸の所在を明かされたくない」
『ではしばらくは……』
「少しばかり、様子見の逃避行かな……大丈夫、そう簡単に捕まるつもりは無いよ」
『もちろんです。そのために我らもいるのですから!』
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
刀剣類管理局本部 ヘリポート
折神紫襲撃から数時間後、美濃関・平城の両学長がそれぞれ到着した。
この2人もそうだが、現伍箇伝の学長たちは刀使の頃からの知り合いなのだ。
そのためヘリポートで顔を合わせた学長たちは再会に少し喜んだ。
そこに親衛隊の真希と寿々花が2人を出迎えた。
「お忙しいところ、ご足労いただきありがとうございます。紫様がお待ちです。どうぞ……」
「獅童さん、その前に少しいいかしら?」
◇◇◇◇◇
本部 管理局局長用執務室
美濃関・平城の両学長が到着する少し前、紫はとある人物からの電話を受けていた。
この非常時に緊急以外は受けないが、紫への直通回線からの連絡だったので、安易に無視は出来なかった。
そして、その内容は────
「なるほどな……御前試合当日にわざわざ直通の回線で上申と言うから何かと思えばこういう事だったか……」
『はい、局長。もう10年以上も懸案事項になっている“赤羽刀”関連の件につきましては、調査本部設置と調査部隊の編成許可をいただきたく思いまして』
『赤羽刀』とは荒魂が落とす事がある錆びた御刀。現状、御刀を新たに製造する事はできないため、この赤羽刀を再生する形で製造されている、と表上ではそういうことになっている。
だが──────
『赤羽刀の存在については情報不足で足踏みを続け、我々人類は長らく後手に回り続けてきましたが、そろそろ片をつける時期かと……』
「
『………』
「その物言いだとまるで、
『……その可能性も考慮している、と言うことだとお考え下さい。ただ海に沈んだ御刀を核としてノロが集まり、その結果荒魂が発生する。メカニズムとしては妥当に見えます。ですがその実、御刀が錆びる理由も、赤羽刀の荒魂が広範に発生する理由も、現象をつなぐ過程に明確な説明が出来ておりません』
御刀は通常の刀、金属では無い。海に沈むくらいで錆びるようなものでは無い。
確かに
しかしそれだけでは、対処療法以上の対策をとることや、終わらせることは、出来ない。
「なるほどな……“終わらせる”か……いいだろう、この件はそちらに一任する。良い報告を期待する」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
綾小路武芸学舎 学長執務室
美濃関・平城の両学長が本部に到着した頃、綾小路武芸学舎の学長『
「なるほど、それで伍箇伝の混成部隊を編成したいと……もっともらしい理由をつけてはいるが、本音は別にありそうだな、真庭学長?」
『と、言いますと……?』
「例えば……今、
電話越しではあるが、この人の勘の鋭さは相変わらずだな……と思う真庭学長。相楽学長は刀使の頃から、折神紫がもっとも信頼し、敵に回したくないと言わせた人物。
『小烏丸と千鳥の使い手と謎の人物たちによる局長襲撃の件、ですか?そんなまさか……ただの偶然ですよ、結月先輩』
「……まあ、そういうことにしてやるよ、紗南。ともあれ、我が校からも刀使を派遣する。それから鎌府学長には私からそれとなく話をしておこう。“局長のお役に立てる”、そう言えば彼女は何も言わない。寧ろ自分から首を突っ込んで来るはずだ」
『それは助かります。私から提案すれば『何故貴様如きが紫様の言葉を代弁するか!』って言ってくるのが目に見えてますから……』
確かにその光景は容易に想像出来てしまい、少し笑ってしまいそうになってしまう相楽学長。
まあ自分から言ったとしても同じ反応をするだろうが、真庭学長から切り出されるよりマシになるだろうと考える。
「それで、美濃関と平城の学長には?」
現在2人は例の件で先ほど鎌倉に着いたと連絡がきた。
『私もまたは鎌倉にいるのでこちらから声をかけておきます。久々に2人の声を聞きたいと言うのもありますし』
それでは、と真庭学長が通話を切ろうとする前に相楽学長は止めた。
「その前に1つ聞きたい」
『はい』
「例の襲撃だが……協力者と思われる謎の存在についてだが……」
『未だに情報が全く無いと聞いています』
「率直に聞く。何者だと思う?」
『………私見ですが、伍箇伝や刀剣類管理局、ましてや舞草でもない、全く別の組織ではないかと思います』
「その根拠は?」
『根拠はありません。ですが、工作の手際の良さ、行動の速さ、正体を全く掴ませないところから、舞草とは考えにくい……伍箇伝や刀剣類管理局内の反折神紫派にしては手際が良すぎる。そう考えると私たちが知らない全く別の組織が関与しているように思えて……』
「そうだな……そして、
『っ!では相楽学長も……』
「私も確証も証拠も無いがな……だが、そう感じられずはいられない……」
『ですよね……』
「ともかく、調査隊に送る人材は確保しておく。そちらも頼んだぞ」
『はい、では……』
そして、ガチャリと受話器を置き、椅子の背もたれに体を預ける。
「本当に貴方が関与しているのか……十条さん……」
15分後……
コンコン…
「綾小路武芸学舎、高等部2年……木寅ミルヤです」
「入れ」
失礼します、と入って来たのは銀髪で眼鏡をかけた女生徒。『木寅 ミルヤ』、綾小路の特別祭祀機動隊隊長である。
「よく来たなミルヤ。用件は先ほど伝えたように、赤羽刀に関する調査。これに参加するために、すぐに鎌倉へ向かってほしい。現在の任を離れ、しばらくは学長直属となるが問題ないな?」
「はい、問題ありません」
「それと、君には調査任務以外でやってもらいたいことが2つある」
「なんでしょうか」
「まず1つ。刀剣類管理局、舞草以外に例の襲撃事件に関与している、動いている謎の組織について調べてほしい。これは、あくまで私個人がそう考えているだけだ。優先順位はそこまで高くない」
「分かりました。もう1つは?」
「ある御刀を探し、見つけて持ち帰ること。その御刀の
それは、遙か昔に失われたはずの一振りである。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
逃亡組side
「ねぇねぇ、今どこかな?」
「高速をおりて、都内に入ったと思うが……」
鎌倉を脱出して数時間、トラック内で揺られてからずいぶん経つ。和泉守の許可をとり、少し外の様子を見る姫和と可奈美。
外はすっかり夕日の光でオレンジ色に染まりつつある。だが遠くには、巨大なタワーが見える。
そのタワーにあたる陽光から方角を推理すると、東京の東辺りだと思われる。
「それで、どこまで行くつもりだ?」
「まあ、待てよ。そろそろ……」
キキィー……
トラックが裏道の、道路脇へと止まった。そこで4人は荷台から降りた。
そしてセイバーは、姫和たちに怪しまれないように運転席の方へと向かう。
「じゃあ僕らは、このまま“隠れ家”に向かう。蜻蛉切は鎌倉に戻って主からの指示を待ってくれ」
「承知しました、お気をつけて」
そして、トラックは大通りへと向かい、セイバーたちの視界から消えた。
そこに可奈美がセイバーの元へと行き
「あの、えっと……セイバーさん?」
「“セイバー”でいいよ、衛藤さん」
「えっと、じゃあセイバー。和泉守さんが早く来いって……」
可奈美が指差す方向で、和泉守と姫和がまだかと言うような顔をしていた。
「おっと、運転手にお礼していて気付かなかった。ありがとう、衛藤さん」
「そんな、お礼なんて!寧ろ私の同行を許可してくれて……」
「それは君の覚悟を摘み取っただけ……さあ、せっかちさんたちの元に行こうか」
そして、セイバーの後ろを付いて、和泉守たちの元へ向かう可奈美。彼の背中を見ながら、可奈美は既視感を感じた。
「(なんだろう……やっぱり私、セイバーと前にどこかで……)」
それから一行は、出来るだけ一目を避けて、尚且つ目立たないように、セイバーたちが言う“隠れ家”へと向かった。
「ここが……」
「“隠れ家”、か……」
一行が辿り着いたのは、何の変哲も無い、ただの小さな旅館。しかも古b……長い歴史を思わせるような雰囲気がある。
「そう。見た目はあれだけど……とにかく入ろうか」
「安心しろ。確かに見た目はあれだが、温泉はあるし、メシも美味いからな!」
セイバーと和泉守に言われ、仕方なく入る可奈美と姫和。
中に入ると、外とは違い内部は綺麗で、今風に合わせてあった。
可奈美たちが内部に見渡している間に、セイバーはフロントへと向かった。
受付には30ほどの男性が出迎えた。
「いらっしゃいませ」
「“影の間”を予約していた“
そう言ってセイバーは懐からこっそり公安のバッチを受付に見せる。
それを確認した受付はニコリと笑い
「お待ちしておりました、公零様。お部屋までご案内させてもらいます」
「あ、その前に。実は急ですいませんが、1人
そう言って、セイバーは可奈美の方へと視線を向ける。
「申し訳ありませんが……」
「はい、
「感謝します」
「では、こちらへ……」
そして一行は受付の男性に案内され、部屋へと向かった。
部屋に着いた一行はようやく肩の荷が下りたのか、床へと座る。だが、姫和は警戒を解かず、部屋内を確認する。
セイバーたちに用意された部屋は5人家族用の広い部屋。
中央にテレビや大きな机が置かれた居間、隣に布団を敷くための部屋と押し入れ、出入り口近くにトイレとシャワールーム。部屋は和式だが出入り口はカードロック式。
全ての部屋を見て回ったが、特に不振な点は見られない。
「そうカリカリすんなよ、十条。小ジワが増えるぞ?」
「余計なお世話だ……」
一応出入り口に近い場所に座る姫和。やはりまだこちらを信用してはいないようだ。
まあそれは仕方ないが。
「さて、夕食は19時頃にこの部屋に運んで貰う。シャワールームはあるが、温泉は21時まで」
温泉っ!と可奈美は食いつくが、姫和にもしもの時に動けないからシャワーだ、と言われ渋々諦めることにした。
「それで、これからどうするつもりだ?」
「うん、まずは管理局の動きを見る。下手にあちこち逃げ回るより、落ち着いて、慎重に動こう」
「ずいぶん悠長な事を言うな」
「十条さんの言いたいことも分かる。だが、下手に動いて先回りされるより、行動を控えて気配を消せば、向こうだって見つけにくいだろう」
「………」
セイバーの言うことは一理ある。だが使命がある以上、そうのんびりとしてはいられないが、今ここで彼らと別れるのは得策では無い。
「(ならやはり、ここは大人しくコイツらに従うしかないか……)」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
管理局本部 医務室
可奈美たちを追っていたが、謎の人物によって阻止され管理局に連行された美炎と知恵。
現在2人は謎の人物との戦闘による負傷の手当を受けながら、取り調べを受けていた。
知恵は美炎を止めるべく、会場を出たと。
美炎は衛藤可奈美に事情を聞こうとしただけと証言したが、向こうは半信半疑だった。
謎の人物については、2人は共に知らないと答えた。
治療と取り調べがある程度終わり、医務室に残された2人。
念のため、部屋のドアの外には見張りの刀使がついている。医務室は1階だが、もちろん外は警備がいる。
部屋に残された2人は黙って、時が流れるのを感じる。
本当なら今すぐにでも、可奈美を追いかけたい。彼に会いたい。だが、そんなことをすれば、余計に自分の周りの人たちに迷惑をかける。そう考えると、体が動きそうになかった。
すると、チラッと部屋にある医療機器が目に入る。
メーカーを見ると、『富田カンパニー』とあった。
「義勇くんの家のだね……」
「そうね……」
それは、幼馴染みの実家のものだった。
『富田カンパニー』は医療機器の開発・販売で世界トップクラスに入る企業だ。
特に力を入れているのは、技手や義足の開発。
任務で手足を失った刀使たちに今後生活に支障をきたさぬよう、研究と開発を行い、刀使たちにデータを送る事を条件に、半額に近い値段で提供している。
「元気、そうだったね……」
「そうね……」
「…………」
会話はあっという間に終わり、再び静寂が訪れる。
数分後、コンコンとノック音がし、1人の女性が入って来た。
「羽島、学長……?」
医務室に入って来た美濃関学長の羽島学長は険しい表情をしていた。
「あの、ご無沙汰しています羽島学長。私がついていながら美炎さんを……申し訳ありません」
「……安桜さん、瀬戸内さん。まさか親衛隊直轄の刀使たちに御刀を向けるなんて……衛藤さん並にとんでもないことをしてくれたわね」
それを言われ、うっ…と美炎はガクッと項垂れる。
「衛藤さんたちがしたことは、もちろん大問題よ。けれどあなたたちがしたことも立派な反逆罪。本当なら御刀を取り上げらるだけじゃすまないわ」
「ご、ごめんなさい……」
やっぱり少なくとも、御刀は没収される。そう覚悟する美炎。
「あの羽島学長、うちの……長船の学長はなんと?」
「瀬戸内さん。紗南からあなたのことを頼まれているわ。だから今は、私の指示に従って下さい。でも、その前に────」
そう言って羽島学長は、2人の正面に立ち、目線を2人に合わせると
「これだけは正直に答えて。警護の刀使たちとあなたたちが出くわした人物に心当たりは?」
「「………」」
「………」
まっすぐ2人の目を見つめる羽島学長。
それに答えるように、2人も目線を外さず、彼女に口を開く。
「いえ、ありません」
「私も分かりません」
それだけ答えると、羽島学長はまた少しの間、2人の目を見つめると、またふぅ~と一息つき、立ち上がる。
「分かりました。では2人に辞令です。これから結成する『赤羽刀調査隊』の一員として、『安桜美炎』、『瀬戸内知恵』の両名を徴用します」
「はいっ!」
「あ、は、はい!……って、赤羽刀調査隊……?赤羽刀って確か……荒魂を斬った時にたまに出てくる、あの錆びた御刀ですか……?」
「そうよ美炎ちゃん。終戦直後にアメリカが日本から御刀を持ち出そうとしたの。その数は明確には分からないけど、5千~1万とも言われているわ────」
しかしその途中、輸送船内部に侵入していた、未だにアメリカを恨む数名の日本海軍の人たちによって沈没。御刀は海底に散逸した。
当時は終戦直後ともあり、引き上げることは出来なかった。更に当時の海軍を含む日本軍は戦争を責任や裁判をかけられた。
そして日本復興に力を入れていたため、誰も御刀引き上げのことを後回しにした。
「────だけど近年、何故か倒滅した荒魂の体内から錆びた御刀、赤羽刀が出てくることがあるの。そうですよね、羽島学長」
「さすがちぃ姉!物知りだな~」
「あの、美炎ちゃん……一応授業で習うはずよ……?」
「安桜さん、実技だがじゃなくて学科もちゃんと受けて下さいね?」
「す、すいません……」
「さておき、近年に関東を中心に荒魂の発生件数が増加しているのは知ってるわね?」
コクリと頷く、美炎と知恵。
「一部では、赤羽刀が原因ではないかと言われているわ。それで今回、伍箇伝が協力して学長直轄の特殊調査隊という形で、赤羽刀の調査隊を編成することになった……と言うわけ」
2人の罪を問われないためには、これに参加して貰うしかないのだ。
つまり2人に拒否権はほとんど無い。
「はい!」
「分かりました!……ところで羽島学長、そっちの子は誰ですか?」
美炎が、ドアの外側からチラチラと中を覗いている人物の方へと顔を向ける。
すると、ビクッ!と隠れてしまう。
「あぁ、ごめんなさい、すっかり忘れていたわ。ほら、こっちにいらっしゃい……」
羽島学長が手招きすると、ショートカットで、ハチマチを頭に巻く平城学館の刀使がおそるおそる入って来た。
「こちらは平城学館の『
「あ、あの……よ、よろしく……お願いします」
恥ずかしそうに、顔を俯きながら2人にペコリと頭を下げる清香。
「(ちぃ姉……この子……なんか影が薄いっ!?ていうか、声が小さいっ!!)」
「(ダメよ美炎ちゃん!心で思っても口に出しちゃ!初対面の相手に失礼でしょ!たとえホントのことでも!)」
「(いや、ちぃ姉もたいがい酷いよ……てか、なんで通じ合ってるの!?)」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
本部 局長用執務室
「失礼します。遅くなり大変申し訳ありません、局長」
「構わない、座れ」
調査隊です件を話した後、羽島学長は直ぐさま紫のいる執務室へと向かった。
執務室では既に五條学長と紫が応対用のソファに座っていた。
「このたびは、我が美濃関の学生たちがご迷惑をおかけしまして、大変申し訳ありません」
「定型な謝罪は不要だ。衛藤可奈美のことはともかく、安桜美炎に関しては実際に私に刃を向けたわけじゃ無い」
さっそく紫は両学長に可奈美と姫和の潜伏先に心当たりは無いか聞くが、2人は首を横にふる。
「あの……うちの『柳瀬舞衣』は……?」
「柳瀬舞衣と岩倉早苗の両名は、今回の件とは無関係と判断し、拘束を解きました」
もう1人の両校代表の刀使たちや、他の代表生たちも取り調べを終え、各自別室にて待機をして貰っている。
「では質問を変える。平城学館学長、御刀『小烏丸』は
「報告が遅れて申し訳ありません。代表決定戦前に、小烏丸があの子を選びました」
「小烏丸って……」
「『千鳥』は美濃関の衛藤可奈美……『小烏丸』は平城の十条姫和を適合者に選んだ……なんとも複雑な運命だな」
「そう、ですね……」
「それともう一つ、今回の件で協力者と思われる人物たちに心当たりは?」
「申し訳ありません。それもまったく……」
「うちもさっぱり……」
やはりか…、これ以上この2人に問い詰めても時間の無駄と考える紫。その後、両学長に2人に関する情報提供と、捜索の協力を命じた。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
逃亡組side
旅館の部屋で、今後の逃亡に必要な物を揃えて来ると言い、和泉守が部屋を出た後、可奈美はバッと手を上げる。
「あの……!私もちょっと外に出てもいいですか!」
「何を言ってる!もし誰かにバレたらどうするんだ!」
姫和が直ぐさま咎めるが、セイバーがそれを止める。
「どこに?」
「えっと……ちょっと電話を……」
「……1階フロアの東側に、公衆電話が数台ある。それを使うといい」
「ありがとう!」
そして可奈美に幾らか小銭を渡すと、彼女は直ぐに部屋を出てセイバーの言われた場合へと向かった。
「おい、良いのか!?もしアイツが管理局に────」
「大丈夫、彼女はそんなことはしない。それに、
セイバーに言われた通り、1階フロアの東側に行くと、数台公衆電話が一部屋ずつ並んであった。
その1つに入った可奈美は、舞衣の携帯の番号へと電話をかけた。
彼女は呼び出して直ぐに出た。
『もしもし……』
「もしもし、舞衣ちゃん?」
『かな……!可奈美ちゃんなの……?今どこに?』
「えっと……ごめん、それは言えない……いろいろ迷惑かけてゴメンね?私はとりあえず大丈夫だから……」
『大丈夫って……』
「あぁ!小銭がそろそろ切れそう!えっと、悪いけど、私の荷物預かっといて!それじゃ!」
『待って、可奈───』
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
管理局本部 入り口前
「もしもし?……もしもし可奈美ちゃん?」
幾らか呼びかけても、切れてしまった通話先からは、もう親友の声は聞こえなかった。
けど、それで諦めるような舞衣では無かった。
直ぐに、柳瀬家に仕える執事に連絡をとった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
管理局本部近く 喫茶店
「では予定通りに、セイバーたちは“隠れ家”に着いたのだな?」
喫茶店の奥の席、5人の青年と少年たちが集まっていた。
机にはそれぞれ飲み物と、中央にはタブレット型の通信機器がある。
画面は三つに分かれており、1つはセイバーたちを都内まで送った蜻蛉切が。
1つは現在管理局内に潜伏している村正、鶴丸たちが。
最後に、彼らの主である審神者の顔が映っていた。
『はい、現在自分は鎌倉へと戻っている最中であります』
『そうか、ご苦労さま。道中気を付けて、蜻蛉切。鶴丸たちはどうかな?』
すると、画面は村正・鶴丸たちの方に移り
『おう、ついさっき、美濃関・平城両学長に捜索を協力するよう命令が出たぜ』
『ようやく本格的に動きそうになるな……鎌府の方もそろそろ動きを見せるだろう』
『そうか……こちらの素性については?』
それについては、こちらにいる菊一文字が一番に答えた。
「未だに情報が全く掴めていないようです。親衛隊の見解では、舞草では無いと思っているようですが、こちらには一切気付いていません」
『一文字の言う通りだ、管理局でも、組織かそうでないかで少し揉めてるとこもあるぞ』
『なるほど……ありがとう、3人とも』
『それともう一つ、長船の学長の進言で、伍箇伝協力の下、赤羽刀の調査隊が編成されるらしいぞ?』
村正からの情報に、飲み物のストローを弄んでいた善逸が口を挟む。
「はぁ~、赤羽刀の?なんでこの時期に?」
「黄瀬よ、落ち着け」
「そうだぞ、黄瀬。それに大きな声を出すと、他のお客さんに失礼だぞ!」
「『炎定が一番うるさい』」
「よもや!?」
『えっと……村正の言う通り、現在美濃関と長船、平城から刀使が集まっているようだぜ、主』
『編成メンバーは分かるか?』
ちょっと待てよ…と村正が懐から手帳を出し、分かっている刀使の名前をあげていく。
『鎌府の方はまだだが……えっと……綾小路からは、『木寅ミルヤ』が。美濃関学院からは『安桜美炎』、長船女学院は『瀬戸内知恵』、平城学館から『六角清香』が選ばれてるな。伍箇伝それぞれから刀使を徴用しているようだ』
『六角清香』の名前が出た時、杏寿郎がよもや!と驚く。
「おや、知り合いかな、炎定よ?」
「ああ、三日月よ。彼女とは俺が中学時代に通っていた道場の後輩でな……そうか、刀使になっていたか……」
それと、メンバーの名前に反応したのは彼だけでは無い。美炎、知恵の名前が出た時、ピクリと義勇が僅かに反応した。
だが、それに気付いたのは審神者と三日月だけ。
『……富田は、安桜美炎と瀬戸内知恵のことを知っているのか?』
「なにっ!?お前も刀使に知り合いがいるのか!?ズルいぞ!!」
『おい黄瀬、ツッコむところが違うだろう……』
ムキー!と悔しがる善逸に呆れる村正。その間も義勇は何も喋らなかった。
『そう言えば、衛藤可奈美を追って、美濃関の刀使が追いかけたそうだけど……富田、まさか顔を見られたりは……』
「………」
『そして、それが安桜美炎だったのかな?』
「………」
やはり何も答えない義勇。
画面の中や外から義勇に鋭い視線が向けられる。
『………まあもし顔を見られたら、管理局に動きがあるはず。無いのなら、顔を見られてないだろう』
審神者がそう言うと、心の中でホッとする義勇。だが
『けど、もしもの可能性がある。富田義勇、炎定杏寿郎、黄瀬善逸、三日月宗近。君たちに新たな指令を出す。赤羽刀調査隊の動向を監視し、我々の任務の阻害になるようなら……コレを排除せよ』
「っ!!」
「承知しました」
「ハァ~、分かりましたよ~」
「了解です、審神者様!」
『菊一文字は村正たちと合流、管理局の動きを探れ』
「分かりました」
『はいよ』
『了解だぜ主』
『蜻蛉切は鎌倉に戻り次第、薬研と合流。舞草が動き始めた、監視を』
『はっ!』
そして、ブツンと通話が終了し、画面が消える。
菊一文字は直ぐさま、席を立ち、村正たちの元へと向かい、席には義勇たちが残った。
「それにしても良いよな~、富田や炎定は可愛い刀使の知り合いがいてよう。やっぱり顔か?顔なのかチクショー!!」
勝手にやけっぱちになり、善逸は残った飲み物を喉に流し込み、店員におかわりを注文した。
「いやいや、知り合いと言ってもほんの中3の頃から1年ぐらい稽古に付き合ったぐらいだぞ?」
「それでも女の子と知り合えるなんて羨ましいよ、チクショー!!」
「富田は、そうでもないようだが?」
「…………」
結局、義勇は最後まで何も答えず、飲み物にも手をつけなかった。